【完結】Why will the hardship take me? 作:雷電p
―――光を照らせば陰が見える―――
今考えれば、何と変な話なのでしょうか――――
興味本意で噂を信じ、足を運んだその場所で私はどうなっていたのでしょう……。 あの無法者らがたむろう中で、私は嬲り倒され、あわや私の肢体に消えることのない傷を負わされてしまうことになりかけたのです。 あの時、私はもうダメなんだと思いました。
しかし、そんな私の前に現れました2人の御仁が私に手を差し伸べてくれたのです。 風のように早く、雷のように轟かせるその
涙が止まらなかった……恐怖に陥っていたという理由からではなく、特に何の理由もなく私を救ってくれたことに感謝したかった。 この愚かでわがままな私を救って下さり、ありがとうございました……。
そして、私は――――――
ピンポーン―――――
ごく一般的なベルの音が鳴り出すと、扉の向こうから近付いてくる音が聞こえてきました。
ガチャ―――――
金属の擦れる音を出しつつ重そうな扉が開きだしますと、口角をあげてニヤリと笑っている彼の姿が――――
「よぉ! 来たようだな」
「はい。 それでは、よろしくお願いします」
屈託のない笑みを浮かばせ、やさしく私を迎えてくれる明弘さん。 そんな彼を一目見た瞬間、ちょっと身体がビビッと痺れる感覚を抱くのでした。 何なんでしょうか……? と首を傾げたくなるような不思議な感覚に戸惑いを感じつつも、胸の奥で鳴り始める想いに自然と顔が引き上がっていくように感じるのでした。
い、いえ……! あまり深く考えないように……。
そうは思いつつも、こうも胸が高鳴ってくると抑えにくいモノです。 何とも、奇妙なモノなのです……。
「ほら、早く来いよ」
「……! は、はいっ! 今すぐに!」
催促される言葉に連れられて中に入ると、靴を脱ぎ棄てて、そのまま部屋の中に進んでいくのでした。
―
――
―――
――――
「―――さて、ここに来たと言うことは、わかってるんだよな?」
「それは充分に承知の上です。 そうでなければ、ここに来ませんよ」
「そうだろうな。 別に疑っているわけじゃない。 ただ、洋子の気持ちが知りたかっただけなんだが……もう、聞く必要はなさそうだな」
わずかな微熱を含ませた言葉が私に問いかけてくる。 ソファーに座り、その視線の直線上に居座る彼―――蒼一さんを前にして、息を潜めるかのような気持ちでこの場にいるのでした。
そもそも、私がここに来た理由と言うのは、明弘さんによるものでした。 昨日、私と共に居て下さった彼の口から『明日、兄弟の家に来てほしい。 ただし、無理強いはしないからな』と声をかけて下さった。 その返答には、無論、行くことを約束したのです。
何故って?
もちろん取材のためです―――
私の知らない彼らのもうひとつの顔について、自分の中に潜んでいた好奇心と探求心が疼いてしまったのです。 それと同時に、不純な心もまた、疼きだしていたのです………。
「さて、どこから話せばよいだろうか……」
膝の上に手を組み、唇にそっと重ねたまま全身を前屈みになりながら、彼は口を零す。 重く圧し掛かるような雰囲気と共に、険しい眼つきで睨み付けるので身震いしてしまう。 私が今まで見てきた彼とはまったく別の存在―――本当に、あの蒼一さんなのですか? とさえ疑ってしまいたくなるような表情をするのでした。
ただ一度だけ―――彼が憎しみの心を曝け出してしまったあの時。 それと同じような気がしたのです……。
「とりあえず……なんだ、俺たちが“風神”“雷神”と呼ばれているってのは、わかってるんだろ?」
「は…はい……! そ、それはもう……目の前で見せられたのですから疑いようもありません……」
気を失いかけたあの時、あの場で起きた出来事を今でも鮮明に思い返すことが出来ますので、これ以上の説明は必要ありませんでした。
「そうか…それなら少し踏み込んだ話をしてもかまわないな?」
「はい……! 覚悟は……できているつもりですから……」
「ふふっ…そう身構えることはしなくてもいいさ。 むしろ、気持ちを楽にさせた方がいいかもしれない。 その方が洋子にとって良いだろう」
「は、はぁ………」
身構えるな、と言われましても……そのような眼つきをこちらに向ける限り、落ち着き様も無いのはいかがなものでしょうか? おっしゃることとやっていることが違っては、私もまともな判断がしにくいと言うモノです。
ふぅ、と溜まった息を吐き出すような声が明弘さんから聞こえました。 彼もまた、私の事をジッと見つめていましたが、蒼一さんとは正反対の表情で見つめるのです。 穏やかに包み込んでくれるような安心感が漂っており、自然と彼に引き込まれそうになるのです。
昨日のような温もりを感じさせながら……
「ふむ……兄弟の表情は、いささか洋子には合わなそうな。 ここは俺が説明してやんよ」
「……そんなにダメなのか、今の顔は?」
「あぁ、ゲンドウ張りのポーズを決めても見た目が般若じゃぁ誰も近付きたくもないし、見たくねぇさ」
少し、心配そうな声で明弘さんに聞いてみる蒼一さんに、その感想をドストレートに言ってしまう明弘さん。 まあ、事実ですから何とも言えないのは確か何のですがね………
「あらよっと! そんじゃあ、お話しするとしますか」
勢い付けて蒼一さんの横に陣取り始めると、困った顔を浮かばせながらしょうがない様子で蒼一さんは立ち上がるのでした。 それで、私と向かい合うように対面すると、ニヤニヤと笑みを浮かばせるのでした。 それでようやく背筋を張っていた緊張が解けたような感じでした。
「まずそうだな……俺たちが前から喧嘩をし続けていたって言っただろ?」
「そうですね。 以前、そのようなことを言ってましたね」
「そうそう。 そんで、俺たちがこういうことをし始めたのが中坊の時だから……ざっと5,6年も前になっちまうかな?」
「そのくらい前からなんですか?!」
「そゆこと。 しかも、始まりは何と言うかね、ちょっと巻き込まれちまったって感じなんだ。 当時、何故なのか分からんが、ここいらの中坊たちがかなり荒れてやがったんだ。 毎日がいじめやら喧嘩やらと日に日に増えていく有様だったのさ。 んで、不幸なのか分からんがその嵐の中に俺たちが突っ込んじまったことから始まっちまったってわけ」
「その時のことは、私も薄らとですが覚えがあります。 何か、人間らしからぬ雰囲気を漂わせていた人たちがいて、手品のように人を張り倒していました」
「あぁ、間違いなくそれがあの時の混乱だ。 そんで初めて相手したのが、自分たちよりも2つ上の男たちだ。 しかも、3人もだ。 普通なら見た瞬間に回れ右しておさらばするつもりだったんだが、そうもいかなかった。 ヤツらは俺たちから退路を奪い、追い込んでいった。 目的は何か? 金も含めば、ただの憂さ晴らしもあったそうだ。 酷く荒れてたねェありゃぁ……」
口角を片方に引きあげる歪んだ表情を浮かばせ、その当時をこと細かに話しだすと、明弘さんは不気味にも笑っているようにも見えたのでした。 その彼の口は止まらず、続きを語り始めるのです。
「だが、俺たちもただやられるわけにはいかなかったからよ、撃って出たってわけ。 そしたら、幸か不幸か、俺たちはそこで勝っちまった。 数や体格に勝っていた相手にだ。 それを契機に喧嘩に浸る日々を送ることになっちまったってわけさ」
「暴漢相手に……! し、しかし…それでは明弘さんたちの行っていることを学校の耳に入ったりはしてなかったのですか?」
「そこんとこは抜かりねぇさ。 俺たちの足が付かねぇようにこうやって仮面を付けてたりするわけだ。 あとは……まあ、なんとかやって隠蔽してるわけ」
「……そこはあまり聞かないでおきましょう……」
口軽く危険なことに足を突っ込んでいるようにも捉えられる発言に、肝を潰しかねなくなっています……。 そのようなことを平然とおっしゃるだなんて……手慣れている様子がうかがえます。
「しかし、ただ襲われそうになったからやり返したと言う、正当防衛のように思えることを何も今日まで続ける意味はないと思いますが? それに素性を知られていないと言うのであれば、なおさらではないでしょうか?」
いま聞かされた中で、疑問に思っていることがまさにそれでした。 防衛手段として行っていた喧嘩が、いつの間にか攻撃手段として切り替わった理由が分からなかったから―――彼らの話の中で、まだ他に隠されていることがあるのではないかと踏んだわけです。
すると、それまで緩み掛かっていた明弘さんの口元が急に引き締まると、萎っていた目元を一瞬にして引き締めました。 鋭くなった瞳が私の方に突き刺さると、彼はさらに前屈みになってくるのです。
「洋子が疑問に思うのも仕方ないだろうな……」
溜息を吐き散らかすような脱力感を含ませた声が私に臨みました。 一旦、一呼吸を置くように俯き、また私の方に目線を合わせた。 それからは、グッと力の籠るハッキリとした口調で私に話をするのでした。
………何もかもを………
「最初は、専守防衛みたいな形で喧嘩に明け暮れていたんだが、高校に繰り上がった時に厄介なことが起こりやがったんだ。 そん時の俺たちは洋子が通ったような裏路地を歩いてたわけ。 するとな、女の変な呻き声が聞こえるわけだ……不思議に思った俺たちゃ、その声が鳴る方に向かって行ったわけよ。 するとな……そこで見たのは………見たことのある制服を引ん剥かれた姿で襲われた女……いや、女子生徒がいたってわけ。 しかもその女子生徒は、数人の男に囲まれて、それで―――――」
「あ、明弘さん……! そ、それ以上は……!」
「―――ん、分かった。 さすがに、すべてを話すというのも酷なモンだろうよ……」
息絶え絶えになる思いで話を無理矢理遮断させてしまう。 というより、これ以上は聞いてしまってはいけないという危機感から身体が動いたのです。
明弘さんが言わんとしていることは十分に想像が付きます。 しかし、それを声に出されて、私の耳を通るとなると話は別です。 それがより現実的に感じ、生々しさだけを残して吐き気を催す……何とも言えぬ、気分を害するモノなのです……。
「―――んでだ。 見逃せなかった俺たちは、自ら死地に赴いてソイツらを嬲り倒した。 当然と言えば当然の報いだろうと今でも思ってる。 女子生徒は無残な姿で助け出されて、そのまま病院に搬送された。 適切な処置もされて一命を取り留めた………」
「……よかった……と言うべきなのでしょうか……? 命は助かったのですから………」
「いや、助かんなかったわ……その子……」
「えっ―――?」
その刹那、一抹の希望を抱いていた私の身体が一瞬にして凍りついた。 重量感ある岩を投じられたかのような重い言葉が私の心から余裕を相殺させた。
まさか……!
虚ろぐ視界を何とか保ちながらも私の中で生成される名も無き重圧が襲いかかる。 固唾を呑みこむ……いえ、そのようなことで、この体内から吐き出されそうになる物体を止められることなんてできません。 わなわなと身震いを起こし、恐れ掛かった眼つき彼の口から出た次の言葉を耳にした――――――
「その子は、―――――
―――――死んだよ。
病室のベッドの上で、紐をぶら下げてさ……」
「うぷっ……!!!!」
「……洋子!」
あまりにも冷酷な言葉に吐き気を催した。 ドンッと鳩尾をぶん殴られたかのような衝撃が全身に襲い掛かりだしたのです。
「お、おえぇぇぇ…………」
蒼一さんから手渡されたビニール袋を手にとると、そのまま口から溢れる吐瀉物を吐き落とした。
「おいおい、大丈夫か、洋子?」
「……げほっ、げほっ……!! だ、大丈夫です……し、失礼しました………」
「もう喋らなくてもいい。 洋子の体調もよろしくないし、今日はこの辺に―――」
「い、いえ……! 続きをどうぞ……」
「―――だ、だが!」
「私は……!……知らなければなりません……。 あなた方がどのような道を辿ったのか……それを知らなければならないのです……!」
「……知ってどうなる……?」
「あなた方と協力させてください」
「洋子?!」
「ほぉ……その意図は……?」
「深い意味はありません。 ただ単純に、あなた方の事が知りたいだけ。 それに、ここまで来て引き下がれるわけがありませんよ……」
私はそのまま倒れることも怯むことも無く、お2方の問いかけに応えてこの場にとどまろうとしました。 私自身、このようなことで引き下がることなど考えていません。 そもそも、この家の敷居をまたいだその時から覚悟を決めていましたので、音をあげたくなかったのです。
「……はぁ……強情な女だぜぇ……。 また、気分を害されても知らんぞ?」
「平気です。 それに、こちらもただ聞いているだけではなく、いくつか質問もさせてもらいますからね?」
「……ったく、肝の据わっていやがるぜ。 しゃーなしだ、これ以上、何があっても知らないからな?」
面倒そうに頭をかきむしりながらも話の続きを始めようとする明弘さん。 その横で蒼一さんは事の成り行きを見守るかのように目を瞑って腰掛けました。 そして私も改めて腰掛けて、これから話すことに耳を傾けるのでした。
「あー……えーっと、どこまで話したんだっけな……?」
「その女子生徒が亡くなってしまった、ところからです」
「そうそう、そこだな……。 死因は言わずもがな、自殺。 自分の身に起きたことのショックに耐えきれずに身を投げ出したってわけだ……。 遺書をもちゃんと残してさ……やりきれねぇ気分だったぜ……。 自分たちが救ったはずの命が一瞬にして散ってしまうこと……あの子を本当の意味で救うことが出来なかったことが今でも悔やんじまうのさ………」
渋い顔を晒しつつ、また頭をかきむしりながら話を続ける。 どうも、その行動が彼にとっての精神安定剤のようで、過去にも嫌な話を切り出す際にこうして頭をかきむしっていた。 その仕草を今日は一段と多くの時間と回数を増やしていることから、明弘さんの心境が見てとれるわけです。
それでも、彼は語る――――
「それからだな、俺たちの中で何かが大きく変化しだしたのは。 目的手段……とでも言うべきか、それまでずっと守りを決め込めていた俺たちは、一変してヤツらを潰すことのみを目的手段にするようになったのさ。 もう、同じようなことに巻き込まれたヤツを見るのはごめんだ。 ましてや、それで命を落とすようなことがあるなんざもっての外だ。 俺たちはそんなヤツらのために持っている力を遣っている。 ただそれだけだ……」
小さく息を吐くように言葉尻を収めると、頑と引き締まった表情で私の目を鋭く見つめたのでした。 それと目が合うと、唾さえも喉を通らなくなるのです。 まるで、獲物を狩る獅子のように、気安く近付くことが出来ないほどの雰囲気を感じさせられるのでした。
そこにいるのは、いつもお気楽調な優男ではない。 今まで目にしたことがないほどに、深く居座っていたのだ。
「お、お2方のお気持ちはよく分かりました……。 では、今までどのくらいの闘いをしてきたのです?」
「そうだなぁ……詳しくは数えちゃいねぇが、今の目的を行うようになってからだと約3年ってとこか。 それまで、いろいろなヤツらと闘ったものさ。 手に負えないほどのクズ以下のゲスが地を這いつくばっているんだから考えちゃいなかったわ」
「そ、そうですか……なるほど」
こちらからの質問にすぐに応えるのですが、最後に限っては私怨すら感じさせるような口調で言うのですから、一瞬震え上がってしまうのです。
「そういや、その頃から俺たちの事を“風神”“雷神”って呼ばれるようになったっけな?」
「俺が風神、お前が雷神だったな。 身に付けていたパーカーの模様がそうした属性に見えたからって言う安直な感じだったな」
「そうそう。 けど、あん時はお互いに呼び名っつうモンが無かったし、ちょうどよかったって感じだな。 俺が雷神だから『ライ』、兄弟が風神だから『ウィンド』と呼んでたりするんだよな」
「だからそう言う風に言われていたのですね……。 あっ、そう言えば、あの時あの男が言っていたお2方を倒したっていう話は………」
「ありゃあ、ガセだ。 よくよく考えりゃあ、分かることなんだろうけどなぁ……」
昨日、私を襲ったあの男の事を話しだしますと、お2方は先程とは打って変わって皮肉を噛んだ笑みを浮かばせていました。
「あの男は見たことがある……ちょうど1年前までは、あの集団の最下層にいたヤツだ。 それが頂点に立つとはな……」
「調べてみれば、俺たちが消えたのと同時に俺たちのニセモノを使って、自分が倒したことを宣伝したそうだ。 実に簡単なトリックだったが、俺たちがアイツらの主要メンバーどもを狩り尽くしちまったから簡単に信じこんじまったんだろうよ」
「だが、ヤツの底辺ぶりは変わらない。 いくら地位に恵まれても、根本がクズでは何の意味も無い。 逆に、もっと酷くなってしまったというものだ」
眉間に幾重ものシワを寄せながら、渋い表情でお互いに交わし合っていた。 その時、蒼一さんがチラッとこちらの方に目を向けると、深く哀れむような瞳で見つめていた。 何か私に言いたげな様子なのでしたが、私は首を横に振って何も言わないでもらいました。
私にはわかっていますよ、あなたのそのやさしさを………
「それはそうと、なぜお2方はこの1年間雲隠れを? そして、一体何のために動いているのですか?」
「あー……それはだな……」
どの言葉を選べばいいのか、明弘さんは唇同士を強く噛み悩んでいる様子でした。 すると、蒼一さんが身体を前のめりになると、重い唇を開かせて言うのでした。
「……すべては、とある男を探し出すためだ……」
ドンと重石を落とすかのようなトーンで語られるので、思わず背筋がピンッと伸びてしまいます。 鋭い眼がまた何かを刺し貫いているようでした。
「ちょうど1年前……とある事情で俺たちは隠れなくちゃいけなかった……。 その理由は聞かないでほしい。 だが、この後が重要だ……洋子にもちゃんと聞いてもらいたい」
「は、はい……!」
「この数年間、俺たちはその男を探している。 今回、洋子が襲われた時に聞いたその男がそれだ。 ソイツは女子生徒ばかりをターゲットにヤバイ事をしているらしい……」
「そ、そのヤバイ事というのは……?」
「言わずとも、洋子にされそうになったことだろうよ……。 人を喰らい、それで糧を得ている。 とんでもない悪党だぜ、ソイツァ」
口に溜まった唾が塊のようになって底に落ちて音を立てる。 張り詰める会話を耳にするだけでこんなにも鳥肌が立ってしまうだなんて思いもしませんでした。 というより、ここに来てからこんなにも胃に穴が空いてしまいそうなことになるとは思ってもみなかったです。
つい先日に、我が身に起こったあの出来事が未だに身体から離れようとしません……そういった恐怖も含めて、身の毛がよだつ思いに駆り立てられるのです。
「―――とまあ、大体はそんな感じだ。 こうして振り返ってみると、いやぁ~な感じだなぁ、俺たちゃ」
「実際そうだろう? これを聞いて正義ある行動だと称賛されることなんてありやしない。 正義なんてものはありやしない、あるのは、ただ悪のみだ……」
「で、ですが……私から見たら……お2方は正義の人だと思います……。 当事者だから…という面もありますが、お2方に助けられた人も同じように言うと思いますよ……?」
「……だってさ、兄弟?」
「……まあ、そう言うふうに捉えてもらっても構わないぞ……」
私が話したことをそのまま当てるように明弘さんはニヤつきながら促すと、蒼一さんは一瞬緩み掛かった顔を逸らしました。 それが彼の不安に包まれた心を解すきっかけとなるのだろうか? それについての展開は知るよしもありませんが、私としてはそうであって欲しいと望んでいるのでした。
「あ、あのぉ……それでなんですけど……」
「ん、どうした? まだ他に何かあるのか?」
「いえ、そうじゃなくってですね……その……私もお2方と活動を共にしたいと思いまして……」
「はぁっ?! 今までのを聞いてたのか?!!」
「も、もちろんですよ……冗談ではありませんから。 私も何かお役に立てたらと思いまして……」
「だ、だがよぉ……この活動は洋子には荷が重すぎる……。 危険と隣り合わせなことをさせたくねぇし、いつまた洋子が襲われるかわからねぇんだぞ?」
「大丈夫です、その時はまた明弘さんに助けていただきますから」
「なっ……!……ったくよぉ……そう言われちゃあ何も言えねぇじゃねぇか……」
「諦めろ、洋子の決意は揺るがないモノのようだ。 俺たちがどうこう言うよりも、その目で見て、感じた方がいいだろうよ」
「兄弟!? それでいいのかよ!?」
「言いも何も、お前が説き伏せられないのだから素直に受け入れなければいかんだろ」
そう言い聞かせるように話すと、蒼一さんはこちらに顔を向けてくるのでした。 そしてまた、ジッと私の目だけを捉えるのです。 まるで、心底を見通そうとするような気分。 私自身を量られているかのようでした。
以前の私ならば、打ちひしがれていたことでしょう。 しかし、今となってはこの目に立ち向かう力を得ました。 そして、果敢にも突っ込んで行こうとする心も養われました。 ですから、私はこう言うのです―――あなたがたの力になりたいと。
「わかった。 だが、これだけは覚えておくんだ。 この領域に立ち入るということは、洋子が自身を穢すことでもある。 触れてはいけないこと、聞いてはいけないこと、見てはいけないことなど様々だ。 これから洋子の身に起こること何があったとしても泣き言を言うなよ? 生半可な気持ちで俺たちと一緒にいないことが条件だぞ、いいな?」
「はい、わかっています」
「それじゃあ、気を引き締めるんだぞ」
蒼一さんはそう言って私のことを受け入れてくれました。 一方で、明弘さんは心配そうに顔色を悪くさせていました。
これで晴れて彼らを支える者となりましたが、この先何待っているのかわかりません。 それでも、今私にしかできないことをやるしかないのだと何度も感じるのでした。
その先に見えるのが、絶望だったとしても―――――――
...Hope is there for...?