サラブレッドは高校生活を歩む   作:月瀬 星音

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2話

表れたのは、学校一の美少女。

 

同じクラスメートの神州心だ。

 

「神州さん?」

 

蓮が怪訝そうな顔をして聞く。

 

「そう」

 

「何も用ねーなら、部外者は帰ってくれないかなぁ?」

 

尚弘が不良らしくガンを飛ばしながら噛み付くように言う。

 

「尚弘、人に対して言う言葉じゃないでしょ」

 

蓮が珍しく尚弘に注意する。

 

その様は、言い方は温厚なものの雰囲気は対照的に少し殺気立つ。

 

尚弘は引き下がる。

 

「龍坂が、失礼なこと言ってごめんね。何か、僕達に用かな?」

 

「さっきの話し聞いてた」

 

心は口を開く。その言葉に蓮は大きく反応する。

 

「聞いてたの?」

 

「うん…。ねえ、もし良かったらだけど私手伝うよ」

 

その言葉には蓮は目を丸くした。

 

この女は正気かと。

 

この計画には女側にはメリットのかけらもない。

 

ただ、自分達の事件に人を巻き込むのと同じだ。

 

そんな、メリットしかないものになぜこの神州という女は自分から飛び込んで言ったのか。

 

蓮には神州さんの感情が知れないとそう思ったのだ。

 

「本当に言ってる?」

 

「手伝う気がなかったらそんなこと言わないよ」

 

心は少し微笑んでそう言った。

 

微笑んだ顔はとても綺麗だと蓮も尚弘もそう思った。

 

「分かった。何故、手伝おうと思ったの?」

 

「藤堂君の役に立ちたいじゃダメかな?」

 

その言葉を聞いて、意味深だなと尚弘は少し思う。

 

分からないけど、心が蓮に好意を持っている可能性は十分ある。

 

心は、モデルの様な体型とルックスで男子から圧倒的な人気を誇るクラスメート。もし仮に心が蓮にそういう感情があるとしたら暴動でも起きるんじゃないかと感じた。

 

「よく分からないけど、いいんだね」

 

「もちろん」

 

「分かった。一旦帰って後で落ち合おう」

 

「どこで?」

 

「駅前にしようか」

 

「何時?」

 

尚弘も聞く。

 

「じゃあ、今から1時間30後ね」

 

「分かった」

 

と心。

 

「あぁ」

 

と尚弘。

 

計画が実行されるべく3人は一旦解散した。

 

 

 

6時30分。

 

3人は駅に集まった。

 

「一回、カラオケボックスに入ろう。そこで詳細は話すから」

 

と蓮がいいカラオケボックスに向かう。

 

蓮は、3人で1時間半、籠ることにした。

 

「なあ、蓮。カラオケ行ったことあるんか?」

 

「一人でならね」

 

「藤堂君、一人カラオケするんだ」

 

心が呟く。

 

「でも、今日は歌わないよ。今は話し合いの時間だから」

 

「そうだね」

 

「で、俺たちは何をすれば良い?」

 

「後で二人には詳しく教える。その前に計画の詳細を話すね」

 

「まず、この計画は、ある事件の犯人への復讐計画なんだ」

 

「知ってる」

 

そう、心は呟いた。

 

「計画の概要を説明するね。神州さんは歩いて犯人の囮になってもらう」

 

蓮は淡々と計画の内容を喋り始めたのだ。

 

「後ろからはバレない程度に龍坂が着いて行くのと、予め小型のGPSの機械をつけておくから安心して。そして、僕が絶対守るから」

 

「内容は分かったけど…。その間藤堂君は何をしているの?」

 

心が口を開く。

 

「確かに…。何処いんだよ、蓮」

 

「少し、やることがあって」

 

「何だよ、やることって」

 

「少し、坂崎の家に用事があるだけさ」

 

この発言で尚弘は大体察しがついた。

 

この発言の意味と蓮の性格を考えるとただ恐ろしいことしか尚弘は思い浮かばなかった。

 

「まさか、お前…」

 

「どうかした、龍坂」

 

蓮はニコリと笑顔を貼り付けたような顔をして言った。

 

心もキョトンとしている。

 

あ、やばい。

 

蓮は、聞いて欲しくない時があると名字呼びする癖がある。これは聞いてはいけない時だ。尚弘はそう思った。

 

「何でもねーよ」

 

「そう…。これが計画の概要何だけど、二人とも分かった?」

 

「うーい」

と尚弘。

 

「分かってるよ、私は犯人の囮になれば良いってことだよね」

 

「そういうことだよ。あ、犯人の写真見せておかないとね」

 

蓮は、心に写真を渡す。

 

その瞬間、心は写真に目を見開いている。

 

その姿を見て、蓮は何かあると感じたのだ。

 

「ねえ、神州さん。写真の男知ってるの?」

 

「…いや、知らないよ」

 

「そう。なら良かった」

 

蓮は疑いながらもここは引き下がる。

 

「おっと、また忘れそうになった」

 

蓮は思い出したように少し大きめの声で呟く。

 

「二人とも。神州さんが囮になってもらう場所が赤で丸ついてるから。尚弘が分かってるはずなんだけど」

 

「一応、場所は大体…」

 

「しっかり連れて行ってね。そして、神州さん」

 

蓮は、真顔で心を見つめる。

 

その様子はまるで、告白でもするかのような。

 

そのくらい、二人は見つめあっていた。

 

「本当に、囮になることを後悔していない?」

 

尚弘は、少し告白かなと期待していた。

 

しかし、まんまと期待は外れたみたいだ。

 

「後悔してないよ。もし、私が怖い思いをしたら私を慰めてくれない?」

 

その時の心の微笑みは女神だった。

 

「分かった。僕に慰めることが出来るかどうか分からないけど善処するね」

 

蓮も笑顔だった。

 

その笑顔は、少年時代にタイムスリップしたかのようなそんな笑顔だったのだ。

 

完全に蓮に惚れてるじゃないか。

 

そう、心の中で呟いたのは尚弘だということは言うまでもない。


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