閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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お使いを頼まれた。
あの方の慌てふためく姿を拝むのは初めてだ。

深きものどもが二手に別れる。まるで私を誘い込む様だ。

《???》→成功

なるほど、己の信ずる者からの命令か。

《???》→成功

基本的な武装だ。警戒する必要は無いだろう。


私の顔を彷彿とさせる所まで沈んだ。
……のだが、どうにも明るい。
いつから水中でキャンプファイヤーをする様になったのだろう。


「お迎えにあがり──」
「あ、にゃんにゃん。ねぇねぇ、封印解かれちゃったけどどうしよう。」
「……目的が定まるまで、そして環境を感じるまで時の流れに身を任せるのはどうでしょう。」
「うん、そうだね。お土産に海鮮焼きそば作るから待って。」





……今回は世界観に触れるせいで、どうやら彼女の出番は少ない様だ。そして閑話に近い。



龍と神は人間と弄ぶ

 

体の節々の痛みで目が覚める。

布団を跳ね除けながら部屋を見渡す。

 

 

カチカチッカチャッ、カチカチカチ、コココ

\ァァァァァォォゥ!!/ \ボコン、ボコン/

 

「あ、粉塵飲むわー♪」

「『あざっす!!』」

「多分あと15秒ぐらいで疲労になるでしょうから砥石とかしておいてね。」

「『落とし穴調合しまーす!』」

「『俺の双剣のスタン性能見せてやるわ!』」

「『じゃぁ自分、閃光スリンガーよろしいか。』」

 

 

奴は光る板に謎の機械を向けて楽しんでいた。

謎の黒い箱から人間の声が聞こえる。

 

よし、気を取られている今なら――

 

 

 

「おはよう。」

 

奴はこっちを見た。

 

 

 

「これ終わったら私抜けるわー♪明日、ピアノの発表会だし。」

「『夜遅くまでやるとか技量と合わせてマジハンターっすわ!』」

「『明日のツイキャス楽しみにしてますー!』」

「『実は主、天才金髪幼女説ってそれ一番、うわぁぁぁぁ!!』」

 

\ボン/

 

「あぁ、疲労直後はまだ沢山散らばっているのに。」

「『おーい、これともう一体行けるのですか?』」

「『流石歴戦の爆撃機、乗ってる妖精が違うぜ……』」

「『それは違うゲームだろ!あとおっさんが思い浮かぶw』」

 

 

 

時間が無い。

起床に気づかれた以上、物音を立ててでも脱出口を見つけなければ。

 

壁を引っ掻きながら扉が無いか探す。

すると一部の壁紙に爪が引っかかる。

剥がすと取っ手がある扉が姿を現す。

 

 

これは鍵がかかっている訳では無い、普通の木の扉だ。

しかし開きも閉じも、スライドもしない。そしてガタガタ言わない事からシャッターの様な巻く物では無いと考えられる。

 

腕を振りかぶり、叩きつける。

 

 

ドン!!

 

 

ぐぅっ。

そうだった……私の全ての身体能力が弱まったのだから、木の扉さえ破れる訳がないのだ。

私は痛みに跪く。

 

「『あぁぁw垂直バグキタァァァァアw』」

「ビューン、バババッ!」

「『お、あと一匹ですねー』」

 

 

くそっ、時間が無い。痛む手を無視してハンマー的な物を探す。

 

 

 

 

最悪だ!

この体では中身が入った小さい木箱さえ持つのがやっとだった。

60kg程度は振り回したいのだが、無理なのか。

 

 

「さぁ、爆弾置きましょー」

「『爆弾起きましょう!』」

「『えぇ……』」

 

 

くそっ。どうする。振り回せる硬い物は……

 

 

 

 

 

「『お疲れ様でした!明日頑張ってください!』」

「えぇ。ありがとう、いい夢が見られますように♪それでは。」

 

トン、サッ。

 

奴は電源を落とすために前傾姿勢になる。

前傾姿勢になったら次は元の姿勢になる。

 

「ふぅ……」

 

 

陶器の花瓶を振り下ろす。

 

狙いは勿論神選者の後頭部。

 

 

パカァッ!

 

 

砕け散り、私の手にも少し刺さる。

時間稼ぎになればいいのだが――

 

「そんなことしたらマネキン壊れてしまうし、手が傷ついちゃうわよ?ほら、手を出して。」

 

後ろから伸びてきた手を払い除ける。

ちらりと視線を送ると確かにマネキンにすり変わっていた。

マネキンの頭が落ちる。

 

砕けた破片を手に取り構える。

しかし奴が一歩踏み出せば意志とは関係なく後ずさってしまう上に、体の震えが大きくなる。

 

「全く……私がそんなに嫌?」

 

自らの上位に位置する存在と同じ部屋にいる時点で精神的に削れるだろう。

しかし落ち着け。

何か使える物は……駄目だ、見当たらない。

説得しようにも書く物がない。

 

 

ゴクリと唾を飲み込む。

 

 

確か当初の目的は『私が喋れる様になる』だったはずだ。

一度チャレンジしてみるか。

 

 

「次は――」

「ぁぇ、ゆぅぁぇ……やぁえぇ!」

 

奴の動きが一度止まる。

意識して呼吸を行い、文章を組み立てる。

 

 

「やめぇ。ああしあ、あなあにおほはれるのぐぁ、いあへす!!」

 

 

 

 

これは駄目だ。

 

「まだ駄目ね。」

 

 

 

また奴は私に近づき出す。壁を背にしながら距離をとる。

 

「元お、すぐぁたにしお!」

「え?元の酢豚に塩?」

 

大分発音が近づいたがダメか。にやけ顔が私の怒りを増幅させる。

しかしそれは恐怖を打ち消す丁度いい感情だ。

再び呼吸を挟む。

 

「私を、早ぅあいほうしお。」

「もう一声かなぁ?グフッ」

 

奴が鼻血を出す。

とてつもない哀の感覚に視界がぼやける。

 

しかし、奴の影がゆらりと私の方へ近づいてくるのは分かる。

 

 

喉が震え、もはや意味を成さない声をあげるしかない。

手を伸ばして拒むが、奴には効果は無い。

欠片を首に向かって振るが、手首を掴まれる。

 

 

ぼやけた奴の顔が白く変色し赤い線が走った。

 

 

それを最後に記憶は途切れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

体の節々の痛みで目を覚ます。

昨日扉に打ちつけた手が特に痛い。

 

 

「ピアノの発表は午前9時から始まって12時に終わったわ。そうそう。まぁ私達は子供だから長時間動かないなんて残酷な拘束、無理だしね。」

 

つまり昼は過ぎていると?

その事を思った一瞬、痛みが体を駆け巡る。

 

本能的に『思い出してはいけない』と理解する。

記憶による痛みの余韻を耐えながら体を起こす。

 

 

奴はまた別の光る板に向かって喋っていた。

 

「あー辿異種?トリドクレスかぁ、ちょっとブサイクだわ。翼を拡大しときました、みたいな手抜きな感じもするわ。でも、攻撃はかっこいいわよね。」

 

気が触れたのだろうか。

周りの所々光る箱からは全く人間の声がしない。

 

「あー……嫌いを100と40字♪立て付けの悪い地盤のライフ♪だったかしら?……あ、違う。おっと、ここで飛び入り参加の要請だわ、誰かしら?

 

……

 

デン!

 

いつも飛び入り参加で場を賑わし、配信主の存在を薄めてしまうのはこの存在ー!

 

笑いのニューウェーブ

 

 

クトゥルフ@発音不可能

 

 

さんですわ!」

 

 

「『はいどうもー!バーチャルツイキャスターのクトゥルフですー!』」

 

 

……駄目だ、ここであの会話を聞いているだけで気が狂いそうだ。

大体聞かせている相手は誰だ。いきなり他人の声も聞こえ始めたし。

だが、それ以前にこの世界には高度そうな機械、またそれの基盤となる機械は無かったはずだ。

 

 

「『あっはっは!みんなボクのSAN値チェック失敗かつ、50以上が大量で草生えるんですけどー!』」

「おうおうおう、閲覧者がうなぎ登りかつ、その閲覧者がコインくれるから何時間放送しても使い切れない量が入ってくるわ。その勢いでフォローよろしくお願いするわ。」

 

 

何をしよう。

結局、檻の中と同じなのだ。この空間から逃げる術はない。

 

それならば空間を管理する存在をどう欺くかが最重要課題となるのだが、この神選者は通用しない。

 

 

 

私は諦める。

 

 

 

血を吐いてでも喋れる様になってここから出してもらおう。

この際、プライドは無しだ。

課題に従うしかない。

 

それにこの体ならば人間の中に混じれるだろう。

多分。

その際に発声は必須事項だ。

『喋れない』と『喋らない』では大きく違うのだから。

 

 

「うーん、そのコラボでは何をする予定かしら?」

 

「『それよりなんかそっちから変な音が聞こえるのはボクの気のせい?』」

 

「あぁ、私の娘みたいな存在が今そこに居るからだわ。」

 

「『一体何人娘が――』」

 

「そっちの踊り子もなんか変わったでしょう。変なかけ声聞こえるし。」

 

「『良く気づいたな。こちらはオタ芸を取り入れたから色とりどりで、更に対象として歌うアイドルの美人が発現した。オタクの目に映るのはアイドルのみで、ボクの存在どっか行っちゃったわ。まぁなんだかんだボクに捧げるダンスならいいかなぁって。』」

 

「ガバガバすぎないかしら。」

 

「『海上で線香花火する時に騒がれると風情が無くなるし、アザトースの踊り子となんかライングループ持ってるし!!おかしいよ、この世界!!』」

 

「お、落ち着いて。アザトースとは余り接触した事は無いでしょ!?」

 

「『もっとヤヴァイのはアイツだよ!再現するわ!』」

 

 

 

 

ボクは焦点を合わせる気さえ無い状態でただ前を見ていた。

いつも通り、魚人が供物を捧げてくる。

恩恵として緊急時自動発動の装甲を貼っとく。

既にこれが自身が気づいてなくても出来る程度に年月は過ぎた。

 

ヤマツカミみたいに食べる。

ガツンガツン言わせる歯は無いけど。

 

 

唐突に視界がハッキリする。

意識に直接語りかけてきた存在が居たからだ。

 

ボクは深く、精神が崩落しそうな音を口から放つ。

それは耳を塞ぎたくなると同時に――

 

 

「《あ、あのーどどどどどどうしましょう!?なんか寝言で殴ってくるから少しイラついて斜め45°で叩いたら理性ががっ、もどっ、もどど!?》」

 

 

凄くボクを敬ってない奴だった。というより絶対代償を払ってまで繋げる様な内容では無い気がした。

しかも聞いたことのある声。

 

 

『……落ち着け。貴様は誰だ。』

 

「《ヨグです!ヨグ=ソトースです!クトゥルフさん助けて下さい!?親の知性が戻っ、戻ったんですぅぅ!》」

 

『……え、えぇぇぇ!!??ちょっ、はぁ!?どうして!』

 

「《あっ、えっ、ちょっ、そ、そのアレなんです!そうアレ!流石にこれは予測出来ませんでしたのでっ、ちょっ、その、あのーそう!ちょっとこっちに来てください!

ニャルラさんが迎えに行ったんで!

ルルイエの封印とりあえずぶっ壊しますので!!

モーゼするんで!!!》」

 

「おまっ、お前が一時的狂気に陥ってる!落ち着け!ボクを解放してどうする!?ボクの夢は地球支配なのだから、解放したらまた大戦争始まるぞ!大体、ボクに何が出来る!!」

 

「《ぁぁっ、そういう難しいのもう訳分かんないぃぃぃっ!!》」

 

 

 

「『で、ドーンって訳。あ、ボクに会いたいなら明日の馬の前の牛にスカイツリー入口前に集合で!狂っても知らないけどね!』」

 

「私の話が全て霞むのだけど。……皆さん!?

ハスター信者vsクトゥルフ信者はここではやめなさい!呪詛の応酬で初見さんが死ぬのよ!」

 

 

 

……何かとてつもないスケールの話が聞こえている気がする。聞かせている相手は人間なのか?

まぁ、話からしてアザトースとかいうモンスターが居るのかもしれない。神選者の情報網はよく分からないからな。

 

 

 

 

 

さて、大分発声練習の成果が出てきた。

 

「私は、アトラル・カ。狂竜ウイルスによって強化され、笛によって力を得た小さい大型モンスター。今まで、私を最終目的にした敵は居なかった。しかし私を凌駕する力を持つ場合。私を愛でる目的の場合。その様な奴は付け込む隙が恐らく生じにくいのだろう。」

 

ふむ。所々声量や、イントネーションがおかしいが奴と同じぐらいの速度にはなった。

これならば文句が出るはずがない。……潔い人間ならば、だが。

 

 

 

息を吸って、吐く。目を開けて奴の方を見る。

 

 

「分かったわ、今から向かうわ。」

 

 

その言葉を呟いた瞬間、機械と共に奴は消えた。

 

 

 

 

まだ帰れないのか。

 

八つ当たりで机に腕を叩きつける。

 

 

 

 

その時、気づいた。

 

 

昨日とは腕の色が違う事に。

痣ではないのは明らかだ。

 

そして──

 

 

腕の『長さ』が違う事に

 





ニャルラトホテプ

皆から
『にゃんにゃん』『陰の主人公』『ホイップクリーム』
と呼ばれている。

少し前まで人間を様々な状況下に置いて、それに対する反応を数百通りずつ検証していたが、別世界の神や神格レベルとの外交官的立ち位置になったせいで忙しい。楽しんでいる面もあるが。
消化器を常に持ち歩いている。

好きな事象・存在 『足掻いている人間』
嫌いな事象・存在 『拘束、洗脳、奴』
気になっている事 『最近猟犬がとある龍と対話してること』
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