彼の名前は
どこにでもはいないけど、一般的な高校2年生だ。
そんな彼は今、
「お、お前もデュエル始めたのか。」
楓が顔を上げると、相変わらず高校生とは思えない筋肉を持つ、アフロ頭の男──
「うん。みんなやってて、楽しそうだったからさ。」
「いいと思うぜ。実際楽しいからな。」
そう言いながら、幸男はデッキを取り出した。
その中から1枚のカードを取り出し、
「イラストを観るってのもいいしな。」
と言って、そのカードを見つめていた。
楓の視界に入ったそのカードは〈放電ムスタンガン〉とあった。
「それが幸男のエースカード?」
「まあ、な。こいつはデッキから抜きたくないんだ。」
幸男は笑顔でそう言いながら、大事そうにカードをデッキにしまった。
その時だった。
教室の後ろの扉が開き、黒いローブに身を包んだ誰かが侵入してきた。
「ここにもデュエリスト……2人確認。」
その声は機械的、というか無機質な機械音声のような感じだった。
「お前誰だ? 」
という幸男の問いかけを
「ハルバネ カエデとのデュエルを開始、します。」
と遮った。
「え、僕?」
「楓、頑張れよ!」
かくして幸男の声援を受けた楓は、謎の黒ローブとデュエルをすることになってしまった。
LP
カエデ:8000
???:8000
「ワタシが使うのは、カテゴリ【
「聞いたことのないカテゴリだな、それ。」
黒ローブが放ったカテゴリ名に、幸男は首をかしげていた。
「カエデさん、先攻をどうぞ。」
「じゃ、じゃあ、僕のターン!僕は手札から〈ファーニマル・ドック〉を通常召喚!このカードが手札から召喚に成功した時の効果で、デッキから〈エッジインプ・シザー〉を手札に加えるよ!」
「どうぞ、別にジャマしませんから。」
黒ローブはそう言いながら真ん中のメインモンスターゾーンに出された〈ファーニマル・ドック〉を見つめていた。
「僕は魔法カード〈融合〉を発動!フィールドの〈ファーニマル・ドック〉と手札の〈エッジインプ・チェーン〉を素材にして〈デストーイ・チェーン・シープ〉を守備表示で融合召喚!」
楓から見て右側のEXモンスターゾーンにカードが置かれる。
「手札から墓地に送られた〈エッジインプ・チェーン〉の効果を発動!僕はデッキからデストーイと名のつくカード……〈
「では、ワタシのターン、ドローします。」
「ワタシは手札から〈
メインモンスターゾーン真ん中に召喚されたカードには、幼稚園生が着るような……スモッグというのだったか、そのようなものを着用した女子幼稚園児のようなロボットが描かれていた。
〈
機械族/効果
①このカードは自分フィールドのレベル1「アンドロリータ」モンスターをリリースして手札・墓地から特殊召喚できる。
②このカードがリリースされた場合に発動できる。デッキから「アンドロリータ」魔法・罠カードを1枚、手札に加える。
ATK 500
DEF 500
「さらに、ワタシは手札から魔法カード〈
〈
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
①自分フィールドの「アンドロリータ」モンスターを1体リリースして発動できる。デッキから、リリースしたモンスターよりレベルが1高い「アンドロリータ」モンスターを特殊召喚する。
「ワタシがデッキから特殊召喚するのは、〈
〈
機械族/効果
①このカードは自分フィールドのレベル2「アンドロリータ」モンスターをリリースして手札・墓地から特殊召喚できる。
②このカードがリリースされた場合に発動できる。デッキから「アンドロリータ」魔法・罠カードを1枚、手札に加える。
ATK 1200
DEF 800
新たに、メインモンスターゾーン真ん中に出されたカードはランドセルを背負った低学年の女子小学生にみえるロボットが描かれている。
「さらにリリースされた〈
〈
永続罠
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1回ずつしか使用できない。
①自分の墓地の「アンドロリータ」カードを3枚までを対象として発動できる。対象のカードをデッキに戻し、その後自分はデッキから1枚ドローする。
②このカードが墓地にある場合に自分スタンバイフェイズに発動できる。このカードを除外し、墓地の「アンドロリータ」モンスターカードを1枚手札に加える。
「ワタシはここからさらに、〈
「まだ続くのかよ……」
黒ローブの展開を黙って見ていた、幸男が口を開いた。
そんなのお構いなしに黒ローブは続けていく。
〈
機械族/効果
①このカードは自分フィールドのレベル3「アンドロリータ」モンスターをリリースして手札・墓地から特殊召喚できる。
②このカードがリリースされた場合に発動できる。デッキから「アンドロリータ」魔法・罠カードを1枚手札に加える。
ATK 1800
DEF 900
見た目はver6.0が高学年に上がった感じ……だろうか。
「さらにリリースされた〈
〈
永続魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できず、自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。
①自分フィールド上の「アンドロリータ」モンスターの攻撃力・守備力を500アップする。
②このカードが表側表示で存在する限り、自分フィールド上のこのカード以外の「アンドロリータ」カードは効果では破壊されない。
「……これで、ver9.0の攻撃力が……」
「シープの守備力2000を越えたな。だが……」
楓と幸男は顔を合わせてそう言った。
「バトルフェイズに移行します。〈
ATK 1800+500
↓
DEF 2000
楓の〈デストーイ・チェーン・シープ〉は戦闘で破壊された。
が、すかさず
「戦闘で破壊され墓地に送られた〈デストーイ・チェーン・シープ〉の効果を発動!僕は墓地から攻撃表示で特殊召喚する!さらにこの効果で特殊召喚されたこのモンスターの攻撃力は800アップするよ!」
そう言いながら、楓は先程までいたところの真下のメインモンスターゾーンにカードを置いた。
「……カードを2枚伏せて、ターンエンド。ワタシの手札は2枚。まだまだこれからです。」
「じゃあ僕のターン!」
楓をカードをドローする。
「僕は手札から〈ファーニマル・オウル〉を通常召喚!効果で融合を持ってくるよ!」
楓は手札に融合を加える。
黒ローブはなんの反応も示していない。
「そして、融合を発動!僕はフィールドの〈ファーニマル・オウル〉と手札の〈ファーニマル・シープ〉、〈ファーニマル・キャット〉、〈エッジインプ・シザー〉を素材にして〈デストーイ・シザー・ウルフ〉を融合召喚!さらに、素材にした〈ファーニマル・キャット〉の効果で使った融合を手札に戻すよ。」
「〈デストーイ・シザー・ウルフ〉は素材にしたモンスターの数だけ攻撃できる……これで楓の攻撃が全部通れば……っ」
「そう、攻撃力2000の4回攻撃で8000になる!バトルフェイズ!まずは〈デストーイ・チェーン・シープ〉で〈
「シープの戦闘時、相手は効果を発動できない!」
「……受けます。」
ATK 2000+800
↓
ATK 1800+500
黒ローブ LP 7500
熱く語る幸男とは真逆で、黒ローブは静かに攻撃を受けた。
楓はさらに続ける。
「〈デストーイ・シザー・ウルフ〉で1回目の攻撃!」
「ではそちらの攻撃宣言時に、伏せておいた速攻魔法を発動します。」
黒ローブはそう言うとカードを表にした。
〈
速攻魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。デッキから、レベル4以下の「アンドロリータ」モンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、戦闘・効果で破壊されない。
②自分フィールドの「アンドロリータ」モンスター1体をリリースして、他の「アンドロリータ」モンスター1体を対象として発動できる。このターンのエンドフェイズまで、対象のモンスターの攻撃力はこの効果を発動するためにリリースしたモンスターの元々の攻撃力分アップする。
「この効果で私は〈
「だが、ver9.0の攻撃力は1800だったはず……」
「いや、違う。」
楓はフィールドを見て、永続魔法がはたらいているのを思い出した。
「500上がって2300……まだ手札も4枚あるし……攻撃をやめてターンエンドするよ。」
「そうですか。」
そう言いながら、黒ローブは口角を少し上げた。
幸男も楓もそれに気づかなかったのだが。
「では、ワタシのターン……ドローしますね。……あら。」
黒ローブはさらに大きな笑みを浮かべる。
さすがに幸男も楓も気づかないわけはなかった……が、楓のフィールドにはモンスターが2体いる上、シープに関しては1回戻れるから……さしたる問題ではないだろうと考えていたのだが。
「ワタシは手札からフィールド魔法〈
「ど、どうぞ……?」
〈
フィールド魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度ずつしか使用できない。
①このカード発動時の効果処理として、デッキから「アンドロリータ」モンスターを1体、手札に加えることができる。
②自分フィールド上の「アンドロリータ」モンスターがリリースされた場合に発動できる。リリースされたモンスターと同名のカードを、デッキから特殊召喚する。
「私がこの効果で手札に加えるのは〈
「どうぞどうぞ……」
「突然自信満々になったな。」
〈
機械族/効果
①このカードは自分フィールドのレベル4「アンドロリータ」モンスターをリリースして手札・墓地から特殊召喚できる。
②このカードがリリースされた場合に発動できる。デッキから「アンドロリータ」カードを1枚手札に加える。
ATK 2400
DEF 1100
黒ローブが見せたカードには、先程のver9.0が少し成長して中学校の制服を着ている様子が描かれていた。
つまり、そういうことだ。
「ワタシはフィールドの〈
「すごい回ってるが……楓のモンスターを抜けるのか?」
「さらに伏せてあった永続罠〈
「劣化した〈貪欲な壺〉か。」
何度か幸男が呟いたが、おそらく黒ローブは聞いていない。
「さらに〈
〈
機械族/効果
①このカードは自分フィールドのレベル5「アンドロリータ」モンスターをリリースして手札・墓地から特殊召喚できる。
②このカードがリリースされた場合に発動できる。デッキから「アンドロリータ」カードを1枚手札に加える。
ATK 2700
DEF 1300
先程の制服を着た機械の女の子が少し大きくなったように描かれている……ver12.0がさらに成長したのだろうか。
「さらにリリースした〈
「まだ回るのか……」
幸男がため息をつくが、黒ローブにはまたしても届いていない様子だった。
「そして〈
〈
機械族/効果
①このカードは自分フィールドのレベル6「アンドロリータ」モンスターをリリースして手札・墓地から特殊召喚できる。
②このカードがリリースされた場合に発動できる。デッキから「アンドロリータ」カードを1枚手札に加える。
③このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合に発動できる。破壊したモンスターの元々の攻撃力分、自分のLPを回復する。
ATK 3000
DEF 1500
ver16.0はセーラー服を着ていた。
高校生をイメージしているのだろうか、しかしよく似合っている……
「さらに〈
「すごいサーチ力だな……。」
幸男は、もはや誰にも聞こえないレベルの大きさで呟いた。
「バトルに入りますけど何かあります?」
「いやないけど……」
その楓の返答で黒ローブの口角は大きく上がった。
まるで勝利を確信したかのように。
「バトルフェイズ開始時に〈
「つ、つまり……」
「攻撃力は……」
「まだ終わりませんわ。〈
「リミ解だと!?」
「なにこの魔法?」
「簡単に言えば機械族の攻撃力を2倍にする魔法だ。」
「えっと、てことは……」
2人は思わず息を止めた。
ATK (3000+500+2700)×2=12400
↓
ATK 2000
カエデ LP 0
カエデ:LP 0
???:LP 7500
「負けちゃった……」
「こっから強くしていこうぜ。」
幸男が、楓の健闘を讃えていると、
「ワタシが勝ちましたのでハルバネ カエデからデッキを奪います。」
黒ローブから衝撃の一言。
「は!?」
「え……やだよ、そんなの。」
「ですが、そういう決まりですので。」
黒ローブが楓のデッキに手を伸ばす。
すぐさま楓はデッキを片付けるが、黒ローブはすぐに目標を楓に切り替えて手を伸ばす対象を変えた。
その手を掴んで止めたのは、言うまでもない、幸男だ。
「幸男……」
「デュエルはお互いの絆を深め合うものだ。勝っても負けてもそんな事はしちゃダメだ。」
「決まりですから。」
「なら俺がお前に勝てば、見逃してくれるのか?」
そう言うと幸男はデッキを取り出した。
1番前の〈放電ムスタンガン〉のカードを見せつけるようにして。
「デュエル……なら、まぁ。」
「なら……デュエルだな!」