仮面ライダーW メイドはU   作:雪見柚餅子

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今回は原作37,38話に当たる話です。


18話

 先日の冴子様の裏切り…、あれから園咲家には不穏な空気が流れている。事情を知らない一般の使用人達も、何かあったのかと訝しんでいる。

 琉兵衛様は追っ手を差し向けているようだけど、未だに冴子様は逃げ続けているようだ。

 …あの男、井坂がいなくなった以上、冴子様を守る者は誰も居ない。そして、そろそろ琉兵衛様も本気で冴子様を始末するつもりだろう。

 そんなことを考えながら部屋の掃除をしていると、不意に背後に気配を感じる。

 

「食べるぅ?」

 

 私の首に腕を回して差し出されるのは、虫を黒々と煮詰めたもの…。

 「いりませんよ」と呟きながら後ろを向くと、そこに居たのは紫の髪にゴスロリの服を着た女。いったい何のコスプレかと思うこいつだが、実はミュージアムの中でも比較的上位の存在。「処刑人」と呼ばれ、組織を裏切った者や重大な秘密を知った者を始末する役割が与えられた存在。

 普段はどこで何をやっているのか知らないが、こいつがここに来たということは…。

 

「やあ、待っていたよ」

 

 にこやかな笑みを浮かべながら、姿を現す琉兵衛様。

 

「君にやってもらいたい仕事があってね…」

 

 やっぱりか…

 正直、あまり良い気持ちはしない。しかし、ただそれだけだ。ニュースで殺人事件を見るのと変わらない。私に関わりの無い人間が生きてようが死のうが、私にはどうでもいいことだ。

 

 そのまま私は再び掃除に戻ろうとすると、琉兵衛様がこちらを向く。

 

「そうそう。近いうちに大事な取引先が来る。出来る限り綺麗にしておいてくれ」

 

 …取引先?

 一体何のことか、それを理解したのは数日後のこと。

 

 

 

 

 

【若菜視点】

 

「加頭君。態々君が来た用件を伺おう」

 

 応接間で向かい合わせに座るお父様と、白い服を着た男…。その姿を私は入口の近くで見ていた。

 あれがお父様の言うミュージアムの支援組織、『財団X』…。

 

「一体、何を心配しているのかね、財団Xは?」

「では率直に。弊社とミュージアムとの間に締結したガイアメモリ開発計画において、ここ1年間、約12%の遅れが生じております」

 

 男は無表情でお父様を見つめるけど、お父様は笑みを崩さない。

 

「細かいなあ。大した数字ではない」

 

パリィン

 

 男が落としたカップが割れる音が、部屋中に響く。

 

「園崎さん。投資先は御宅だけでは無いのですよ」

 

 その言葉を聞いたお父様がテーブルを力任せに叩き、思わず私は体を竦めた。

 

「分かっているっ…」

「では具体的な修正案をお聞かせいただけますか?」

 

 そしてお父様が口にした言葉に、私は唖然とした。

 

「前任者を更迭。代わりに私が最も信頼する有能な人間に全指揮権を与える」

「下のお嬢様ですね?」

 

 男の言葉は答えないけど、その強い瞳は肯定を意味している。

 つまりは私がお姉さまの代わりに組織を…、なんで…? お父様は何を考えてるの? 私をどう見ているの?

 

 お父様は何を目指しているの…?

 

 思わずその場から離れるけど、混乱は収まらない。

 私は一体どうすれば…。

 

 そんな時、ふと思い浮かんだのは、この前初めて知ることが出来た彼の素顔。

 

「フィリップ君…」

 

 静かに呟く。

 ねえ、フィリップ君ならきっと私を助けてくれるよね?

 

 私は震える指で、携帯電話を掛けた。

 

 

 

 

 

【竜視点】

 

 ガイアメモリ事件の根幹にある組織、ミュージアム。俺はその組織から逃げ出したという山城博士を風都署で保護し、組織の情報について問い詰めていた。

 

「山城博士…。まだ何か隠していることがあるんじゃないのか?」

 

 しかし、彼の口は堅い。出てくる情報もごく僅かで、ミュージアムの核心に至る物は出てこない。

 その代わり出てくるのは、彼の家族に対する思い。自分の家族にもう一度会って謝りたい。そのためだけに組織から逃げ出したという。

 

「分かる、分かるよ…」

 

 刃野刑事が山城博士の肩に手を置くと、山城博士は涙をこらえるような表情を見せる。

 …だが、今の彼は組織から追われている身。安易に家族と接触させるわけには…。

 

 そう思っていると、突然部屋の扉が開き、真倉刑事が姿を見せる。しかしその口、鼻にはイナゴが詰め込まれており、意識も朦朧としているようだ。

 そして真倉刑事を突き飛ばすようにして中に入ってきたのは、ゴスロリの衣装を身に纏った妖しい女…。

 

「食べるぅ?」

 

 ミュージアムの刺客っ!!

 慌てて逃げ出そうとする山城博士の首にその足を巻き付かせると、奴はメモリを起動させる。

 

〈HOPPER〉

 

 それを太ももに挿入し、ドーパントへと姿を変える。

 山城博士は組織を追うために必要な存在だ。それに何よりも、俺の目の前で誰も死なせてなるものかっ!!

 

〈ACCEL〉

 

「変……身っ!!」

 

 俺はドライバーにメモリを装填し変身する。

 そして、逃げ出す山城博士とそれを追うドーパントに続く形で走り出す。

 

「ふふふっ。逃げられないよ!」

 

 素早い身のこなしで山城博士を追い詰めるドーパント。人型では追いつけないと判断し、俺は姿をバイクに変えると勢いのまま奴に突進する。

 

「ちっ!!」

 

 奴は舌打ちをしながら跳躍をして躱す。そのまま山城博士に向かって飛び掛かろうとするが、それをさせるわけにはいかない。再び俺は奴に突進することで、その動きを封じる。

 

 それが何度か繰り返されるうちに、いつの間にか人気の多いところに来ており、山城博士もそれに紛れて姿が見えなくなっていた。

 

「くっ!!」

 

 奴は俺と戦う意思はないようでその場から逃走しようとするが、これ以上野放しにするわけにはいかない。

 

〈TRIAL〉

 

 人型に戻った俺はトライアルメモリを起動させ、ドライバーに装填する。これならスピードは奴と互角だ。跳躍しながら逃げる奴を、俺は疾走しながら追跡した。

 

 

 

 

 

【山城視点】

 

 組織からの追手を何とか振り切り、私は探偵事務所で調べてもらった、家族が住んでいる家の前に佇んだ。

 恐らく葉子()は私のことを許さないだろう。(息子)は私のことを覚えてすらいないかもしれない。組織から狙われている以上、一緒に住むことなんて出来るはずも無い。

 それでも私は一度で良いから会って謝りたかった。ただそれだけが出来れば、私の命なんて惜しくなかった。

 不意に気配を感じ、追手かと思ってその場に隠れる。しかし姿を見せたのは、制服を着た高校生。

 もしかして…、と思っていると、予想通り彼は私が見つめていた家に入る。

 

「ただいま」

 

 そして家の中からは、やはり少し年齢を重ねているが、未だに記憶の中にあるその雰囲気を纏った女性が顔を出す。

 

「翼、今日早かったわね?」

「今日からテスト週間で…」

 

 ああ…。思わず涙が流れそうになる。私が自分の意思で捨てたとはいえ、私にとって世界で一番大事な家族…。

 

「葉子…。翼もあんなに大きくなって…」

 

 思わずその場から一歩出たその瞬間、私の腕が突如として触手のようなものに絡めとられた。

 

「なっ…、んむーっ!?」

 

 そのまま口も同じような触手で塞がれる。

 そのまま私はその触手に引きずられるような形で、家族の居る家から離されていく。

 

 そして私が連れてこられたのは、家からさほど距離がある訳でもない小さな公園。その公衆トイレの影。

 もののように投げ出され、眼鏡を落とした私が顔を上げると、そこに居たのは一体の怪物。眼鏡が無いから細かい姿は良く分からないが、ドーパントの一体であることは分かる。まさかこいつも追手なのか?

 

「山城博士、貴方を処理しに来ました」

 

 籠った声を出しながら、ドーパントは私に腕を伸ばす。

 私は恐怖に震えながら、駄目もとで頼み込んだ。

 

「頼む!! せめて家族に一度で良いから話をさせてくれ!! それさえできれば私はどうなっても構わない!」

 

 だからお願いだ。私は似たようなことを何度も口に出す。このままでは死んでも死にきれない。

 正直、期待はしていなかった。でも言わずにはいられない。

 

「家族?」

 

 するとドーパントは予想に反して動きを止める。

 

「ああ。私にとって家族は大事なものなんだ! だから頼む!!」

 

 一縷の望みをかけて懇願する。

 

「…家族なんてただの他人でしか無いでしょうに」

 

 よく聞こえなかったがドーパントが何かを呟くと、再び私に手を伸ばした。

 

「まあ、望み通りにしてあげます。やるべきことはやりますが」

 

 そう言って、私の頭を掴む。

 ああ、駄目なのか…。せめて最後に家族と話がしたかった。

 そして私の意識は少しずつ沈んでいった。




まさかのホッパーではなく主人公の登場。
山城博士がどうなるかは次話(30分後)にて。
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