◎side
ここはとあるビルの屋上。そこでは1人の青年がゲームをしていた。
「ここにいたのか。」
その青年に近づく1つの人影。だが、その影は人の形ではなかった。人よりも怪物。龍の姿を彷彿させるような姿だった。
「よう、グラファイト。」
その怪物の名はグラファイト。緑色の体を持ち、右腕に装着された黒色のデバイスを用いてバグスターウイルスの散布を行ったり、感染者の状態監視を行うバグスターだ。
「バグスターウイルスの散布の調子はどうだ?」
「すこぶる順調だ。今も1人ゲーム病に感染している。」
「ふっ、そうか。今度は仲間が増えるといいな、グラファイト。」
青年はそういうとゲームクリアと書かれているゲーム機を置いて立ち上がる。
「そうだな、パラド。」
パラド、と呼ばれた青年は遠くを見て不敵な笑みを浮かべた。
◎side out
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永夢side
今僕がいるのは音ノ木坂学院の中庭。
今現在、昼休みのためここで作ってきた弁当を食べている。ちなみに海未ちゃんたちも一緒だ。
あのあと海未ちゃんとことりちゃんが廃校についてイマイチ理解していなかった穂乃果ちゃんに説明をして、穂乃果ちゃんの方も分かったみたいだ。
その穂乃果ちゃんはというと、
「いや〜今日もパンがうまい!」
と言って口いっぱいにパンを含んでいた。
「また、パンなのですか?」
「またってことはいつもパンなの。」
「うん、そうだよ。パンは美味し・・・」
「ん?どうかした?」
「だ、男子生徒がいる〜〜!?」
「「「え?」」」
な、なんかすごい今更なことで驚かれた。っていうかさっき海未ちゃんが試験生のこと言ってなかったっけ?
「穂乃果!さっき説明したでしょ!彼は試験生です!」
「あ、そういえばさっき言ってたね!」
その言葉に海未ちゃんが深いため息をついた。いつも苦労してそうだ。
「と、とりあえず自己紹介するよ。僕の名前は宝生永夢。よろしくね。」
「私、高坂穂乃果!よろしくね!あ、あと名前呼びでいいよ!」
「分かった、穂乃果ちゃん。こっちも名前呼びでいいよ。」
と、こんな感じで自己紹介を済ませるとそこに、
「ちょっといいかしら?」
と声をかけられた。声がした方向を向くとそこには金髪ポニーテールの女子生徒と紫髪でツインテールの女子生徒がいた。っていうか金髪の人は生徒会長だ。紫髪の人の方は誰だろう?
「誰?この人たち?」
「知らないのですか?金髪の方は生徒会長で、もう一人は副会長ですよ。」
ふ〜ん。副会長だったのか。ていうか穂乃果ちゃんはなんで知らないの?
「南さん。あなた確か理事長の娘さんよね?何か今日のこと聞いてない?」
「い、いえ。私も今日知ったばかりなので・・・」
え?ことりちゃん、理事長の娘だったの!?でもそう言われれば納得できるね。さっきことりちゃんをどっかで見たことあると思ったけど、理事長のことだったのか。
「そう。ならいいわ。あと、あなたが試験生の宝生永夢君よね?」
「あ、はい。そうです。」
「試験生として、しっかり考えて行動してください。それじゃあ。」
「ほな〜」
そう言ってこの場を離れようとする生徒会長たちを穂乃果ちゃんが呼び止める。
「あ、あの!」
「?」
「その、本当に学校なくなっちゃうんですか?」
と、穂乃果ちゃんが質問するが、
「・・・あなたたちには関係ないわ。」
と言って、今度こそこの場を去っていく。
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あのあと僕たちは教室に戻り、海未ちゃんたちは廃校阻止のために色々考えている。そこに穂乃果ちゃんの提案で、この学校のいいところを探すことになり、各々でいいところを挙げているところだ。
「じゃあ、穂乃果から!えっとー、歴史がある!」
「なるほど。他には?」
「他?伝統がある!」
「それは最初と同じことです・・・」
「え〜!?じゃあことりちゃん!」
「うーん?強いていうなら、古くからあるってことかな〜?」
「ことりちゃん、海未ちゃんの話、聞いてた?」
なんともまぁ不安な内容だ。
「あ、でも調べて部活動でもいいところ見つけたよ〜!」
「本当!?」
「と言っても、あまり目立つ内容じゃあないけど〜」
そう言って資料を出す。
「珠算関東大会6位」
「かなり微妙だな。」
「合唱部地区予選奨励賞」
「もう一声欲しいですね。」
「ロボット部、書類審査で失格」
「どうやったら書類審査で失格になるの?」
「てか、最後のダメじゃん!」
「そもそもの話、目立つ部活があれば廃校になんてならないよ。」
「それもそうですね。」
話あった結果、3人はため息をついた。
「私、この学校好きなんだけどな・・・」
「ことりも・・・」
「私もです・・・」
そう言って落ち込む3人。
その3人に対して僕は何もできず、ただ見てることしかできなかった。そして、その日はお開きになった。
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「ただいま〜」
「おかえり〜。学校どうだった?」
「あ、明日那さん。それがですね・・・」
僕は家に帰って出迎えてくれた明日那さんに廃校になることを伝えた。
「だから共学化になるんだ。」
「うん。それで今日海未ちゃんと海未ちゃんの幼馴染2人と一緒に廃校阻止するために何かできないか色々考えたけど何も思いつかなくて、それで落ち込む3人を見てるしかできなかったんだ。一体どうすればいいのか。」
「永夢。」
「うん?」
「あなたは今日から学校に通い始めたの。まだ何もできなくて当たり前。これからゆっくりできることを見つければいいの。どんなことでも、あなたがやりたいことなら、私はそれを応援するよ。」
「!」
明日那さんの話を聞いてわかった。そっか。これからゆっくりと考えて行けばいいんだ。僕はそのことに気づかせてくれた明日那さんに笑顔でお礼をいう。
「ありがとう、明日那さん。」
明日那さんはそれを聞くと、安心したような顔で僕をみる。
「ほら、この話は一旦お終い。早く着替えておいで。」
明日那さんにそう言われ、僕は自分の部屋に戻る。この日はあとはご飯食べたり明日那さんとゲームして終わった。
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翌日、支度を終えて僕は家を出て、しばらく歩くと穂乃果が走ってるところを見かけた。ただ、1つ気になったのが穂乃果ちゃんが向かっている方向が音ノ木坂学院方向じゃないということだ。気になった僕はそのまま穂乃果ちゃんのあとを追う。
「おーい、穂乃果ちゃん!」
僕が声をかけると穂乃果ちゃんはこっちを向く。
「あ、永夢君!おはよう!」
「うん、おはよう。こっちは学校の方向じゃないけど、どこに向かっているの?」
僕が聞くと、穂乃果ちゃんは手に持っていたパンフレットを見せてきた。
「UTX学院?」
「うん。ここ最近人気上昇中の学校なんだ。どうやって生徒を集めているのか気になって、今から確かめに行くんだ。」
なるほど。最近人気の学校に行って情報収集か。確かにいい方法だ。
「それなら僕も一緒に行くよ。」
「本当!?」
「うん!」
そして僕らはUTX学院に向かう。
しばらく歩いて着いたのだが、
「これ、本当に学校!?」
僕たちの目の前にあるのはガラス貼りのビルでとても学校と思えない容姿だった。
穂乃果ちゃんも驚いているのかガラスに顔を貼り付けている。・・・はたから見たら危ない人だよな、あれ。
その瞬間、すぐ近くから歓声の声が聞こえた。
気になった僕たちは声が聞こえた方向に向かう。
声が発せられた場所はUTXの入り口についている大画面のモニターがあるところで、そのモニターにはUTXにようこそ的な感じで宣伝している3人の女の子が映っていた。
僕はもちろん、穂乃果ちゃんも知らないようで、「何あれ?」みたいな感じに見ている。
すると、たくさんの人だかりが再び歓声を上げた。
何ごとかと思っていると穂乃果ちゃんの隣に、春先とはいえ暑いはずのコートにグラサン、マスクをした小柄なツインテールの女の子が来た。
・・・・・何これ?どう見ても不審者なんだけど。正直怖い。穂乃果ちゃんも絶句しているよ。
と、思っていたがあろうことか穂乃果ちゃんはその不審者に
「あのぉ〜」
と話しかけた。・・・嘘でしょ。
話しかけられた少女の方は「何!?今忙しいんだけど」と不機嫌そうに返してくる。
穂乃果ちゃんは気になっていたことを質問する。
「あの、質問なんですけど・・・あの人達、芸能人か何かですか?」
すると少女は「はぁ!?」と驚きの声をあげ、穂乃果ちゃんは「ヒィ!?」と怯えた声をだす。
「あんたそんな事も知らないの!?そのパンフレットに書いてあるわよ!どこ見てんの!?」
「す、すみませ〜ん!」
「はぁ、A-RISEよ、A-RISE。スクールアイドル」
「アイドル?」
なるほどスクールアイドルか。確か前にニュースで見たな。学生だけで結成されたアイドルって。
しばらくA-RISEのPVを見ていると隣からパサッて音がした。
見ると、穂乃果ちゃんがパンフレットを落としたらしい。
その顔は衝撃に彩られていた。
僕は「穂乃果ちゃん?」と声をかけるが返事がなく、代わりに聞こえて来たのは「これだ」という声。
次の瞬間、穂乃果ちゃんは顔を上げ、「これだぁ〜〜!!」と叫んでいた。