閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
ある主人公は言った。
『私は機械。だけど、自分で考える事を繰り返すうちに意識を持った。』
ある黒き龍は思った。
『意志を消され、壊されようともまた、俺は思慮するのだろう。』
そしてある存在は断言する。
『意識の形は様々だ、全部を予測するのは難しい。完全再現も困難だろう。』
残り二つだ。
防衛に重きを置いた機器を壊すとその都度警報がなる……のだが、全て奇妙な音になり消えてしまう。
ミラルーツは一体、色々と何処まで出来るのだろうか……
「気をつけて。ここは時限構築システム。今までとは違うよ〜!」
ミラルーツの警告を受けながら扉を開けて入る。
そこは大きく、水色でありサイバー的な闘技場だった。
「キ、ァァ?(なんだ?)」
「本当に破壊されたくなくて、それぞれが監視しあって、不可逆的なセキュリティを設けたの。だからぶっ壊さないと駄目なのよ。頑張ってちょ!」
それはまた厄介な……
私はそう思い、ミラルーツがとても高い天井に浮かび上がっていくのを見ていた。
「ウニャニアカッヴゥゥン!!」
「ッ!?」
まるで雨粒が頭に落ちて初めて天気が分かるように、その機械は現れた。
テラテラ光る鉄の蔦、ケラケラ笑う数多の大きな仮面。
まるで胎児の様な顔をしたソレらは私を凝視する。
壊せば大量のネセトの素材になるというこの機会、見過ごす訳にはいかない、シャガルの翼で飛び立つ。
「オガアザァァァァ!」
「オドウザァァァァ!」
その顔達は大きく口を開き、悲鳴にも似た咆哮をしてきた。
開かれた口から闇雲にレーザーを放ってくる。
一度高度を下げ、再び高度を上げる。
水銀を一列に並べ、一つの顔に集中狙いをする。
「イヤァッ!イヤァ、イヤイヤイヤァァァ!!」
全て黄色い障壁に弾かれた……
さて、どうすべきか。
「「ササナイデ、タタカナイデ、キラナイデェェ!!」」
蒸気を吹き出しながらレーザーが放たれる。
上昇しながら再び水銀を飛ばすと、今度は障壁が発生せず顔に刺さった。
苦痛を表してか建物がぐらぐらと揺れる。
そして何かが後ろから出てきた。
安全を確認してから振り向く。
「ウメ!ウメ!コロサナイデ!」
「アー、アー、ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
そこには演劇をする人間の様な機械がいた。
音楽が何処からか鳴り始める。
新たな機械は仮面の胎児が口から肉片をばら撒くと同時に、両手を上げながら爆音で機械音混じりの発声をした。
撃龍槍をシャガルの翼で持ち、落下する勢いで刺す。
ガツッ、という音と共に傷をつける事は出来たが刺すことは無理だった。
撃龍槍が逸れて青い地面を砕く。
「キル!キル!」
「aruーー」
撃龍槍を引き抜いていると胎児の顔がガチャガチャ動き、私の周囲に鋭利な何かが発生した。
歌う機械の放つ小さなミサイルをすれ違う様に躱し、飛んで刃を避ける。
「サス!サス!」
そして突如目の前に発生した槍の様な刃を紙一重で避ける。
さて――くっ。
ミサイルが私に着弾する。
信じられない追尾性だ……ウイルスで分かるのに警戒を怠っていた。
ビリッと意識にノイズが走る。
『時の観測――開始』
何も言わずに胎児の機械の目が七色に光り始めた。
胎児に糸を貼り付け、私を一気に引き寄せる。
障壁が発生し糸の感触が変わる。
だがまずは笛を障壁に叩きつける。
「コナイデ!ヤダ、ムシムシムシムシ、ワタシノカオニ!!」
弾かれた所に水銀で二つ鎚を作り、叩きつける。
「raraー…ッ!」
またミサイルの音が聞こえたが、ウイルスで感知出来ない事が分かった。
撃龍槍で障壁を殴り、再び水銀の鎚を振り下ろす。
「イヤァァァァァァ!!」
障壁が砕ける。
水銀を棘に変え、撃龍槍と共に刺し壊す。
「シにたくない、私は人間で山下とも――」
「キィィァァ!!」
そして笛で撃龍槍を打ち込み、顔面を砕く。
パッキリ割れた顔面に糸をつけ、遠くに投げる。
ミサイルの音が迫ってきた、笛で塞ぐ。
吹き飛ばされたが、障壁が発生せず板挟みにされる事は無いようだ。
「「「破滅を……」」」
っ!?
激しく視界が揺さぶられる。平衡感覚が欠如した私は地に落下した。
……体の節々が抉られたかのように感覚が戻らない。
だが、翼は動く。ウイルスも正常だ。
『タイムサーチ――スタート』
ぐっ!再び意識にノイズが走る。
シャガルの翼で立った私は再び倒れた。
「aーーraーー!!」
歌う機械からレーザーが放たれる。
水銀をなんとか操作し、レーザーを防ぐ。
「「「破滅を―――」」」
……くそっ。
私の意識はそれっきりだった。
アトラルは右に左にステップして歌う機械のミサイルを避ける。
そして撃龍槍を翼で掴み、胎児の機械に投げつけた。
障壁を放つ顔が壊された胎児の機械は防ぐ事は出来ない。
だが、数十個の顔がある以上、ほんの少しの遅延にしかならないのは明白だった。
「ァァァァァ!!」
アトラルらしくない叫び方をし、ウイルスをばら撒く。
その数十個の顔にウイルスが集中し、爆発する事を何度も繰り返す様になる。
「キル!キル!」
見えない刃を鎌で裂こうとしアトラルの片方の鎌が半分吹っ飛ぶ。
しかし流血を気にせず突っ込み、たった今、刃を作り攻撃してきた顔を翼で殴り壊す。
『クロノ・スコープ――作動』
並大抵の人間は意識が吹っ飛ぶ程の時への干渉が発生、しかしアトラルの体が跳ねただけで全く動きが止まらない。
「ァァァ!!」
シャガルの翼が一層輝く。
白金の光を放つその光は、胎児の顔面を覆う量のウイルスをばら撒いた。
胎児の顔は纏めて爆散。暗に計算されていた予測行動と後付け耐性をほぼ無意味な物と化させた。
歌う機械の抵抗を無視して地から引き剥がし、狂ったように……いや、もはや思慮のないモンスターの様に地に叩きつけ、投げてウイルスを爆破させる。
立ち上がろうと足を出した機械を駆け寄って掴みあげ、引きちぎる。
そして胴と頭を掴みガシガシと千切ろうとした。
しかし多少歪むだけで千切れそうにない。
ウイルスで探知し、撃龍槍を見つけ駆け寄り拾う。
立ち上がってエネルギー弾を放とうとした所を撃龍槍で殴り吹き飛ばす。
ゴロゴロ転がった歌う機械は爆発し、部品が飛び散った。
アトラルはしばらく壊れた機械を眺めた後に倒れた。
「お疲れさん!」
……意識を取り戻した私は、まず鎌が切れている激痛に呻いた。
ゆっくりと立ち上がると青色のコロシアムやミラルーツの幻影の気配も無かった。ただ私の武器と胎児の顔が一枚分だけ。
あとは……あの地面から生えた手にのっかっている黄色い玉を壊せばいいか。
「タスケ――」
抵抗は無いようだ、安心して撃龍槍で潰す。
「お見事!そんじゃぁねぇ〜」
ミラルーツは私の鎌や体の傷を治して消えていった。
……やはり怖いな。
ガンッ!!
「全補佐システム破壊終了だぁ〜!おめっとー!」
「……キイッ。」
この部屋は異常な重力により、私の体だけで撃龍槍数本の重さだった……疲れたと率直に思う。
「後は中央のメインシステムを解体してねー――」
幻影が消えると私の視界には扉の外に続く矢印が見える。
……ネセトで力任せにぶち壊そうにもきっとこちらが崩壊するだけなのだろう、まぁ、どちらにしろ過労だ……ウイルスのお陰で疲れは無いが、疲労感は溜まる一方だ。
「アルマロス!塞げ!」
「ふん!」
雷と炎を纏いながら見えないはずの精神汚染空間を避ける。
どの方向にもマッハ3を維持する者達の航空戦は熾烈な戦いを極めていた。
『ターゲット、ロックオン。』
戦闘機から誘導性のミサイルが四つ飛ぶ。
クイーンランゴスタは別機体の射撃を回避しながら更に加速、炎と爆破属性のレーザーでミサイルと基地を纏めて爆発させる。
「ふん!」
反撃として磁力を纏った氷と炎属性の球体を放つ。
しかし即座に考えられる限りの軌道を予測され、互いにカバーし安全に処理をされてしまう。
あるランゴスタの集団が叫ぶ。
「バチバババッ(射線から避けて!)」
クイーンが吹き飛ぶ様に横にずれると電磁砲が空の彼方まで突っ切っていった。
似たような機構の兵器が建物から幾つも出現し、それを守るように新たな機械が飛び立っていた。
しかしクイーンは別方向にレーザーを放つ。
「ボォォォォン!!」
黒い龍はクイーンランゴスタの挑発にのり、全速力でやってくる。
敵が空にしかいないけど、ランゴスタさん達が守ってくれるから安心だなぁ……
『幻視胎』
時の監視者。同時に管理者。
ただ、強化再現をしようとした為にこの機械自体の存在が不安定な物に。
よって人柱による意識の明白化にて解決を図る。
『ボーヴォワール』
BGMに合わせてエネルギーチャージ、攻撃してくる為、終盤になるほど苛烈になる。
幻視胎を壊されては困るので美への執着を無くして再現した所、期待通りの動きはするが期待以上の動きはしなかった。
拡張性も何故かほぼ無い為に量産もされなかった。
幻視胎がメイン、ボーヴォワールがサポート。