「誰?あんた。」
「アキカゼ セツカ……デュエリストだな。デュエルしろ。」
赤いローブを着ている影は、突然彼女の名前を呼んだ。
「確かに、私の名前は秋風 雪火だけど?」
「デュエルしろ。」
「……。」
「デュエルしろ。」
「……分かったよ。デュエルするのね。」
そういって彼女はデッキを取り出した。そうしないとこの場が変わらない気がしたからだ。
LP
セツカ:8000
赤ローブ:8000
「オレが使うのは【
「そんなデッキ聞いたことないけど……」
雪火は戸惑いながらもデッキをセットする。
「私が使うのは【トラミッド】、よろしく。」
「先攻はそっちだ。」
「え……いいの?」
赤ローブの言葉に、雪火は思わず聞き返す。
が、すぐに飲み込んでデュエルを始めた。
「じゃ、私のターン。私は手札からフィールド魔法〈トラミッド・クルーザー〉を発動。そして手札から〈トラミッド・ハンター〉を通常召喚。」
「……。」
〈トラミッド・ハンター〉が真ん中のメインモンスターゾーンに召喚される。が、赤ローブは静かにフィールドを見つめていた。
「〈トラミッド・クルーザー〉の効果でライフを500回復、さらにデッキから1枚ドローして手札から〈ブロックドラゴン〉を捨てる。」
セツカ:8500
「さらに〈トラミッド・ハンター〉の効果で、手札から〈トラミッド・マスター〉を召喚。〈トラミッド・クルーザー〉の効果でライフを500回復する。そして、ドローして手札から〈ゴロゴル〉を捨てる。」
〈トラミッド・マスター〉は〈トラミッド・ハンター〉の右隣に召喚された。
セツカ:9000
「私はカードを2枚伏せてターンエンド。手札0枚でスタートか……。」
雪火は小さく呟くが、赤ローブはそれを耳に入れている様子はなかった。
「オレのターン、ドロー。メインフェイズに入るぞ。」
「待ちなさい、スタンバイに〈トラミッド・クルーザー〉を墓地に送って〈トラミッド・マスター〉の効果を発動。デッキから〈トラミッド・キングゴレム〉を発動するわ。」
「……。」
赤ローブが黙ったのをお構いなしに、雪火はさらに続けた。
「さらに墓地に送られた〈トラミッド・クルーザー〉の効果を発動。デッキから〈トラミッド・スフィンクス〉を手札に加える。」
「オレのターンなのに……」
少し赤ローブがふてくされたような声を出す。
「ご、ごめん。でもそういう効果だからさ……」
「まぁいい。オレは手札から永続魔法〈始まりの
〈始まりの
永続魔法
このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。
①このカードの発動時の効果処理として、自分のデッキ・手札・墓地から〈
②このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールド上の〈
「その効果で俺はデッキから〈
そう言って赤ローブは、白いコック帽を被ったいかにもな料理人が描かれたカードをフィールドの真ん中に出す。
……ただ、調理器具がどちらかというと兵器のようになっているのだが。
〈
戦士族
様々な
ATK 2000
DEF 2000
「さらに、手札から永続魔法〈流れる
〈流れる
永続魔法
このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。
①このカードの発動時の効果処理として、自分のデッキ・墓地から「レシピ」と名のついたカードを1枚選んで手札に加えることができる。
②このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールド上の〈
「オレはこの効果でデッキから〈遊泳する
〈遊泳する
永続魔法
このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できず、このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールド上の〈
②このカードが墓地に送られた場合に発動できる。フィールドのカードを1枚選んで破壊する。
「永続魔法ばっかり……そういうテーマなの?」
「あぁ。」
「……むぅ。」
赤ローブはそっけなく応えた。雪火はその態度に少し不満があったようだが、赤ローブは気にせず続ける。
「オレはさらにもう1枚の〈流れる
〈憎しき
永続魔法
このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できず、このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールド上の〈
②このカードが墓地に送られた場合に発動できる。墓地のカードを1枚選んで持ち主の手札又はデッキに戻す。
「もう3枚も使ってるし……。」
「ふっ……問題ない。」
「そう?あなたがどんな動きをするのか少し楽しみになってきたわ。」
「じゃあ楽しみにしてくれ。」
赤ローブはそう言うと……
「オレは〈儀式の下準備〉を発動する。」
「ぎ、儀式?」
「そんな驚くことじゃないだろ。」
「いや……あんまり見ないでしょ?」
「オレは毎日のように見てるけど。」
「……まぁ、そりゃそうでしょうけど……」
「……もういいか?オレはデッキから〈完熟の
〈完熟の
儀式魔法
「
このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できず、墓地に送られたターンには発動できない。
①自分の手札・フィールドから、レベルの合計が8になるようにモンスターをリリースし、手札から「
②墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「お口直し」を1枚手札に加える。
〈
戦士族/効果
「完熟の
①このカードはフィールド・墓地に存在する限り〈
②このカードの攻撃力・守備力は自分の墓地に存在する「レシピ」カードの種類×300アップする。
③自分の墓地の「レシピ」カードを1枚除外しフィールドのカードを1枚対象として発動できる。そのカードを破壊する。この効果は1ターンに2回まで使用できる。
ATK 2800
DEF 2800
描かれていたのは〈
「破壊……ね。」
「この世界では『どらんしあ』や『ますたーぴーす』といった相手ターンでも破壊できるカードがあると聞いた。このくらいでは弱いと聞いたんだが?」
「いや……強すぎたからリミットかけられたんだけど……。」
「……ま、いいや。オレは手札から儀式魔法〈完熟の
「っ……ないわよ。」
「ならばまず〈遊泳する
「……雪火でいいわよ。」
赤ローブがもじもじしているのを見かねたのか、雪火が呆れたように呟いた。
「せ、セツカの墓地の〈ブロック・ドラゴン〉をデッキに戻す!」
「ん。じゃあ処理後に〈トラミッド・キングゴレム〉が墓地に送られた場合の効果を発動するわ。私は手札から〈トラミッド・スフィンクス〉を攻撃表示特殊召喚する。この特殊召喚成功時なにかある?」
「オレはなにもないが……」
「じゃあ私がさっき伏せていた〈激流葬〉を発動するわね。本当はこんな使い方したくなかったんだけどな……。」
「ふっ、だが思い通りにならないのがデュエルだろう?」
「……そうね。さぁ、モンスターを全破壊よ!」
「くっ……ならばオレはカードを2枚伏せてターンエンドだ!手札ゼロ……だけど!」
赤ローブのターンが終わる頃。
気がつけば2人とも笑顔になっていた。
「私のターン!ドロー!」
雪火は引いたカードを見て少し考え込むような素振りを見せ、
「私は手札から〈テラ・フォーミング〉を発動!デッキから〈トラミッド・フォートレス〉を手札に加えるわ!」
と意気揚々と宣言した。
「さらにそのまま〈トラミッド・フォートレス〉を発動!そして伏せていた〈
「ならばその効果にチェーンしてオレは伏せていた〈新鮮なる
〈新鮮なる
永続罠
①1ターンに1度、自分LPが相手LP以下の場合に発動できる。自分は500LP回復し、このターン自分フィールドの「レシピ」カードは効果では破壊されない。
②このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールド上の〈
「あなたも回復するのね。」
赤ローブ:8500
そう言った雪火のフィールドの真ん中には守備表示で〈トラミッド・スフィンクス〉がたたずんでいた。
「ま、私はこれ以上できることもないしターンエンド……ちょっとまずいかな。」
おもわず漏れた不安の声だったが、赤ローブはそれを耳に入れてはいないようだった。
「オレはセツカのエンドフェイズにもう1枚の伏せカード、〈甘美なる
〈甘美なる
永続罠
①1ターンに1度、自分LPが相手LP以下の場合に発動できる。このターン自分フィールドの〈
②このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールド上の〈
「今発動したって伏せを晒しただけじゃない?」
「まあな。」
赤ローブはそう言うと、大きな深呼吸をし……
「オレのターン、ドロー!……!」
その引いたカードを見て、赤ローブは一瞬固まり……
「オレは〈新鮮なる
赤ローブ:9000
「来なかったの?その処理後に〈
〈トラミッド・ハンター〉は〈トラミッド・スフィンクス〉の左隣でたたずみ始めた。
「では、オレは墓地の〈完熟の
〈お口直し〉
速攻魔法
このカード名の①②③の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①自分・相手のバトルフェイズ開始時にこのカードを手札から捨てて発動できる。このバトルフェイズで自分が受ける全ての戦闘ダメージは半分になる。
②自分・相手のスタンバイフェイズにこのカードを手札から捨てて発動できる。このターン自分が相手から受ける全ての効果ダメージは0になる。
③墓地のこのカードを除外し自分フィールドの表側表示の「レシピ」カード2枚を対象として発動できる。そのカードを墓地に送りデッキから「レシピ」永続魔法・永続罠カードを合計2枚選んで自分フィールド上に発動する。
「へぇ、戦闘ダメージ半減……強いね。」
「ふっ、まあな。」
「っと、そっちのエンドフェイズに私の〈トラミッド・ハンター〉の効果を発動!」
「別に邪魔はない。」
「私は〈トラミッド・フォートレス〉を墓地に送って〈トラミッド・キングゴレム〉を発動!」
「だが〈お口直し〉の発動タイミングはバトルフェイズ開始時だ!」
「打点を上げたのよ。私のターン、ドロー。……うん、いくわよ!」
雪火は前を向き直し、赤ローブを真っ直ぐ見据えた。
「私は手札から〈トラミッド・ダンサー〉を召喚!さらに〈トラミッド・ダンサー〉の効果で墓地の〈トラミッド・フォートレス〉をデッキに戻して、私のフィールド上の岩石族のモンスターの攻守を500ずつアップさせるわ!」
「〈トラミッド・キングゴレム〉の合計すると……3体の攻撃力はそれぞれ1000ずつアップ……くっ。」
「そしてバトルに入るわ!」
「待て、バトルフェイズ開始時!〈お口直し〉を手札から捨てて効果!このバトルフェイズでオレが受けるダメージは半減する!」
「構わない!まずは〈トラミッド・ハンター〉でダイレクトアタック!」
「……技名とかないのか?」
「えっ。」
赤ローブの突拍子もない提案に狼狽えた雪火だったがすぐに立て直し、
「なら……えーっと……『
ATK (1400+500+500)÷2=1200
赤ローブ:7800
「次に〈トラミッド・ダンサー〉のダイレクトアタック!えーっと『
ATK (600+500+500)÷2=800
赤ローブ:7000
「さ……最後に〈トラミッド・スフィンクス〉のダイレクトアタックっ!ん~……『
ATK (2500+500+500)÷2=1750
赤ローブ:5250
「……うぁ……ターンエンドよっ!」
「あ、エンドフェイズに〈新鮮なる
「ん。」
赤ローブ:5750
「な、なんで怒ってるんだ?」
「怒ってない!」
「お、おぅ……オレのターン。ドロー……あ。」
「スタンバイに〈トラミッド・ダンサー〉の効果、いい?」
「あ、おう。」
いまだにこめかみから煙でも上げていそうな雪火だったが、効果発動の許可を取れる程の冷静さはまだ残っていたようだ。
「私は〈トラミッド・キングゴレム〉を墓地に送り、デッキから〈トラミッド・クルーザー〉を発動するわ。……どうぞ。」
「じゃあ行くぞ!オレは墓地の〈お口直し〉を除外してフィールド上の〈流れる
「……なにもないわ。」
「ならば、チェーンして〈新鮮なる
赤ローブ:6250
〈焼き尽くす
永続魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①自分メインフェイズに自分フィールド上の表側表示の「レシピ」カードと相手フィールド上の魔法・罠カード2枚ずつを対象として発動できる。そのカードを全て破壊する。
②このカードが墓地に送られた場合に発動できる。相手の手札と自分の手札を1枚ずつランダムに墓地に送る。
「むむ……。」
「さらに〈始まりの
「儀式モンスターを?……あ、そっかそいつ〈
「そのとーりだ!そして〈焼き尽くす
「ならその効果にチェーンして〈トラミッド・ハンター〉の効果を使うわ。私が発動するのは〈トラミッド・フォートレス〉ね。」
「……てことは破壊できるのは1枚だけか……とりあえずそれを破壊だ!」
赤ローブは〈
「まあ、オレの『レシピ』は破壊されないからプラスではあるけどな。」
「じゃあ私の効果使うわよ。墓地に送られた〈トラミッド・クルーザー〉の効果で〈トラミッド・ダンサー〉を手札に加える。」
「……なら!オレは墓地の〈憎しき
「うむむ……。」
「さらにもう1度!〈遊泳する
「破壊ね。」
雪火は〈トラミッド・スフィンクス〉を墓地に送りながら呟いた。
「そしてバトル!〈
「くっ……ぅ。」
ATK 2800+(300×2)+500+500+500=4900
↓
ATK 1100
セツカ:5200
「これでオレはターンエンド。さぁ、どうする?」
「……私のターン、ドロー。私は〈トラミッド・ダンサー〉を通常召喚し、さらに墓地の〈
「だが……〈
「それでいいのよ。私はフィールド魔法〈岩投げエリア〉を発動して、バトルフェイズに入るわ!」
「?~?~?」
「私は〈トラミッド・ハンター〉で〈
ATK 1900+500=2400
↓
ATK 4900
セツカ:2700
「なら〈トラミッド・ハンター〉は……」
「ううん。」
雪火は首を左右に振った。
「〈岩投げエリア〉の効果で戦闘破壊の代わりにデッキから〈ブロック・ドラゴン〉を墓地に送る。」
「なるほど……耐性が。」
「メイン2!私はレベル3の〈トラミッド・ハンター〉と〈トラミッドダンサー〉を素材としてランク3の〈ゴルゴニック・ガーディアン〉を攻撃表示で
「ならばその効果にチェーンして〈甘美なる
「ふっ……」
赤ローブは、雪火が浮かべた不適な笑みを見逃していなかった。
「あ……効果が!」
「その通り。その効果を発動したところで、今は〈
「ぐっ……」
「そのまま〈ゴルゴニック・ガーディアン〉の効果で破壊!」
「ぬぬ……」
「さらに墓地の〈トラミッド・スフィンクス〉と2枚の〈トラミッド・ダンサー〉を除外して墓地の〈ブロック・ドラゴン〉を守備表示で特殊召喚!」
「効果破壊耐性……まで!?」
「これで私はターンエンド。あなたはどうするのかしら?」
真ん中にたたずむ〈ブロック・ドラゴン〉の威圧感に気圧されたのか赤ローブは自分のターンに入るのに少々の時間を要した。
「お、オレのターン!……ドロー。オレは〈焼き尽くす
「なら……私のターン、ドロー。〈ブロック・ドラゴン〉を攻撃表示にして……バトルするわよ。」
「ああ。」
「〈ブロック・ドラゴン〉でダイレクトアタック!」
ATK 2500
赤ローブ:3750
「ぐっ。」
「続けて〈ゴルゴニック・ガーディアン〉でダイレクトアタック!」
ATK 1600
赤ローブ:2150
「ターンエンドよ。」
「大ピンチ……だが……くっ。オレのターンっドロー!」
赤ローブはカードが曲がりかねないレベルで力を加えてドローをし、引いたカードを見ると……
「ターンエンド……。」
「なら私のターンね。これで決めてあげる!ドロー……スタンバイ!」
「……うぐぐ。」
「私は〈トラミッド・マスター〉を通常召喚してバトルフェイズ!」
「ならばバトルフェイズ開始時に手札から〈お口直し〉を捨てて効果を発動!」
「半減よね?〈ゴルゴニック・ガーディアン〉でダイレクトアタック!」
ATK 1600
赤ローブ:1550
「さらに〈ブロック・ドラゴン〉でダイレクトアタック!」
ATK 2500
赤ローブ:300
「ふっ……さぁ!トドメを!」
赤ローブのその叫びを聞いた雪火は、
「もちろん!私は〈トラミッド・マスター〉でダイレクトアタック!『
ATK 1800
赤ローブ:0
デュエルを終えて赤ローブは椅子にもたれ掛かり、天井を見上げた。
「ふっ……強いな。」
「あなたも強かったよ。」
「セツカ……またデュエルしたいんだが……」
「いいけど……その前にあなたの名前を教えて?」
雪火は赤ローブに向かって手を差し出した。つまるところ握手しよう……ということだ。
だが、赤ローブから返ってきたのは意外な言葉だった。
「オレには……オレ達には名前はない。」
「オレ達?」
雪火がさらに深く訊こうとしたときだった。
赤ローブが椅子から床に転がり落ちた。
「お、おい?大丈夫か!?」
「……」
赤ローブからの返答はない。
雪火がどうしようかと周りを見渡すと、そこには。
「敗北者には喋る権利などないですから。」
真っ白なローブを着た何かが立っていた。
「あ、あんた誰!?」
「スカウトに来たのです。見ていましたよ今のデュエル。」
そう言うと白ローブは、倒れている赤ローブの腰に付けられていたデッキケースを取り上げた。
「おい!何してるんだよ!」
「こんなやつにカードを作ったのがとてももったいないと思ってね。もう持つ資格もないだろう。」
そして、気がつけば──
「なにをしているんです?」
「事情は分からないけど、人のデッキを持っていくのに賛成はできないわ。」
雪火は手を掴んでいた。
「……なら今回は見逃しましょう。なかなか面白いデュエルを見せてもらいましたからね……」
白ローブは全て言い終わる前に雪火の前から姿を消していた。
雪火は赤ローブの近くに座り、
「大丈夫かな……」
と小さく呟いた。