閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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「HIT ME WITH THE HARDCORE!」
「まーた歌ってる……」
「デェン テケテケテッテッテッテン⤵テケテケテッテッテッテェ⤴︎ドゥーイテケテッテッテッテン→ 」
「せめて歌詞がある所歌えよ!そこは鼻歌であって声で歌う所じゃねぇよ!」
「他人の趣味に口出さないでくれるかしら!?」
「だったら俺に迷惑かけない所行けよ!四六時中カシャカシャ鍵盤叩く音が五月蝿いんだよ!それは我慢するからさぁ!」
「……意外と優しいのね。」
「気持ちわる。」
「あ゛ぁ゛!?」



―アトラル・カは二度死ぬ―

ドゴォン!!

 

とても大きく揺れ、天井を歩いていた私は落下しゴアの翼で着地する。

 

天廊の45階にて再び揺れを感じた途端、けたたましく警報が鳴り響いた。

すかさず各階の様子を見る。

 

32階の壁に穴が開いていることを確認。

そしてそこには炎の渦を纏ったディスフィロアが歩いていく所が映っていた。

カメラを切り替え、行き先を追って確かめる。

 

「……ルーツ?」

 

突如ディスフィロアはカメラの方を向いた。

訝しむ様に顔を向け、目を凝らしている。

 

「……の設置か。」

 

そのまま立ち上がり触ろうとしてきた。

故障の可能性を考え、私にはどうしようもないが焦る。

 

その時、ディスフィロアの後方で青白い光が走り、見た事も無い龍とゼスクリオが現れた。

 

「ピェェェエ!」

「アリガトウ、ゼノ。ダレカトオモエバ……ナルホド。」

 

ディスフィロアとゼスクリオは強いのだから名もわからぬもう一匹も強いのだろう。

それにしても、目が複数ある様に見えるゼノと呼ばれたこの龍は何だろうか。

 

「我の保持した熱を移行出来るか?」

「チョットホウシュツシテ……アッツ!」

「キュルゥゥ!?」

 

飛び跳ねたゼスクリオにゼノは反応した様だ。

驚いて興奮しているゼノをゼスクリオは宥めるように舐める。

 

「ダイジョウブダイジョウブ。」

「今のをかなり長い間放出する。限界がきたら伝えろ。」

「ハイ。ゼノハニゲテ。」

 

ゼノは首を竦め、周りを見てから光を纏い始める。

青白い光は強烈でカメラ越しに私の周囲をも青くする。

 

キュウンと音が鳴っている事に気づき、異常に気づいて振り向く。

 

目の前に青白い光が集まってきていた。

恐らく先程のゼノという龍だろう、先程の映像では無害そうに見えたが一応戦闘態勢をとる。

 

光は塊となり、巨大な鉱石の様になってからヒビが入って割れる。

 

「キュィァァァー!」

 

そして青白い粉を振りまきながらゼノという龍が現れ――

 

 

ジュゥッ!

 

 

くっ!?

私の体が、痛みも肉が晒される感覚も無く音を立てて溶け始める。

そして何故かゴアの翼が勝手に出てきてウイルスや肉が散っていく。

何かはよく分からないが、とりあえず素早くあの龍から離れ壁を挟んで逃げる。

ウイルスを撒いて探知してみるが消えてしまい、位置が分からない。

 

「クォォォン?」

 

とりあえず壁越しには逃げたが、どう考えても興味のままに私を探しているとしか思えない。

保持している力と頭脳が追いついていない。一体なんなんだあいつは?

 

「ギィ、ィ、ィ……ッ!!」

 

っ!?

とにかく死を感じて避ける。

 

撃龍槍を投げ突いても多少ヒビが入るだけというえげつない強度を誇る壁。

その壁をまるで当然の様にレーザーが突き破って私を狙ってくる。

 

焼け付き、痛む翼はそのままに穴に近い天井の隅に退避する。

 

「アォオォォ……」

 

開いた穴からゼノは入ってくる。

再び灼ける様な痛みに耐え、穴をくぐる。

 

 

 

いや、奴は私を見ている。

 

 

 

左後脚が崩れ、中の肉ごとビシャリと落ちる。

そして翼脚の溶ける速度が早くなる。

 

 

 

……まぁ古龍を舐めていた私も悪いか―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――っ!

 

 

目が覚める。

そこは……いつか見た部屋が少し大きくなった所だった。

 

冬の家具が並んでおり、私はコタツから半身を出した状態で座布団の上に頭を乗せていた。

 

 

起き上がる。

 

 

反対側ではただひたすらに、作業的に人が殺されていく映像を見ている少女が居た。

 

 

「ゲホッ、ゲホッ……」

「あ、起きたのね?大丈夫?」

「喉が痛い………いや、乾いた……」

 

何故か喉に痛みが張り付いていた。

それが珍しい喉の乾きだと気づくのには時間がかかった。

 

「オッケーオッケー。」

 

何かに頭を撫でられる感覚が走る。

すると体全体が楽になった。

もう一度咳をして周りを見渡す。

勿論何かが変わっている事は無い。

 

『きぃぁぁぁぁ!』

「……っふふ。」

 

ミラルーツはシュレッダーにかけられる少女を見て笑っている。

……まぁみかんが置いてあるのだから食べるか。

 

 

12人目が死んだ所で私の方に向き直る。

 

 

「体に不調は無いかしら?」

「……あぁ。また私は死んだのか?」

「ごめんなさいね、まだ彼女は力を扱えてないから……頂きます〜」

 

ミラルーツもみかんに手を伸ばし、皮をむく。

 

「さて、さっさと帰るの?」

「……?」

「出来ればずっとここに居て欲しいなぁって思ってるの。それで、実は――」

 

今回は、前回の様な強制では無さそうだ。

一体どういう風の―――

 

 

コンコン

 

 

……全く動かすことの出来なかった扉からノック音が鳴る。

ミラルーツを見る。

 

「うぇぇ……そっちの方が近いでしょ?寒いからお願いするわー。」

 

いや、コタツ以外は全く気温が分からないのだが。あえて言うのなら『適正』としか表現できない。

とはいえ私に主導権は無いのだから従うしかないのだろう。

 

コタツから出てドアノブに手をかけ、回して引く。

なんなく動いた。

ガチャリ、キィィとまるで使い古された扉の様な音を立てて普通に開く。

 

 

 

「どうも。ミラルーツさんは居られますか?」

 

 

そして、中々の美貌を持った女性が何処までも闇が広がる扉の向こうに立っていた。

 

「あぁ、居るぞ。どうぞ中へ。」

「お邪魔します。」

「あっ、にゃんにゃんー!」

 

……にゃんにゃん?

 

「………」

 

不機嫌な顔をした――事に私が気づいた、という事に気づくと顔の色が消える。

例えるなら何処までも続く闇の深淵、という顔になった。

あれ、どこかで会った気が……まぁいい。

 

「……そうですね、私の事はナイアルラトホテップとでもお呼び下さい。」

「……分かった。」

 

何処からどうやって発声しているか分からないが、分かるわけがないか。

それに何処か疲れた雰囲気が漏れている、詮索しない方が良さそうだ。

 

「こたつ入るぅ〜?」

「丁重にお断りします。今回はこの世界に侵略行為を行う神格、またはそれに属する力を持つ存在、もとい原理や法則の襲来のスケジュールをお伝えに参りました。」

「あれ、いつもみたいにヨグじゃないのね?」

「こちらの世界に助力した事により、思い上がった偉大な神様達による奇襲の大規模戦闘が発生する事に対しての対処に追われています。」

「ふぁーwww助けようか?」

「……いあいあ――」

 

全く意味の分からない会話を聞いていたら突然寒気が背中を撫でる。

私が驚きコタツに膝をぶつけるとナイアルラトは私の存在を再確認した様だ。

 

「あぁ、これは失礼致しました。」

 

……若干発音に生気?が戻っている。

ちっ、故意だったか。

 

「おーいヨグたーん!……うっわマジか、本当に来ないわ。そんじゃー!」

 

突然ミラルーツは立ち上がり、扉を蹴り壊してくぐって行った。

 

「それでは私も失礼します。」

「あぁ、分かった。」

 

ナイアルラトも立ち上がり、直り始めた扉をくぐって行った。

 

……流石に私は穴を通る勇気はない。

 

 

 

先程から聞こえるのは人間の断末魔だけであり、特に面白そうな物は見当たらない。

 

ゴトン

 

……ん?ピアノか……弾いてみるか。

だがさっきこのピアノはあったか?

……いや、あったな。注意を向けていなかっただけだな。

 

ピアノの蓋を開けると綺麗に磨かれている鍵盤と、譜面が張り付くように置いてある。

……?このピアノ直方体だったのでは?こんなグランドピアノだっただろうか……いや、部屋は広いしどうやったら直方体とグランドピアノを見間違えるんだ。

 

譜面の題名は……

 

『首吊りから始まる例外の恋歌』

 

……は?

題名が不穏な為、次の譜面までめくる。

 

『空耳メドレー』

 

……さっと目を通し、歌詞が巫山戯ていることを確認してからめくる。

 

『最新G2Rメドレー』

 

……エレキ、ギター?スクラッチ?人?……このピアノは二段だし、謎のスイッチもあるから出来るのだろうか。やめとこう。

結局コタツに戻る。

 

 

ザッ

 

 

ルーツとナイアルラトが出ていってから一切コタツから出ていないが……

殺された人間の数は30後半だ。いや私は何を見ているのだろう。

 

この部屋には武器や楽器、掃除用具は置いていない。

私が楽しめる事はなにも無い……

 

「やっほー!見えてるかしらー?」

 

集団絞殺の映像が切り替わり、龍としてのミラルーツが映る。

そして後方の触手の集合体なのか丸い物の集合体なのかは分からないその物に一瞬吐き気を催すが間もなく慣れた。

 

「アトラルー、まだ体の調整に時間がかかるから、今からやるLive中継でも見てて欲しいわー!自己紹介をどうぞ〜。」

「あ、はい。」

 

私の体をまた弄ったのか……

そしてグニャリと黄色い玉が画面一杯に映る。

 

「始めまして、ミラルーツ……アンセス?さんの友達のヨグ=ソトースです。普段はほぼ何でも出来る神様として門の向こうに居ます。もし会うことがありましたら願いや相談に乗ります。」

「万能なのに何故他人の願いを叶えるのか、コレガワカラナイ」

「実は細く繋がりを提示する事は認知や存在としてかなり重要なのです……あの、画面の向こうに居る方は?」

「アトラルちゃんだよ!」

「あー……あっ、あーなるほどー。」

 

そちらが納得してもこちらには全く事情が分からないのだが。

ミラルーツは何を考えているんだ……?というかなんなのだ……?

 

 

突如私の横で炎が燃え上がる。

 

「はぁ、運が悪かったな。しっかし、恐竜ウイルスを克服するのに運使い果たしたんじゃねぇか?」

 

いつか私を助けてくれたミラバルカンが炎の中から何かを持って出てきた。

何かを机に置き、広げる。

 

「とはいえあいつがやった事は本当で、お前はしばらくここを出れない。」

「そうか。分かった。」

「気をつけろよー?たまたま時期が良かっただけでタイミング悪かったら脳改造で依存させてくるだろうからな。」

「……そうか、忠告ありがとう。」

 

今度は何をされたのか……とりあえず前回の狂ったあの少女は怖かった。

ミラバルカンは机一杯に板を広げ、小物入れをパカリと開ける。

 

「ほらよっ。」

 

投げ渡された物を見る。

戦車に少し似た形状……車か、それにピンクに染まった棒が刺さっている。

いつの間にか置かれている水色の台座に様々な種類の神が積まれていく。そして赤色のオーラを纏った小さい紙が空中で積み上がった。

ミラバルカンは板のダイヤルを回し調子を見ている。

 

「さ、時間を潰す為に人生ゲームをやろうじゃないか。」

「人生ゲーム……?」

 

どういう遊びだろうか……見た感じ双六の様だがサイコロが無い。

私に思考が捻り千切られる様な感覚を覚えさせるテレビの音を小さくする。

 

「じゃあ、ルール説明をする。……その前に一緒にやってくれそうな奴にコンタクトをとっておく。」

「あ、あぁ、そうか。」

 

……私は何故こういう実力が余りにも違う奴らと関わらなくちゃいけないのかが分からない。まぁ快適に生存しているならまだマシか。

 

「このゲームの勝利条件だが、全員ゴール時の総資産で決まり――」




「―――皆さーん、私がやってきました!敵は一人じゃない!私がいる!」

音割れした様に所々ブツブツと切れた龍の声が聞こえている。

「何を言ってるのですかあの龍は……」
「さっさと殺そう!」
「あんな龍が我々に立ち向かう様に仕向けるとか、あいつ全知全能か疑わしいなぁwwww」
「はい、吸収スキル展開する。完封ですわぁ。」

なんなく敵側へ潜入したが、やはり愚かな者どもだ。
一分の停止もなく、余りにも傲慢。
狭い思考であり、不安を全く持たない自由奔放な豚。
屠畜場にわざわざやってきた無能かつ未来が不毛な連中は選定する必要も無いか。
己を信じ、己を愛し、己を崇拝する者達の世界を従えようとする計画は――

「というかマジかー、あの動画は詐欺……つまり名誉毀損や侮辱罪で訴える事が出来る……?」

全く関係無い事を言い続ける狂気の龍の元に粛清されていった。
きっとあの龍は殺せるか殺せないかでしか判断していないのだろう。

そして最初だからこの様に手加減しているのだろう。
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