奇策とパンツは少女を嵌める   作:すとらっぷ

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少人数のチームほど卒業って戦力的に厳しい


【留学編】合同練習開始!

その日の夜

 

クロウ「黙っててすまんな!実は俺も一枚噛んでたんだ。でも女の子と知り合えたなら儲けものだろう?」

 

俺「…クロウさんよ、自分の愛車が奪われる気持ちというものを少しは考えろよなぁ」

 

クロウ「いや、俺もまさか盗むとは思ってなかったぞ!せいぜい煽って喧嘩売る程度のものだと…」

 

御舞等が宿泊するホテル、ホテルとは言っても高級なものでは無くユースホステルのようなものだ。しかし3食付きで二人部屋というのはありがたい。ちなみにクロウとは同室。持てる力全てを以てしてくそみそチームとの同室は避けた。

 

クロウ「しかしドイツの奇策師とはなぁ。戦ってみてどうだった?」

 

俺「チヘじゃなくてもっと別の乗りなれた戦車だったら話は変わってただろうな。それにチヘに適応するのもかなり早かった。」

 

クロウ「ってことはやっぱり強いのか?」

 

俺「相手は一発も撃ってないから射撃技能はわからないけど、実力は高いと思う。それに作戦に関しては参考にできる部分はあったな。」

 

クロウ「で、その隊長の娘がメイドさんになる…と。メイドの後継者探しか?」

 

俺「後継者、悪くないな…今島田流の方で人手足りてないし働いてくれれば丁度いい。」

 

クロウ「そういえばお前今どこでバイトしてるんだ…?」

 

俺「寄港地近いときに島田と聖グロに寄って働いてる。後は不定期でボコランド。」

 

クロウ「メイドorボコって選択肢狭いなぁ…」

 

俺「そういや話は変わるけど、阿部会長ドイツ語話せるんだなぁ。」

 

クロウ「…くそみそチーム全員話せる」

 

俺「なんだあの秀才集団!!?」

 

クロウ「あの人達謎の高スペックだからな。」

 

俺「…俺もちょっとくらいドイツ語勉強しようかなぁ」

 

クロウ「じゃあまずはおやすみからだな。Gute nacht.」

 

俺「ぐーて、なはと!」

 

 

 

Day2

 

俺「ぐーてんもるげん!」

 

エル「…」

 

俺「…」

 

ベルリン郊外戦車演習場、合同練習ということで試合があるわけでは無いのにも関わらず、隊長二人には険悪な雰囲気が流れていた!

 

俺「…そういえばグーテンモルゲンってかなり畏まった表現らしいな」

 

フレンドリーに言えば返事してくれるかも。

 

俺「Hallo!」

 

HelloじゃなくてHallo!らしい。

 

エル「…」

 

無視か。なるほど

 

俺「…ウィッチ、イズ、ウェアー!メイド、オア、ディアンドル!!」

 

まだドイツ語の疑問文は分からないのでカタコト英語で選択を迫る!

 

エル「Abneigung!!!(嫌だ!!)」

 

エルフリーナは全速力で逃げ出す!流石森林地帯を楽々偵察出来る選手、中々の身体能力だ。

 

俺「だがしかし!今回は秘密兵器を用意してるんだよなぁ!」

 

チヘから折り畳まれて出てきたのは昨日のキックスケーター、Eスクーターと言うらしい。このEスクーター、パリから始まって最近では観光地などに置かれている。なんと喫茶店のマダムが制作したものの試作品だそうだ。この試作品が上手く行けばドイツのEスクーター業界に飛び込む算段だとか。

 

全速力でダッシュするエルフリーナを楽々追いかける俺。

 

そんな二人を尻目に阿部会長が話を進める。

 

阿部『えー、ウチの隊長が申し訳ない。代理の阿部だ。もう少し経てば満足すると思うので、先に準備を初めておきたいと思うんだが。』

 

アデーレ『こちらこ先日はウチの隊長がご迷惑おかけしました。ヴィルヘルムスハーフェン学園陸戦部副隊長、アデーレと言います。』

 

身長の小さい女の子だ。上背のある阿部会長と握手するとその身長差が際立つ。

 

阿部「おーい、隊長ー!そろそろ練習始まるぞー?」

 

俺「おーう!乗車ぁー。」

 

一仕事終えたような爽やかな顔で戦車に戻る俺隊長。

 

ぜぇはぁと息を切らすエルフリーナの脇にはタオルと大味なスポーツドリンク、そしてきれいに畳まれたメイド服が置いてあった。気配りが効くのかいじめてるのかよくわからない。

 

 

 

さて、今回の合同練習は御舞等高校の重戦車運用能力の向上を目的としている。

 

これまでに何度も指摘されているが、御舞等高校のメンバーは他の戦車道強豪校と比較すると総合的な能力は低い。尖りに尖った得意分野を生かして戦うことで何とか渡り合って来た。

 

これが御舞等の強みであるのは間違いないが同時に重大な弱点でもある。

 

今まではこれでよかった。しかしこのギリギリのバランスはメンバーの卒業で大きく崩れる。

 

幸い阿部会長、オネェなどの3年は推薦が決まっておりまだまだ現役で戦車道を続けている。しかしそれも3月までだ。

 

つまり御舞等は3月にSU-100、SMKの搭乗員を失うことになり、火力、そしてその信頼性が一気に落ちる。

 

そこで考えられる打開策は現状メンバーが重戦車、重駆逐に乗り換えて運用すること、もしくは新入生に重戦車の運用を指導すること。この2つだ。

 

どちらにしても在校生メンバーが重戦車、重駆逐戦車の運用を学ばなければ乗ることも教えることも出来ない。

 

そんな訳で重戦車を多数運用するヴィルヘルムスハーフェンと合同練習、全員が最低限の重戦車運用を学び、適正を考えて今後の御舞等の方針を考えていく。 

 

…本当は同じソ連戦車ということでプラウダに運用を学びに行きたい所だったが、日本の女子戦車道界隈は無限軌道杯に向けて大忙しなので迷惑かけられなかった。

 

 

 

ちなみに、ヴィルヘルムスハーフェン学園は重戦車運用に長ける反面軽戦車での偵察行動、戦闘には不慣れである。その点、軽戦車戦闘に特化(してしまった)御舞等との合同練習は有意義なものになると考えた。しかし…

 

チョウ「……落ちつかナイ!」

 

クロウ「…同じくだな。慣れない」

 

普段M5に乗っているヤムチャチームはティーガーⅠ、クロウ達ナイトチームはヤークトパンターに乗っている。御舞等の中でもかなりオールマイティに活躍できる器用組ということもあり真っ先に重戦車運用訓練に抜擢された、が。

 

クロウ「戦車道始めたての頃は火力が欲しくて仕方なかったが…」

 

チョウ「…今となっては違和感しかないデスね。」

 

阿部「文句言うな、慣れろ」

 

オネェ「無理もないわよ。ずっと軽戦車しか乗ってないんだから」

 

ちなみにナイトとヤムチャは重戦車運用には人数が足りないので欠員を他チームから補充している。

 

WH生徒『射撃の腕は悪くないけど…機動は慣れてないみたいね。』

 

教導役のヴィルへイムスハーフェンの生徒はまだ知らない。コイツらの訓練の激しさを。

 

 

 

阿部「次の目標、命中出来なかったらあと3cm拡張する。」

 

クロウ「どこを!?どこにナニされるの俺!?具体的な数字が怖っ!!」

 

阿部「安心して俺に身を任せればすぐ終わるぞ」

 

クロウ「それぜっっっったい失敗出来ねぇじゃねぇか!!」

 

ドン!!

 

阿部「…チッ、命中。」

 

クロウ「残念がるなよ!!」

 

阿部「次、三連続命中な、一個外すごとに3cm。最大9cm、どうなっちまうんだろうな」

 

クロウ「だからナニがどうなっちまうんだよぉぉぉぉ!!!」

 

ドンドンドーン!

 

 

 

チョウ「オネェサン…もう無理…」

 

オネェ「はい次三方向から攻撃してくるから角度調整して弾受けつつ反撃してね、もし撃破されたら……んふふ」

 

チョウ「総員気合入れてェェェェ!!!」

 

ドン!カァン!ドドンドーン!

 

 

 

WH生徒『何…この……何?』

 

御舞等は貞操的な死と隣り合わせの訓練を受けることで強くなって来たのだ!

 

WH生徒『普段から…こんなことやってるの?』

 

変態じみた綱渡りである。

 

阿部『…普段から、では無いな。流石にここまで厳しいのは久し振りだ。………焦ってるんだ。俺も卒業しちまうからな』

 

WH生徒『…そうね。』

 

彼からは先輩としての哀愁が漂う。

 

阿部『それに、9cmはやりすぎだな。5cmにしよう。』

 

WH生徒『ソレはやるんだ!?ナニするかはわからないけど!!?』

 




思えば火力要員が3年生ばかりだから進級したらヤバイんだよな御舞等高校。

次回、意外な対戦カード。

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