遅くなりました。
今更ですが、「KMF」と表記していますが作中では「ナイトメア」と言われてます。
この作品でもそう言われていると思ってください。
今後も表記は「KMF」で書いていきますが。
黒の騎士団の使用している倉庫内に、複数のKMFと共に黒い制服を身に纏った人々が多数居た。彼らは騎士団に新たに入団した日本人達である。河口湖の事件以降騎士団の人気は高まり入団希望者が増えた。入団には厳しい審査による選別があり、ここに居るのはその審査を無事通過した者達である。
新団員達は憧れの黒の騎士団に入ることが出来たので浮かれているが、その様子は今後殺し合いに身を投じていく者達の態度とは到底思えないものである。浮かれている理由は入団が叶ったことだけでなく、倉庫内に立ち並んでいる複数の無頼と新型KMFも関連していた。これらのKMFを送ってきたのはキョウトという組織で、ブリタニアに対して抵抗している勢力に兵器等の支援を行っているかなり大きな組織である。そんな組織から支援を受けるということは黒の騎士団もついに認められたということだ、と喜び勇んでいる。喜んでいるのは新入りだけでなく、騎士団の幹部メンバーである扇、玉城、南、杉山、井上、吉田、そしてカレンも新型KMFを前に興奮を隠しきれない。――紅蓮弐式。赤い装甲をした初の純日本製KMFで、その右腕には銀色の大きな鉤爪のような腕が装着されている。
そんな倉庫には更に奥があるのか大きな扉があるが閉まっているので何があるかわからない。そんな奥が気になった一人の新入りの少女が幹部メンバーに疑問を投げかけた。
「先輩、あの奥の扉の向こうはどうなってるんですか?」
「あそこは責任者以外は立ち入り禁止だ。もし仮に立ち入ることがあるとしたら責任者の指示があった時だけだ」
「責任者……ですか? どちらの方なんですか?」
「あーっと……何だよ……まだ来てねーじゃねぇか、あいつ」
玉城がぶつぶつと文句を言っていると、まるっきり場違いにしか見えない人物が倉庫内に入ってきた。
「うわっ、何でこんなに人いんの?」
その若い男の声に全員が振り向くと、そこに居たのはパーカー付きのシャツに膝丈のズボン、そしてサンダルというラフな格好に赤い首輪を付けた白い頭の青年だった。その姿を見た時極少数は団員ではないかと考えたようだが、新団員の大半が迷い込んだ日本人のガキ、という印象しか持たなかった。
「おい、お前! ここはお前みたいなガキは立ち入り禁――」
「おせーぞユウ! 何やってたんだよテメー!」
言い終えるより先に玉城の罵声が飛び、喋っていた新団員は慌てて口を噤んだ。
「新入り共、紹介しておくぞ。扉の向こう側の責任者を担当しているユウだ。彼の許可なく奥には絶対に行くな、良いな?」
扇の言葉に新団員は全員目を見張った。どう見たってせいぜい学生だろうというくらいの年の青年なのに、扉の向こう側の責任者だという。
「あーなるほど、この人達が新しく入った人達か。どうもユウ・ヘイズって言います、よろしくね。見た目通りのガキなんで敬語は結構です」
そういうとユウは持ってきた作業着に着替えると言い残し、倉庫の隅へと消えていった。
責任者というくらいだからもっとお堅い、真面目な技術者風の人物かと身構えていた新団員達は一気に体の力が抜けてしまった。実際は口を開けば何とも頭の軽そうな学生だった。新入りの何人かは、あんなのが責任者じゃ簡単に倉庫入り出来るんじゃないかと思った。
「ちなみに言っとくとね、僕以外が勝手に入ると蜂の巣にされる仕掛けになってるから気を付けてね? まぁ勝手に入るような馬鹿は居ないと思うけど一応警告しとくよ」
ユウは物陰から顔だけだして恐ろしいことを口にするとまた奥に引っ込んでいった。
幹部を含めた全員が勝手に入るまいと心に誓うのだった。
団員達が機材の確認等色々作業している中、ユウは一人小型端末を弄っていた。周りからしてみれば作業も手伝わずに遊んでいるようにしか見えないので、新団員達はあまり良い顔をしていない。ユウは騎士団の制服は着ておらず、つなぎに軍手、作業靴、そして首輪。そんな恰好ならより作業はし易いはずなのに、手伝う素振りを見せない。他の幹部達もそれについて一切言及しない。
そこへ黒の騎士団のリーダーであるゼロが現れ幹部達を集め何か話している。だがユウはその話し合いに参加しようともせず、相変わらず端末を見ながら何か考え事をしている。
「なぁ……あいつって本当に責任者か? ただ遊んでるだけのガキにしか見えないぞ」
「責任者ってことは幹部でもあるんだよな? 何で他の幹部の人達みたいにゼロとの話し合いに参加しないんだ?」
「知らないわよそんなの……」
作業をしながら小さい声でユウと名乗る青年の話をする。自分達よりも明らかに年下であるにも関わらず幹部とも普通に話し、おまけに作業を手伝わなくても何も言われない。余程重要人物なのか、それとも放置されているのか。
話し合いは終わったのか、ゼロはユウのもとへと向かって歩いて来た。
「次はナリタ連山へのハイキングだ、準備は出来ているか?」
「今からだよ? 人手がないとアセンブルに入れないからさ。んじゃあ……カレン、南さん、玉城、手伝ってくんない? 機体整備を手伝ってくれる契約だったよね」
何故か自分が呼び捨てなことに玉城は怒っていたが、ユウの「何となく、玉城は玉城だから」という言葉で一蹴されていた。
「ゼロも時間あったら来ると良いよ。ACについて知っときたいでしょ」
その言葉にゼロは頷き共に奥の倉庫へと向かった。
――――――――――――――
「随分と嬉しそうね」
倉庫へ向かう途中、僕が鼻歌を歌っているとカレンが話しかけてきた。
そりゃ嬉しいさ、ようやく機体構成を本格的に変えられるんだから。今までは腕部武装くらいしか変えられなかったのが、KMFがあるおかげで装備を変えることが出来る。こんなに嬉しいことはない。
そういうカレンの方も嬉しそうなので理由を聞くと紅蓮弐式のパイロットとして選ばれたらしい。ということは実質彼女が騎士団のエースパイロットなわけだ。彼女がKMFに乗ったところを見たことがないのでわからないけれど、最新鋭機を任されるということは相当の腕なのだろう。
端末でトラップを解除してから扉を開けて中に入り、すぐに閉める。世間的にはまだストレイドは騎士団と共に行動していることは知られていないので、新団員には見せないようにしている。下手に情報漏れてもやだしね。照明をつけるとストレイドの傍に大きなコンテナがいくつも転がっている。予め用意してあるので今回は何処から来るのか、とか警戒する必要はなし。
KMFを使ってコンテナを開けた南さんと玉城が驚いていた。
「何だこりゃ、戦車……か?」
「でも砲身が付いてねぇじゃねぇか。おいユウ、こんなもん何に使うんだ?」
「これはストレイドの脚部だよ」
ゼロは仮面を付けているので表情は分からないが、「ほぅ」と声を漏らしていた。
「ACというのはパーツを換装して、その都度戦術を変えることが出来るのか」
さすがにゼロは察するのが早い。しかしそれ相応の設備がないと換装にかなり時間がかかる。今回もまず現在使用している重量二脚型の脚部の接続を切り離す、KMFに上半身を持ち上げてもらいタンク型の脚部へと移す、そして接続、といった感じになる。
ARGYROSは重量型の機体なのでかなり重い、なので3機のKMFを使って持ち上げてもらう。30分程かけてようやく脚部の換装が終わった。専用の設備があればもっと手早く出来るのだが、さすがに贅沢は言えない。
次いで、肩部、背部と装着してもらい、最後に左右の腕に武装を装備すればアセンブルは終了する。見た目だけでは右腕のガトリングガン以外の武装は何かわからない。
「肩も背中もパッと見じゃわからないけど……どういう武装をつけたの?」
「背中のはコンテナ……? 4つに分かれているみたいだが」
左腕にも箱のような物。
「肩のは効果範囲の広いECM、背中と左腕は使ってのお楽しみ。あぁ、あとそれからさ」
一番大事なことを忘れちゃいけない。
「皆に発信器みたいなの持たせられない? 小型のでもいいんだけど」
カレン達は顔を見合わせていた。まぁよくわからんわな。
――――――――――――――
作戦決行当日、ナリタ連山。胴体付きの戦車という言葉が似合う形態のストレイドが掘削機や人員等を積んだコンテナを牽引して山を登っていた。その後ろには同じくコンテナを運ぶ無頼。こちらは前後1機づつでなんとか運べているという状態。無頼の上やストレイドの戦車型の脚部にも黒の騎士団を乗せて運んでいる。
今回の詳しい作戦内容を聞いているのはカレンと扇、ユウだけであるが故に、他の団員達は作戦がどういったものなのかは知らないので軍事教練だ、温泉掘りだと冗談を言いながら気楽に考えていた。ゼロは別行動を取っているのに加え通信機も使っていないので、作戦について問いただすことは出来ない。
「ゼロの奴、どういうつもりなんだ? ハイキングなんて言ってたけど」
「ユウは何か聞いてる?」
「さぁね、でも武装してる時点で大体絞り込めるでしょ」
ユウは今回の作戦を知っているが故にしらばくれつつも返事をする。
ゼロが言うにはここは日本解放戦線の本拠地らしく、それを殲滅する為にブリタニアの第2皇女であるコーネリアが軍を率いるという情報がもたらされたらしい。今回はそのブリタニア軍を叩くのが仕事である。
(そう、"仕事"だ。余計なことを考える必要はない。ただ作戦に従事すればいい……私情を捨て、心を殺せ)
山頂でゼロと落ち合い、指定された場所へと掘削機を設置していく団員達。
ユウはコクピットの中で待機していると、レーダーに多数の反応を確認すると外に出てゼロに報告する。
「ゼロ、ブリタニア軍が動き出した! 敵KMFの反応、最低でも100機!」
わざと大声で言った為、全員の耳に入り騒然としていた。普通に考えてそんな戦力に勝てるわけがない。おまけにそれを率いているのがあのコーネリアともなれば勝ち目は零だ。コーネリアは自身のKMFの操縦の腕も指揮能力も高い。幹部メンバー達はゼロに作戦をあえて伝えなかったことについて文句を言い始めた。
「ユウ! てめぇも知ってたんじゃねぇのか!?」
「うん、知ってたよ。それが?」
表情を変えずにケロっと答えたユウの態度に玉城の苛立ちは募る。
「だってさぁ、皆作戦内容言ったらブルって反対したでしょ。だからこうしてゼロが皆のケツに火つけてくれたんじゃん。もう追い詰められたことには変わりないんだからさ、死にたくなかったら戦いなよ。それに武器を持った時点で死ぬのくらいは覚悟してるでしょ?」
「そんな……死ぬ覚悟だなんて、そんなも――」
「『殺しているんだ、殺されもするさ』ってね。今更ゼロに詰め寄ったって遅いよ。死にたくなかったら、ほら、準備準備」
そう言ってユウはストレイドへと向かって行ってしまった。
「随分と酷い発破のかけ方ね」
「はて、何のことやら」
向かう途中のカレンからの言葉にとぼけて返す。そんな中思うのは先ほど発した自分の言葉。
『殺しているんだ、殺されもするさ』
どこかの誰かに言われた台詞。それが誰かは思い出せないが、少なくともあまり良い気分はしない。
ブリタニア群の総攻撃が開始された。大量のKMFが山を囲うようにして展開、包囲していく。日本解放戦線側からも無頼や固定砲台を使っての反撃が行われているが、KMFの性能と数、そして操縦技量の差であっと言う間に破壊され突破されていく。特にコーネリアの部隊やその配下のダールトン将軍の部隊のKMF"グロースター"の突破力は凄まじく、次々と破壊されていった。
しばらくすると解放戦線の本拠地入口が発見されたのか、信号弾が撃ち上がると共にその地点に敵が集まり始めた。これでブリタニアに刃向うエリア11の勢力は全滅させたと、誰もが確信したその時、ついにゼロが動き始めた。
「これで全ての準備が整った! 黒の騎士団、総員出撃準備! これより我々は、山頂よりブリタニア軍に奇襲を敢行する。作戦目的は、ブリタニア第2皇女コーネリアの確保にある!」
団員は半ばやけくそに突撃体制に移る。生き残る為に敵を倒す。自分達にはゼロとストレイドが付いている、彼らが居れば勝てる、そう信じてゼロの指示を待つ。
「ユウ、頼む」
ゼロの命令に従いECMを展開。効果範囲が広いのでおそらく麓の街まで通信障害が起こっていると思われる。
「カレン、一撃で決めろ」
紅蓮は地面に突き立てられた装置に右腕を押し当てた。
「出力確認。輻射波動機構、外態状態維持」
紅蓮の右手から蒸気のようなものが立ち上がり始める。
「外周伝達!」
トリガーを一気に押し込むと同時に紅蓮の右手から赤黒い稲妻のような光が辺りに走る。光が消えると右腕からは薬莢の如くカートリッジが排出される。何も起こらないので失敗したかと思われたが、直後強烈な地震が起き、崖が崩れ始めた。崩落の勢いは凄まじく見る見るうちに雪崩れて行き、その崩落によりブリタニア軍KMFの大半が巻き込まれ大きなダメージと混乱をもたらした。
「今だ、一気に突き進め! 総員、計画通りに動け!」
敵の混乱に乗じて一気に叩く。ストレイドの戦闘能力があれば容易に突破できる。そしてコーネリアを捕縛する。
だがその言葉に従わない機体が1機、ストレイドが動こうともしない。
「ユウ、どうした! 今のうちに――」
「があぁぁぁぁぁぁ!!」
突然ユウの機体から悲痛な叫びが通信機を通して聞こえ始めた。ユウは頭に激痛が走り、頭を抱えながら叫びもだえ苦しんでいる。誰からの問い掛けにも答えられず、痛みに耐えきれずに白目を剥き気絶してしまった。ユウとの接続が切れたことでストレイドもまたその目から光が消え、沈黙した。
「ユウ、返事をして! ユウ!」
カレンが必死に呼びかけるも返事は一向に返ってこない。ユウの作戦参加は不可能と判断したゼロは決断を下した。
「全機、ユウに構うな! 奴の機体は頑丈だ、たとえ敵に見つかっても早々に破壊されることはない!」
「しかし……!」
「優先すべきはユウではないはずだ! 目的を見失うな!」
その言葉に皆が躊躇しつつも動き、ゼロを先頭に山を一気に駆け降りる。
優先すべきはコーネリアの確保。今を逃せば敵が体勢を立て直す、その前に叩かなければならない。ならば今はユウを捨て置くべき、というのがゼロの考えである。戦力の大幅な減少は避けられないが、精神状態にまだ不安があったことからユウが作戦遂行不可能となることも想定に入れて考えられた作戦である為、たとえユウがおらずとも作戦の完遂は可能だ。ユウの身に何があったかはわからないので歩兵組を数名だけ残して残りでコーネリアを叩く。
ゼロの行動にいち早く気付き、迎撃に向かう機体があった。頭部のファクトスフィアと両肩を赤く塗ったサザーランド、純血派のジェレミア・ゴットバルトのKMFである。ジェレミアは以前は軍内でもそれなりの地位にいる人間であったが、ゼロにより汚名を着せられ地位と名誉、そして信用を失うこととなった。それによりゼロには復讐心を抱いている為、その姿が確認された途端に持ち場を離れゼロのもとへ一直線に突き進む。
「ゼェェェロォォォ!!」
黒の騎士団の無頼を視認するとアサルトライフルの引金を引き絞り前方の2機を瞬く間に破壊した。突如現れたサザーランドにゼロ達は足を止め対峙する形となり、純血派のヴィレッタ、キューエル達もジェレミアに続きゼロのもとへと駆けつた。
「ゼロォ、いるのはわかっている! この私と、ジェレミア・ゴットバルトと戦えぇ!!」
「お久しぶりですね。ですが今はあなたに構っている暇はないのですよ、"オレンジ"君?」
「オ!? オ、オオオオオレンジだとぉ!? 貴様ぁぁぁ!!」
ジェレミア卿は決してKMFのパイロットとして弱いわけではないが、ゼロのこととなると頭に血が上り無謀な行動を取るようになってしまっている。また"枢木スザク強奪事件"の際に、ギアスによって操られる直前にゼロがジェレミアに放った「オレンジ」という言葉のせいで軍内で不信感を抱かれると共に"オレンジ"という不名誉な徒名を付けられてしまった為、その言葉を聞くと気に障り、今回もその言葉に激昂し我を忘れて突撃するという愚行を犯した。
その突撃をゼロの機体を飛び越え手前で食い止めた赤いKMF――紅蓮弐式。ブリタニア側は見たこともないKMFの出現に動揺した。
「全機手を出すなよ! これは私の決闘だ!」
「しかし……!? こいつは未確認のKMFです! ミストの件もあります、どうか冷静になってください!」
ヴィレッタの言葉は届かず、ジェレミアは両腕のスタントンファを展開し突撃する。右腕で薙ぎ払うが紅蓮の異様な右腕に容易く止められる。追撃に左腕を振り下ろす、横に避けられる。ランドスピナーを用いた水面蹴りを放つ、跳躍で避けられる。機体の速度もさることながら、パイロットの反応速度も並ではなく掠りもしない。
紅蓮は着地と同時に左手にナイフを持ち切り掛かる。寸でのところで受け止めるがパワーに差があり押し返すことが出来ず抑え続けるのがやっとである中、紅蓮はその右腕を弓のように引き絞り構える。
(あの右腕……何かある! 不味い、距離をとらなくては……!)
紅蓮のナイフの重心をずらし、すぐに距離をとった、が。紅蓮の右腕が突如伸びその巨大な腕で頭部を掴まれた。
「……ごめん、さよなら」
カレンは輻射波動のトリガーを押し込むと赤黒い光がサザーランドを襲う。ジェレミアのサザーランドが内側から膨れ上がりボコボコと異様な形へと変貌していく。輻射波動は要は指向性を持った強力な電子レンジである。それを真面に食らったKMFは内側から暴発・膨張を起こしていく。当然中のコクピットが無事なわけもあるはずがなく、ジェレミア自身にも深刻なダメージが蓄積していく。
「こんな……ゼロが目の前に居るのに……この私が……ゼロを――」
機体が吹き飛ぶが先かジェレミアの死が先か、というところで機体の脱出機構がオートで作動して後方へと飛ばされて行き、その後サザーランドは爆散した。紅蓮は右腕の機構を戻し、カートリッジが排出する。
「いける……! この紅蓮弐式なら……!」
その後キューエル卿も紅蓮によって破壊された後、純血派の部隊はヴィレッタが指揮を執ったことにより持ち直し始めた。カレンはゼロの命により別行動をとっており、今現在ゼロ達は純血派の足止めを受けている。他の場所でもブリタニア軍が少しづつ体制を整え次第に押され始めた。特に歩兵組の負傷による戦線離脱や戦意喪失、死亡等苦戦が著しかった。それは幹部の女性メンバーである井上が指揮していた部隊も例外ではなく、負傷者数名を抱えた状態で身動きが取れなくなっていた。
「先輩……私達のことはいいので逃げてください……」
「馬鹿なことを言わないで……!」
新入りの少女を激励しつつ怪我の治療を進め、以前ユウに言われた言葉を今更ながら実感する。負傷した仲間がこれほどまで負担になるとは思ってもみなかった。
このままここに居ればいずれ必ず見つかり殺されるということはわかっているが、動くことが出来ないでいる。いっそ彼女の言葉に従って逃げてしまえればどんなに楽か。だがそんなことは許されないし絶対したくない。せめて1機でもいいから味方のKMFが来てくれれば……。だがその願いは最悪の形で叶えられることとなった。現れたのはブリタニア軍のKMF、それも2機同時に。
「負傷した黒の騎士団のメンバーを発見、いかが致しますか」
「捕虜にする必要はない。殺せ」
「イエス、マイロード」
サザーランドに銃口を向けられ井上は死を覚悟し少女を抱きしめ目を瞑った。
突然空から複数の何かが降って来て地上に突き刺さる音が聞こえた。目を開けると自分達と敵のKMFとの間に筒状の物体が地に3本突き立っていた。物体が動き出し形を変えていき、くるりと一回転した後筒の先に開いた穴をKMFに向け――。
「しまっ――!? 撃てぇ!」
KMFが撃つよりも先に3本の筒が火を噴き2機を纏めて破壊した。
「これは……セントリーガン……?」
警戒しながら3本のセントリーガンの様子を窺うがこちらを攻撃してくることはなく、まるで自分達を護るかの如く右に左に首を振って周囲を警戒していた。
「もしかして……ユウ?」
落ちてきた空を見上げて我が目を疑った。
ナリタ連山一帯にけたたましい音が響き渡ったことによりブリタニア軍、黒の騎士団関係なく音の聞こえた上空を見上げた。その瞬間、背筋が凍る者、血の気が引く者、絶望して死を覚悟する者、生を諦め笑い出す者、意地でも生き残ろうと決意する者、何が起こったか理解出来ない者、理解したくない者。そこには無数の小型ミサイルが降り注いできていた。
「全機、生き残りたくば死ぬ気で撃ち落とせ!」
ブリタニア軍人は必死に声を絞り出して叫んだ。ゼロも軽く絶望しつつも同じく撃ち落とす様命令を下そうとした時にあることに気付いた。ミサイルはこちらに向ってきている様子がなく、全てブリタニア側へと向かって行っている。
(まさか……ユウか!? ……だとするなら今が好機!)
「あれはユウの援護射撃だ! 総員、ミサイル着弾後生き残りを殲滅せよ!」
つまりはユウが復活したことを意味している。
(この戦い……貰ったぞ……コーネリア!)
何かあったらコメントへお願いします。
初の前後編。下手すると三部編成になるかもしれませんが。
今回使われた左腕部武装は「UST-21 GLASGOW」。
CE属性のバトルライフルを撃ち出すセントリーガンです。
サザーランド相手にグラスゴー、それもまたいいじゃない。
今回のアセンについては次回の後書きにでも出します。
とりあえず今回は左腕だけ。
次回はもうちょっと早めに出せるように頑張ります。
あぁでもACVDが出てしまう……。