閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
世界は定期的に歪みました
それにより何かが産まれたり 何かが発生したりしました
人はその危険な現象を神という概念で考えました
「神様、二次元の世界に入りたいです」
それは非現実的
でも一度空いた穴は通りやすいのです
そして何かの範疇を越えた現象は何がどこまで起こるのか分からないのでした
……大分酔っている事に慣れた。
酔わなくなる、のではなく酔っているが動ける、という事だ。
窓から外を覗く。
ハンターとライダーとラヴィエンテは変わらない。
が、神選者は疲れた、もしくは手応えが無くて飽きたのか、ほとんど目立った行動は見られなくなった。
相変わらず船から放たれる砲弾の数は多いが……
ん、船の揺れと共に靴が転がってきた。
少し気になり、人間の姿になって靴を履く。
なんとなく足を滑らせる。
やはり靴はスルスルとすべ――ガツン!
しまった、謎の機械を蹴ってしまった。
だが、それはこの摩擦が無くなる靴のせいで私は悪くない。
脱いで元の位置に放るのと同時に階段から音が聞こえた。
「昼ごはん、昼ごはん〜」
そんなイチビッツの乗り気ではない声が聞こえた。
昼食はイチビッツが作るのか。
アトラルになり、バレないように天井の暗い所に隠れ待つ。
「ベーコンエッグ〜……」
私としては逐一声に出してくれてありがたい。
確かその料理は肉と卵の料理だったはずだ。
「はぁぁ……怖いなぁ、早く離れたいなぁ。ラヴィエンテの近くで良くノートがかける……」
カチッ、ボッ!
イチビッツがダイヤルを回したら火がついた。
「ふんふふーん……えっと肉はー?うん、よしよし……あー胡椒買わなきゃ……ってこれ七味唐辛子やないかーい……」
……いや、一人でノリツッコミしながら料理してる時点でお前も大分図太いと思う。
いい匂いが部屋を包む前に抜け出す。
しかし、本当にやる事が無い。
確かにラヴィエンテは見ていて飽きないが、周りの神選者のせいで目に悪く、長時間の傍観は精神的にくるものがある……
いや、神選者は収まってるいるのだから今は関係ないな。
イチビッツを警戒して、空き部屋……ではなく寝てるボルボロスが居る部屋に移動する。そして人間になる。
小窓を開け、ラヴィエンテやハンター、周りの壊滅した森を双眼鏡越しに見渡す。
守りたいという生態系は既に崩れたから、放っておいてもいいのでは?
とも思ったが、人間は逃げる事を嫌う上に恐らく村が近くにあるだろうからそれは無いか。
……ラヴィエンテとの戦闘を観察する人間は何を重点的に見るのだろう。
個人個人の動きを細かく記載するのは記録としては役に立たない。
しかしラヴィエンテの場合、戦闘時間が長い故の攻撃方法の重複は避けられない。
ふと肩に何かが落ちた感触が走る。
蠢いていたのを手の甲に乗せて前方へ持ってくる。
………
バシィッン!!
思いっきり壁に叩きつける。
それは私の手の甲で黒いシミになる。
蜘蛛は死ね。
とりあえず食べ、気を取り直して双眼鏡を覗く。
あの船達は一体どれだけ砲弾を積んでいるのだろう。
グルルルル……
……ここが森なら私は死んでいた。
肉の焼ける匂い。
先程の微量の食事。
自覚と音の情報。
私の前を、黒光りする虫が通り過ぎる。つい動きを追ってしまい、壁に貼りついた所まで確認してしまう。
グルルルル……
既に口は消化液を出して口内を潤している。
体は元の姿の様に腕を構えている。
気がつくと私はジリジリとすり足で獲物に近づいていた。
理性で理解し、本能を助長する事により―――――
「――っ―――居るのですか!?」
はっ、と我に返る。
壁を破り、柱に巣食う白い虫を、広げた手に這わせようとしている状態でイチビッツに見つかってしまったのか。
いつの間にか中央の部屋に来ているとか、馬鹿か私は!?警戒しろ!
……どうしよう。気絶させるか?
手を離し、イチビッツに背を向けて食べながら打開策を模索する。
……どうする?
「答えて下さいよ!」
「……少し、この船が気になっただけ。馬鹿みたいに警戒心が薄くて笑うしかないな。」
女性らしく……それとも女子らしく!?
とりあえずまずは相手の質問を浅くしないと。
イチビッツは船に乗られて怒り狂っているはずだ。
マネルガーの備品を触られていると普通は思考するはずだから尚更だ。
さぁ、本当にどうしよう。
振り向きながら口を開く。
相手の質問を操作しなければ。
「色々と見せてもらったけどな。」
「貴女は何故ここに!?」
ん、こちらの言う事は無視するタイプか。
……待てよ。確か私は一度姿を見られている。
だが、この反応ならやはり私=
「何故……それは雪山を歩いていたら、面白そうな船があったからだ。」
「やっぱり一度……!何が目的ですか!?」
「教える必要は無いな。」
「い、色々あるんだから、一つぐらい一緒に調べましょうよ!」
「……は?」
意味が分からない。
それとも、その発言への対応で性格を見ようとしているのか?
「ほ、ほら!この、そ、装置はモンスターを強く操作する試みで――」
「料理は大丈夫なのか?」
「あ、え、そうですね!はい、そうです!」
勝手に喋り出したのを止め、注意を促す。
イチビッツは駆け足でキッチンに走っていった。
私を監視するつもりは無いのか……何故?
まぁ、都合の良い状況になった。
船から逃げるにはどうしたらいい?
夜なら『落下→元の姿→糸で戻る』が可能だ。今は昼だが……
「あ、このスマホの反応は……みんなを避難させなくちゃ!ゲート!」
一方その頃。
グォングォンと機械音を鳴らしながらソレはエネルギーを溜めていた。
勿論宇宙は真空の為、外部に音は漏れない。
『十二段構造完全衛星軌道第二レーザー異次元砲搭載最終決戦船』
という名前のこの船は、異世界の人工衛星の様な形ではなく、まるでコマの様な形をしている。
ちなみに元の名前が長すぎるため、『衛星軌道第二異砲搭載船』や『異砲船』、神選者からは『紛争』と呼ばれていたりする。
段々と射出コアの周りに丸い虹が発生する。
その時、スコープを覗いていた神選者が気づく。
「あ、マネルガーの船を見つけた。副砲を撃っとくわ。」
「い、一緒に食べます!?」
よし、こうしよう。
イチビッツは混乱状態だから、なんとか説得して夜まで匿ってもらうでいい――――
グシャァァッ
私は気づいたら宙を落ちていた。
理解する前に地面に叩きつけられ、その上に瓦礫が降ってくる。
……とりあえず余りどかさないで瓦礫から這い出す。アトラルの姿に戻るのは自殺行為だろう。人間の姿のまま周囲を見る。
船の木の部分は燃えていた。しかも場所によっては消失していた。
撃龍槍を確かめる。
中央の一番愛用している槍は無傷、周りを囲む槍は赤熱化して溶けかけていた。
笛が無事なのは有難いが、一番理解出来ない……
恐らくマネルガー達は死んだな。まぁ情報収集があまり出来なかったのだから、死んでもどうでもいいか。
さて。
見えなくても分かる。
突然の崩壊、消失。なのにその瓦礫から普通に出てきた人間は異常だろう。
恐らく私は人間に確保される。その際はどう説明したらいいのだろうか。
空を見上げる。白い光が見えた。
……見えたってなん―――
落ちてきた光はラヴィエンテの体の大半を飲み込む。
ラヴィエンテは苦痛に叫び、のたうちまわる。
光は十数秒間続き、少しずつ範囲を狭めながら急激に弱まっていく。
私は急いで槍を抜いて引きずり、笛を担いで離れる。
明らかに少女が出来ることではないが武器を失う訳にはいかない。
光が収まるとラヴィエンテは更に暴れ回る。
そしてラヴィエンテは、焼け溶けた尻尾を残し、叫びながらマグマの中へ潜っていった。
……え、あの光、ハンター達を巻き込まなかったか!?
いや、ラヴィエンテに強烈な一撃を叩き込む為の囮ならば役目を果たしただろう。
それより半身を無くしたラヴィエンテは一体どうするのだろうか……
アトラルと バルのー
『なんて奴だ……シュレイド城ー!』
本当に色々突っ込みたいが、今回はこれ。
『
どうやら元は何かの映像に映る機械らしい。光線で地上を攻撃する。
空気ー貫通ー莫大ー火力ー
良く分からないが、恒星の光を真空中で集め発射するらしい。
そのレーザー?の威力は高く、副砲で木が散り散りになり、主砲は広範囲かつかなり地下まで影響する。
チャージのー日数ー三日ー
救いとしてはいまバルファルクが行ったように気軽に使える回数は一回という事だ。え、言ってない?
だが、非常時の為にもう一発を残しておくのは当然。
というより元々これはこの世界の……白統虫クイーンランゴスタの様な立ち位置のモンスターを狩る機械だ。
まぁー突っ込めばー壊れるー
じゃあ早く突っ込めよ。