ただの高校生が能力を得たようで。   作:なりの

1 / 1
プロローグ

 自転車通学を続けて早2年。少しは足腰が鍛えられたような気がする。行きは下りなので数分で神原《かんばら》高校に着くが、帰りは30分以上もかかる。

 

 夏は下りで涼しいのだが、冬は手袋にマフラーをしないと凍え死にそうなぐらいの風が吹いてくる。

 

 今日、11月25日の前日に、教室に防寒具を忘れてしまい、手がかじかみ、首に氷が常にくっついているような通学中である。こんな日にかぎって向かい風が強い。

 

 なぜ、こうも悪いことは重なるのだろうか。

 全く進まないし寒い。

 ペダルが重い。

 

 イライラしていたらやはり周りが見えなくなるようでーーー

 

 

 

キイイイィィィ、ガッシャン!!!

 

 

 

いつも冷静じゃないとないけないなー、と

思った高校3年の冬であったーー

 

 

 

 

「トッキーおはよう!久しぶりだね、具合はどう?」

 

「おはよう、かいちゃん。至って普通かな。そんなに痛みもないし。あー、でも右腕が少し動かしにくいかも」

 

 友達の登坂 快翔《とうさか かいと》、通称かいちゃんと学校で喋る僕、常葉 阿須希《ときば あすき》が会うのは、1週間ぶりだ。

 

 トラックとぶつかった日、運よく正面衝突にはならず、病院での検査の結果では、両腕の骨折だけで済んだ。しかし、安静のために5日ほど安静にしていた。

 

 悪いことが続いていたら、いつか良いこともあるというが、今になって実感した。

 

 完全に僕の不注意だったが、相手側が責められた為、医療費は貰えた。何日も食べていないような、何日も寝ていないような痩せ細った運転手に対して、親が医療費をとるためだけに、必死で批難していたのを見て、うんざりしたし、申し訳なさでいっぱいだった。

 

 

 けれど、一番うんざりしたのは、医療費請求に対して何も口出ししなかった自分だ。

 

 

 自分の意見なんて、心の中にあるのに、言うだけなのに、言えない。もしかしたら、運転手の絶望した顔を見なくて済んだかもしれないのに。

 

 

ーー勇気のでない自分が大嫌いだーー

 

 

「おーい?トッキー?聞こえてるかー?」

 

「え、あーごめん、考え事してたわ。えっと、男の娘がいいっていう話だったっけ?」

 

「ほんっっと、おまえ好きだよな。わからんでもないけどさー、って違う違う、今日の授業内容、予習できてるのっていう話。」

 

「やっべ、全然してないわ。っていうか5日分授業受けてないやん。きっつ。チラッ」

 

「生憎、俺は馬鹿なんでね。ノートなんて全然とってねえよ。」

 

「ですよねー。まあ、1㎜ぐらいの期待だったし。」

 

 

『相変わらず毒舌だけは調子いいみたいだな。まあ、トッキー頭いいし、大丈夫だろ』

 

 

「まあな、必死で勉強して追い付いてやるよ。」

 

「え、もしかして心の中よんだ?!」

 

「何言ってんの?毒舌とかなんとか言ってたじゃん。」

 

「いや、今喋ってなかったって!トッキー、メンタリストなれんじゃ【キーンコーンカーンコーン】あ、席戻るわ。じゃあな。」

 

「お、おう。授業寝るなよー。」

 

 

 はぁ、ついに馬鹿なかいちゃんも頭がやられたか。自分が喋ったかどうかさえ分からなくなるなんてな。ああいう風にはならないように善処するか。

 

 

 

「それじゃー、朝のST始めるぞー。委員長。」

 

「起立。礼。着席。」

 

「今日はー、お、常葉、もう大丈夫なのか?」

 

「はい、完璧にとは言えませんが、日常生活だったら支障はでないと思います。」

 

「そうか、それはよかった。これからは気を付けるんだぞ。それじゃ、今日はーーー」

 

 

 森先生の声を聴くのも久しぶりだ。いつものんびりとした性格だが怒ると怖いことで、学校内では有名である。

 

 

「んじゃ、ST終わり。1時間目は移動だから遅れんなよー。」

 

 

『遅れたら、今日は反省文1000字にしてやるか。』

 

 

「先生、流石に1000字はやりすぎじゃないですか?」

 

「急になんだ、常葉。なんで1000字だって分かったんだ?何も言ってなかったと思うんだが。」

 

「え、先ほど言ってたと思いますが?」

 

「それは幻聴だ。耳に傷害あるんじゃないのかー?」

 

「、、、そうかもしれませんね。」

 

「そんなことより、後2分で授業始まるんじゃないのか?」

 

「やばっ!すいません、先生行ってきます!」

 

「無理すんなよー。」

 

 

 なんだ?今日は、予測力が高まってるのだろうか。そもそも、予測力なんて言葉あるのか?確か、医者には耳について何も言わなかったから、傷害なんてないはずだ。

 不安は残るが、授業に遅れたら1000字の反省文だ。そんなもん、書けるわけないだろ。とりあえず、次の教室に早く行かないと。

 

 

 

 

「ーーのため、イエスは迫害されたが、ーーー」

 

『あー、授業だるいわー』

 

『腹へったなー』

 

『何て書いてあるのかな』

 

『あ、いつのまにか、たってる』

 

『登坂君、またねてるなー』

 

『あー、はやくおわれや』

 

 

 

 

 こんなに喋ってるのに全く怒らない先生。

 怒られることはないと確信したかのようなクラスメイトの独り言。

 

 

 

問題 言っていない声が聞こえる理由は?

 

 

解答 どうやら、僕は心の声が聞こえるようになったらしい。




初作品、読んでいただきありがとうございます。暇人の書いている作品ですので、暇でなくなると、更新が遅くなることをご了承ください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。