【完結】Why will the hardship take me? 作:雷電p
―――好奇心は、時に自分を殺す―――
時は、少し前に遡り――――――
あの事件後のことである―――――――
[ アイドル研究部・部室内 ]
「「風神雷神伝説ぅ~??」」
「そうなんですよ!! 今度こそ、いいネタを掴んでしまったんですよぉ~!!」
そう意気揚々と話を盛りたてる私こと・島田 洋子は、つい先日とんでもないニュースを手にしてしまったのです! その手にしたことの喜びに浸ることを抑えられず、つい、こうしてお2方に口を開いてしまったわけなのです。
「いいネタねぇ~……とは言っても、前回の幽霊騒ぎだって、とんだパチモンだったじゃねぇか。 今回のそれも同じようなもんじゃあねぇのかぁ?」
「とんでもない! 前回のは、たまたまそうだっただけで、今回のは確証があるから良いのです!」
明弘さんは疑い深そうに私に聞いてくるのですが、こちらもちゃんとした証拠があるのです。
「いいですか、お2方。 私はちゃんとした聞き込みとネットを駆使して手にした実にホットなモノなのですよ? 聞きたいですか? そうですよね、聞きたいですよねぇ~?」
「どないせ、聞かせるつもりじゃんかよ………」
「まったく、こうなった洋子は止められないからな。 明弘、腹をくくれ」
「ふっふっふ……では、お教えしましょうか!」
そう言って、私は懐からその情報が記されてある手帳を取り出しまして読みだします。
「え~っとですね……まず、この風神雷神と言うのはですね、4、5年前に突如としてアキバに現れた怪物らしいのです! なんとも、その動きはまさに風の如く、雷の如くとも呼ばれてまして、それらに敵対する者を一瞬にして薙ぎ倒すというのですよ! しかも面白いことにその2神は、街の裏路地とかに群れるチンピラばかりを標的としておりまして、一部ではチンピラ狩りとも呼ばれているそうなのですよ~。
それにそれに、顔をパーカーやマスクなどで覆っているために正体が分からない、まさに伝説なのですよぉ~♪ どうです? 面白いですよね? そうですよね??」
手帳に書かれてあることを読んで行くだけで心が躍り出しそうです! 何てったって、伝説ですからね! その伝説の一端を知ることが出来ればと想像するだけで、記者魂が燃え盛っていくのです!
それに、もしかしたらその正体も………フフフッ、いい感じに熱くなってきましたぁー!!!
しかし、私がここまで熱くなっているのに、蒼一さんたちは対照的に冷えてますねぇ………。 そんなに興味が無かったのですかねぇ? てっきり、喧嘩などをしていたお2方なら喰い付くと思ったのですがねぇ………?
「……なあ、洋子。 それを知ってどうするつもりだ?」
至って冷静なブレス音のような声が蒼一さんの口から漏れ出てきます。
「どうするって、もちろん公表するか、私の取材コレクションに加えるつもりですよ~♪」
「……ならやめておけ」
「……はい?」
「洋子。 それはお前みたいなのが触れちゃいけない領域だ。 さっさと、他のことを取材してみせるのだな」
そう苦言のような言葉を漏らしますと、蒼一さんは立ち上がって退室してしまいました。 どういう意味なのでしょうかねぇ……? 私にはサッパリです。
「ま、兄弟の言う意味もよく分かる気がするわ。 今回は、兄弟の言うことをちゃんと聞いておいた方がいいと思うぞ、洋子」
「なっ! 明弘さんまでぇ………。 どうしてなのですかぁ~?」
「どうしてって……洋子も知ってるだろ? アキバの魔の裏繁華街をさ。 その…なんだ? 風神やら雷神やらが出没するのって、そんな危ないところなんだろ? おめぇみたいなのが行ったらどうされるかわからねぇよ………」
「そこんところは御心配無く。 もう既に、何度かあそこは通っております故」
「おいおいおい……! 何でそうも無茶をする? やめておけって!!」
すると、いきなり明弘さんの口調が荒くなりだしたと思いきや、表情まで険しく眼を見開いていました。 そんなに危険な場所なのでしょうか? 私から見れば、街灯が無いからちょっと暗い程度の場所としか認識していませんでしたからね。
「心配して下さるのはありがたいですが、大丈夫ですってば。 私なら何とかなりますんで♪」
「お、おい……! その余裕と油断がお前を危険にさせるんだぞ……!! いいから言う通りにするんだ!!」
「もぉ~心配性なんですからぁ~……おっと! そろそろですね、では、行ってきまーす!!」
そうこうしているうちに、出没の可能性がある夕方近くになってしまいました。 これは急がねばなりませんね。 何せ、一瞬しか見ることが出来ないだろうと考えておりますからね。
手帳を懐に入れまして、今回は愛用のではなく小型カメラを装備しまして部室を飛びださせていただきました! 待っていてくださいね、私がこの手でその正体を暴かせていただきますよ!!
その時、私の後ろの方から明弘さんの心配の声が聞こえてきたのですが、耳にすることはしませんでした…………。
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―――
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[ アキバ……??? ]
「ここですね……」
繁華街の賑やかな音をBGMにしながら立ち尽くすこの場所。 ビルとビルとの間に出来上がった1つの路地。 ここが例の魔の裏繁華街……その名の通り、日はまだ照っているのに真っ暗ですねぇ………。
そこに少し顔をのぞかせてみせると、何やら不穏な空気が……。 以前よりも禍々しさを醸し出しているような気がしてなりませんね………。つまり、今日出現するのではないでしょうか!?
「フフフッ……これは、絶好のチャンス到来かもしれませんね……! 虎穴に入らずんば、何とやらですよ! さあ、参りましょう!」
気分も向上、まさしく意気揚々と言った感じに路地に足を踏み入れる私。 ザッと一歩踏み出すだけで感じる寒気…と共に湧き上がってくる高揚。 このちょっとしたギリギリのラインを渡っている時のスリリングが堪らないです……! これを感じたいがために来ていると言っても過言ではなさそうですね………。
例えるのなら、戦場カメラマンが家族からの反対を押し切って、どうして戦場ばかりに行こうとするのか? それは、そこに自分の知らないものがあると言うことです!
自分の知らないもの……それは、目に見えるモノだけとは限りません。 跳ねかかる泥。 鼻がねじ曲がりそうになる悪臭。 風のように飛び交う銃弾。 生と死の狭間にいるという、平穏の暮らしの中では絶対に味わうことのできない痛感がジワジワと身体をシビレさせるのです。 それがある種の中毒となってしまい、何度も何度もこうして足を踏み入れてしまうのです………。
多分、今の私もカタチは違えど、同じような領域に踏み込んでいるのでしょう。 何せ、私が今あげた例と同じようなことが起きているのですから……。 止められても行きたくなる……それが今目の前にあるのですから…………。
そうして私は、ズイズイと闇の中に身を投じていくのでした―――――
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しばらく進んでいくと……おやっ、あそこに人がいるのを見てしまいました。 いろいろと情報が利きたいものですねぇ~♪ こんな場所にいても、取材したくなってしまう欲が抑えられないようで………。
「すみませ~ん!」
見ず知らずの人たちに声をかけていくのでした。
「あ゛ぁ?! なんだねぇちゃん……?」
「あらら、御忙しいところすみません。 ちょっと聞きたいことがあるのですがぁ~よろしいでしょうか?」
「なんだぁ~? もしかして、迷子かぁ~?? 女がこんなところでウロチョロと……。 まったくいかんねぇ~女ってのは………」
見た目、かなり柄の悪い男性が2人。 明らかにワルです、と公言するかのような顔つきが特徴的ですね。 しかし、あまり怖くないですねぇ~……。 もっと、スゴイものかと思いましたが……まあいいでしょう。
「いや~、迷子じゃなくってですねぇ……。 今日ここに、風神と雷神が現れるという噂を聞きまして……」
ビゥッ!?
するとどうでしょう。 私がただ、その単語を言った瞬間、2人の顔つきが変わりだしました。 何と言いましょう……とても畏怖するかのような感じです………。
「おい、ねぇちゃん……その話、どこで聞いた?」
「あ、いえ、たまたまネットで調べていたらそんな情報を見つけまして……」
まあ、私が匿名で勝手に書き綴って投稿したヤツなのですがね……。
「ま、マジかよ………! お、おい……あ、兄貴に伝えろ……! ヤツらが……あの悪魔が返ってきやがったってよ……!!」
「わ、わかったぜ……!」
2人の内1人は、伝言役として走って行ってしまいました。 ほほぉ…これは中々の………。
「あのぉ……その、アナタがおっしゃってますその風神雷神と言うのは、どういう方々なのでしょうか?」
「てめぇ……?! 何も知らねぇでこんなところにきやがったのかよ!!……いいか、ねぇちゃん……ココだけの話だぞ………」
そう言うと、その人は辺りをキョロキョロと見まわしつつ、小声になって話し始めたのでした。
「数年前のことなんだがよ……俺の兄貴たちと一緒にソイツらとヤリ合ったんだが、一瞬にしてギッタギタにシバかれちまったんだ………。 忘れも知ねぇ……アイツの前に立っていたと思ったら、次の瞬間、俺は空を飛んでいた……。 何が起こったのかさっぱり分からなからねぇ……。 け、けど、1つだけ言えるとしたら……ヤツらは人間じゃねぇ……ば、バケモノだ……!」
「ば、バケモノ………!!」
「そうだ……と、特に、風神と呼ばれたヤツは手が付けられねぇ程の野郎だ……。 10人がかりで挑んで行ったのに、傷一つ付けることが出来ないまま全滅させやがったんだからよ………! ヤツらに潰された組なんて数えきれねぇんだよ………!!」
見ず知らずの私に対してこんなにもベラベラと喋ってもいいのだろうか? と疑問視したくなるのですが、この人の震え上がっている様子を見ていると納得してしまいます。
この人にとって、それらはトラウマでしかないのでしょう。 こうして喋ることで何とか気を紛らわそうとして、心身を落ち着かせようとしているのでしょうね。 余裕の無い必死さが伝わってきます。
「あ…あのバケモノどもが数年ぶりに帰ってくる………か、考えただけで………ッ!!」
「す、すみません……! 余計なことまで思い出させてしまって………」
「い、いいんだ……それより、そんな大事なことを教えてもらって助かった……。 礼を言うぜ」
「い、いえ…そんな……」
「ねぇちゃんのおかげで、今回は危機を迎えずに済むかもしれねぇ………! こっからは危なくなるからよぉ、ねぇちゃんははよ帰れよ」
そう言い残して、あの人も行ってしまいました。………というか、ワルモノから感謝されるって……なんだか複雑ですね………。 しかし、いい情報が得られましたね。 当時のあの人たちの様子がわかってきたようです。
今聞いた内容を書き綴り、それを補完。 さて、他にも情報を聞きだしますか………
背後に忍び寄る影に気付かないまま―――――
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―――
――――
「……っと、こんな感じで良いでしょう」
パタンと手帳を閉じて辺りを見回します。
あれから数名の方々からお話を聞かせてもらいまして、いろいろと情報を入手することはできました。 共通することは、揃って畏怖の感情を抱いていたと言うことでしょう。 見るからに厳つく、大柄な人でさえも冷汗をかき続けていましたからね……。
しかし、決定的に今日ここに現れる・現れたという情報は何一つありません。 参りましたねぇ、現れると思って来ましたのに、このままでは何の収穫も得られずに帰ることになりそうです………。
日も暮れて来まして、この場所も一段と闇に包まれてきはじめました。 これはおとなしく帰った方が善さそうかもですね……。 何だか、嫌な感じもしてきましたし………
―――その時でした。
「ねぇ、キミぃ……」
突然、後ろから声を掛けられたのです。
神経を突き刺されるような、何とも不気味な感じがします。 恐る恐る振り返ってみると、そこには数人の男たちが立っていたのです………。
そして、その真ん中に立つ、全身黒一色で固められた男……やや長めの黒髪で、身長もそれなりの高さ。 決して細身で無く筋肉質でも無い、そんな身体付き………
だが、その男だけ気配が明らかに違っていた。 鋭く突き刺さるような視線が、私を殺そうとしていた……。 まるで、死神の鎌を首に突き付けられているような息苦しさを抱くのです……!
「は、はい……何でしょうか……?」
そのあまりのことに動揺しながら私は応えました。 けれど同時に、私の内に何かが蠢くような感じがしだしてきたのです………。
「キミかい? さっきから変な噂を流しているのは………?」
「噂……ですか……?」
「とぼけなくてもいいんだよ、ハッキリ言えばいい……そうなんだろぉ……?」
「だ、だから……何のことなんでしょうか……それこそ、ハッキリとおっしゃらないと分かりませんよ………」
「ほほぉ……言うねぇ……それじゃあ、言うけど……何で、“死んだはずの神”のことを話しているのかなぁ……?」
「死んだ……? 風神と…雷神が………?」
私はその言葉に驚き、目を見開いてしまいました。
すると、その男は口角を鋭く釣り上げ、ニタリとした不気味な笑みを浮かべ始めたのです。 ゾクッと背筋が凍りだすこの感覚……! その男の表情を見た瞬間、危険だという警鐘が鳴り響きだしました!
「アハッ! どうやらキミは知らないようだ……。 アレはこの俺が仕留めた獲物だ。 まったく、造作もないモノだったさ。 それを今まで、風神だの、雷神などと奉りやがって……アホらしい、ただの迷信だった………所詮はただの肉の塊、食い千切って俺の糧となってくれたよ………クックック………」
ヤバイ………!!
私の直感がそう叫んでいます……! 私が今までに出会ってきた中でも、最悪と位置付けるべきとんでもない人物。 それが今、目の前にいるのだと無意識に認識してしまうのです。
この男の言っていることが本当かどうか分かりません……けど、あの口ぶりや気配を肌で知る限りでは、おそらく本当なのかもしれません……! だとしたら、この状況は………ッ!!!
額から流れる汗が地面に落ちるよりも早く、私の思考がフルスロットルで回転する。 私に1人対してこの人数……それに、あの男の口ぶり……感じとり難いですが、頂点に立つ人物であると考えるとしたら私の立場は…………ッ!!!
この時、ようやく自分が置かれている状況に気付いてしまった………!
「そ、そうだったのですか……い、いやぁ~それは失礼いたしました……それでは私はこれで………」
そそくさとこの場から早く立ち去りたかった。 この場に留まっていたら10秒も持たないだろう直感したからだ。
―――――しかし、
「おーっとぉ……まだ、話は終わって無いよ、お嬢ちゃん……」
「ひっ……!」
私の肩を掴んでは、動きを封じさせられたのです……! 身体を揺すらせて逃れようとしました。 けど、肩が砕けてしまいそうになるほどの力で抑え付けるため、逃れられません………!
「逃げたって無駄だよ? もし、俺の手から逃れることが出来ても、部下たちがキミのことを死に物狂いで探しだすだろうね………」
「ど、どうして……どうして、私を………?」
「どうして……? それは簡単なことだよ………俺が……ここの“神”だからだ!! 神はこの世に2つも要らないからだ!!!」
男は掴んだその手で私を地面に投げ飛ばしました。 背中から強く投げ飛ばされたため、痛みが全身に響き、身動きが………! さらに、そこに追い打ちをかけるように私のお腹に…………
ガッ―――――!!
「ぐあっ?!!」
……足で踏みつけてきたのです………!!
そして、そこから執拗に足に力を入れては圧迫させ、足首をひねっては靴先のとがった部分を沈み込ませていくのです!!
「くはははははっ!!! わかるか、この痛みを!! この屈辱を!! 悦べ! キサマは今、神直々の罰を受けているのだ!! ありがたく頂戴されるのだなァ!!!」
「うぐああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ははははははっ!!! いい鳴き声だ、心が洗われていく………!! この声こそまさに、この俺に捧げられる賛美の唄! そのまま高らかに歌い上げろ!! 壊れるまでな!!!!」
「いぎゃああああああああああああ!!!!」
身体が張り裂けてしまいそうな痛み。 腹を突き抜けてしまいそうな辛苦。 息が出来ずに悶え、代わりに身体の内に溜まった液体が吐き飛ぶ。
腹を強く圧迫されることで、あらゆる個所から内なるものが飛び出ていこうと必死になっている。 体液だけじゃありません、眼も、臓器も、それに穢らわしい汚物ですらも関係なく内側から外側へと無理矢理出されてしまいそうになるのです!
最早、ここまで来たら痛いとか言っていられません……。 考えることも辞めたくなるほどの苦しみが1秒ごとに増し加わっていくのです。
「哀れなヤツだ。 あの死んだ者たちのことを口にしなければよかったものを……死んだ今でも尚、ヤツらをシンパする俗物どもがいる………。 そこに、そんな噂を立たせてみせろ……俺の立場が揺らぐではないか!!!
俗物どもは俺だけを見ればいい! 俺だけを信仰していればいい!! 無力で無残にも散ったクソのような神よりも、絶対的な力を持った俺の方がいいに決まってる!!………それをキサマというヤツは!!!」
「あがあああああああああああ!!!!!」
そう……だった……のですか………ど、どうやら……私は踏み込んではいけない領域に……入ってしまったようなのですね………
もっと、知るべきでした……状況把握を怠っていた……事前に調査しておくべきだった……それを一時の高揚感に身を任せてしまったことが……こんな結果に………
数分間にも及ぶ激痛を身体に受け続けたことで、限界を感じ始めました。 口からではありません、全身から肌の毛穴を通して悲鳴を上げるのです。 そして、脳の機能が急低下してきはじめてきます。
よく、テレビなどが電波不振などで画面にノイズが入るのを御存じでしょうか? 今、それと似たようなことが私の身にも起こり始めていました。 視界がぼやけ、気が遠くなっていく………痛覚すらも感じられなくなってしまうほど、意識が身体から抜け出していこうとしているのです。
そして、こう思うのです………あっ、私は死ぬのか……と
「なぁ、なぁ、兄貴ィ~……そんなに凹らなくてもいいじゃねぇ~ですかぁ~? 見たところ、コイツはなかなかの品物だと思いやすぜ?」
「なに……? この俺に指図するつもりか……?」
「い、いえ…とんでもない……ただ、コイツを
「ほぉ……あの変人にか……まあいいだろう。 お前の言う通り、少し恩を与えることをすれば、こちらにとっても有益だ。 使えるモノは何でも使ってやろうじゃねぇか……」
な、何かを話しているようです……ね……。 品物? あの方? 渡す? わ、わかりません……何のことだか分かりません……! な、なのに何故……身体の震えが止まらないのでしょう……恐怖が……私を包み込んでくるのです……!
リーダー格のその男は、私を踏みつけることを止めると、今度は髪の毛を鷲掴みにして頭を持ち上げ出すのです!
痛いッ! 痛いッ!! 髪の毛を思いっきり引っ張り、全身を持ち上げるのですから毛根からブチブチッ!! と鈍い音を立てて引き千切られるわけです。 あわや、生え際の肉すらも引き抜かれそうになるくらいの激痛を感じるのですが、大きく叫ぶことが出来ないまま呻き続けるしかありませんでした……。
「よかったなぁ……あともう少しすれば、貴様も痛みから解放され、快楽の虜になるだろうよ……あの男は、そう言うヤツだ……。 お前みたいな尼でも、そこそこの身体付きをしていやがるんだ、いい想いをさせてくれるだろうよ……クックック……」
「……ッ?!! い…いや……いやぁ………」
その男の言葉が私を絶望のどん底に突き落としました。 それが何を示すモノなのか分かると、震えが止まらなくなってくる。 それに加えてのニタリと冷笑する、物を見るあのドス黒い瞳が恐怖を増長させていく。
何もできないまま、ただ見上げることしかできない……。 その無力さに呆れることで、少しでも恐怖という現実から逃れようとしました。
「おい……あとは、好きなようにしても構わんぞ。 あの男は、処女だろうが傷物だろうがお構い無しだって言ってんだ、その前にたっぷりと味あわせてやるといいさ……」
「くひひひひ……そ、それじゃあ、御言葉に甘えてそうさせていただきますぜ……♪」
掴んだ手を無雑作に放し、地面に叩きつけると、今度は数人の男たちが私に迫ってきました……! 見るにおぞましく、醜い姿を曝け出す欲望の虜たちは、汚らわしい手を無数に差し向ける。
「……いやっ……やめて………!」
自然と涙が滲み出て、命乞いのように懇願するも穢れたモノたちは口が裂けるほどに悦びを示していました。
「こうやって無駄に抵抗しようとするところがそそるんだよなぁ……!」
「安心しなぁ……今、楽にしてあげるからねぇ~♪」
懇願もむなしく、その手は私の身体のあちこちを触れ始めた! ヌメッと湿り気を帯びる脂ぎった指が肌に触れる度、虫唾が走るような戦慄が襲いかかるのです……!! 厭らしく、執拗に同じところを何度も何度も舐め回すように触れ、身体中が手垢で穢れました。
きたない……きもちわるい……こわい………たすけて………
泣き叫ぶこともできない惨めな私は、そんな心情のみが脳裏をぐるぐると渦巻き、身体を弱らせていく。 身体はもとより、心もぼろぼろになっていく……こうやって、私は穢れてしまうのですか………
道半ばで……やり残したことを数多も残して………何とも歯がゆい、何とも情けないのでしょうか………こうしたことなら、明弘さんの忠告に従っておくべきでした………あそこで引き返しておけばよかったのです。
なのに、自らの欲望に従った結果がこれです……ははは…呆れてものが言えませんね………
途切れていく意識の中、私は……後悔の念を抱き続けていました………
そして……最後に逢った明弘さんの顔を想いながら…意識を…………
………は…………な………っ…………………
...Hope is there for...?