【完結】Why will the hardship take me?   作:雷電p

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―――幸せな一時は、硝子のように一瞬で壊れる―――




adulescentia~破壊~

[ 広報部・部室 ]

 

 

 私が彼らの活動に参加しだしてから数日が経ちました。

 あの衝撃的な内容を伝えられてから、私の中で渦巻くモノが絶えません。 気持ち悪い、と言ってしまえば簡単なのですが、どうもそのような簡単な言葉では言い表しにくいモノのようです……。

 

 何かが私のことを見ている、そんな視線を感じてしまう日もあれば、誰かに襲われてしまうのではないかと言う恐怖さえも抱くのです。 つまりこれが、彼らの言うリスクのようなモノなのでしょう……。 確かに、尋常な精神力が削れていくわけです……。

 

 危険と隣り合わせにあるとは、まさにこう言うことなのかと、初心者ながらにも感じてしまうのでありました。

 

 

 

 

「―――さて、そんなことよりも整理、整理と」

 

 

 気持ちを切り替えるように、床下に置いていた段ボールを長机の上にドンと置いた。 見た目はそれなりに大きめの箱なのですが、中身はそんなに重いものではありません。 小型機材が中身の4割を占めており、残りの6割は緩衝材なのです。 故に、身体への負担はとっても軽いのです。

 

 

「これから何が起きるのかわかったモノじゃないですからね。 こうしたモノを使っていかないと……」

 

 

 そう言って、中から取り出すのは、手の平サイズの小型機器。 すべて部費として会計させてもらってるため、私の財布への負担はまったくないままに、手に入れることが出来たものばかりなのです。

 いやぁ~、絵里ちゃんたちに少しお願いしたらすぐに出してくれただなんて、ホントやさしいですねぇ♪ 無理だって言われてましたのに、ちょっと、録音を流しますよって言ったらすぐに渡してくれましたよ。 それに、それで買ったモノの内容まで目を瞑ってもらうようにしましたからねぇ……

 

 ふふっ、感謝してますよ、絵里ちゃん♪

 

 

 

 さてさて、どういたしましょうかねぇ~?

 中に入ってるのは、小型カメラに録音機材。 盗聴機器に小型GPS端末。 その他諸々の取材グッズです♪ これならば、もしもの時に役立てられるやもしれませんし、得た情報も個人的に保管できるようになってもいますからね。 我ながら、良いモノを手に入れることができましたね♪

 

 手ぐすねひきながら何を最初に手を付けようかと迷っておりました。

 

 

 すると――――

 

 

 

 ガチャ――――― 

 

 

 

「おう、洋子。 暇だから来たぜ~♪」

 

 

 扉をノックすることなく、この人は関係無しに入ってきた。

 

 

 

「あのですねぇ……これでも、私は乙女なのですよ? ノックの1つくらい出来たらどうなのですか?」

「ありゃりゃ…そいつは失敬。 ついつい、癖でやっちまっただけなんだ、許してくれ!」

「……ま、まあ、今回だけですよ。 次回からは気を付けてくださいね……」

「おぉ! ありがてぇぜ、洋子!」

 

 

 女の子に対する礼儀と言うモノについて指摘すると、風船がしぼんだような顔で謝りだすこの人。 まあ、わかればいいのですよ……わかれば……ということで、あまり怒ることをせず、すぐに許しますと急に膨らんだような顔になって喜ぶのでした。

 

 そんな表情豊かなこの人は、明弘さん。

 私が関わる活動の主要メンバーの一人です。

 

 

……それと、もう1人。 明弘さんの後ろからやってくる人がいました。

 

 

 

「やっほー、洋子!」

 

 

 明弘さんの後ろからヒョコっと顔を出してきたのは、私のクラスメイトのヒデコちゃんでした!

 

 

「おや、ヒデコちゃんじゃないですか! こっちに来るだなんてめずらしいですねぇ!」

「いやぁ~、廊下で明弘さんと偶然バッタリ会っちゃって、ついつい話し過ぎちゃったらこっちまできちゃっただけなんだよ~♪」

「ほほぉ、そうなのですかぁ~……へぇ~……」

 

 

 めずらしいと思ったら、なんとそう言うことなのでしたか。 そういえば、最近は、明弘さんと一緒にいるところを頻繁に目撃しますねぇ。 それが偶然なのか怪しいところなのですが……。

 

 

「しかし、ヒデコちゃん。 下校時間はもうとっくに過ぎてるじゃないですか。 偶然にしては、なんだか不思議に思えるのですがねぇ……?」

「そ、それは……! たまたまよ、たまたま! フミコとミカが図書室に用事があるからって、ちょっと待ってただけなんだから!」

「おやぁ? そう言えば、何分か前にフミコちゃんたちが校門前にいるのを見ていたのですが、あれは―――」

「あぁー!! そうだったぁー! いやー、明弘さんと長くお話をしちゃってて、時間のことを全然気にしてなかったわー! あはは、それじゃあ、私は行かなくっちゃね!!」

 

 

―――と、なんだか忙しい感じになりながら、ドタバタし始めるのでした。

 

 それを見て、何ともわかりやすい感じだなぁ……と眺めるのでした。

 

 

 

「ちょいと、待ちなよ、ヒデコ」

「え? なんですか、明弘さん?」

「そんなに急に暴れ出すから、髪の毛が乱れまくってるぞ? ほれ、ここなんかかなり跳ねちゃってるぜ?」

「え? ふえぇぇぇ?! あ、明弘さん!! そ、そんなに触らなくても大丈夫ですよぉ!!」

「なーに言ってやがる。 女の子は見た目が大事。 綺麗に整えてやんないと、かわいい顔が大なしだぜ?」

「か、かかかかわいいだなんて……!! そんな、そんなっ……!!!」

 

 

 ホント、なぁーにやってるんでしょうねぇ……

 

 明弘さんがヒデコちゃんを呼びとめると、乱れた髪を整えるという名目で、その手で髪を触り始めたのです。 その突然のことに、驚くのですが、私以上に当の本人がかなり驚いてるのですよね。 みるみる顔を真っ赤にさせていき、まさに、ゆでダコ状態と言ってところでしょうね。

 

 しかも、私がいる目の前で口説き文句を言うとは……無性に腹が立ちますね……。

 それに……なんだか、良い雰囲気を作っちゃって………何でしょうか……胸のところがチクチクしてきましたね……。 これは一体何なのでしょうか……?

 

 身体の奥底から湧き上がってくる何かを感じてくるのです。 しかも、頭の方ばかりに向かっていき、考えを固くしていくのです。 それに、怒りも……。

 

 

 ホントに、一体これは何なのでしょうね……?

 

 気持ちを揺らされる中、明弘さんは髪から手を放して「これでよし」と声を出してました。 ヒデコちゃんは嬉しそうな顔で小さく頷いておりました。

 

 

「それじゃあ、またな。 そうそう、さっき言ってた店さ、今度行こうじゃんか!」

「えぇっ?! と、ということは……わ、私と……?」

「ヒデコ以外に誰がいるって言うんだ? 紹介した本人なんだから、ちゃぁんと連れて行ってくれよ?」

「~~~ッ!! は、はいっ!!!」

 

 

 明弘さんからの誘いに、満面の笑みで応えるヒデコちゃん。 何とも嬉しそうにするのでしょうか、その気持ちがこっちにも伝わってくるのでした。

 

 その一方で、胸に当たる何かが強くなってきているような……気のせいでしょうか……?

 

 

 

 ヒデコちゃんが出て行きますと、明弘さんは扉を閉めて中に入っては、私の前にイスに座るのでした。 ヒデコちゃんと話してからなのでしょうか、少しニヤついているように見えましたので、足で明弘さんのスネを蹴っちゃいました。

 

 

 

「―――ってぇ!!? な、何するんだよ、洋子?!」

「別にぃ、何でもありませんよぉ~。 ただ、なんだか鼻の下が伸び伸びとしていたもんですから、少し引き締めなくてはいけないかと思いまして、つい……」

「つい、ってなんでさ?! かわいい女の子を見てニヤついて何が悪いって言うんだ!? そう言う子は、愛でてあげるのが上策であると、古典の中にもあるんだぜぇ? そんな古の教えを守ってる俺の行為の何が悪いって言うんだ!? ……ってぇ!! ちょ、やめっ! そんなに足を蹴らないで!! 痛いから、地味に痛いからぁ!!」

 

 

 やぱり、無性にイライラしてきたので蹴ることにしました♪ もぉ~、女の子の心を弄ぶだなんて許せませんねぇ~。 私の気が済むまで蹴らせていただきます♪

 

 

「だぁー!! やめぇーい!! お前みたいなかわいいヤツが、そんな人を蹴るようなことをしちゃいけません! お父さん、許しませんよ!!」

「~~~~ッ!! い、いつから私のお父さんになったんですか、バカァ―――――!!!!」

「―――ぐふぅっっっ?!!!」

 

 

 きゅ、急に変なことを言いだすから、思わず上履きを顔面に投げ飛ばしてしまったではないですか!! も、もう……明弘さんのせいで、私までおかしくなってきちゃったじゃないですかぁ……。

 

 うぅ……何なんですか、まったくぅ……。

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

[ 音ノ木坂学院・正門 ]

 

 

 

 

「おまたせぇー!!」

 

 

 慌てながら校舎口から飛び出るヒデコは、靴の紐をしっかりと結ぶことなく、靴ずれを起こしながら友人が待つ正門へ走っていた。

 

 

「おっ、噂をすれば……」

「ヒデコちゃん、どうだった?」

「ど、どうってどういうことよ?」

「またまたぁ、今日もあの人のところに行ってたんでしょ?」

「なななっ?! 何のことよ? 私、サッパリわからないわ……!」

 

 

 じとぉ~っとニヤついた目付きでヒデコを眺めるフミコは、あくまでも白を切ろうとする彼女に詰め寄った。 不意に顔を近付けられたため、ヒデコは無意識に後ろにやや反るような体制を取らざるを得なくなる。 そこでまた違った焦りを感じ始めると、嫌な汗を額から流し、悪い顔をするフミコに隙をあたえることとなる。

 

 

「そぉ~れっ!! しらばっくれるヤツには、おしおきだぁ~~!!」

「わあぁぁ!!? ちょっ、ちょっとやめっ、あはははははっ!!!! く、くすぐったいぃぃぃ!!!」

 

 

 サッと手を伸ばしたその先には、無防備な脇腹が―――白のワイシャツにくっきりとわかるくらいのしなやかなボディラインに向かって、ほっそりとした指が動きだす。 くるくると円を描くみたいに10の指が容赦なくヒデコの脇腹を触れ回す。 爪を立てず、尚且つ繊細な動きをして見せるフミコの指は、ヒデコの敏感な神経を集中的に刺激させる。

 その結果、あまりのくすぐったさに耐えられなかったヒデコは、公衆面前で大きな笑い声を上げてしまう。 当然、下校する生徒たちや近くを通り掛かった人の視線を集めることとなる。

 

 

「あははははっ!!! わ、わかったからぁ!! わかったから、もう擽るのをやめてぇぇぇ!!! あはっ、あはははは!!!!」

 

 

 肉体的にも精神的にも恥ずかしい気持ちにさせられるので、やむを得ず、白状することとなるのだった。

 

 

 そんな様子をミカは、苦笑いをしつつ見守るほかなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 

「もぉ! とんだ恥ずかしめを受けちゃったわ!」

「ヒデコが正直に言わないからだぞ?」

「なんで私が悪いことになってるのぉ?!」

「まあまあ、2人とも落ち着いてよぉ……」

 

 

 笑い過ぎと恥ずかし過ぎの両方を味わったことで、悔し涙を浮かばせるヒデコ。 そんな彼女のことを省みようとしないヒデコはつーんとした態度で彼女をあしらうので、また喧嘩するのではないかとミカは肝を冷やしていた。

 

 学校から少し離れたところを歩く3人は、いつもこの道を通っている。 どこの部活にも参加することをしていない彼女たちは、いつも一緒に下校をしている。 それは昔からそうだった。 言うなれば、穂乃果とことりと海未のような幼馴染の関係なのだ。 そして、いつもと変わらない日々を共に過ごしていた。

 

 そんな彼女たちにとって、こうした桃色の刺激を含んだ話題は新鮮味がある。 おかげで、今日の話題に事欠くことはなかった。

 

 

「それで、今度、明弘さんと一緒にスイーツのお店に行くんでしょ? どうするか決まってんの?」

「ど、どうするって……何をよ……?」

「当然、服装とかプランとかさ、やることはいっぱいあるわよ~」

「なんでフミコが取り仕切ってるのよぉ……」

「だって、デートよ、デート! 明弘さんからの直々の御指名よ!! 今まで明弘さんが指名して女の子を誘ったことはないんだから、事は重大よ!」

「で、でででデートぉぉぉぉ?!! ななな、なっ!!?」

「あっ、ヒデコが赤くなってるよ……!」

「ほぉ、これは貴重だわ~。 写真とってもいい?」

「いいわけないでしょーがぁぁぁ!!!」

 

 

 ぶんぶんと両腕を振り回して、両方からからかう2人を遠ざけようとする。 でも、その割にはかなり嬉しそうな様子で、怒りつつも表情が緩んでいたのだった。

 

 

「あはは、じょーだんだよ。 まあ、当日までは時間があるみたいだし、私たちも一緒に考えてあげるから」

「そうだよ、ヒデコにとって大切な日になるんだから頑張らないと!」

「フミコ……ミカ……」

 

 

 

「あっ、私はイチゴパフェね」

「だったら、私はチョコレートのヤツでいいよ♪」

「あ、あんたたちぃ……! むぅ~、今回だけだからね」

「「やったぁ!!」」

 

 

 いい感じにヒデコのことを応援するように見えたのに、そこにはちゃんとお礼と言う名の等価交換が提示されていたと言う地雷。 危うく感動しそうになったヒデコもその一言に一気に冷めてしまう。 が、それでも手伝ってくれるのなら…と、頬を膨らませながらもそれに応えた。

 

 

 そして、無駄な出費が重ならないかと思い悩むのだった――――

 

 

 

 

「それじゃあ、私たちはこの辺で―――」

 

 

 しばらく歩くと別れ道に差し掛かった。 ちょうどここまでが、ヒデコたちが一緒に帰る道筋になる。 そして、ここからは、フミコとミカが違う道で帰路に向かうことになる。 つまり、ヒデコはたった1人になるということだ。

 

 

「うん、それじゃあ、また明日ね!」

「あぁ、明日は早速作戦会議をやるわよ~!」

「うんうん、私も張り切っちゃうからねぇ~♪」

「もぉ~……ったく、アイツらったら……」

 

 

 手を振りながら離れて行く2人をやや呆れた顔で見送る彼女。 けど、心の中では感謝していた。

 

 彼女にとって初めてとなる(事実上)デートで、どうしたらいいか1人では考え難かった。 しかし、こうして頼もしい幼馴染に相談できたこと、一緒に考えてくれることに感謝せずにはいられなかった。

 

 

「―――さてと、私も少しは考えなくっちゃね。……デートかぁ……どんなふうにしたらいいのかなぁ……? 明弘さんって、どんな服装とかが好みなんだろう……? うわぁぁぁ……考えただけで頭が沸騰してきた……!」

 

 

 誰もいない道の真ん中で、小さく独り言を語りだす彼女の足取りはちょっと覚束ない。 嬉しさのあまり浮かれてフラフラしてるというのもあるが、そもそも靴ずれしていてこうなっているのだ。 しかし、肝心の彼女はここまで来てもそれには全く気が付こうともしない。 思考が上の空なのだ。

 

 それほどまでに、彼からの誘いは魅力的だったのだ。 なにしろ、彼女が一目惚れしてしまった男性だったのだから仕方のないことだ。

 

 穂乃果から彼のことを紹介された時に見惚れ、その後、メールアドレスを交換してからの彼女の気持ちの高まりようは筆舌し難いほどだ。

 

 それからは何度も連絡を取り合っていたりして、時には通話をしては夜遅くまで話に華を咲かせてたりもしばしば。 青春真っ最中の彼女にとって、それが何よりも新鮮で、刺激的なモノで、初心な恋心が擽られるのだ。 それが、いつしか彼女の生き甲斐になっているのだった。

 

 そんな彼からの誘いだ、落ち着いてなどいられないだろうし、周りに注意を払うなど出来るはずもなかった。 今は、淡い桃色のチークで頬を染めた乙女の顔となった彼女を見守るほかないだろう。 夏になってから遅咲きの桜はどんな色で咲きだすのか、今花開こうとしていたのだった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――が、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バッ―――――!

 

 

 

「――――むぐっ?!!」

 

 

 背後から忍び寄ってきた怪しげな男たちに気が付かなかった。

 

 

 

「むぐっ!! ……うっ……うぅ………」

 

 

 背後から急に抱きつかれ、白いハンカチを口に押さえ付けられたヒデコは、初めは強く抵抗したが次第に力を失っていく。 ハンカチから匂って来る甘味掛かった魅惑的な匂いが、彼女の鼻腔を刺激し、神経を鈍らせた。 そして、30秒も経たずに彼女は眩暈を起こして、そのまま気絶してしまう。

 

 腕の中で死んだようにぐったりする彼女を見て、男たちは、ニタァ、と何とも不気味で卑猥な笑みを浮かばせた。 そして、彼女が手にしていたカバンを投げ捨ててから彼女を持ち上げて、用意していた車に乗せてすぐさま走らせた。

 

 

 手際良く行われた一連の出来事に、不運にも誰にも気付かれることなく事が運ばれてしまった。 しばらくの眠りについてしまった彼女は、これから起ころうとすることに気付くことも無いまま、荷物のように揺られていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 一方――――

 

 

 

「あっ、ヒデコに渡すものがあったんだ!」

 

 

 ヒデコと別れて歩いていた2人は、フミコの一言でその行進を止めた。

 

 

「どうする? 一旦、電話してみる?」

「ううん、この距離ならすぐだし、走って追い付けるだろうと思う」

「ええっ?! 走るのぉ!?」

「走るのが嫌なら先に帰りなよ、私だけで行くからさ」

「そっちの方がもっとやだぁ~! 1人で帰るのはちょっと怖いよぉ~!」

 

 

 何かとだだを捏ね始めるミカを横目に、少々呆れながらも一緒に行こうと手を差し出すフミコ。 それでなんとか、ミカが一緒に行くことを決めてくれたおかげでヒデコは走って行くことが出来た。

 

 ヒデコと別れて数分も経っていない。 ちょっと汗をかく程度に走ればいいだろうと思う程度だった。

 

 

 

 

「―――ん、車か。 避けるよ、ミカ」

「う、うん」

 

 

 正面からやってきた車に気を付けて、その場で止まって道路端に身体を寄せる2人。 道路と言っても車1台が入ることしかできない一方通行の路地。 そのため、歩行者が車と接触する可能性もあったからだ。

 

 ただ、この道を車が通るなんてめずらしいな、とフミコは不思議そうに横を通り過ぎていく車を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

「――――っん?!! ちょっと待って!!」

 

 

 偶然、通り過ぎていく車の中を見てしまった時、そこに今遭いに行こうとしていたはずのヒデコの姿を見て声を上げた。 どうしてそこに彼女がいるのか? という疑問はフミコに焦燥感を高まらせた。

 

 何かが変だ、何かが変だ……!! と脳裏で考えを巡らせ、見開いた目でさっきの車を睨みつけた。

 

 

 

「―――ミカ、走るよ!!」

「え? う、うん……!」

 

 

 フミコはミカに言い終わる前に走りだすと、ヒデコが曲がって行った道に駆けこんだ。 すると、目に飛び込んできたのは、学生用カバンが無雑作に投げ捨てられていた。 恐る恐るそれに近付いて手にしてみると、彼女は蒼白した。

 

 それがヒデコのモノだと認識したからだ。

 

 

 

「そんな……そんなまさか……!」

「ふ、フミコ……! こ、これ……」

「……!! こ、これって……ヒデコの靴じゃ……!」

 

 

 ミカが見せてきたのは、片方だけの靴。 しかも、それもヒデコのモノだった。

 

 靴の中はまだ生温かった。

 

 

 ぶるぶると小刻みに震えて、この状況をうまく飲み込めないでいる。

 幼馴染に何かあった――――さっき、横目で見てしまった光景を思い起こして、それが誘拐されたんだと分かると、どうしたらいいのか分からなくなった。

 

 

 警察に連絡したらいいのか―――?

 

 すぐに思い付いたのはそれだ。 だが、それでどうにかなるだろうか? いくら警察が動いたからと言って、どうにかなるとは限らない。

 

 

 では、どうしたらいいのか?

 

 

 咄嗟に、彼女の脳裏に過ったモノがあった。 同時に、彼女は躊躇うことなくその番号に電話をかける。

 

 

 プルルルルルルル―――――

 

 

 

 通信する音が彼女を苛立たせる。 早く出てほしいと、ただ懇願するばかりだった。

 

 

 

 プッ―――――

 

 

「……っ!! もしもし――――!!!」

 

 

 繋がった―――そう思うと同時に、彼女は喋りだすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

...Hope is there for...?

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