仮面ライダーW メイドはU   作:雪見柚餅子

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28話 暴かれるM/救われなかった少女 中編

 子供達の悲鳴が木霊する。

 建物内に入り込んだ怪人―メガロドン・ドーパントは、目に付く扉を手当たり次第に開けて目的を探す。

 

「どこだっ!?」

 

 生憎と時間に余裕があるわけでは無い。さっさと探し出して始末しなければ…。

 ドーパントの姿を見た子供達は恐怖の叫びを上げては逃げ出し、それが他の子供達に伝達する。職員も恐怖に身を竦めてはいるが、子供達を統率しようと声を出す。まさに阿鼻叫喚といった有様の中、ドーパントは遠慮なく進んでいく。

 そして一番奥の扉を開いた時、その顔が笑みで歪んだように見えた。

 

「見つけたぞ!」

 

 その部屋は子供達の寝室。その中で布団を被り蹲っていた誠を睨む。

 

「あ、あ…」

 

 どこか虚ろな表情のままドーパントを見上げる誠。

 

「悪いが、お前が居ると迷惑なんだよ」

 

 そう言ってドーパントは腕を振り上げる。昨日と同じ光景がその目に映る。ここには邪魔な仮面ライダーも居ない。さっさと終わらせる。

 そして同じくその光景を見ている誠の心には諦めが満ちていた。どうせ助からない。仮に助かったとしても、それを喜ぶ人間なんていない。どうせ自分はいらない子供なんだから…。

 そしてその瞳をゆっくり閉じる。これでもう…。

 

「止めなさい!!」

 

 しかし、それを止めようとする女性の叫びが二人の耳に入る。

 誠が目を開けると、そこには自分を庇うかのようにドーパントとの前に立つ女性―森加奈子がいた。

 

「何の用だ?」

「この子に手は出させません!!」

 

 加奈子の力強い叫びに、思わず誠は目を見開いて顔を上げる。しかしメガロドン・ドーパントは、そんな彼女の宣言が理解できないようで、首を傾げる。

 

「はあ? どうせ屑から生まれた子供だ。そいつ自体も周りの迷惑を考えない。どうせ本心では邪魔だと思っているんだろ?」

 

 その言葉に俯く誠。確かに自分はよく心無い言葉で周囲を傷つけてしまう。どうしてそんなことを言ってしまうのか自分でも分からない。しかし、それでも思わず口から出てしまうのだ。

 

『あんな子供、産むんじゃなかった』

 

 母親の言葉がよぎる。

 こんなことを言っているけども、この人も自分のことを愛しては…。

 しかし、加奈子はドーパントの言葉に怯むことなく、毅然とした態度で言い返す。

 

「この子がクズ? そんなわけが無いでしょう!!」

 

 真正面から言い返され思わず怯んだドーパントにさらに加奈子は叫ぶ。

 

「他人に迷惑を掛けない人間なんて居ません。むしろ迷惑を掛けるからこそ、叱られ、教わり、人は成長していくんです! 私には、私達にはこの子を含めた皆を育てる義務があります! それに、なによりも…」

 

 そして誠が思いもしなかった言葉を紡ぐ。

 

「私にとってはこの子達は大事な家族です! 見捨てる訳が無い!!」

 

 その言葉に興味なさそうにドーパントは溜息を吐く。

 

「ああ、そうかい。じゃあ、お前から先にやってやる!!」

 

 そう言い放ち、その腕の鰭で加奈子を切りつけようとする。しかし、それでも加奈子は動かない。もし自分が逃げ出せば、誰がこの子を守るのだろうか。そんな思いがあるが故に。

 誠の目には絶望が映る。自分を家族と言ってくれた人の命が奪われようとしてるのだから。

 心の中で叫ぶ。誰か助けてくれと。

 そしてその祈りは届いた。

 

「があっ!?」

 

 突如として飛来した何かがメガロドン・ドーパントと衝突し、その体勢が崩れる。

 

「フィリップに言われて来てみたら、こんなことになってるとはな…」

 

 扉に視線を向けると、そこに居たのは探偵左翔太郎。相棒からの連絡を受けみかづきへとやって来た彼は騒ぎを耳にし、スタッグフォンをライブモードにした上で中に入り込んだのだ。

 元々誠はこのドーパントのターゲットだ。しかし、今までこいつは人目が少ないところでのみ襲撃していたため、強硬策はしてこないと高を括っていたが、見通しが甘かった。しかし、間に合った以上、傷つけさせはしない。

 その姿を見てたじろぐドーパント。今まで2回ほど戦っているため、勝てない相手ではないことは分かる。しかし、こっちにも予定がありあまり時間は無い。

 

「ちっ」

 

 ドーパントは舌打ちをすると部屋の窓ガラスを叩き割る。この場から脱出するための動きに気付いた瞬間、翔太郎は腕時計型のガジェット、スパイダーショックを起動させ、その背に発信器を放つ。

 そのまま逃走するドーパントだが、発信機を取り付けることに成功しているため、今度は逃がしはしない。また誰かが襲われる前に決着を付ける。

 そんなことを思っていると、背後でしゃくりあげるかのような声が聞こえる。何かと思って振り向くと、そこでは加奈子にしがみつく誠の姿があった。涙を流しながら言葉にならない声を出す誠を、加奈子は優しく抱きしめ声を掛ける。

 

「大丈夫。誠君は私達が守るから…」

 

 翔太郎はここで何があったのかは知らない。しかし、その光景はまさに親子のようであった。

 

 そして誠が落ち着いたころ、部屋に二人きりとなった翔太郎はここに来た本来の目的を加奈子に話す。

 

「二宮初という女性の事を知りませんか?」

 

 その言葉に加奈子の表情は驚愕に染まる。

 

「彼女について、教えてもらえませんか?」

 

 

 

 

 

 風都にあるビジネスホテル。正体に気付かれた初は身を隠すため、組織の息がかかったこの場所を仮の拠点としていた。

 そんな彼女が泊っている部屋の扉を誰かが叩き、空気が緊張する。

 ドアスコープ越しに外の様子を伺うと、部屋の前に立っていたのは細身の使用人。安堵の溜息を吐いて中に入れると、さっそく彼の方から口を開いた。

 

「申し訳ありませんが別の要件が入りまして、私の方はしばらく離れなければならなくなりました」

 

 代わりに彼の配下であるマスカレイド・ドーパントは自由に扱っていいと言われたが、正直あまり良い気持ちはしない。マスカレイドメモリには自爆機能が付いており、倒されると同時に証拠隠滅もかねて使用者は死亡するという特性がある。勝手に使って勝手に死ぬのならば構わないが、自分の命令で人が死ぬというのは正直嫌としか言いようがない。

 一応、昨日彼から私に関する情報が抹消されたということを確認している。これは自身のメモリの能力を発揮するためのお膳立てという意味もあるのだろうが、もう一つの意味も感じ取っていた。

 

「それでは幸運を祈ります」

 

 そう言って踵を返し立ち去っていく男。その言葉はどこか皮肉のように感じた。

 

 

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 話を聞き終え立ち去ろうとする翔太郎。

 

「ちょっと待って!!」

 

 そんな彼を呼び止める声が聞こえ、思わず振り向く。そこに居たのは加奈子とは別の職員に付き添われた誠。興奮しているのか息を切らしている誠は今まで言えなかったことを話す。

 

「あの怪物の正体、僕知ってる…」

「何!?」

 

 思わず目を向く翔太郎に少し驚いたようだが、誠はおずおずと口を開いた。

 

「あいつは…」

 

 

 

 

 

 晴れた空の下、トングを使って公園に捨てられた空き缶などのごみを拾い、持っているごみ袋に入れていく御堂。率先してごみ拾いをし環境改善を行う彼は、まさに理想の町内会長だろう。そんな彼に3人の男が近づく。

 

「こんにちは、御堂さん」

「おや、探偵さん。今日も聞き込みですか?」

 

 朗らかな笑顔を浮かべ翔太郎とフィリップ、そして照井に挨拶する。しかし、翔太郎達の表情はどこか厳しい。

 

「いえ、今日は御堂さんにお聞きしたいことがありまして」

「ほう、何でしょうか? 何でもお答えしますよ」

「では早速」

 

 そう言って翔太郎は御堂を指差す。

 

「メガロドン・ドーパントの正体はあんただな」

「…っいや、何のことですか?」

 

 いきなり核心を突く言葉に一瞬怯むが、すぐに表情を元に戻し白を切る。

 

「誠から聞いたよ。あんたがメモリを使って変身しているところを見たってな…」

「いや、ちょっと待ってくださいよ。あんな子供の言うことを信じるんですか? 探偵さんは知らないでしょうが、あの子は…」

「無駄だ。既に調べはついている」

 

 今度は照井が睨みながら言い訳を口にしようとする御堂を制する。

 

「今まで襲われた被害者は、この地域で問題行動を起こしている者が大半だった。だが、それ以外にも何人かが襲われている。この被害者たちに共通しているのがお前だ」

「え?」

「フィリップに調べてもらったが、全員被害に遭う数日から数週間前にお前と揉め事を起こしていることが分かった」

 

 その言葉に唇を噛む。

 問題行動を起こしていた初期の被害者は、そのことを御堂に注意され揉めていた。そして今回の事件を知る要因となった、イベントを本来行うはずだった劇団も、ギャラについて御堂と揉めていたということが判明している。

 そして翔太郎が最大の証拠を突き付ける。

 

「あのドーパントに付けた発信器。その反応が今もお前の家にあるんだよ」

 

 恐らくあの後ドーパント化を解除した際に発信器が服に付き、家で着替えたことで反応が家に残っているのだろう。

 次々と出てくる証拠の前に最早逃れようがない。

 

「これ以上、言い訳があるというのなら署で話を聞くが」

「……せえ」

 

 観念したかのように俯く御堂。しかし顔を上げた彼の表情は大きくゆがんでいた。

 

「うるせえんだよ! 私はこの地区のために邪魔な連中を排除してやってるっていうのに、どいつもこいつも不審者扱い。その上、邪魔までしやがって! 良いか。私こそこの地区を素晴らしいものに出来るんだ。それを邪魔する奴は全員悪なんだよ!!」

 

 完全な逆切れ。その上喋っていることは全て自分を正当化させるものに過ぎず、呆れるしかない。

 

「やっぱり、ろくでもねえな」

「黙れ! お前らも噛み千切ってやるよ!」

 

〈MEGALODON〉

 

 取り出したガイアメモリを起動させ右の首筋に差し込むと、その姿が変貌していく。

 翔太郎と照井もそれに応じるかのようにドライバーを装着し、2人はメモリを構える。そしてフィリップも静かに手のひらを上に向けると、どこからともなくファングメモリが現れその手に乗り、フィリップの操作によってライブモードからメモリモードへと変形される。

 

「翔太郎。あらかじめ言ったように…」

「ああ。今回はお前だな」

 

 目の前のメガロドン・ドーパントの強力なパワーに対抗するためにはそれ相応の力が求められる。その上、今は組織もフィリップの身柄を狙っている。それならばフィリップの体が無防備となる基本形態よりも、こちらの方が都合が良い。

 

〈FANG〉

〈JOKER〉

〈ACCEL〉

 

「「変身!!」」

「変……身!!」

 

〈FANG JOKER〉

〈ACCEL〉

 

 意識を失った翔太郎の体を、茂みから出てきた亜樹子が受け止めると同時に、フィリップの体は通常のWとは異なる白と黒の2色が特徴的な戦士に、照井の体は赤い戦士へと変化する。

 

「『さあ、お前の罪を数えろ!!』」

「振り切るぜ!!」

 

 3人がそれぞれ決め台詞を言うと同時に、最後の戦闘が幕を開けた。

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