仮面ライダーW メイドはU   作:雪見柚餅子

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お久しぶりです。
やっとある程度余裕が出来たので投稿を再開します。
長らくお待たせして申し訳ありませんでした。


11話

 井坂深紅郎。それが誰なのかは知らないが、少なくとも琉兵衛様の怒りを買っているという命知らずな人間であるということだけは分かった。

 

 そして現在私は彼が営んでいるという、病院の前で立ち往生していた。

 もし他の人がこの光景を見ていれば、さっさと入ればいいと思うだろう。実際、私も入りたいとは思う。ただ問題が二つ。

 一つはドアの前に今日は休診日と書いてあるということ。そしてもう一つは、先程照井さんが中に入るところを見たということだ。

 あの照井さんの怒りが籠った目つき。何かあったということだけは確かだ。そして琉兵衛様の様子を考えると、井坂深紅郎もメモリの関係者であると推測できる。この二つから考えると、井坂深紅郎が何か事件を起こし、それを照井さんが嗅ぎつけたのだろうということは容易に想像できる。

 なんで昨日の今日でこんなに面倒な事に巻き込まれなければならないのか…、なんて考えていると、突如として病院の裏手で大きな爆発音のようなものが聞こえた。

 

 これ、絶対仮面ライダーとドーパントが戦闘しているんじゃ…。

 

 やばい。正直、仮面ライダーとは関わりたくないし、出来ることなら今すぐ帰りたい。

 しかし、今の私は琉兵衛様から命令を受けた身。何より、今の琉兵衛様はいつもの数倍恐ろしい。

 

 仮面ライダーと琉兵衛様。恐ろしいのはどちらかと天秤にかければ、即座に琉兵衛様だと分かる。要は私のやるべきことは既に決まっているわけだ。

 

 そして、自分の未来にどこか絶望しながらも、メモリを起動した。

 

 

 

 

 

【亜樹子視点】

 

 目の前に広がるのは、変身が解けた竜君に、大けがを負った翔太郎君、そして高笑いするドーパントという光景。

 

 全ての始まりは、今朝事務所にやって来た一人のマジシャンの女性が持ち込んだ依頼。『自分の中に入ったガイアメモリが抜けなくなった』というもの。

 私達はそのガイアメモリを渡したという男を見つけ出したけど、その男とは去年竜君の家族を殺した犯人だったのだ。しかも依頼人のリリィちゃんの目的が、自分のメモリをちゃんと使えるようにしてほしいっていうことだった。

 そのまま二人は逃亡。竜君は仇を討つことにこだわって、出会った頃と同じ様子になっちゃった…。

 その後、リリィちゃんの行方を捜す私と翔太郎君は、仇の男が以前の事件で関わった病院の医者だということを思い出しその病院に向かうと、既に竜君が井坂深紅郎が変身したドーパントと戦っているところだった。翔太郎君達も竜君を助けるために仮面ライダーに変身したけど、なんと竜君が二人に向かって攻撃をしてきたのだ。

 そして揉め始める二人に井坂の攻撃が容赦なく襲い掛かり、焦っていたせいかあっという間に竜君が倒され変身が解けてしまった。

 

「奴が…奴が目の前に居るのにっ!!」

 

 仇を取れないことへの悔しさからか、涙を流しながら叫ぶ竜君。そして井坂が竜君に止めを刺そうとした時、翔太郎君が危険なツインマキシマムっていう攻撃を放った。その反動で翔太郎君達まで変身が解け、その上見てわかるほどの大けがを負った。

 それだけの威力のある技。まともに受けたあいつもきっと倒された、なんて思っていたけど、炎の中から聞こえる笑い声。

 

「…倒されてないじゃん、あたし聞いてない!」

 

 全くダメージを受けた様子を見せないあいつは、余裕の笑みを浮かべながら翔太郎君達に近づいていく。

 とにかく翔太郎君達を助けなきゃ…。でも、あいつはどうすれば…。

 時間がゆっくりに感じる。それでもあの井坂の動きは止まらない。

 どうすればッ…

 

「ちょっとよろしいでしょうか」

 

 そんな時、背後から声が聞こえた。

 振り向くと、そこに居たのは全身が布でぐるぐる巻きになった新しいドーパント。

 なんでこんな時に別のが来るのよっ…。

 

 思わず身構えるけど、そのドーパントは私を一瞥しただけで、すぐに井坂に向き合う。

 

「あなたが井坂深紅郎でしょうか?」

 

 その問いに井坂は一拍置いて答える。

 

「…確かに私が井坂深紅郎ですが、貴方は何者でしょうか?」

「…私の主からお茶会の誘いを持ってきました」

 

 そう言ってそのドーパントは手に持った封筒を差し出す。それを受け取った井坂はそれにじっと目を通した。

 

「なるほど、あの人の使いですか。良いでしょう」

 

 井坂はドーパントとしての能力で手紙を焼き捨て、再び竜君に目を合わせる。

 

「今回は見逃してあげましょう。今度会った時こそ家族と同じ死に方をプレゼントしますよ」

 

 そのまま井坂は目も開けられないほどの強風を作り出し、気が付くとその場には私達だけが取り残された。

 

 とりあえず危機を脱したことを確認すると、すぐさま私は倒れこんだ翔太郎君に近寄る。

 

「何でこんな無茶したのよ!?」

 

 全身傷だらけの翔太郎君を見て、思わず叫ぶ。一歩間違ってたら死んでたかもしれない。

 

「照井の泣き顔見たら体が勝手に動いちまってさ…。こいつも今じゃ俺たちの仲間だしよ…」

 

 だけどその言葉を聞いた竜君は、翔太郎君に目も合わせず自業自得と吐き捨てる。その上、リリィちゃんを心配する翔太郎君のことを「馬鹿」とまで言い放った。

 そして意識を失った翔太郎君を抱きかかえながら、竜君に対する怒りが沸々と湧き上がっていくのを感じた。

 

 

 

 

 

【初視点】

 

 園咲家の食卓。そこにいるのはいつもの顔ぶれだけではない。

 テーブルに並ぶ幾つもの料理。そしてそれらを片っ端から平らげ、皿を積み重ねる一人の男。見ているだけで吐き気を催しそうだ。

 

「いやあ、失礼。お茶だけでなく食事まで」

 

 そう言って井坂深紅郎は口元を拭く。その姿を睨みながら琉兵衛様が口を開いた。

 

「異常なまでのカロリー消費だな。複数のメモリの力を吸収する君の貪欲さそのものだ」

 

 先程から琉兵衛様が放つ重圧。正直ここに居るだけで胃が引き絞られそうだ。それなのにこの男は全く気にした様子もなく、微笑んですらいる。

 

「中々肝の座った男だ。こんな状況で飯がのどを通るとはな」

 

 そう言って、井坂深紅郎と冴子様を見つめる。ここまでの話を聞く限り、どうやら冴子様がここ最近家に居ないのは、彼の下に通っていたからのようだ。そして若菜様もこの男に何かをされたらしく、それが原因で琉兵衛様の機嫌が悪いようだ。

 つまり諸悪の根源はこの井坂深紅郎…。なんか無性に腹が立ってきた。

 この男が何をしようが私の知ったことじゃない。しかし、私にまで被害が及ぶような真似は止めて欲しい。私はまだ死にたくないのだから。

 

 そんなことを考えていると、突然井坂深紅郎は立ち上がり、シャツのボタンをはずして自らの上半身を見せた。

 そこにあるのは無数の生体コネクタ。

 

「私ほど熱心なミュージアムの支持者はいませんよ。園崎さん、ガイアメモリの真実を見極めたいという気持ちは貴方も、私も、冴子さんも同じです」

 

 そしてさらに井坂深紅郎は、自らを実験台にするようにとまで言い放った。

 何が楽しくて、自ら実験台になろうとしているのだろうか。全く理解不能だ。

 しかし、琉兵衛様の興味は引けたらしく、表情は笑顔へと変わった。

 

「大した男だな、君は。もう病院には戻れんだろう。しばらくここでゆっくりしたまえ」

 

 …え?

 つまりこいつがここに住むということですか?

 この、どこからどう見ても狂ってるとしか思えないような奴が?

 

 思わず固まってしまうが、続く言葉に耳を疑った。

 

「もし何か困ったことがあれば、そこの初君に言うと良い。彼女は優秀だから、君の力になってくれるだろう」

 

 …はい?

 いや、ちょっと待ってください。なんで私がこんな奴の世話を…、なんて思うものの、琉兵衛様の目は有無を言わせない。

 

「ああ。先程私を案内してくれた。これはちょうど良い。私も彼女に興味を引かれていたので」

 

 そう言って舐め回すような目で私を見る。私、何か目立つようなことをした覚えはないのだけど…。

 

「はっはっはっ。まあ、好きにするといい。ただ言っておくが、彼女は大事な使用人だ。傷つけるような真似だけはよしてくれ」

 

 そして琉兵衛様は視線を井坂深紅郎から外し、私に向ける。それは冷たい、支配者としての目。いつも私に命令を下すときの目だ。

 そして察する。つまりは私は監視の役割だということに。彼がミュージアムの不利益にならないように見張っていろということなのだろう。

 

 私は気付かれないように溜息を吐きながら、今後の生活に頭を悩ませた




さあ、井坂深紅郎の監視役となり、さらにロックオンまでされてしまった主人公。
彼女の明日はどっちだ!

そして風都探偵1,2巻購入しましたが、やはり仮面ライダーWは最高ですね。
この作品が無事完結したら、風都探偵編と称した番外編も書いてみたいです。
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