俺は異世界転生してまで戦いたくない!   作:AugustClown

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作戦会議

「待ってたよ四人とも。帰って来て早速悪いんだけど戦いの準備をしてくれ。隣国が大軍を連れて攻め来たらしい。」

 

いつものアーティの優しい目付きとは違い、刃物のように鋭く、薄らと殺気のようなものも感じ取れる。逆賊の時とは違い、それだけ今回の件はヤバいと言うことだろう。はぁ、面倒な事になりそうな予感がビンビンするなぁ。

 

「今、全下級、中級パーティが応戦に向かってるらしい。 」

「ほう、またこりゃ大層な。」

 

そりゃ通りでひったくりなんてのが起こる訳だ。基本的にこの国では街を警らとして下級パーティが見回っている。だが、その下級パーティどころか中級パーティまで出張っている為、街の治安が一時的に悪くなってるのだろう。

 

「僕達上級パーティは他の上級パーティと一度作戦会議をする。」

「だから王宮に来いと?」

「そういう事だ。」

「さてみんな、40秒で支度しな!」

「何言ってんだ、ザック?」

「これも通じないのか……。 」

「ま、まあ準備は早いに越したことはないけどね。幸い、敵の位置は王国(ここ)から結構距離あるみたいだし。」

 

 

皆準備を済ませ王宮に向かうと一人の女性が待ち構えるように腕を組ながら立っていた。

 

「ゲッ!鉄面皮の聖女じゃん!」

「ゲッ!じゃありません。また貴方達が最後ですよ!」

「「「そりゃ英雄(ヒーロー)はいつも遅れて来るもんだからな!」」」

 

格好を付けながら俺、ジェイク、ギルが同時に言った。何かロッティとドールが頬を後ろで赤くしているがどうしたのだろうか…。

対して鉄面皮の聖女は呆れたように溜息をついた。

彼女の名前はジャンヌ。俺達と同じ、上級パーティのリーダーでもある。性格はど真面目、俗に言う委員長タイプで、俺はいつも目の敵にされている。

 

「もっと上級パーティとしての自覚を持ってください。それに、このやり取りももう飽きました。それに今回はジェイクも参加するとは……。」

「漸くジェイクもノリが分かってきたってことだよ。」

「そんなノリは分からなくていいです!」

「何言ってやがる!ザック、お前が俺を脅して強制させたんだろうが!めっちゃ恥ずかしいぞコレ!!」

「フフッ、レディ…本当の事ですから。俺に嘘は似合わない。」

「黙れ、ギル!元はと言えばお前が前回台詞被せたのが原因だろうが!初めは俺の台詞だったのに!」

「騒がしくてすいません、ジャンヌさん。」

「い、いえアーサー、貴方のせいではないでしょう。それよりも急ぎましょう。我らが王がお待ちです。」

 

 

王の間に入ると真剣な表情をして待っていた。否が応でも気が引き締まる。そして皆跪き、先頭のパーティリーダー達が言った。

 

「大地の騎士、リーダーグラッド、他全隊員参上しました!」

「樹木の守護者、リーダーウッド、他全隊員参上しました!」

「猛火の獅子、リーダーレンフレッド、他全隊員参上しました!」

「海龍の息吹、リーダージャンヌ、他全隊員参上しました!」

「流星の覇者、リーダーアーサー、他全隊員参上しました!」

「うむ、よく来た我が国の希望よ。皆集まった理由は知っとると思う。我が国は今危機にある。是非其方等の力でこの国を救って欲しい。」

「「「「「「御意!」」」」」」

 

 

「と、言ってもさ俺のやることいつもと変わらない気がするんだが?」

「いやいや、今回ザックにも戦闘に参加してもらうよ?」

「えっ、アーティそれマジか?」

「アイザック!気を引き締めなさい!これは戦争なのですよ!」

「律儀だね〜、流石鉄(面皮)の聖女。」

「ザック、ジャンヌさんに失礼だよ。」

「いえ、別に気にしてませんので、それでどうするんですか?」

「確認ですが、本当にウチのいつものやり方でやるんでいいんですか?」

 

アーティの問いに各リーダーが頷く。

俺としては仕事をしなければならないので嫌なのだが、この会議が始まってすぐに聖女様が提案してきたのだ。全く、それをやるこっちの身にもなって欲しいものだ。

はぁ、と俺が溜息をつくと猛火の獅子のリーダーレンフレッドが話し掛けてきた。

 

「どうしたザック、まだ始まってもないのに溜息か?ハハハ!まあ、聖女様の扱いは大変だからな。」

「レンフレッド、それはどう言う意味ですか?」

「まあ、それもあるが十五万の軍勢に破壊工作やら何やらのデバフをかけなきゃいけないって考えると頭痛がしてくるぜ。それにこの上級パーティの中に盗賊職が俺だけってのも杞憂ポイントダヨネ〜。」

「それは一部、お前の影響もあるがな。」

「グラッドさん、そりゃどういうことだい?」

「盗賊は元より数がいないのもそうだが、新人のお前さんの才能が飛び抜けててな、盗賊だったヤツらがやってられねぇって転職しちまったんだよ。」

 

そんなことを言っているこの人は大地の騎士のリーダーで、俺が第二の親父と慕っている人だ。年は50を超えているが、バリバリ現役で、気前が良く、情に厚い。宛ら昭和の親父を思わせる人だ。それに加え実力も凄く、この国で初めて平民の上級パーティリーダーになった人で、平民にとっては希望の星であり、憧れの人である。

そして同じく平民に人気のある猛火の獅子のリーダー、レンフレッド(通称レオン)。レオンは平民最年少上級パーティリーダーで有名な魔術師である。何せ俺達と年が2歳しか違わないのにリーダーに登り詰めた。熱血漢で、平民の出と言うこともあり、グラッドさんを俺のように親父と慕うひとりだ。彼の戦闘スタイルは後方職である魔術師ながら前線でその魔術を振るう、とても異質と呼べるもので、こんなことが出来るのは国内で彼だけだろう。

 

「ウチの盗賊が辞めちまったんだ。本当に迷惑なヤツだよ、お前は。」

「す、すんません。」

「まあまあ、そう言ってやるなウッド。そのお陰で前々から心配していた前線職の奴が一人増えたんだ、一概にザックが悪いとは言えないだろ?」

「おやっさん、そうだけどさぁ……アイツの愚痴聞くのマジで面倒だったんだからなぁ!」

「まあ、今回の終わったら飲み行こうや!お前と俺とザック、あとレオンもな!そん時にまたお前の愚痴も聞いてやっからよ。」

 

そうグラッドさんに宥められてるのは樹木の守護者のリーダー、ウッド。国随一の回復役(ヒーラー)で、歴代で回復役がリーダーになったのは彼ひとりだけである。見た目はイケメンと言うよりはナイスミドルな感じで周りからはキャーキャー言われているが、中身は大分根暗で、仲間思いではあるが、根を詰めすぎ我慢しきれなくなるとグラッドさんに愚痴を聞いてもらってるらしい。

 

「んで?覇者のリーダーさんよ、いつもお前らさん達はどうやってるんだい?」

「は、はい…いつもはザックに敵の弱体をして貰って後はザックを除く自分達で制圧する感じです。」

「それで?ザック最低でも何割弱体出来る?」

「5割は俺のプライドに懸けて約束するぜ、グラッドさん!」

「上々!欲言えばもっとやって欲しいが、今回は数が数だ。だが五割は確実に任せたぞザック!」

「了解ぃ!」

「さて、フォーメーションはどうすっかな?」

「今のところ分かってるのは上級パーティ全隊員36人中、剣は8、弓は6、槍は7、騎士は5、魔術師は4、戦士は5、そして盗賊は1です。まあ、ザックの場合"適応"がありますから全職やれるんですけどね。」

「じゃあ前列は剣、槍、後はレオンの計16人、中間は騎士、戦士計10人、後ろは弓、魔術師計10人か。お前さんはどうする、ザック。」

「俺は必要な所に時々ヘルプ行く感じになるかな。」

「凄い…あのザックがやる気になってる…。」

 

惚けたようにロッティが言った。

平民の憧れであるグラッドさんに任せたといわれたのだ。これでやる気にならなければ男が廃るというものだ。俺には珍しく、少し緊張しているくらいだ。

 

「指示は前線は聖女の嬢ちゃんアンタがやれ。スキル的にも、性格的にも指示出すのは得意だろう?」

「素直に認められないですが確かにそうですね。了解しました。」

「相変わらず堅いねぇ。中間は俺、後ろはウッドお前がやれ。」

「了解!」

 

グラッドさんがテキパキと全体に指示を出していく。流石国一の騎士だ。この凄まじいカリスマ性があるからこそ、みんなこの人について行きたいと思ってしまうのだろう。

 

「じゃあ、大体の作戦会議は決まった。ザック頼んだぞ!最悪危険だったら戻ってきて構わない。お前が死ぬよりはマシだからな。」

「ソレは大丈夫だな。」

「ええ、そうですね、ジェイクさん。」

「うん。ザックは死なないから。」

「おいおいジェイク、ドール、それにロッティまで…。あからさまな死亡フラグ立てんなよ。」

「大丈夫よ。だってザックは私の幼馴染だもの。」

「理由になって無いんだが?」

「ハハハ!サボり魔って割には仲間から信頼されてるんだな。」

「良してくれよレオン。まあ、仲間の期待を裏切るのは俺の仁義に反するからな。取り敢えずぱぱっとやって、ぱぱっと帰ってくるよ。」

 

さてどうやって敵さんを追い詰めてやろうか。こんなことを考えてる時が一番楽しいってことはみんなにはだまっておこう。

さぁ、本領発揮と行こう。




《スキル説明》
ザック
〈適応〉
あらゆるものに適応する(慣れる、扱えるetc)。


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