自転車通学を続けて早2年。少しは足腰が鍛えられたような気がする。行きは下りなので数分で神原《かんばら》高校に着くが、帰りは30分以上もかかる。
夏は下りで涼しいのだが、冬は手袋にマフラーをしないと凍え死にそうなぐらいの風が吹いてくる。
今日、11月25日の前日に、教室に防寒具を忘れてしまい、手がかじかみ、首に氷が常にくっついているような通学中である。こんな日にかぎって向かい風が強い。
なぜ、こうも悪いことは重なるのだろうか。
全く進まないし寒い。
ペダルが重い。
イライラしていたらやはり周りが見えなくなるようでーーー
キイイイィィィ、ガッシャン!!!
いつも冷静じゃないとないけないなー、と
思った高校3年の冬であったーー
「トッキーおはよう!久しぶりだね、具合はどう?」
「おはよう、かいちゃん。至って普通かな。そんなに痛みもないし。あー、でも右腕が少し動かしにくいかも」
友達の登坂 快翔《とうさか かいと》、通称かいちゃんと学校で喋る僕、常葉 阿須希《ときば あすき》が会うのは、1週間ぶりだ。
トラックとぶつかった日、運よく正面衝突にはならず、病院での検査の結果では、両腕の骨折だけで済んだ。しかし、安静のために5日ほど安静にしていた。
悪いことが続いていたら、いつか良いこともあるというが、今になって実感した。
完全に僕の不注意だったが、相手側が責められた為、医療費は貰えた。何日も食べていないような、何日も寝ていないような痩せ細った運転手に対して、親が医療費をとるためだけに、必死で批難していたのを見て、うんざりしたし、申し訳なさでいっぱいだった。
けれど、一番うんざりしたのは、医療費請求に対して何も口出ししなかった自分だ。
自分の意見なんて、心の中にあるのに、言うだけなのに、言えない。もしかしたら、運転手の絶望した顔を見なくて済んだかもしれないのに。
ーー勇気のでない自分が大嫌いだーー
「おーい?トッキー?聞こえてるかー?」
「え、あーごめん、考え事してたわ。えっと、男の娘がいいっていう話だったっけ?」
「ほんっっと、おまえ好きだよな。わからんでもないけどさー、って違う違う、今日の授業内容、予習できてるのっていう話。」
「やっべ、全然してないわ。っていうか5日分授業受けてないやん。きっつ。チラッ」
「生憎、俺は馬鹿なんでね。ノートなんて全然とってねえよ。」
「ですよねー。まあ、1㎜ぐらいの期待だったし。」
『相変わらず毒舌だけは調子いいみたいだな。まあ、トッキー頭いいし、大丈夫だろ』
「まあな、必死で勉強して追い付いてやるよ。」
「え、もしかして心の中よんだ?!」
「何言ってんの?毒舌とかなんとか言ってたじゃん。」
「いや、今喋ってなかったって!トッキー、メンタリストなれんじゃ【キーンコーンカーンコーン】あ、席戻るわ。じゃあな。」
「お、おう。授業寝るなよー。」
はぁ、ついに馬鹿なかいちゃんも頭がやられたか。自分が喋ったかどうかさえ分からなくなるなんてな。ああいう風にはならないように善処するか。
「それじゃー、朝のST始めるぞー。委員長。」
「起立。礼。着席。」
「今日はー、お、常葉、もう大丈夫なのか?」
「はい、完璧にとは言えませんが、日常生活だったら支障はでないと思います。」
「そうか、それはよかった。これからは気を付けるんだぞ。それじゃ、今日はーーー」
森先生の声を聴くのも久しぶりだ。いつものんびりとした性格だが怒ると怖いことで、学校内では有名である。
「んじゃ、ST終わり。1時間目は移動だから遅れんなよー。」
『遅れたら、今日は反省文1000字にしてやるか。』
「先生、流石に1000字はやりすぎじゃないですか?」
「急になんだ、常葉。なんで1000字だって分かったんだ?何も言ってなかったと思うんだが。」
「え、先ほど言ってたと思いますが?」
「それは幻聴だ。耳に傷害あるんじゃないのかー?」
「、、、そうかもしれませんね。」
「そんなことより、後2分で授業始まるんじゃないのか?」
「やばっ!すいません、先生行ってきます!」
「無理すんなよー。」
なんだ?今日は、予測力が高まってるのだろうか。そもそも、予測力なんて言葉あるのか?確か、医者には耳について何も言わなかったから、傷害なんてないはずだ。
不安は残るが、授業に遅れたら1000字の反省文だ。そんなもん、書けるわけないだろ。とりあえず、次の教室に早く行かないと。
「ーーのため、イエスは迫害されたが、ーーー」
『あー、授業だるいわー』
『腹へったなー』
『何て書いてあるのかな』
『あ、いつのまにか、たってる』
『登坂君、またねてるなー』
『あー、はやくおわれや』
こんなに喋ってるのに全く怒らない先生。
怒られることはないと確信したかのようなクラスメイトの独り言。
問題 言っていない声が聞こえる理由は?
解答 どうやら、僕は心の声が聞こえるようになったらしい。
初作品、読んでいただきありがとうございます。暇人の書いている作品ですので、暇でなくなると、更新が遅くなることをご了承ください。