武器の形とかを字だけで説明するのは自分には無理なので……。
騎士団入りしてから少し後、訪れましたは黒の騎士団のアジト。なんでも金持ちの貴族がくれたという大型の車両をアジトとして使っているらしいけどこちらの貴族は随分太っ腹っすね。車自体を大きな倉庫に入れてあるので見つかる心配もなさそうだし、ストレイドもしまえそうだった。いいねいいね、適度に広いから今までの武装もそのうち運び込もう。他にもKMFが何機かいるので換装も手伝ってもらえれば完璧。ようやく背部や四肢のアセンブル解禁、好き放題出来るよ。
機体から出ると皆ストレイドをじっと見ていた。
「珍しいのはわかるけどそんなに見ないでよ、この子恥ずかしがり屋なんだから」
「彼結構適当なこと言うけど皆あんまり気にしないでね」
カレンは隠す必要がなくなり本来の自分を出してくれていて嬉しい反面言葉に手厳しさが増した気がする。
「ちなみに今のは本当だったりする」
「……それも冗談よね? お願いだから冗談だって言って」
トーラスの変態共曰く、うちのARGYROSたんは恥ずかしがり屋な女の子なんだってさ! 全然わかんないけどね! でもあいつらにはわかるらしいね、流石変態。あ、女の子なんだからデカいとか太いとか言っちゃだめだよ? ちなみに銀翁のはオカマだって聞いた。アサルトキャノン積んだ巨体のオカマ……、ノーコメントでお願いします。
それにしても皆ずっと見てるな。じろじろ見られるのもかわいそうだからステルス起動させちゃる。いきなり機体が消えたから皆びっくりしてるね、にゃはははは。
車両の中は2階部分もあるくらい広く、テレビとか冷蔵庫もあったりした。何この素敵空間、貴族がくれたものだけあって想像以上に居心地が良い。そんな車内に心惹かれながらも騎士団メンバーと自己紹介していきました。皆僕の容姿やら異世界やらに興味があるみたいで色々聞かれた。異世界人を自称するような変人だからもっと入団に反対されたり邪険に扱われるかと思いきや、皆意外とフレンドリーだった。カレンの推薦があったり、2度のゲットーでの出来事等が評価に繋がっているご様子。僕に噛付いてきた玉城さんも、騎士団に入ると普通に接してくれた。どことなくダン・モロと同じような雰囲気というかにおいが漂う人物である。この人とは思いの外仲良くなれそうな気がする。色々と話しているとゼロが来て次の作戦のことについて話し始めた。
「リフレイン?」
どうやら日本人の間に蔓延している違法薬物らしいく、なんでも「幸せだった過去に戻ったような気分」になるんだそうな。今現在苦しい生活を強いられている日本人には売れそうですね。今回の任務では取引現場に強襲をかけるということらしく、KMFとの戦闘になるかはわからないが僕もストレイドで参加するようにとの御達しだった。今回の戦闘を試金石として今後の作戦を決めるのかな。作戦は数日中に決行ということで今日はそんなところでお開きとなった。
帰る前に武装だけ運び込んでいると、そんな姿を見てゼロとカレン、騎士団の前身となるグループのリーダーをしていた扇さんが武装について聞いてきた。なんでもKMFでこれらの武装を使うことは出来ないか、ということらしいのだが……。
「無理でーす! あ、別に意地悪で言ってるわけじゃないですよ? KMFについて詳しく知ってるわけじゃないから何とも言えないけど、はっきり言ってKMFは脆過ぎる。あんなので武装使ったら反動で機体ごと吹っ飛びますよ? それにレーザーブレードとかも機体からのエネルギー供給を必要とするものだから、KMFだとエネルギー供給が追い付かないか足りないんじゃないかなぁ」
カレンも扇さんも反動で機体が吹き飛ぶ想像でもしたのか真っ青になっていた。そりゃ相手をぶっ潰す武器でこちらが死んだら笑えないよね。
「反動の軽い武器や実体ブレード等も不可能か?」
勘違いしがちだけど実体兵器でもエネルギーは一応消費される。まぁ一応稼働してるからね。そのエネルギーは機体の腕を通して武器に送られるのでそういう構造がないとまず使えないし、たとえ使えたとしてもエネルギーをどれだけ食うかわからない。ACにとっては微量でも、KMFにとっては消費がデカい可能性が高い。そういうことを説明しておいた。
「そういう話を聞くと、異世界との技術の差を実感するわね」
「変態企業様々だねぇ」
「……変態企業?」
――――――――――――――
夢を見た。とても懐かしい夢だ。僕は小さな頃から泣き虫で、些細なことですぐ泣いたりしていた。そんな僕が10歳の頃、セレンさんにリンクスになりたい旨を伝えた時、彼女は複雑そうな顔をしていた。喜んでいるような、悲しんでいるような、怒っているような、諦めているような……何とも言えない表情だったことを覚えている。
その日からセレンさんによる過酷な訓練が始まった。今ならわかるけど、あの過酷さは僕に諦めさせようとしていたのだと思う。
『ほらどうした、もう音を上げたのか?』
10歳の僕にはとても辛い訓練に、あまりにも辛辣な言葉。それは日を追う毎にきついものとなって言った。
『その程度でよくリンクスになりたいなどと言えるな。ネクストに乗るからと言って生身で戦う必要がないわけではないのだ。それに……お前自身がやって出来ないことを、ネクストに乗って出来ると思うか?』
僕は泣いた、毎日、毎日……。でも一度たりとも諦めたり、弱音を吐いたりしなかった。したくなかった。
『まぁいい、今日はここまでだ。シャワーを浴びてこい』
でも……彼女は厳しいのと同時に、優しかった。
『……? どうした、早く――はぁ……まったくお前は』
『フフッ、母様に慰めてもらいたいのか?』
彼女は優しく微笑み頭を優しくポンポンと叩いてくれた。
セレンさんは頑張れば褒めてくれた。怪我をすれば優しく治療してくれた。訓練の後には美味しいご飯を作ってくれた。それが嬉しかった。
だから僕は心に誓ったんだ。絶対にリンクスになって、彼女の願いを叶えると。
――――――――――――――
三日後の夜、騎士団が使用している倉庫で機体の調整を行っている。今回はカレンの使うグラスゴーとストレイドで先行して強襲をかけ、残りをメンバーが一掃する作戦。屋内戦か……レーザーブレードは良いとしてもバズーカだと危ないな。何か良い武装ないかなぁ~っと……。
R.A.UNIT:CWG-MG-500
このマシンガンが良さそう。ノーマルの武装が何故あるのかはわからないけど、威力を確かめる意味でもこれを使ってみよう。……マシンガンなら以前のような失態はないはず。……あ! しまった……屋内で武装呼んじまった。やばい天井に穴が開いちゃう。と思ったら控えめな音を立ててコンテナが室内に落ちたきた。……え? どっから? 天井に穴ないしどっから来たの? 皆も驚いて見てるけどこっちも驚きだよ……。ますますわけがわからなくなってきた武装の転送システム。といっても解明のしようがないので諦める。
調整を終えると作戦開始時間が迫ってきたので、場所まで移動。いよいよ僕のこちらでの初仕事が始まる。
倉庫が立ち並ぶ区画の一画、ある倉庫の影で機体から顔を出し待機中です。ゼロは別行動をとっているらしく指示があるまで待機となった。
「調子はどうだ?ユウ」
「いつもと変わんないですよ、ふつーふつー」
「流石は異世界の傭兵って感じだな。若いのに俺達より落ち着いてる」
そんなに褒められると照れるなぁ。でもリンクス戦争当時には僕よりも若いリンクスがいたって話を聞いたことがある。13歳だったかな? リリウムでも14か15だったはずだから随分若いリンクスがいたものだ。
「……」
カレンがやけに静かなので様子を窺うと調子が悪いのか表情が暗く、俯いて考え事をしている。
「カレンどうしたの? お腹空いたの?」
「大丈夫……何でもないわ……」
珍しく突っ込んでこず、ほとんど上の空状態だった。……重傷だな、これはちょっと危ないかもしれない。
真面目な声でカレンに話しかける。
「カレン、今日はもう帰って寝なさい」
「え……? 何を言って……」
「戦場で最も足枷になるのはね、戦えない仲間だよ。どうでもいい人間なら見捨てればいい、でも仲間は見捨てるわけにはいかない。戦えない仲間を庇いながらの戦闘は心身ともに相当な負担となる。君は自身も仲間も殺す気?」
だから戦場では敵を死なない程度に傷を負わせたりする。ACがまだ存在しない昔の戦場では地雷等で死なない程度に怪我をさせ、その兵士一人に対し数人の兵士を割かせるということもしたらしい。
「おいおい……何もそこまで言わなくてもよ……!」
他のメンバーが止めに入るが無視して言葉を続ける。
「君がプライベートで何があったかは知らない、でもそれを戦場に持ち出さないでほしい。必要なのはいかに殺すか、守るか……そういう思考だけで十分だ。私情を持ち込めば死ぬのは自分達だよ。頭を切り替えろ、それが出来ないなら戦場に出てくるな。出てこなければ死なずに済むし、こちらも仲間の死を見ないで済むから。それに……自分のせいで仲間が死んだら……簡単に耐えきれるものではないよ」
『もっとだ……もっと速く……攻撃する暇を与えるな……殺される前に殺せ……全部……そうだ、逃げる奴も全部だ……』
頭を振って記憶を片隅に追いやる。そこへゼロの合図である発光が見えた。
「……ゼロの合図だ。……いける?」
「ありがとう……いけるわ」
カレンの顔には先程のような迷いは見られなかった。キャラじゃないことはやるもんじゃないな、一気に疲れた。
僕が先行して目的の倉庫の前へと行き、レーザーブレードを使ってシャッターを焼き切って中に入ると作業中の奴らがこちらを見てギョッとしていた。その後に歩兵組が中に入りマシンガンを使って殲滅していく。カレンは先行し残存勢力が居ないか確認に向かう。周囲にはビンが入った箱が大量に置いてあった。
これがリフレインねぇ……幸せだった頃の記憶なんか見て何になるんだかさっぱりわからん。美味い飯の味を思い出したって腹は満たされないだろうに……何故そんな無駄なことをするのか理解に苦しむ。前を向いて歩かないとご馳走も見逃すっての。それは僕が戦える人間だから思うことなのか? 自分の居た世界とは全く違う世界。場所が違えば考え方も違う、それはわかってはいるのだけど……。
周囲を警戒していると銃声と爆発音が聞こえた。建物の奥……カレンの方へとブーストを吹かせて向かうと、そこにいたのは白いカラーリングに肩やコクピット後方が赤、青の2色で塗られたKMF。
「ナイトポリス!? グルってことか!」
ナイトポリス……警察のKMFか。戦闘を開始したのはつい数分前、通報があったにしては早すぎる。ということはこの件に一枚噛んでいた?
あらわれたナイトポリスのKMFは3機、いや、1機は通常のグラスゴーか。内1機は右腕が破損しているカレン機を追いかけ始めた。しかしカレン機の挙動がおかしい……左手には誰か抱えているようだが……。カレンの救援に回ろうとするが残った2機が邪魔だ。今は目の前の邪魔なごみ2つをさっさと消してカレンに加勢しよう。
足元にはリフレインでトリップしている日本人が多数、巻き込まないようにしながらマシンガンを片割れに打ち込む。ノーマル用だとさすがに威力が足りないらしく、数発では沈まなかったところを見るとやはり耐久力はMT程度にはあるらしい。敵も反撃に撃ち込んでくるが弾丸は跳弾しているので避けるまでもないし、避けたら誰かに当たってしまう。弾丸を真っ向から受けながらフルオートで撃ち込みようやくグラスゴーを破壊する。
撃ちながら逃げ回るもう1機を追いかけ、マシンガンで武器を持った右腕を破壊する。一気にスピードを上げブレードを使って後ろから斬りつける。ナイトポリスは上半身と下半身に分かれ、その勢いのまま転がって壁に激突し爆散した。貴様のような悪徳警官には似合いの最後だな。
カレンを援護する為急いで銃声の聞こえる方へ行くとカレン機は所々破損して倒れており、その後ろから今にもナイトポリスがナイフを使って止めを刺そうとしていた。瞬時にGBを吹かせ横から思いっきり蹴飛ばしてやった。敵は回転しながら吹き飛び、傍にあった棚に追突し棚と共に倒れ沈黙した。
女の子を後ろから挿すなんて卑猥なマネ……おっと字が違う。後ろから刺すなんて卑怯なマネを紳士たる僕が見逃すと思うか間抜け。お前は閻魔様にでも後ろから刺してもらってろ、くそが。ナイトポリスは胴体部分がグシャグシャに潰れていたので生きてはいないだろう。中の状態を考えると検死する人達には同情する。
カレン機は倒れながらも女性を守るような状態になっていた。機体はおしゃかになったけど、カレンも女性も他の皆も無事だったし気にしない気にしない。
「うわぁ……こりゃひでぇな……」
潰れたナイトポリスを見て皆が顔をしかめていた。そんな姿をよそに機体を降りてカレンの傍に行くと先程の女性が座り込んでいた。
「この人ね……私のお母さん……」
腕に抱えていたのは母親だったのか。挙動がおかしかったのも納得出来た。
「ユウの言った通りだったね……守りながら戦うって……とてもきついし……もし失ったらと思うと……」
「大丈夫……僕が守るから。君も、皆も、全員……」
「ユウ……」
「なーにやってんだよお前ら! ほら、集合しろ!」
空気読んでよ玉城さん……。
集まった先にあったのは大量のリフレイン、これをどうするかということになり、話し合った結果ゼロの案で焼却する場面を録画し人々に曝すそうということになった。
……過去にトリップする薬物、リフレイン……。これを使えば僕の失くした記憶も辿ることが出来るだろうか……? 少しずつ取り戻していけばいい、それはわかっているのだがどうしても記憶の先で彼女がどうなったのか気掛かりでならない。僕が彼女に依存していたように、彼女も僕に依存している節が多少みられるからだ。
「これがあれば……僕の記憶も戻るのかな……」
つい口から考えが漏れてしまったその瞬間、乾いた音と共に頬に痛みが走った。
「馬鹿なことを言わないで……! お母さんだけじゃなくて貴方まであんなことになったら……! これ以上私に苦しめというの……!?」
カレンは目に涙をため本気で怒っていた。今の今まで自分の母親のあんな姿を見ていたのに、意図したものではないとは言え僕の言葉はあまりにも不謹慎だった。先程とは打って変わり、今度はカレンが皆の制止を振り切って僕に説教した。
「記憶の一部がなくて焦るのはわかる……でも、こんな危険な方法でそれを取り戻そうとするのは止めて……! 苦しむのはあなただけじゃないのよ……!」
「ごめん……失言だった」
そうだよね……こんな方法で記憶を取り戻したって、周りも自分も不幸になるだけだ。記憶が戻らないことに対して知らず知らずのうちに焦っていたのだろうか。
……やっぱりあなたが居ないと僕は駄目なのかもしれない……セレンさん……。
頬と心に痛みを残して初めての仕事は終了した。
――――――――――――――
今日の作戦は成功に終わった。
ユウの使用する異世界の兵器、AC。想像を遥かに超える性能を有しているようで、たった1機で3体のKMFを呆気なく破壊してしまった。おまけに機体にダメージは見受けられず、エネルギーも機体内部で作り出しているらしく、破壊されない限り永久に動き続ける。攻撃性、耐久性、そして機動性においてKMFを圧倒している。これは想定していたより楽にブリタニアを潰すことが出来るかもしれない、そう考えるとつい頬が緩んでしまう。
注意すべきはユウの心の弱さか。あいつはどうもメンタル面で安定していない。
向こうの世界の家族と会えないことに泣いたりしていたという話を以前聞いたが、あいつは家族に精神的に依存していたのだろう。その心の支えとなっている家族と会えないことから不安定な精神になってしまっている。記憶が一部欠落しているという話も先日アジトで聞いたが、それが拍車を掛けているのではないだろうか。現に今日の作戦で手に入ったリフレインを使って記憶を戻せないかと考えていたらしい。これについては早めに策を講じておくべきだな。
もう一つ注意すべきは敵に対する異常なまでの攻撃性と味方や身内を身を削ってでも守ろうとする意志。作戦前のメンバーとの会話は無線で聞いていた。あいつは戦いに私情を持ち込むなと言っていたが、あいつの方こそ私情を持ち込んでいる。河口湖でも自分の首を絞めるとわかっていながら、その身を衆目に晒してでもシャーリーを助けた。おそらく今後も味方の救助を優先すると思われる。勿論使える駒は一つでも多い方が良いので助けられる命は助けるべきではあるのだが、もし優先すべき事項が他にあるにもかかわらず救助を優先するような事態になれば作戦をお釈迦にしかねない。かと言って下手にあいつの怒りを買うような言動をすれば、あの敵意の矛先をこちらに向けて来ないとも限らない。
……なるほどな……確かに従順なペットではなく猛獣だな、俺にとってはこれほど扱い辛い奴もそうはいまい。だが……必ず飼い慣らしてみせるぞ。
ナナリーの為にも……ユウ、お前には悪いがせいぜい利用させてもらおう。
――――――――――――――
後日カレンの付き添いで病院に搬送されたカレンの母親の見舞いに来た。薬の後遺症があるらしくまともに喋ることが出来ず、回復にもかなりの時間を要するとのことだった。また、禁止薬物を使用したことによる罪状として懲役20年ということらしい。カレンは母親の前で、母が刑を終える前に必ず世界を変えてみせると誓った。
その時、カレンの母親が彼女の手を握り呟いた。
「頑張れ……カレン……私の大事な娘……」
その一言でカレンは涙を流し、母親の手を強く握った。
「うん……私……頑張るから……! 頑張るからね……お母さん……!」
母親……か。
『母様に慰めてもらいたいのか?』
会いたいな……。
エネルギー武器云々の辺りはよくわからなかったので自分では作中のような解釈してます。それともクレイドルみたいにマイクロウェーブとかで送ってるんですかね。
感想や批判等ありましたらコメントお願いいたします。
次回はあの子とかあれとか出せたらいいなぁ。