え?デジモンっていつからハッキングプログラムになったの?   作:作者B

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今回はちょっと短めです。


正体不明!EDENの黒い怪物?

「ふう……なんとか逃げ切れたみたいだな。大丈夫か?お前ら」

 

息を整え終えた俺は、後ろでまだ息絶え絶えのノキアとデジモン達に目を向けた。

 

「な、なんとか~」

 

ノキアは膝に手を当てて肩で息をしていて、ブイモンたちはその場に座り込んでいる。

 

「それにしても、だいぶ奥まできたな。まったく、アラタの奴何処まで行ったんだか」

 

まあ、クーロンといえどそこまで広くはないだろうし、もうすぐ最深部に着く。アラタもそこにいるんだろう。

 

「おーい、そろそろ出発するぞ」

 

するとノキアが、さっきのままの体勢で俺の方をじっと見ていた。

 

「なんだよ。何か用か?」

「あ、いや。なんだか、前にもこんなことがあったよ~な気がして」

 

はぁ?なんだそりゃ。

 

「おいおい、お前は普段からそんな波乱万丈な私生活を送ってるのか?」

「ち、違うし!そういうんじゃなくて!なんというか、こう―――」

 

すると突然、ノキアの言葉を遮るかのように目の前が一瞬フラッシュバックした。

 

「ッ!?何、今のッ……?」

「?どうしたのノキア?」

 

足元がふらつく。あまりにも突然視界が切り替わったせいで、若干気分が悪くなる。それにしても、今の映像は……5人の子供?何だったんだ、一体……

 

「ケンスケ、大丈夫か?まだ疲れてるんじゃ」

「い、いや、平気だ」

 

ブイモンの言葉を聞き、俺は体勢を立て直す。

 

「子供……?何なの……今のもハッカーの仕業?」

 

ッ!?ノキアも見たのか?じゃあ、今のは幻覚とかじゃなくて……

 

「あーもう!これもそれも全部アラタが勝手に行っちゃったのがいけないのよ!そうに違いない!行くよケンスケ!さっさとアラタを見つけ出して文句言ってやるんだから!」

「あ、ちょっ待てって!行くぞ、ブイモン!」

「お、おう!」

 

ズシズシと一人で歩き出したノキア。俺とブイモン達はそんなノキアを慌てて追いかけた。

 

「今の映像は……くそっ。なんだか気味ワリィな……」

 

でも、ノキアのやる気とは裏腹に、少し奥に行くとあっさりアラタが見つかった。なんだ、こんな近くにいたのか。

 

「見つけた!こぅるぁぁあ!アラタ!あんた何一人で勝手に突っ走ってんのよ!おかげでこっちは大変だったんだからね!」

 

俺たちの、というかノキアの声に気が付いたのか、うわぁ面倒くさいのが来たと言いたげな顔でこっちを見た。

 

「あー!あんた今、『超絶キュートでセクシーなノキアが来やがった、メンドくせぇ』とか思ったでしょ!喋らなくったってそれぐらいわかるんだからね!」

 

いや、その枕詞は絶対に思ってない気がするんだが……

するとまた、目の前にノイズが走る。

 

「え……何?またなの……?」

 

いや、これはさっきと違う。これは―――上かッ!?

 

「ッ!?おいおい、なんだありゃ……!」

 

俺たちの上空に突然、光の模様が現れた。

 

「なんだかヤバそうだ……おいお前ら!今の内にこっちに来い!」

 

アラタが焦った様子でこっちに呼びかける。

同感だ。よくわからんが、合流しといて損はない!

 

「行くぞノキア!」

「えっ!?う、うん!」

 

俺とノキアは急いでアラタの方へ走り出す。

 

「おい!落ちてくるぞッ!」

「ッ!?」

 

アラタの言葉を聞き、俺はとっさにノキアの手を引いて後ろに下がった。すると、俺たちがさっきまでいた場所に、光の模様がある場所からナニカが1体降ってきた。

 

「ちっ!遅かったか!」

 

そう。それは、まるで俺たちの行く手を遮るかのように立ちふさがった。

 

「何……?なんなの、こいつ……」

 

目の前に伸びる2本の触手。その周りには繊毛らしきものが付いていて、紅く光る眼の後ろはオウムガイの殻のように丸くなっている。でも、殻があるわけではなく、形を整えるための最低限の骨格のみが存在し、その中はおそらく胴体であろう細長いものが絶えず動き続けている。その、この世のものとは思えないソレからは、生理的嫌悪を感じずにはいられない。

 

「ね、ねえケンスケ……こいつも、デジモンなの……?」

「……いや、少なくとも俺は知らない。ブイモンはどうだ?」

「俺も聞いたことないよ、こんなやつ……」

 

ソレは俺たちの姿を確認したのか、ゆっくりとした速さで近づいてきた。

 

「ッ!?おいお前ら!こっちに来い!脱出すんぞ!」

「だ、脱出!?でも、ゲートはこっちに……」

「ここにもう使われてないゲートを見つけた!何とか使えるようにすっから、お前らはお前らで何とかして合流しろ!」

「む、無茶言わないでよぉ!」

 

ノキアの言葉に泣き言が混じる。まずいな……ノキアじゃないけど、こいつは危険だ!下手したらクリサリモンよりも……

 

「ケンスケ!オイラたちがさっきみたいに引き付ける!その隙に向こうに行くんだ!行くぞ!アグモン、ガブモン!」

「うん!」

「オレもノキアたちを守る!」

 

……今はそれが最善か。

 

「任せたぞ!」

「おうよ!【ブイモンヘッド】!」

「【ベビーフレイム】!」

「【プチファイアー】!」

 

よし!取りあえず、アレの注意はブイモン達に行った!今のうちだ!

 

「行くぞ!ノキア!」

「え?あ―――」

 

俺はノキアの答えも聞かずに手を強引に掴み、アラタの方へ走り出した。

 

「ま、待ってケンスケ!あの子たちが!」

「デジモンはお前が思ってるよりずっと強い!それよりも、戦力にならない俺たちが居たほうがあいつらの邪魔になる!」

 

そう言いながらも、俺は横目でブイモン達の様子を見ながら走る。まずいな、ありゃ全然攻撃が効いてないぞ!

 

「よし!着いた!アラタ、ゲートは!?」

「ナイスタイミングだ!今開ける!」

 

アラタが目の前に展開したディスプレイを操作すると、目の前にある古びたゲートに光が灯った。

 

「よっしゃ!これでログアウトできる!ノキア、ケンスケ!さっさと来い!」

「で、でも……!」

 

ノキアの視線が、目の前のソレに為す術もなくやられているアグモン達に移る。

 

「大丈夫だ!さっきの移動速度なら、アグモン達は十分逃げ切れる!だから早く行け!」

「……ッ!」

 

ノキアは一瞬葛藤したような顔をすると、意を決したのかゲートからログアウトした。

 

「ケンスケ!俺も行く!お前も絶対来いよ!」

 

ノキアがログアウトしたのを確認したアラタは、ノキアに続いてログアウトした。よし、俺も!

 

「アグモン!ガブモン!ブイモン!ノキアは逃げられた!俺も今から行くから、お前らも早く逃げろ!」

 

俺はそう言うと、ゲートに向かって走り出す。

しかし、突然ナニカは狙いを目の前のデジモン達から俺に変え、その触手を俺に目掛けて猛スピードで伸ばしてきた。

 

「なッ!?―――くそッ!足がッ!」

 

足を掴まれた俺は前に進むことも叶わず、その場に倒れた。

 

「ケンスケ!」

 

俺は必死にゲートに手を伸ばす。でも、それは届くことなく、ソレの触手によって後ろに引っ張られる。

……俺は、死ぬのか?

 

「ケンスケぇぇぇぇぇ!」

 

そして、俺は目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……なんだ?ここは

 

真っ白だ。何もない……

 

いや、誰か居る。誰……?

 

白い髪に、白い服?もしかして、お前が噂の幽霊、とか?

 

だったら、俺は死んだのか?

 

……嫌だなぁ。せっかく、ブイモンに……デジモンに会えたのに……

 

死にたくないな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪警告≫

≪相羽ケんスケさんの ろグアウト処理中 に予期セぬ えラーが発生 しましタ―――≫

≪…………ログアウト処理ヲ 実行しマす≫

≪ログあウト 成功しまシた 次回ノろグインでオ会いシマしョう≫

 

 

 

 

 

『キ■■ノ■ン■■を手に入れた』

 

 

 

 

 

~interlude~

「やれやれ。手がかりなし、か」

 

そう呟く女性『暮海杏子(くれみ きょうこ)』は、新宿で一人車を走らせていた。

 

「おや?あれは……」

 

すると、目の前の交差点の中央に高校生らしき少年が倒れていた。その周りには人だかりもできていて、通行人が遠巻きに少年の様子を伺っている。

事故だろうか?それとも病気か?いずれにせよ、さほど珍しくもない事件とはいえ、一度見てしまってはこのまま無視するわけにはいかない。杏子は少年に駆け寄よるために、車を近くに止めようとした。

 

 

 

少年の姿に、まるで年代物の映像によくある"ブレ"のようなノイズが走るまでは。

 

 

 

「ッ!」

 

杏子はブレーキを踏もうとした足を一つ隣にずらし、思い切りアクセルを踏むとそのままドリフトしながら観衆と少年の間に割り込んだ。

 

「なるほど、実に興味深い」

 

杏子が助手席側の、少年が居る方のドアを開ける。すると、車の音で目が覚めたのか、少年はまだ焦点の定まらない目で杏子の方を見た。

 

「ふむ、起きたか……いや、その様子だとまだ、か」

 

少年は杏子の方を生気のない目で見る。どうしたものか、と考えていると、少年は杏子の方に手を伸ばした。

 

「ほう、そんな状態でもなお手を伸ばすか。……ならばその手、私が掴もう」

 

少年の手を掴んだ杏子は車の助手席に引きずり込み、扉を閉めると再びアクセルを思い切り踏む。後ろから聞こえる警官らしき女性の叫び下を聞き流し、杏子はその場を後にした。

 

 

 

 




きりのいいところで区切ったため、短くなってしまいました。

次回からは文量が戻ると思います。

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