閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
問、何故人生ゲームをするのか?
答、たまたまですよ。それに他人を家に連れてきて放置する方がおかしいです。常識的な行為ですからご安心を。
「どもっす、オオナズチっす!」
「サッキハゴメンナサイ……ゼスクリオデス。」
「いや、死んだ方が悪いから謝らなくていい。」
私とミラバルカンは人間の姿、後の二匹は普通の姿だ。
……先程まで狭かった部屋も、今はとても大きくなっている。
ゼスクリオの謝罪を受けたが、とりあえず気にしていないと伝える。
「そんじゃあ最後の準備だ。」
銀行証券管理者の役割を持つミラバルカンを最初とし、私、オオナズチ、ゼスクリオと順番がまわる。
「まず、金を配る。そして自動車保険を取らないか分割か一括か選べ。分割は給料日に差し引かれる。それとは別に特殊な職につかない限り家を買わなければアパート暮らしで給料から差し引かれる。固定資産にはならない。あとは……おいおい説明するとしよう。」
「エ、ソンナフクザツダッタッケ。モチロンイラナイ。」
「処理めんどいし一括でうっす!」
「私は分割でお願いする。」
「俺も分割だ。それでは始めるとしよう。」
ミラバルカンの力なのだろう、赤色のオーラを纏った紙束が浮いてきた。
ミラバルカンがダイヤル……ではなくルーレットを回す。
赤い車をキャリア側に6進めた。
「ふん……IT企業か。景気動向に注意を……」
「次は私だ。」
ルーレットを回す。
私は強い立ち回りが分からない。
なら出来る事はただ一つ。最初は天に、後は周りを見て吸収し、善戦を行う事を目標にするしかない。
「8だ。」
「ほう……もう一度ルーレットを回せアトラル。」
「そう指令されているな……3、滑り込んだ。」
「おめでとう、キャリア持ち警察官だ。」
「どういう職なんだか……」
「なんだこのイベントは……っ!?」
「さぁ運を天に任せるのじゃ!」
何故『結婚』しなければならないのか。しかも回避不可のイベントだ。
社会のシステム上……あぁ、なるほど。子孫を作る際に資金援助をする仕組みか。
だが、ゲームの特性上……いや、金銭は相手も稼ぐのか?まぁいい。
「早く回せ。」
「あぁ、すまない。」
ルーレットに手をかける。
1〜3は裕福な奴と、4〜7は普通の奴と、8〜10は出来ちゃった婚だ。
及第点を下回らない様に願おう。
くるりと捻って回す。
10。
「……くっ。」
「アラー、マァ、シュウニュウオオイシ、マダダイジョウブジャナイカナ。」
「やーい、尻軽警さぁぁぁっ!?」
ゴアの翼でオオナズチの頭を掴む。
ひとしきり振り回す。
その間にカタカタと私のポイントが下がる。
「……ふん、名誉ポイントが下がったか。」
「それにマスコミにも嗅ぎつけられないようにしないといけないのか。めちゃくちゃハードじゃねぇか。」
「ダイガクヒハンノザイリョウニモナリマスシネ。」
よく分からないが、悪い方向に向かっていそうだ……
「くっ……!」
「ふっ。」
「うーん……」
「ハイハイ、オカネガキタキタ。」
ゲームも終盤、安定と排除を繰り返したゼスクリオが一着だった。
各地の土地の所有と崩れないクリエイターとしての実力を世に知らしめ、講演会や大家としての収入、アドバイザーとしての収入で到着後もまだ規模は大きくなっていた。
美人の秘訣は感情の相反を保つ事、などカッコつけて言ったら広まった物もあり。
そして二番目に着きそうなのはミラバルカン。
職は程々に、得意の株価予測で着実に稼ぎ、大株主として社会に影響を与えていたが、仮想通貨の価値が突如暴落。
続いてITの株価も暴落。不況になった所で社長が逃げる様に退陣しその隙に何者かによるハッキング行為により開発中の技術の消失。
それでも会社を持ち上げるという人生ゲーム慣れを見せ付けたが、名誉が高くても総資産としては三位だ。
後を追うのは私だ。
私は余った金を純金に変え、その都度金庫に入れていた。不況による暴動が多発、他の人間は殉職したり骨折したりと辞めていった中で私は生き残り、純金に変えるため銀行から金を引き出した所を殴られたりしたが裁判で勝利し臨時収入となった。様々な勝利による功績により異例の女性にして副総監。
フェミニストは暴走し、マスキュリストは私に対し侵入等の犯罪行為をする。私自身がグレーな犯罪行為に加担しようと誰も立場上告げることは出来ない。
よって私の知名度は長い間広がった事により、歳をとろうと金は稼げた。塞翁が馬、私の順位は2位。
四番目はオオナズチ。
なんと言うか……幸せな人生を送っていた。やりたい事をやり、しかし堅実に居場所を固める。
あちらは総資産を集めるより人生ゲームのイベントを楽しんでいた……まぁ、それもひとつの楽しみ方か。とはいえ私にとってはオオナズチが大量に買った『宝くじ』という不確定要素が怖い所か。
―――……ミラバルカンが箱に物を片付ける。
箱の注意書きが何気なく目に映る。
『※仮装空間と共有知覚により悦に値する感覚を得る仕様です。』
『※細かい器物は共有認知と幻影、虚妄接感による無意識外からのアプローチによる為、精神等級12以上、又は18以下の場合は幻影のみとなります。』
……ふん、なるほど。
先程まで違和感は無かったが……考えてみれば分かりやすい。
あれはどこから湧き出ていたんだ、とな。
ミラ一族は不思議な物が沢山持ってるな……うん?ピアノを弾いた記憶とこの部屋……?あぁ、なるほどな。さてさて……
「さて、どうするんだ?」
「ティーアールピージーヲミラルーツトヤッタヨ。」
「まぁまぁ、頭のクールダウンを含せて世間話でもしましょうや!」
「
ミラバルカンは足から炎に包まれて消えた。
しばらく静寂が流れる。
「実は昨日、空を飛んでたら戦闘機と正面衝突してしまいましてね〜、めっちゃ痛かったっす。」
オオナズチが話し出す。
耳を傾けるか……
「そうか。」
「そうなんですよ〜!それでね、ある事に気づきましてね……なんと透明になるだけであら不思議!簡単に狩れる狩れる!」
「ン?ドウイウコト?」
「持ち帰って調べてみるとあら不思議!光を受け流すだけで探知されない事が分きゃりやした!」
「そうか……私には関係ないか。」
「そしたらもう一つ。」
オオナズチは私を見る。
「なんだ?」
「そろそろ天廊に大規模な破壊工作が始まると聞きました!」
「……ほう?」
「ですが貴方なら分かるでしょう?そう易々と壊れるか……それに加え、天廊は破壊すればする程一時的に修復能力や硬さがどんどん上がっていきますぞ〜。」
「……そうだったのか。」
「昔はあの方の住処でしたし。」
「ダカラゼノガイテモダイジョウブナノ。」
「私は悲惨な結末だったがな。」
そうか、あんな簡単にレーザーが放たれていたのだからそれに対応出来なかったら今頃壊れているか。
それにしてもやはり天廊って何時、そして誰が作ったんだろうか。
みかんを手に取る。
シュバッ!
「頂き〜!」
……オオナズチが舌でみかんをとり、噛んで汁を飛ばす。
わざわざ私の手から取るか……
「やめろ。」
そう言って再びみかんを手に取る。
ゼスクリオがオオナズチを見るが、オオナズチは目を動かしてゼスクリオを見た後再び私を狙う。
「……なんだ、嫌がらせか?」
「いえいえ、滅相もない。」
「そうか。次はないぞ。」
みかんを手に取る。
皮を剥く。視界の端で口が開いたのを確認する。
シュバッ!
伸びてきた舌を叩き飛ばしみかんを一つだけ千切り、顔に投げる。
「ぐわぁぁぁぁっ!目がぁぁぁぁぁ!!」
大きく怯んだ所でコタツを抜け出し飛びかかる。
頭突きを回避し、オオナズチの顔面を蹴りあげた。
「ちくしょう、コタツに前足入れたまま縛りじゃ絶対勝てねぇ!」
「それだったらお前の攻撃方法は口からだけじゃないか……おぉ。」
「んぁ?まぁいいと思います。」
殴るのをやめ、偶然降り立ったオオナズチの背中はとてもひんやりとしていた。
翼の間に横になる。
「で、ゼノって龍は何なんだ?」
そして一番気になっていた質問を投げかける。
私を溶かし、ゴアの翼を消失させたアレは古龍の中でも異端だとなんとなく思った。
「ゼノハ……ゼノハツヨイリュウダヨ。」
「だからどういう――」
「ゼノ・ジーヴァ、私達がゼノと呼んでいるあの龍は周囲の生命を奪って、そのエネルギーで成長する龍っすよ。」
「ふむ……」
……今すぐ殺した方が良くないか?だがゼスクリオやディスフィロアは溶けていないし古龍ならどうにか出来るのだろうか。
そうか、私の体は溶けたがゴアの翼は散った。つまり古龍の元となるウイルスのエネルギーを盗ったのか。つまり生き残る力を持つ事が出来れば崩れないのか。
「対策は……とっても簡単。盗られる古龍エネルギーが微々たる物となる力を得ましょう。」
「簡単に言う……」
「まぁ無理っすね。普通のシャガルマガラも吸われて死にましたし。」
つまり対面は無理と……どうする?一度目をつけてきた以上、子供的な思考ならばまたやってくるかもしれない。
……どうしようも無いか。
「アァ、デモセイチョウオワッタ、ダカライッキニチノウガツクヨ。」
「奇妙な成長の仕方だな。」
「ルーツガソウイッテタシ。」
「本当に何でも知ってますよね〜!」
音を小さくしたままのテレビにチラリと目をやる。
球体の何かがノイズの後に爆発する、ただそれを繰り返す映像だった。
それより本当にゼノの対応をどうするか考えなくては……
87
雷と共に龍は現れる。
そして雷を胸から口に送り、大きく咆哮する。
「4000万。」
惑星は壊れた。よって根絶した。
88
雷と共に龍は現れる。
そして雷を胸から口に送り、大きく咆哮する。
「680万。」
惑星は壊れた。よって根絶した。
89
雷と共に龍は現れる。
事前に準備されていた射出錨が飛んでくる。
叡智の込められた一撃は龍の腹を突き破り、背中を破り出た。
そして引き落とそうとする。
龍の腹と背中から黒い手がわんさか出てくる。
その手が射出錨の鎖を千切り、龍は心臓が潰された事も気にせず雷を口に溜める。
「150億。」
惑星は壊れた。宇宙船に乗ったクローンは居たが龍は気にしなかった。
90
雷と共に龍は現れる。
惑星を守る様に沢山の存在が並ぶ。
人、それを守護神と呼ぶ。
「……糞、もしくは雑魚が並んで私に楯突こうと思ってんのか。」
龍は首を自ら雷で断ち、断面から大量の手を放つ。
握り、千切り、遊び、殺し、祈り、書き、描き、折り、増え、潰す。
決壊したダムの様な勢いで放出される手が一帯を覆うのに時間はかからなかった。
断面から伸びた長い手が首を掴み、引き戻す。
「870柱、6400万。少しは抵抗すれば良かったのに……いや、蟻じゃ人は持ち上げられないな。」
91
雷から龍が現れた途端、女神が罵声を放つ。
「なんで、どうして!?私達が悪い事はしてない!そっちの世界に行った神と私達、そして人間達を一緒にしないで!」
龍は目を見開く。
そして衝撃波と化した叫び声をあげる。
「あぁ、たった10万年しか生きてない糞みたいな価値観の赤ん坊に言われたくないわねぇ!?結局は自分の世界を大事に、他の世界は利用して、の精神の――――はぁ、自分語り飽きたわ〜。終われ。」
「そん……化け物ぉっ!!」
「そりゃ私は【
よって惑星はレーザーにより消し飛んだ。
「84万柱、15億。」