【完結】Why will the hardship take me?   作:雷電p

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―――知らぬ間に隣人は変わられてしまう―――


kidnapping~誘い~

 

 

 真夜中――――

 

 空中に浮かんでいた湿気が地表近くにまで降りてきて空気を湿らせる。また、地表から舞い上がる熱が相まって、身体にこびり付くような暑さを感じさせる―――そんな夜だった。

 

 

 そんな夜に、1人の少女が人気の無い公園にただ1人佇んでいた。髪は腰まで長く、色は黒、目を覆い隠すほどに伸びた前髪。身長はそこそこのようで、一目見るとか弱い少女にしか映らない。あと、付け足すとすれば、制服を着ていた。学生なのだろうか? だが、それが本当だとすれば、何故この時間帯に歩きまわっているのか。しかも、1人だけで………

 

 公園の隣には、電気街が煌々と灯と電光板で夜を色付けていた。夜の電気街には良からぬモノが潜む――それは、人を喰らうバケモノが潜むという噂が立つほどに……。当然ながら、それはここ周辺の学校にも流れ、学校も注意勧告を行っている……が……。

 

 

 少女は無言のまま佇む。

 何かを待っているみたいに――その反面、何かに怯えているような、そんな気さえ起こさせる。

 

 

 

 

 

「おっ、今日もちゃんと来たな」

「ッ………!!」

 

 少女の背後から男の声が聞こえた。少女は思わず身体をビクつかせ反応する。少女は恐る恐る首を回して後ろを見てみると……そこに、数人の男たちの姿を瞳に映り込ませるのだった。

 少女は震えだす。それも強く。それに、視線も段々と下の方に向き始め、いつの間にか自分の靴先を見つめていた。だから、少女は男たちの靴が視界に入るまで、どのくらいまで迫ってきているのか、男たちが少女を取り囲んでいることなど知るよしもなかった。

 

 

 

 いや、知ることを諦めている、そう思えた。

 

 

 

 

「さあ、行こうか」

 

 男にそう言われると、少女はただ小さく頷くだけ。それを見た男たちは一斉に歩き始める。少女を囲み、少女もまた男たちと同じ歩幅で歩み出す。向かう先に見えたのは、煌々と輝く電気街――――の裏通り。それも、先程いた公園よりも遥かに暗く、明りなしでは歩けない場所だった。

 

 なのに、男たちは明りを点けず平然と歩み続ける。少女もまた歩みを止めなかった。

 

 

 

 そして、

 

 

 

 

 街の闇が、少女を喰らった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 ある晴れた日のこと――――

 

 

「んんん~~~!! いやぁ~すばらしい買い物ができて、私、さいっこうに嬉しいです!!」

 

 電気街のとある大型店から意気揚々と出てきました私は、快晴の空に向かって大きく腕を伸ばすのでした。いやしかし、まさかこんなにもイイ掘り出し物に出会えちゃうとは、今日はラッキーですねぇ♪

 

 

 

「……って、オイオイ。人にモノを持たせて1人遊楽気分ですかい? だとしたら、俺はいい小間使いじゃんかよ……」

「いいではないですか。それとも、こんなか弱い女子にそんな重いモノを持たせるとは、紳士と呼べないのではないですか?」

「全部洋子のモンだろうに……! しかも、そこに紳士論を混じらせるんじゃあない!」

 

 ギチギチと音を立てながら後ろ歩く連れの明弘さん。ちょうど偶然アキバにいるところを見かけて声をかけまして、こうして買い物に付き合ってもらっているのです。はい、偶然ですよ? 本当に偶然、そこにいたんですから………ね?

 

 

「しっかしよぉ、この袋ん中にはいったい何が入っていやがる? 見る感じだと箱モノが多いような気がするが……」

「んん~……小型カメラや集音マイク、拡張記録媒体に逆探知組み立てキットに……」

「ちょっちょっちょ!! なんだよ、そのザ・物騒ですがオンパレードな品々は!? そんなん何に使うんだよ!? つうか、逆探知組み立てキットって、何普通にマインクラフトできるんだよぉ!!?」

「え? もちろん、取材のために必要じゃないですかぁ~。ほらぁ、私、こう見えても情報収集するのが得意じゃないですか。様々な情報を確保するためにも、こうした機材というのは必要不可欠だと思うんですよ、ハイ」

「な、なんじゃそら……って、ちょっと待て。その金ってまさか……」

「はい、もちろん、部費としてですよ♪」

「………マジ……?」

「マジのマジですよ? それに生徒会公認ですから♪」

「絵里ィ……なんてことを………」

 

 そう言うと、明弘さんはぐったりした顔を落としつつ溜息を吐いていました。許可を得た、戸は表向きですが、一種の脅しのような手法を使ったということは内緒ですね。おかげさまで十万近くの資金を横流s…いただくことができましたからね。満足満足です♪

 

 

「さぁ! それを私の部室に持っていきますよぉ~! 張り切っていきましょー!」

「おぉ~……って、俺だけが頑張らなくちゃいけないヤツじゃんか……」

 

 ふふ~ん、何にも聞こえませーん。私の耳にはヘルプな声など聞こえませーん。

 そう外部からの声をシャットアウトするような気分のまま歩き続けるのでした。

 

 

 

 

「おや……あれは……?」

 

 

 ふと、人ごみの中で歩き回っていると、視界の中に一際目立つ人が立っていました。正確に言えば、目立っている姿ではないのですが、ただ私の眼にはモノクロ風景の中でただ一つ色付く花のような、そんな思いで見出したのでした。私の目に間違いがないとしたら、あれは――――

 

 

 

 

「蓮花ちゃん!」

 

 人目をはばかることなく声をあげると、対象がその足を止めこちらを振り向いたのです。腰まで届きそうな黒い髪をなびかせ、くるりと正面を向いたその姿に私の中で留まっていた記憶が呼び起こされました。

 

「やっぱり……! やっぱり、蓮花ちゃんじゃないですか!」

「えっ……あっ、よう……こ……?」

「はい、そうですよ! いやぁ、懐かしいですねぇ!」

「わ、私も、嬉しい……本当に、久しぶり、だから……」

 

 そう言って彼女―蓮花ちゃんは私に微笑み返してくれました。まさか、中学卒業以来の親友に出会えるだなんて……ほんと、いつぶりでしょう……。

 

 

「……ひぃー……ひぃー……お、おいぃ……きゅ、急に走り出すんじゃあねぇよぉ……。ただでさえ重たいというのに、走らせるとか鬼か……!」

 

 息を荒めに切らしながらやってきた明弘さんは、いかにも暑そうに額からダラダラと滴らせています。別段、一瞬だけ明弘さんのことを頭から消えていた、だなんてことはございませんよ―(棒)

 

 

 

 

 

 

 

「……ひっ、お、おとこのひと………」

「ん?」

 

 急に蓮花ちゃんが私の背後に回りだすと、身を縮込めたのです。まるで、明弘さんから隠れるみたいに……

 

「大丈夫ですよ、この人はそんなに悪い人じゃありませんよ。ね、明弘さん?」

「初めましてお嬢さん。俺は滝明弘といいます。以後、お見知りおきを」

「……なんで急に態度が変わるのですか……?」

「いやぁ、目の前に髪で眼を隠すまさに萌えな子がいるから、つい俺の中のフェミニズムが擽られてしまったのだ。悪気など一切ない。連絡先交換いいですか?」

「何サラッと人の親友との連絡を取りつけようとしているんですか?!」

「止めるな洋子、俺はこの高まる衝動を抑えるわけにはいかないんだ。少しでもお近付きになりたいのだ!」

「欲望ダラダラな人に私の親友を近付けさせるわけにはいきません! 自重です!!」

 

 あーもう、バカなんですかこの人は!? 眼の前に異性がいましたら何でもいいのですかねぇ? さすが、学院中の生徒の連絡先をキープさせていると自称するまでのことはありますねぇ……!

 

 ぐいぐいと姿勢を前倒しに押し寄せてきます身体を何とか抑えてはみるものの、やはり体格差はバカにできない模様。なんとも押され気味で参ってしまう。明弘さんから少し離れるように、と蓮花ちゃんに伝えようと振り向くと何やら変な気持ちに駆られたのです。

 

 

 

 

「い、いや……お、おとこのひと……だ、だめ……っ!」

「あっ! れ、蓮花ちゃん!!」

 

 声を小さく何かを話したと思うと、蓮花ちゃんは顔を青ざめたまま走り去っていきました。

 

 

 

「ありゃりゃ、行っちまったなぁ……」

「もう、明弘さんが強引にするからですよ! 折角、久しぶりに会えたというのに……もうっ!」

「わ、わりぃ、わりぃ……謝るってさぁ……」

「謝っても蓮花ちゃんは戻ってきません!」

「うぐぅっ……し、仕方ねぇ、なら今なら洋子の言うことを何でも聞いてやるさ!」

「えっ! ほ、ホントですか?!」

「え……ん、まぁ、そんなとこだ……。お、俺のできる範囲なら何でもやってやるさ……!」

 

 ほほぉ、なんでも、ですか……。それはいいことを聞きましたねぇ。なんなら少し難しいことでも……いやいや、ここは穏便な方でも選択しておきましょうかねぇ……。もしくは、今後に活かせるようなことに………そうです!

 

 

「え~っとですねぇ……でしたら、今晩また買い出しに行きますよ~♪」

「え゛っ?! ま、まだ買うモノがあったのかよ!」

「はいぃ~それはもう……あっ、もちろんディナーも用意して下さいよ♪」

「ダニィ?! しょ、食事もかよ!! 少しは加減をだなぁ……」

「お願い、聞いてくれるのですよねぇ~? そ・れ・に、まさか女1人を食事に誘えられない、なんてことを明弘さんができないなんてありえませんよねぇ~?」

「むっ……それは聞き捨てできねぇなぁ……。この俺を誰だと思っていやがる……女を愛でるのが俺の甲斐性。たかが1人奢るくらいで音を上げるような男だと思うなよ!」

「ふふっ、それじゃあ楽しみにしますね♪」

 

 ふふふ、やりました♪ ちょっと強引な気もしますが、とりあえず約束を取り付けられることができましたね。これで今晩も一緒に………

 

 い、いけませんいけません、このようなところで気を緩めては……。ただ一緒に食事をするだけですし、早とちりしてはいけませんね。まだ、その時期ではありませんから、ね……

 

 

 

 

 

 

 しかし、蓮花ちゃんの様子が変でしたねぇ。まるで、何かに怯えているような気が………

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 夜―――――

 

 

 

「うふふ、ごちそうさまでした♪ とても満足致しましたよ♪」

「あはは……お粗末さまだわ……」

「さすが明弘さんですね。こうしたいいお店を知っているだなんて」

「そりゃあ、まあな……可憐な子たちを連れて来るんだ、それなりの場所を提供できなきゃあ男が廃るぜ」

「ふふっ、そうですね。明弘さんのそうした心遣い、なんだか……ちょっと惹かれそうです」

「っ! じょ、冗談はよせ……」

「……当然ですよ♪ それじゃあ、先に街はずれの公園で待ってますね。 その荷物、落とさないでくださいね?」

「落とすかよ。てか、これもまた、ひぃー……重いぜ……」

 

 

 夜にまたアキバに訪れ、新たに買い物を行った後おいしいディナーを奢ってもらいまして、ただ今から帰路に立とうとしておりました。何ともいいお店に立ち寄らせていただきまして、おかげで大いに満足することができました。そしてまた、明弘さんに荷物を私の家にまで持っていただくこととなっておりまして、まあ至れり尽くせりな感じですかね。

 

 しかし、さすがに負担をかけ過ぎなところもありますよね。そうです、このまま家に来ていただくのであれば何かもてなしてみましょう。左程、よいモノがあるわけではありませんが、ほんの気持ちということで受取っていただきたいですね。

 

 それに……もう少しだけ、私の我がままに付き合ってほしい……なんて、柄でもないことを……。変……ですよね? こんなの。歳にあった女の子らしいことをしたい、だなんて、ね。まったく、どうにかしちゃってるんですよ、私。

 

 

 心の中でモヤモヤとする気持ちを抑えつつ、遅い足取りの明弘さんよりも先に駆けて行く。同じ歩幅で歩くことにちょっぴりの羞恥と赤み差す表情を見られたくないことが入り交じってしまった結果です。乙女のヒミツは、誰にも見せたくないから――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し駆け、先程話した公園前にやってきますと、真っ暗になった一帯に射す白灯が足元を照らしておりました。電器街からの光も来るのですが、それでもやや前が見えるかな、といった程度ばかりで、ここに立つ白灯のみが人の灯火となっていたのです。

 

 そんな公園に足を踏み入れて、明弘さんが来るのを待っていますと――――

 

 

 

「おや、あれは………」

 

 公園のブランコに座る人影が眼に映りました。こんな時間にここで何を……って、私も人のことは言えませんけどね。ただ、私のただの興味本位からなのでしょう、無性に気になって仕方ないのです。

 そこで少しずつ近付いてみたところ、ぼやけていた人影にハッキリとした輪郭が付き、それがどんな人であるのかわかってしまったのです。

 

 

 

 

「蓮花……ちゃん………?」

「…………ッ!!」

 

 私の声に反応するように身体を震わせ、こちらに顔を向けてきた。それをじっくり眺めますと、眼を覆い隠すほどの前髪と、座ると腰下にまで伸びた髪が特徴のあの子が――蓮花ちゃん座っていたのです。

 

 

「やっぱり、蓮花ちゃんじゃないですか! どうしてこんなところにいるのです?」

「……ぁ……よ、洋子………!」

 

 彼女の膝前に屈み、下から蓮花ちゃんを眺めますと、決して大きくない瞳を丸々とさせまして私を直視したのです。まるで、どうしてここにいるの、と訴えかけるような眼のように思えました。ですから、私用でこの周辺にまで来たと、返事しようかと思っておりました。

 

 

 

 ですが――――

 

 

 

 

 

「………だ、だめ……洋子ちゃん、早くここから………!」

 

 急に立ち上がっては私の腕を掴んで、声を荒げながら私に詰め寄る蓮花ちゃんに言葉を発せずにいました。思わぬ彼女の意気に私は茫然とするばかり。頭を回す余裕さえありませんでした。

 

 

 

 そんな時です――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――おやぁ~? 今日はもう1人いるのかなぁ~?」

「?!」

 

 不意に聞こえた男の声に背筋が痺れ振り返ってみると、そこには何人もの男たちが群れとなってこちらに近付いてきたのです。1人、2人、3人………7人、くらいと言ったところでしょうか、暗がりでよくは見えませんが多分そのくらいは。体格はまちまちで、がたいが良ければひょろりとした人もいる。ただ、その顔つきときたら酷いモノで、どうも普通の人のようには思えない、そんな雰囲気を漂わせていたのです。

 

 

「蓮花ちゃん……この人たちは……?」

 

 この男たちのことを尋ねてみたのですが、真っ青に震え上がった彼女にはどうすることもできないようでした。ここまでさせるだなんて、この人たちは一体何者なのですか?!

 

 

 

「ふぅ~ん、いいねぇ……このちょっと反抗して見せる表情がまたいい。痺れちゃうねぇ~」

「何なのですか、あなたたちは……」

「俺たち? 俺たちはねぇ……そこにいる蓮花ちゃんのオトモダチさ。ねぇ~蓮花ちゃぁ~ん?」

「ひっ……!」

 

 ニヤつくその男に呼ばれると、蓮花ちゃんは大きく震えあがり身を縮込んだ。昼間、明弘さんと対面した時よりも遥かに怖がっているのを肌で感じます。この怯え様、この男たちが何かしたに違いありません……。

 

 

「……わ、私はどうなって……いいから……こ、この人だけは……ゆ、赦して……」

「蓮花ちゃん何を言って―――?!」

「ソイツは無理な話だな」

「「!?」」

 

 男がそう言いますと、一瞬にして周りの男たちが私たちを取り囲んだのです。抜け出そうにも抜け出せない、肉壁となった男たちから逃れられなくなってしまったのだ。

 

 

「俺たちの顔を見られちまったんだ、ただで返すわけにはいかないさ」

「やっ、やめて……! だめだから……本当にダメなんだから……!」

「ちっ、しつこいな……。なら、今日はいつもより頑張ってもらわないとな、蓮花ちゃんのオトモダチを使わずに、な?」

 

 こ、この男、何を言っているんです……!?

 言葉を探るだけでも何かを強要させていることがわかる。鋭利に研ぎ澄まされた刃を突き立てるように目で威嚇し、私をもどうにかしようとしている。周りの男たちもそうだ。私に不気味な笑みをして見てくる彼らの視線に、警報が鳴りだしてしまうくらいです。

 

 マズイ、と察せてもすでに遅い。このまま順応しなくてはいけないのか、と歯を食いしばるしかありませんでした。

 

 

「さあ、ついて来てもらおうか……」

 

 拒否など出来るはずもなかった。私は、怯える蓮花ちゃんと共に歩み始め出す男たちに合わせて足を運ばせた。歩幅は小さくても着実にどこかへと誘われる。そこでどんなことをされるのか想像したくもない。待ち構えている闇の中に、また浸かって行ってしまうことに眠る恐怖が呼び起こされるのだ。

 

 どうか……どうか、私たちを………

 

 

 

 送られているのすら分からない思いを打ちあげて、ゆっくりと浸り始める闇に、心までも呑みこまれてしまいそうだった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

「うひぃ~……ひぃ………た、たまんねぇなぁ……。両腕がもげるかと思ったぜ……」

 

 遅れた足取りで待ち合わせ場所に来た明弘は、息を切らしつつ額に溜まった汗を拭った。圧倒的質量を感じさせる袋を両手で支えるのには一苦労。鍛えられた彼ですらこんなに辛そうにするのだ、とても洋子が持てる代物ではない。

 

「まさか……こんな重てぇもんを1人で運ぼうとしなんじゃ……? いや、そんなことはねぇ……と思いたい……」

 

 最近は人遣いが荒いよなぁ…と重たい息を落としつつ、少しはデリケートに扱ってほしいモノだぜ、ともぼやきが出るのだった。

 

 

 

 

 

「―――そういえば洋子は?」

 

 ハッと思いついたように周囲を見回し、足早に駆けて行ったはずの彼女の姿を追った。が、当人の姿はどこにもなく、ただ薄暗い闇と電気街から漏れ出る賑やか音だけが残るばかり。

 不思議に思った彼は手荷物を降ろし、スマホを取り出して通話を試みるが返事が来ることなくそのまま途切れてしまった。

 

 

 

 

「妙だな……不穏な匂いがする………」

 

 鋭い目つき――彼の中でうごめく予感に表情が険しくなっていく。

 

 

 

「俺の勘違いであって欲しいものだ……」

 

 かすれるように小さな声に望みを抱かせるも、この闇が呑みこんで消されてしまうかもしれない。だがそれでも、彼はわずかなばかりのその想いを胸に空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな彼を嘲笑うかのように、鉛色の空の隙間から冷たい風が吹き荒れた―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...Hope is there for...?

 

 

 

 

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