歪んだヒーロー
「あれー?弔君、オールマイトいないよ?」
「は…?なんだよそれ…折角こんなに大軍引き連れてきたのに…」
「残念だね…あ、でもイレイザーヘッドはいるよ!」
雄英高校1年A組の平和な実技演習に、突如として現れた黒い霧。
それから出てきたのは、手を身体中につけた白髪の男と、深緑の髪色をした少年だった。白髪の男は残念そうにため息をつく。
「イレイザーヘッドじゃ意味無い…そうだ、子供を殺せば、来るのかなあ…?」
恐ろしい言葉と共に臨戦態勢に入る敵。生徒たちは、足がすくんで動けない。好奇心と勇気を奮い立たせ、爆豪は、敵を見下ろして睨みつける。
「…デク?」
その中に顔馴染みを見つけてしまった爆豪が、震える声でその口に馴染んだ名を呼んだ。
「爆豪!?」
「わぁああ!かっちゃんだぁ!」
「誰だアイツ!?」
爆豪勝己は、目を見張って敵の少年を見つめる。動揺したように小さく「有り得ねぇ」と呟きながらも、目線は外さない。
「デク…緑谷出久。無個性のくせにヒーロー目指して、雄英受けるつもりでいたクソナードだ」
「ヒーロー目指してって…でも今敵と一緒に…!?」
爆豪の視線の先で、緑谷の体が霞む。
「ねぇ、かっちゃん」
「…ッ!?は…!?お前…」
「僕、個性貰ったんだよ。もう無個性じゃないんだあ」
「なん…」
「爆豪伏せろ!」
ハッとした爆豪がしゃがみ切島が切りかかるが、ひょいと避けられる。軽い身のこなしと先程の個性を除けば、全てが爆豪勝己の知る緑谷出久だった。
「わぁああ、待って待って、僕はかっちゃんと話を」
「──緑谷出久。残念ですが、死柄木弔が呼んでいます。ここは私が」
「…えー…まあいいや。かっちゃん!また後で遊ぼうね!」
緑谷が黒い霧の中に呑まれ、白髪の男──死柄木弔の横に立つ。
「いきなり行くなんて酷いじゃないか…出久ー…」
「ごめんごめん。あぁ、でも、嬉しいなぁ…。かっちゃん、また会えるなんて…」
漏れてくる歪んだ笑みは、抑えきれなかった。
「あの赤髪の子は誰なんだろ…かっちゃんの友達かなあ…じゃあ、丁寧に扱わなきゃ」
かっちゃんの大事な人ならね、とつぶやき、死柄木に話しかける。
「ね、弔君。かっちゃんと赤髪の子は殺しちゃダメだよ?」
大事な大事な、僕の幼馴染なんだ。楽しそうに笑う緑谷に、死柄木は優しい笑顔を向けた。
「もちろん。出久がそう言うならな…あ」
遠くで黒霧が、生徒を散らしたのが見える。
「かっちゃんなら大丈夫だよ!」
だって、めちゃくちゃ強いんだ!
緑谷は目を細め、更に笑みを深めた。
死柄木弔は緑谷出久にべったりです。