【完結】Why will the hardship take me? 作:雷電p
―――肉体的死よりも、精神的死ほどの屈辱は無い―――
[ 広報部 ]
「……いてて、ったくよぉ……どうして上履きでトドメを刺してくるかねぇ? おかげで、顔も真っ赤っか!」
「それは……! 明弘さんが変なこと言うからですよ……」
「ほほぉ……? この俺がどんなことを言ったというのでしょうかねぇ……? そこら辺をもうちょいピックアップさせていただきましょうかねぇ~? ほ~れ、リピートアフタミー!!」
「いますぐそのふざけた口調を止めませんと、あなたがここ最近、私のクラスメイトに変なアプローチをかけていることを海未ちゃんにチクリますよ?」
「すんませんでしたぁぁぁぁぁ!!!!」
……まったく、この人ときたら……。 少しの隙あらばそこに浸けこもうとするなんて……女の敵ですよ! まったく……。
相手が私で本当によかったですよ、もし他の子で、それもまともなお方でしたら即通報モノなんですから、そこのところは感謝してもらいたいものです!
「しっかし、洋子も段々と俺に対するあしらい方が厳しく感じるんだが……」
「そりゃあ、そうでしょう。 あんなことばかりされては、いろいろとマズイと蒼一さんから言われてますからね」
「きょ、兄弟からそう言われてたのかよ……かぁ……抜かりねぇというか、見通されちまってるというか……」
そう反論しますと、こめかみを押さえてとても悩ましそうな表情で残念がっていました。 蒼一さんの知見の高さに脱帽しているようです。
しかし、私自身、蒼一さんからそのようなことは一切聞かされておりません。 というより、蒼一さんから、だなんて話はまったくの嘘なのです♪ 明弘さんを抑え込むために、わざとそのように言ってみただけなのです。 そしたらどうでしょう、その効果はかなり脈ありのように感じられますし、これで下手に動くことはないことでしょうね。
まあ、蒼一さんに直接尋ねれば分かることなのですが……明弘さんにそんな勇気はあるように見えませんから、今のところは大丈夫でしょうね。 ふふっ、これも、明弘さんの行動を観察していた甲斐があったというものです♪
PPPPPPPPPP――――――
ん、なんでしょう? ポケットの中に忍ばせていますスマホに連絡が入ってきたようです。 さっそくそれを取り出しますと、画面に表示されたフミコちゃんの番号を見たのです。 はて、何か用でもありましたかねぇ? 特に私から連絡しなくては、というようなこともなく、まして向こうから連絡する要件も無かったはず……
では、何なのでしょうね……?
少し疑問を持ちながらも私は電話に出るのでした。
「はい、もしもし―――――」
『―――もしもし!!! 洋子!!?』
電話に出た瞬間、荒々しい息遣いで話してくるフミコちゃんの声を耳にした瞬間、かなり動揺してしまいました!
「どうしたのですか、フミコ? 何をそんなに慌てて―――」
『たいへん……大変なんだよ、洋子―――!!』
声を荒げながら口にする様子に、とても尋常ではないモノを感じるのです……いったい、何があったというのでしょう……? 私も胸の辺りが何故かモヤモヤして仕方ないのでした。
その矢先、心を塞がれるような気持ちに覆い被さるような衝撃に驚愕するのです――――!!
『―――ヒデコが……ヒデコが誘拐されちゃったのよ!!!』
「ヒデコちゃんが誘拐に―――?!!」
「なにぃっ?!!!」
フミコちゃんの口から聞かされた、その常道から遥かにかけ離れた出来事に開いた口が塞がらないような動揺が走るのです! 動揺のあまり私も声を荒げて叫んだので、それを近くで聞いていた明弘さんも酷く驚いた様子を示すのでした。
「そ、それで! い、いまはどのような感じなのです?! 何か手掛かりは? 相手はどんな人たちなのです?! どんな車なのです!?!」
『そ、そんなことを一気に言われてもすぐには答えられないよ!! わ、私だってかなりパニクってるんだから落ち着かせてくれよ!!!』
……うかつでした……。 今まで聞いたことほどに語気を荒げ、強く訴えかけてくる彼女にとって、先程の言葉は火に油を注ぐようなモノでした。
一番動揺が酷いのはフミコちゃんなはず……! なのに、私が激しく動揺しちゃってどうするのです……! こ、ここは…私が冷静になって声をかけてあげないと……で、ですが、何と言えばいいのでしょう……? 『大丈夫』『心配しないで』そんなありきたりな言葉を言ってもいいものでしょうか……? 下手したら、ますます取り返しのつかないことに………
あぁ!! いったいどうしたらいいというのです!!!
胸の動悸が激しく高鳴っている中で、まともな思考を働かせることが困難になるばかり……! 私自身、この予期せぬ不幸な出来事に向かって、どう対処したらいいのかさえ見当たらないのです……。
くっ……わたしは……なにをしたら……!!
「―――洋子! 電話を貸せッ!!」
「!!」
頭を抱えて塞ぎ込みそうになった時、明弘さんが声をかけたのです! 真剣な表情と鋭い声が、私の胸を貫いたような衝撃を感じたのです。 それが、私の思考を一旦停止させ、無自覚のままこの電話を手渡したのでした。
「もしもし、フミコ。 俺だ、明弘だ――」
『あ、明弘さん……ど、どうしよう……ヒデコが…ヒデコがぁ……!!』
「おちつけぇフミコ―――!!!」
『っ……!!』
「
『ほ、ほんとうですか……?』
「おうとも。 音ノ木坂の生徒は、みんな俺の大事なヤツらだ。 ましてや、ヒデコは俺にとっちゃあ大切な存在――それを護らないで、男と呼べるかよ……!」
『あ、あきひろさぁん……』
「ぐずるのはまた後だ、フミコ。 まずは、ヒデコを助けたい。 協力してくれるか?」
『……は、はいぃ……!!』
明弘さんの覇気のある声に電話越しですが、涙ながらにも落ち着きを取り戻した声が聞こえてきました。
その様子を隣から驚きを持って見ていました。 というのも、つい先程、私が思い悩んでいました言葉を明弘さんはそのまま使ったことにあったのです。 ありきたりな言葉なのに、さもや、特別な言葉のように聞こえてきてしまったのは、どうしてなのか……。 それこそ、明弘さんから出る説得力のある何かが、押し上げているように思えるのです。
私よりも接点が少なかったはずなのに、彼は彼女たちから信頼を受けている――それ故に、語られる言葉に意義を見いだせることが出来たのでしょう。 かく言う私も、彼の口から出た言葉、捨て身の行動にどうしても心が動いてしまうので、何ともいえません。
私に出来ないことをやってしまう彼に、わずかばかりに劣等感を抱き――同時に、やってのけるだろうという自信と信頼を抱いてしまうのでした。
「―――おい! 洋子!!」
「……! はっ、はいぃ!!」
「どうしたんだ、お前も動揺してんのか?」
「い、いえ……そんなことはありませんよ!」
「そんならいいや……。 それより、ヒデコをさらったヤツらのことが少しずつ分かってきた。 あとは……洋子、お前の出番だ」
「私?! わ、私に何が出来るというのですか?」
「なぁーに、単純なことだ―――探知するんだよ」
「!!」
険しい表情をしながらも私には穏やかな声を出すのでしたが、瞬時にドスの利いた声で言うのです。 それに身体をビクつかせるのですが、同時に明弘さんが何を考えているのか、察しが付くのです。
身体をビクついたのを機に、私はそのまま察した通りに行動し始めるのです。
セーブモードに切り替えていたパソコンを元に戻し、例の追跡アプリを開くのです。 このアプリでは、特定の電話番号を入力することでその電話の場所を特定してしまうという機能を持っています。 構造というのは……説明すれば長くなるのですが、簡潔に言えば、スマホのGPSをキャッチすることが出来るというものです。
一般的には流通していないアプリですが……なぜ、この私が持っているかというのは聞いてはいけませんよ? これも、乙女のヒミツというものなのですから……
早速、アプリ内の検索項目にヒデコちゃんの電話番号を入力し、検索をかけますと――――
「―――出ました! ここからかなりの速度で遠ざかっていますが、まだこの近くです!」
「―――うっし、わかった! サンキュな洋子!」
そう言いますと、明弘さんはこの部屋の窓を開けて外を見だしました。 地図上に出ている場所を把握しようとしているのでしょうか……? というか、まさか―――
「まさか……今から追いかけるつもりではないでしょうね……?」
「はぁ? 何を言ってんだ? 俺が追わなくて、誰が追うって言うんだ?」
「し、しかし、どんな相手がいるか分からないのですよ……? でしたら、警察を呼んだ方が……」
「バッキャロォー!! 警察はな、事件が起こった後でしか動かねェんだよ!! ヒデコが助からなくなってもいいのかよ!!」
「そ、それは……だめ、です……」
「だったら、俺に任せてくれ。 俺が必ず助け出してみせるからよぉ……!」
金槌で頭をガツンと打たれるような衝撃が加わったようでした。 私の考えが甘すぎた、としか言いようの無いことで、他の誰かに助けを求めようと考えた私が恥ずかしいです……。 私自身、危険な目に遭遇しているというのに……何も言い返すこともできません……。
「洋子! ほらよ―――」
「え? あっ―――」
視線を下に落とし、悩み塞ぎ込みそうになっていますと、私のスマホが彼の手から投げられたのです! あたふたしつつも、なんとか落とさずに掴み取れますと、ホッと胸を撫で下ろしました。
「―――そんじゃ、俺は今から行ってくるわ」
「ちょっ、まさかそこから飛び降りるつもりじゃあ……」
「いちいち外履きに変える暇があったら、突っ走ってた方が断然いいじゃんか。 それと、相手の現在地がよくわかんねぇからよ、逐一連絡させてもらうぜ!」
「だから、ちょっと待ってくださいよ……! でしたら、インカムを使ってください。 これなら無駄な手間は必要ないでしょう?」
「おぉ、サンキュ! コイツがありゃあ専念できそうだわ」
「アナタの現在位置もGPSで把握させてもらってますからね、道案内は任せてください。 それと―――」
「ん?」
「―――御武運を」
そう伝えますと、明弘さんは一瞬笑いますと―――
「ったりめぇよ。 この俺を誰だと思っていやがる―――?」
手渡したインカムを耳に装着しますと、足を窓枠に置いたので、半身以上が外に突き出ていました! さすがにそれはまずいでしょう!と止めに入ろうとしたのですが、すでに遅かったようで―――
タンッ――――――
窓枠を蹴り出して、外に飛び出たのです!!
外に飛び出て視界から消えようとする最中に、明弘さんはこう言い残しました―――
「―――雷神のライ。 稲妻の如く、駆け抜ける―――!!!」
バチン―――――!!!
電流が流れるような強い衝撃音が鳴り響きますと、明弘さんの姿はどこにもありませんでした……。 本当に、雷のように消え去ってしまったかのように思えたのです。
「……ここ、3階ですのに……無事、なのでしょうか……?」
彼の意外な行動を目の当たりにして、開いた口が塞がりません。 あんなことを平然とやってのけてしまうだなんて……いったい、どれだけの修羅場をくぐり抜けてきたのでしょう………
ただ呆然と外を見つめるしかない私。 私に出来ることは、彼と彼女が無事に戻って来てくれること信じること――ただそれだけしかできないのでした。
追跡の信号が、2つの光を発光させていた――――
―
――
―――
――――
[ ??? ]
「………………。」
「………ん………」
あれからどのくらい目を閉じてしまっていたのだろう……。
突如、彼女の身体が帰路から離れ、意識を無くしたまま揺られたのは日がまだ高かった頃だ。 が、今はその日は陰り、血のように真っ赤な太陽が街に沈もうとしていた。
不吉な予感を感じさせる赤み掛かった黒が、彼女に忍び寄ろうとしている………
「―――なん―――まで連れてくるこ―――きたな」
「―――見つ―――済んだんだ―――?」
「当たり――――! ――――人気の無い――――かかったカモを獲って――――?」
「……うっ、うぅ………」
男たちの薄気味悪いしわがれた声に誘われたのか、彼女の意識が戻ろうとする。 まだ、朦朧としたままの彼女は、少しずつ開き始める瞳に横たわった状態から見える光景を焼き付けようとする。
土埃が顔に当たってるのか、喉がイガイガしてむせかえしてしまいそう……鼻に入ってくる臭いも腐った油のようなモノが刺さるようで気持ちが悪い……温度だって、尋常じゃない暑さで汗が噴き出てくる……。 汗ばんだ服が肌に密着し、それがまた、彼女に気味の悪い感触と不快感を抱かせるのだった。
だが、それだけにとどまらなかった………
「……う、ん……? んんっ……?」
口元が異様に息苦と感じていたが、本当に口が布によって縛られているのだ! 息苦しい――ただ息苦しいだけじゃない、口の中にも布のようなモノが押し込まれ、何も口に出すことが出来ないのだ!
その異常な状態に彼女も正気を保てない……。
彼女は、身体を起こして口に付けられた布を取ろうと懸命になる―――が、それすらも水泡に喫することとなる。
ギチッ―――――――
「……………!!?」
身体を動かしたと同時に軋むような縄の音。 身体に喰い込んでくる長細い何か。 それが二の腕と身体を縛るのに2ヵ所、前腕同士を背中にくっつけるように縛られた1ヵ所の3ヶ所もの縄によって身体が動けないでいた。
幸い――いや、この場合にそんな言葉は、一言たりとも出てくることはないだろう。 足は縛られずに済んでいる。が、だからと言って、自由ではない。 上半身が縛られていることと、状況を読めずに動揺する彼女の心理的状況が彼女を内面から縛り上げていたのだ。
何が起きているのか全く理解が出来ない彼女に、足音が………
「おやぁ? もしかして、起きちゃったかなぁ?」
「……………!!」
すぐ隣から聞こえてくる、せせら笑う声に悪寒が走る。 聞いた感じでは、随分と年若く聞こえるのだが、淀んだ声がその男の年齢を高めさせた。 ヒデコは恐る恐るその声の方に顔を向け出すと、そこには見ただけで3人の男の姿が……! ちょうど、光の刺す方向から真逆に立っていたため、身体全体が影に覆われており、逆にそれが彼女に与えられた恐怖を倍増させた。
「ふひひひ……なぁんだ、見た目が少し地味っぽく見えたが、案外イケるんじゃねぇか?」
「はぁ? こんなのがいいのかよ? おめぇはとんだ趣味をしていやがるぜ」
「ふへへへ、俺はなんだっていいや。 現役JKを玩具のように犯せれば……」
「フッ―――!! んんっ―――!!!」
男たちのモノを見るような眼差しが、彼女の危機感を与える。 何もすることができない彼女は、彼らの格好の的――つまりは、あの男どもの手中にあるわけで、何をされるかわからないのだ。 彼女自身、我が身に起ころうとすることを察している――だが、そんなことは絶対にあり得ないと、拒絶反応を示すようにもがく。 必死にもがく。
が、それで男どもが解放すると……? いいや、するはずがない。 もしそうするなら、彼女を捕まえようとしないだろうし、現にあんな卑劣な言動などをするはずもないのだ。 彼女は間違いなく――キズモノにされる!!
それを理解していた彼女の瞳から恐怖からなる滂沱の涙が零れ出る。
「くふふふ、見てみろよ、必死にもがいてやがるぜ? 急に怖くなっちゃったのかなぁ~?」
「おいおい、コイツ、泣いてやがるぜぇ。 今泣いても仕方ねぇぞぉ、なにせ、これから俺たちの相手をするんだからさぁ……その時に泣く涙が無くなっちまうぜぇ……?」
「大丈夫だって、涙が出なくても、口やら鼻やらから涙よりもすごい液体を垂らしまくるんだからよぉ……くひひひひ、そ、それじゃあ、早速垂れてるかどうか確認してみようかなぁ……?」
腹がかなり出ている汗だくの男が、彼女に近寄ろうとする。 ぴくぴくと動く全指先が彼女に向けられると、彼女は害虫でも見るような眼つきとなって身体を退かせる。 男はその様子をじっくり観察しつつ、汗とともに汚いよだれを口から垂らし、不気味に笑う。
この男、年は30近くのオッサンに該当する者だが、その中身は想像を絶するほど腐りきっていた。 彼は今まで、多くの女の性を乱した。 しかも、その大半が年端もいかない者たちばかり……そんな熟れきっていない未熟なモノばかりを好むように貪り、そして、犯した。 自らの性に忠実に――野獣のように、壊れるくらいに女を乱す、それが彼のやり方だ。
汚く、えげつなく、確実に人の人生を根底から為し崩す――そうすることで得られる優越感、自分が相手の人生を壊すことが出来る、破壊者という狂った特権を持っていると愉悦に浸るのだ。
それが今、脂の塊のような身体を引っ提げて、彼女の人生を崩そうとする――――
彼の手に掛かると、一瞬にして彼女の可憐な華は散り落ちるだろう。 そればかりか、根元までももぎ取って、2度とその華が咲くことが無い荒野にさせてしまう! そうさせてしまうほどに、彼は性を枯渇していたのだ。
「んんん!!! んんっ――――!!!」
迫りくる男からの背筋が凍りついてしまいそうなおぞましさに、彼女は戦慄する。 身体をガタガタと震わせ、すぐさま逃げ出したいと思うばかりだ。
けれども、それを赦してくれるはずもなかった。 目の前に立ち塞がる肉の壁がすでに難関なのだ。 力の差は歴然であると断言できるし、もし掻い潜ったとしても、奥に居る4人の男たちに容易く取り押さえられてしまうことだろう。 そして、その4人も加わった5人で、彼女をたらい回しにされてしまうことだろう。 性に餓えているのは、この場にいる全員なのだから………
「おーい、俺たちの分までちゃんと楽しみを残しておいてくれよ? 壊れた状態で回されても臨場感がねぇんだからさ」
「そうそう、ちょっと丁寧にやってくれよ? 見たところ、その女の穴は小さそうだからお前の極太な竿でゆるゆるにさせないでくれよ?」
「わ、わかってる……フッ―――!! フッ―――!!!」
彼女に近付くほど、男の鼻息は荒くなるばかり。 その様子を他の男たちは冗談を飛ばすかのように、せせら笑いをし続けている。 この男だけじゃない、ここに居る全員が同類なのだ! 人間のクズなのだ!!
「これはまた、いい映像が撮れそうだなぁ……えー、現役素人JK、誘拐拘束プレイ、廃倉庫にて乱交ってか? かははは!! ネットで流したらいい再生数が稼げるぞ♪」
このメンツの中で、一番若い男が自らのビデオカメラを片手に彼女をジッと撮影していた。 男は今から起こる出来事を、今回も興味津々で撮影に臨んでいた。 そして、その一部始終を撮って、それを食いぶちに当てようと考えている。
一部の界隈では、そうしたモノを好き好んでいる輩は大勢おり、事実、この男がこれまでに投稿した動画も稼ぎになるくらいに再生されている。 自らの性の掃け口を手に入れるとともに、そこから得た汚い金で私腹を肥やす、それがこの男なのだ。
「くふ、どゅふへへへへ、それじゃあ、御開帳といこうかなぁ………ふひっ♪」
「んんんっ?!!! ぅんっ―――!!!」
欲で汚れきった手が、彼女の足を掴みだした! 触れられた瞬間、彼女は狂ったように暴れだすのだが、男は何も気にすることなく、持ち合わせた異常なほどの力によって無理矢理足を広げさせた。
「ふひっ♪ なんだぁ、パンツがすじ状に濡らしちゃってるじゃないかぁ……もしかして、期待しちゃってたり? ぷふふふっ」
「んんんっ!!! んんんっ!!!」
「そうか、そうかぁ……そんなに喜んじゃってくれてるんだね? はやくその濡れ濡れの中にブチ込まれたいんだね♪ いいよぉ~今すぐにやってあげるよぉ~♪」
調子付いた男は、股を閉じようとする彼女の足を肉厚な身体で防ぐと、開いた両手でズボンのベルトを緩ませる。 カチャカチャと金属音を立てて、行為を早まらせようと焦っていた。
対する彼女は、なんとか足掻こうと必死に足を動かそうとするが、この男の身体はビクともしなかった。 そればかりか、足を動かしたはずみでバランスを失った上半身が倒れだし、もう動かすことさえも困難となった。
この瞬間、ヒデコはもはや逃げられないことを悟ってしまう――――
その事実を否定しようと泣き喚く――だが、彼女の口は塞がれて声は出ず、動こうにもこの男の重たい身体が彼女の身体に重なり始めて身動きさえも取れずにいた。 彼女は、ただ泣いて、泣いて、溢れんばかりの涙を流し続けるほか術が無かったのだ。
「ほぉ~ら、ズボンも脱げたことだし、もうすぐだぁ~いすきなモノに出会えるよぉ~♪」
地面を這いつくばるミミズのような気持ち悪い声を発しながら、男は下半身の下着に手をかけようとする。 すでに、薄い布の下からそそり立つモノが見えており、それが彼女の目にとまるとあまりの恐怖に絶望の表情を見せ出す。
――あともう少ししたらあんなモノが私の身体に……!!
想像を絶するような未来に蒼白せずにはいられなかった。 彼女はただ、家路に向かおうとしていただけ。 思春期の女子高生と同じ色恋に耽っていただけだ。 なのに……ただそれだけのことを考えたからこうなったのか? 幸福な自分を想像しただけでそうなってしまうのか? 絶望のどん底に叩きつけられそうにいる彼女は、この不幸の根源がどこなのか粗探ししようとする。が、そんなものはいくら探しても無駄なのだ。 これは彼女の責任ではなく、彼らが原因を作りだした、ただそれだけの話なのだ。
そうやって、また、1人の少女が自らの人生を為し崩されてしまうのだ。 これを仕方ないと、受け止める人はいるのだろうか? 答えの見つからないままに、彼女は深い闇の中にへと沈んでいくのだった――――
ビュン――――――!
バチン!!
「ひぶへっ?!!」
「?!!」
その時だった――――
男が自分の下着に手をかけていると、どこからかモノが飛んできて男の顔に当たったのだ! それに当たった男は身体をゆらりと揺れ動かして、仰け反りかけた。 カタカタと何かが床を跳ねる音がするのを聞くと、男は身体をひねらせて、視線を落とした。 転がっていたのは、ゴツゴツとした形の小石がひとつ。 その断片に、男に当たったことを示す赤い血のようなモノが付着していた。
その様子を他の男たちも見ていたが、どこからの飛んできたモノなのか見当もつかなかった。
「だっ、誰だぁ! どこにいやがるぅ!!」
当てられた巨漢の男は大声で怒鳴り散らしながら辺りを見回した。 のっそのっそと見苦しいくらいの身体を振り回しつつ、鋭い目つきでにらみを利かせた。
入口はたったひとつ――しかも、その前には、4人の仲間が居座っているのでそこはありえない。 窓がいくつかある――が、あまりにも高いところに点在しているので、出入りしようとするのには困難極まりない。 ではどこから―――?
「―――おい、このバカ野郎―――」
どこからか聞こえる若い男の声――それを耳にした男たちは一斉に怒鳴り散らし始める。
「どこだぁ!! どこにいやがる!!!」
「よくも、俺の顔を……ただじゃすまさねぇぞォ!!!」
「出てきやがれぇ!! ブッ殺してやる!!!」
怒り狂う巨漢の男と共に、他の男たちも騒ぎ立てる。 折角の雰囲気を台無しにされたからか? それとも、これからのお楽しみを邪魔されたからなのだろうか? いすれも、該当するモノに違いない。
けど、それで若い男が出てくるという保証はない―――
「―――ここだよ、デブ。 動きが鈍いだけじゃなく、思考も鈍いようだなぁ」
せせら笑いのような声で男たちを挑発しだす男の声――それが引き金となって、彼らを逆上させた。 怒り心頭となった彼らは、なりふり構わずそこら辺にある廃品やら箱やらを壊し始め出す。 物陰に隠れてないかを調べることが口実だが、実際は鬱憤晴らしに近いものだ。
しかし、彼らは見つけることができなかった。 代わりに、無駄な体力を消耗させて、息を荒れさせてしまうだけだったのだ。
「くっそぉ……どこに、いやがるっ……!! で、でてきやがれぇ……!!」
苦しそうに言いだす巨漢の男に、またどこからか声が聞こえ出す。
「―――しょうがねぇな。 だったら、出てきてやるよ―――」
溜息をつくような声が聞こえ出すと、何かが飛び跳ねるような音も聞こえてきた。 それが彼らの頭上から聞こえてきたので、思わず上を見てしまう。 すると、彼らの目に映ったのは――――
ゴギッ―――――!!!
「………ふぎぃぃぃっ!!!?」
「―――っと。 フッ―――!!」
「ふ、うぅ……うがぁぁぁっ?!!」
一瞬、何が起こったのか彼らは疑った。
突如、目の前に現れた――いや、降りて来た男は、巨漢の男が見上げる顔を踏みつけ、尚且つ倒れそうになった身体を腹からさらに踏みつけ出したのだ! 無論、巨漢の男は自分の身に何が起こったのか知ることもなく、身体中に走った激痛に苛まれながら床に倒れ込むのだった。
途中、何かが折れるような嫌な音が聞こえたが、彼はそれに見向きもしなかった。 そればかりか、彼はその男を踏み続け、果てにはトドメの一撃を加えてしまうのだった。
巨漢の男は、死んだ魚のようにグッタリと倒れ込んだ。 口から白い泡を吹きだし、白目を剥き出しにして気絶しているのだ。 そのなれの果てとなってしまった男を見て、他の男たちは身体を震え上がらせる。
それよりも何も、彼らを一番驚かせたのは、その男だ。 長身でひょろっとした身体付きの癖っ毛の青年――余裕を感じさせるような緩んだ頬が、なによりも恐怖させた。
「き、きさま……な、何者だ?!」
いかにも、ベタな言い回しをする若い男は、顔を引き摺らしながら啖呵を切る。 すると、青年はニカッと白い歯を全面的に見せた笑みを浮かばせ、男たちを凝視した。 そして、こう言い放ったのだ――――
「フッ、貴様らのような底辺ゴミクズ野郎どもに名乗るものなど無い――!!」
青年はそう言い放つと、地面を蹴飛ばし、男たちのすぐそばにまで詰め寄ったのだ! 一瞬の出来事だった。 まるで雷のような速さでやってきた青年は、1人の男性の首根っこを掴むと背負い投げた! 油断していた男は、呆気に取られたかのように中空を飛び、そのまま廃品のゴミ山に叩きつけられると、体液を口から吐き散らした。
身体を打ちつけた衝撃を耐えるかのように呻き声を出すのだが、腕に違和感を抱き視線を向け出すと、腕から突き出た金属片に青ざめた。 くすんだ銀色の金属片に付いた赤黒い液体が、ポタポタと流れ落ちる様を見て、常軌を逸したかのように叫び出す。
それを見た他の男たちは、次は自分ではないかと察して、一目散に逃げ始め出した。
「おいおい、逃げられるとでも思ったか……?」
背後から這い寄ってくる声が聞こえてくると思って振り向くが、そこに青年はいなかった。 が、正面を向き直しだすと、面でも付けたかのような作り笑いを見せる彼が―――残る男たちはそのわけが分からない状況に陥り、正気を保てそうになかった。
彼はさらににこやかな表情を見せては、愉快に話しだす。
「さぁ……ショーの始まりだ……。 仕掛けは簡単、ここに一本の金属棒があります。 振り回すと、とてもとても爽快な音を鳴らしたててくれます……。 さて、問題です。 この棒の強度はどのくらいあるでしょうか……?」
「「ひっ、ひやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
彼のその様子を見た男2人は、入り口とは正反対の方向に向かって走り出した。 早く逃げなくては、と疾走しようとするのだ。
「くっくっく……では、再開といこうか……」
彼はおもしろおかしそうに言いだすと、その金属棒を両手で持ちだし力を込め出した。
「この棒は、力任せじゃ折れません。 見るにとても良い強度を持っています。 ですが……」
捻じ曲げて折ろうとできないのを実演すると、今度はその棒を一気に引っ張りだした。 すると――――
ポキッ―――――
なんといとも簡単に、半分に取れてしまった! そして、次の瞬間には、その2つになった棒を投げ飛ばし、逃げ出した2人の男の頭部に直撃させた。
ガヅッ――――――!!
鈍く響く2つの音が反響し合いながら、2人の男は衝撃を受けて目の前が真っ暗になり突っ伏して倒れだした。
最後に残ったのは、正面に居る1人だけ――――
「ひぃ……!! く、くるな……くるんじゃねぇ!!!」
すでに弱腰になっていたこの男は、身体をビクつかせながら少しづつ後ろに下がっていた。 彼は、その男に向かって進んでゆくと、顔を掴みだし、そのまま持ち上げた。 目の辺りを中心に力強く握りだすと、男は張り裂けそうなほどの叫び声を上げ、あまりの激痛に音を上げるのだった。
「ご……ごめんな、ざ……いぃぃぃぃいいいぎゃああぁぁぁぁ!!! 潰れる潰れる顔が潰れるぅぅぅぁぁぁああああ!!!」
「―――もうしないな?」
「あ゛、あ゛い゛ぃぃぃ!!! だ、だからおどじでぐだざいぃぃぃ!!!!」
男の必死な懇願に、彼は力を弱めると、布を投げ捨てるかのように床に倒した。 命からがらに正気を保った男は、息絶え絶えに身体をビクつかせた。
彼はそんな男を視界から捨て去ると、彼女の許へと向かいだす。
「んっ―――! んっ――――!!」
口を塞がれてもがく彼女は、彼を見て驚きはしたが、よく見た顔であり、想いを抱く彼であったことにこれまでにないほどの安心感を抱くのだった。 そんな待ち切れない様子でいる彼女を見て、彼――明弘は渾身の笑みを浮かばせて彼女に見せたのだ。 決して、作り笑いなどではなく、血の通った生きた笑みなのだ。
「待ってろよ、今解いてやるからな―――」
口に覆われた布をやさしく解き始め、口の中に入っていたモノも取り出させた。 ようやくまともに息することができたヒデコは大きく深呼吸すると、嬉し涙を浮かばせ始めるのだった。
「……あ、あき、ひろ…さぁん………」
「ヒデコ……! 怖かったろう……よく、堪え忍んでくれた」
「うぅ……うあぁぁぁ……こわかった……ひっぐ、こわかったんだからぁ………」
張り詰めていた緊張も解けると、ヒデコは明弘が広げる胸の中に顔を埋めて泣き始める。 彼は泣きじゃくるヒデコを抱き寄せると、髪の流れに合わせるように、そっと頭を撫でた。 不器用ながらも少しずつ、やさしく触れるので、彼女も段々と落ち着きを取り戻すのだった。
終いには、鳴き声も止まり、鼻を啜って泣くくらいにまで治まるのだった。
「よし、それじゃあ、腕に巻かれた縄も取り除いて―――」
彼女を一旦胸から遠ざけると、見やすい体制になってから縄を解き始める。
そんな時だ―――――
「―――死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
明弘の背後から、ついさっき顔を握り潰されそうになった男が、金属棒を持って振りかざしたのだ! 後ろを向いていた彼は、その瞬間をとらえていない様子――彼女の縄を解くのに集中して、無防備を晒していたのだ!
「あきひろさ―――!!!」
ヒデコはその様子を見たので、声を上げるのだが、どう見ても遅すぎるように感じた! 振りかざされたその棒は、彼に向かって一気に振り落とされるのだった!
ドスッ――――――!!!
肉に喰い込むような鈍い音が鳴りだす。 一瞬、目を瞑っていた彼女は何が起きたのか検討も付かず、恐る恐る目を開いた。 すると、目を疑うような光景が広がっていた!
明弘に降りかかった男は、棒を振りかざしたままその動きを止め、極限にまで目を見開いていたのだ。 そして、明弘はと言うと、男の方に振り返っており、またその手に同じく金属の棒を持って男の腹に捻じ込んでいたのだ!
「後ろに隙を見せれば、襲えるだろうと確信したのだろう。 いい判断だ。 だが、相手を間違えたな――もう少し、相手の力量を推し量るべきだった……」
冷静な声でその男を翻弄させた明弘は、もう一度、この男の目元を掴み出して持ち上げた。 今度は、さっきよりも強くし、頭の形さえ変わってしまうのではないかと思うほどなのだ。
男は、その痛みに叫ぼうとするのだが、直前に喰らった攻撃に悶絶していたため、かすれた声しか出なかった。
「さあて、フィナーレでも飾らせてもらおうか……折角、見逃してやったというのに、そんなことをするとはな、飛んだ阿呆だな……。 俺の大事なモンを奪おうとした罪――軽いモノで済むと思うなよ……?」
「ひ……ひは……はほ………」
「てめぇのようなヤツは――馬に蹴られて、地獄へ落ちろぉぉぉ!!!」
明弘によって男は投げ飛ばされ、倉庫の脆い壁を突き抜けて外へ投げ出された。 脆いとは言え、コンクリートの壁にぶつかった衝撃は強く、そのまま気絶してしまったのだ。
「ふぅ、これで片付いたな」
パンパンと手を叩いて汚れをとる。 彼はそのまま、足がすくんで動けないでいるヒデコの許に戻ると、「大丈夫か?」と手を差し伸べた。 彼女も「は、はい…!」と嬉しそうな様子でその手を掴むとそのまま立ち上がった。
足元がおぼつかない様子だったが、それでも彼女はしっかりと立って、彼に引かれながらも歩くことができた。 そして、この忌まわしい空間からようやく脱出するのだった。
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―――
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[ 広報部・部室 ]
あの衝撃的な日から数日が経ちました。
明弘さんの手によって、ヒデコちゃんが戻ってきた時は、嬉しさのあまり泣いてしまいました。 半ば諦めかけていた私にとって、この出来事はとても嬉しい話でした。
幸いなことに、ヒデコちゃんにはどこにも傷もなく、ただ服が汚れたり解れたりした程度で済みました。 投げ出されたカバンとその中身も大事ないままでした。
それでも、その次の日には大事をとって休みはしましたが、その翌日は何事もなかったかのように登校してくれていたので、内心ホッとしているところです。
この前の出来事について、あまり口外されておらず、知っているのも私や明弘さん、フミコちゃんにミカちゃんくらい……あと、報告として蒼一さんにも話をしたくらいです。 穂乃果ちゃんたちなどには、明弘さんから絶対に話すなと強く念を押されたので、未だに口を閉ざしているところです。
そうそう、今回誘拐した人たちは全員逮捕されたみたいです。 その詳細を聞いてみましたら、どうやら全員前科持ちで、この数カ月間、この辺りの生徒を標的にしていたらしいです。 それで何をしていたのか……これは言わずとも分かることでしょう……。 これは極刑が与えられることが確定かもしれませんね。
それと、この事件に携わった警察の方が、どうやら明弘さんたちと知り合いだったらしく、確か……
すると―――――
ガチャ―――――
「おう、洋子。 暇だから来たぜ~♪」
またしても、扉をノックすることなく、この人は関係無しに入ってきたぁ!
「あのですねぇ……ついこの間も同じことを言いませんでしたかぁ……? 乙女がいる部屋なので、ノックのひとつくらいは覚えてもらいませんか……?」
「あっ、たはは……まーた、やっちまったようだなぁ、失敬失敬。 いやぁ~ダメだねぇ。 これはもう列記とした癖になっちまってるわ……」
「……それって反省する気があるんですか? それとも、無いのですか?」
「ちょ、ちょっと待てって……そんな怖ぇ顔しないでくれよ……寿命が縮んじまいそうだぜ……」
「それは、一体どういうことなんでしょうかぁ……? もう少し詳しくお話しして下さいませんかねぇ……?」
「ひぃぃ!! く、口は災いの元ってのは、こう言うことかぁー!!」
まったく、女の子に対する礼儀と言うモノを全く理解できていないようで、ホント怒りたくなるものです! どうしてこう、お気楽と言うか、能天気と言うか……結構自分勝手すぎませんかねぇ?
明弘さんのこうした行為に、ただ溜息を落としていますと、彼の後ろからまたやってくる人がいました。
「やっほー、洋子!」
「おお! ヒデコちゃんじゃないですか! どうしたのです? また、何か用事でも?」
「え、あぁ、そうね……ちょっと、明弘さんとお話しててね、洋子ちゃんも私のために頑張ってくれたんだって聞いてお礼を言いに来たのよ」
「いいえ、お礼なんて要りませんよ。 こうして元気な姿を見れただけで私は嬉しいのですよ」
「そう言ってくれると嬉しいわ♪」
ニコッと花が咲いたような笑みを浮かばせながら、ヒデコちゃんは嬉しそうに話すのです。 この間のことがまるで嘘のようですね。
「おや? 腕に何かアクセサリーでも付けているのですか?」
「エヘヘ、バレちゃったかぁ。 これね、昨日明弘さんと出掛けた時に選んで買ってもらったのよ! 綺麗でしょう♪」
「確かに綺麗ですねぇ……まさか、明弘さんがそんなに目利きだったとは知りませんでしたねぇ……」
「ふっふっふ……洋子、俺を舐めちゃ困るなぁ。 俺だって、女性の好みくらいよく知ってるし、ヒデコみたいな乙女にピッタリの品を見つけるのが、男の甲斐性ってもんだろ!」
「……なぁ~んか引っかかるような言い方ですねぇ……まるで、私が乙女じゃないみたいに聞こえますし……それと、ヒデコちゃん、顔が赤いですよー。 どーしたんですかぁー?」
「べ、別に何でもないわよ!! ちょっと、熱さでやられただけ! それだけなんだからね!!」
「ふぅ~ん……そうですか、そうですか……」
「も、もうっ! わ、私は先に帰るね、フミコたちが待ってるからね!」
「おう、そうか。 そんんじゃあ、気を付けて帰れよ!」
「うん! 明弘さんもありがとね! 洋子ちゃんも!!」
そう言って、ヒデコちゃんは、やや速足気味になりながら廊下を走っていくのでした。 しかしねぇ……“乙女”ですか……へぇ………
「ど、どうした洋子?」
先程、明弘さんがヒデコちゃんに対して“乙女”という言葉を使ったことに関して、私はとてつもなぁ~く変な気持ちに苛まれていましてね、どうしても、この複雑な気持ちを無くせないでいるのですよ、ハイ。 まるで、私と比較されているような感じがして、苛立ちを隠せないのです……
「明弘さん!!」
「は、はいっ?!!」
「ふざけるのも大概にしてくださぁ―――い!!!」
「カエサルッッッ?!!」
この鬱憤を晴らすべく、少し心許ない拳ですが、それで明弘さんのお腹目掛けてパンチを喰らわせるでした。 その拳は思いのほか、奥にめり込んでいきまして、かなりのダメージが与えられたみたいです♪ それに、私の気持ちもスッキリした気持ちになって、一石二鳥です♪
「な、な、なぜ腹を………!」
「自分の胸に手を当てて考えなさい!!」
―
――
―――
――――
その頃――――
「ふふっ♪ 買ってもらっちゃった♪」
明弘たちの許から離れたヒデコは、下駄箱近くにまでやってくると、腕に付けたアクセサリーに目をやっていた。 シルバーの小さな鎖が幾つも繋がったそれは、彼女の細い腕にピッタリ合ったモノだった。 けどそれは、明弘が事前にオーダーをかけて作らせたものなのだが、彼女はそのことを知らない。
ただ、彼からの贈り物に感謝の気持ちでいっぱいになっていたのだ。
「明弘さんからの……私への贈り物……うふふ♪」
つい先日、彼女は前に約束したこと通り、彼と一緒に出かけたのだ。 それは実質デートのようなモノで、彼女自身天にも昇るような気分で、その時間を過ごしたのだ。
彼とのデートは彼女が想像していた以上に楽しく、幸せな一時だった。 彼女が慕うあの人と一緒にいられるという幸福に、彼女は本当に乙女となっていたのだ。 そんな彼女を見てなのだろう、彼もまた精一杯の気持ちを籠めて彼女と出歩き、楽しみ、そして、贈り物までした。 それが彼なりのもてなしだったようだ。
けど、彼女が感じているモノは、彼のモノとは到底量り知ることができないモノに違いなかったはずだ。 現に、こうして今も、そのアクセサリーを見て、余韻に浸っているのだから――――
「明弘さん……♡」
彼に対する彼女の想いは、あの一件で大きく進展した。 あの出来事はあってよかったものだったのだろうか? それとも、無ければよかったのだろうか?
いずれにしても、さいころを振るうように回っていく人生とは、思いがけないモノを生み出してしまうものなのだ。
...Hope is there for...?