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設定解説
<黒田悠治(くろだ・ゆうじ)>〔人物〕
本作の主人公。1997年6月15日生。人見知りがちで上がり症。高校入学初日にクラス中から「いじられキャラ」として扱われ始め、それに反発、いじりはいじめに発展し現在は不登校。アルカナは「0.愚者」、固有ペルソナは「ダイジザイテン」。
<ダイジザイテン>〔名詞〕
黒田悠治の固有ペルソナ。牛の頭骨を被った真っ白の人として現れる。アルカナは「0.愚者」。バランスの取れたステータスや、無属性スキルの使用など、様々な場面でオールラウンドに活躍できる。
「大自在天」は仏教に習合されたヒンドゥー教のシヴァ神であり、三千世界(整然とした宇宙)の支配者として描かれる。白牛にまたがり、三面六臂として描かれることが多い。
<ペルソナ>〔名詞〕
心理学の用語で、平たく言えば「人と接するときに表出する性格」のこと。例えば、ある人は尊敬する人の前では非常に礼儀正しく振る舞うが、友人などの親しい人と接する時は軽口なども叩くほど砕けた態度を取る。
本作では、「その人物の最も普遍的な性格の具現」として描写される。どんなに取り繕っていてもその根底には必ず一定の流れが有り、そこから一部を汲みとって人と接するのである。
「女神異聞録ペルソナ」から続く作品では、マルセイユ版タロットになぞらえて22のアルカナに分類される。
雨の音に目が覚めた。
なんて土砂降りだろう。もっと寝ていたいが、眠気がない。仕方なく身体を起こす。あくびをして、身体を伸ばして…。
「…てててっ」
…身体凝りすぎだろ…。まあ外に出ることなんてないけど。時間は…八時半か…。
「ご飯はもうちょい先か…」
何もしたくない。動きたくない。何もかもが億劫だ。
ドサリ、と布団に倒れこむ。床の硬さを身体の側面に感じる。充電の切れた携帯電話がぼやけた視界にあった。
「…そういえば、ログボ貰わなきゃな…」
そのまま意識がまどろみ、ふつりと切れた。
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雨の音に目が覚めた。焦りを感じる。
「今何時!?」
時計を見ると十三時二分。はぁと長い溜息が出る。携帯の電源ボタンを押してもつかない。
「電池切れか…」
気だるい身体を起こして充電ケーブルをつかむ。意識がはっきりしてきた。そういえば、充電してなかったか。電池が貯まるまで昼食時間にしよう。眠気を抑えたまま階下へ行く。この時間は家に誰もいない。親は仕事だし、兄は大学。気楽なものだ。
「これと、これと…あとこれもだな」
今日はちょっと手の混んだものが食べたい気分だ。お湯を沸かして、乾麺を丼に開ける。お湯を沸かしてる間にウィンナーを焼く。生卵を落として、お湯をそそいで、丼に蓋をして、五分待つ。五分経ったら蓋を外して麺をほぐしてウィンナーを入れる。これで完成。
「いただきます」
味は普通だ。むしろ合成っぽい味がちょっとまずいくらいだ。だが、これでいい、これがいい。僕なんかのためにあまり食費を掛けさせるのも申し訳ない。ひとり麺をすする。ため息が溢れる。またすする。台所にゾッゾッという音とときおり漏れるため息が溶けた。
「…ごちそうさまでした」
皿を洗って、水気を飛ばして食器棚に戻す。階上に行き、自分の部屋にこもる。携帯の電池は十分溜まったようだ。ゲームアプリを起動する。こうしてまた、無為に時間が過ぎていく。
生ぬるい気温を肌に感じていた。
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母親が帰ってきた。彼女には負い目がある。それは、この環境に慣れてしまった今でさえ淡い痛みとなって僕を蝕む。…なぜかはわからないけど、彼女を目の当たりにするのが怖いのだ。この平穏を貪りながら、それを与えてくれる存在に感謝の言葉も掛けられない。これがどんな状況なのかわからないけど、どうしても彼女と顔を合わせたくなかった。
彼女の方もそれをわかっているようで、最初の数カ月は声を掛けられたが、それももはやなくなった。失望されたか、生きているだけで良しとされたか、彼女が僕をどう思っているかは全く見当がつかない。こちらもそれが気楽で、その与えられる平穏を感謝もなく貪っている。
今この状況が一体どう言えばいいのか、僕にはわからない。
少なくとも、天国ではないだろう。
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不意になった携帯に体全体が浮く。目を白黒させながら画面を見ると知らない番号だった。というか引きこもっている最中に番号を変えたので、番号登録しているゲームのアカウント以外で僕の番号を知っているものはない。つまり、何かの詐欺か、どこかの怪しいサイトのリンクを知らないうちに踏んだか。
「この時間なら心霊電話ってこともあるか…?」
とにかく、このまま鳴りっぱなしなのも近所迷惑だ。赤いアイコンを押す。
「こんな夜中にかけてくるなっての」
しかしその瞬間、またかかってきた。また同じ番号。さすがに迷惑だ。苦情の一つも言わなければならないか、と考えたところで指が止まる。
この携帯のデフォルトの通知音はこれだったか?
おかしな考えが頭をよぎる。これが本当に心霊電話だとしたら、応答するも地獄、無視するも地獄ではないか、知らずにいることはできないのか、どうして今、僕なんだ。ぐるぐると同じ言葉が頭に浮かんでは消えていく。全身の毛穴が閉まっていくことが解かる。額に、背中に、手に平にじわりと汗がにじむ。恐怖に体中が震える。目の焦点が定まらない。歯の根が合わずにガチガチと鳴る。心臓の鼓動がうるさい。血液の循環が早い。脳に酸素が行き渡らず、ひどい頭痛に全身が侵される。
どっちだ。
どっちだ。
どっちだ。
どっちだ。
迷っているうちに電話が鳴り止んだ。さっきのパニックなどなかったかのような静けさが部屋を包んだ。
冷静になり、初めて雨が止んでいたことに気づいた。
気まぐれに見た新聞には、行方不明者の記事があった。その名前に見覚えがあった。