とりあえずこれでオリジナル話は一段落です。
メガロドン・ドーパントと仮面ライダー達の戦闘は仮面ライダーが優勢に運んでいた。それもそのはず。今までメガロドン・ドーパントが戦ってきたのは基本形態のWのみ。しかし今戦っているのはWの形態の中でもトップの格闘能力を持つファングジョーカーと、それすら上回る出力を持つアクセルの2人なのだから。
しかし、それを良しとしないものが居る。
Wの拳がメガロドン・ドーパントに放たれたその瞬間、Wの体が強力な衝撃を受け体勢が崩れる。何度か受けたことのあるこのダメージ。これが表すことは、
「やっぱり来たね」
「初ちゃん…」
いつの間にか背後に立っていた全身を布で包まれたドーパント。全く未知数の能力故に、翔太郎達には緊張が走る。その隙にメガロドン・ドーパントは予想以上のダメージを受けたためか逃走を図る。
『フィリップ、本当に大丈夫なんだろうな?』
「予想が合っていればね…。照井竜、君はメガロドンの方を頼む」
そう言ってWは1本のメモリをアクセルに投げ渡し、それを受け取ったアクセルは静かに首を縦に振る。
「ああ、任せろ」
このドーパントの狙いはフィリップ。ならばWが相手すべき相手だ。逃げ出したメガロドン・ドーパントを追うため、アクセルがバイクフォームとなって走り出したのを見届けると、Wは再び戦闘態勢を取り、相対するドーパントもゆっくりと右手を伸ばす。
静寂が周囲を包む中、先に仕掛けたのはドーパントの方だった。右腕に巻き付いている布が意思を持ったかの如く、Wに向かって来る。
今までであれば、大した抵抗も出来ずに動きを封じられていた。しかし今は違う。冷静に右手でドライバーに装填されたファングメモリのタクティカルホーンを2回弾く。
〈SHOULDER FANG〉
音声が響くと共に肩に生成された刃、ショルダーセイバーを掴むと、ブーメランの如く放り投げる。すると向かって来ていた幾重もの布が一閃と共にバラバラに切り裂かれていく。
この光景に驚いたのはドーパントだ。自分の能力は確かに働いているはず。なのにどうして…。今度はドーパントの方が状況についていけて無い。
『どうやらお前の予測が当たったようだな』
「ああ。これなら!」
まだ体に違和感を感じるものの、今までのそれと比べれば遥かに軽い。
〈ARM FANG〉
今度はタクティカルホーンを1回弾き、右腕に三日月状の刃、アームセイバーを生成し、ドーパントに向かって走り出す。
「くっ!」
ドーパントは再び右手を伸ばすと透明な衝撃波を放つが、Wはアームセイバーを盾のようにして防ぎきる。そして距離を詰めると、腕を振りドーパントの体を切り裂いていく。
「ああっ!!」
今までにないダメージに倒れこむドーパント。
自分の能力を受けているはずなのに、全く影響が見られない。つまり、仮面ライダーは知っているのだ。
そんなドーパントを見つめるWは静かに右手を伸ばし、宣言する。その能力のタネを…。
「君のメモリの正体は『
「畜生っ!!」
メガロドン・ドーパントは途中で川に飛び込み、泳いで海沿いの倉庫へと逃げ込んでいた。とりあえず、ここでしばらく身を隠して、状況を打開する方法を考えようと…。しかし、それは叶わない。
「そこまでだ。もう逃がしはせん」
古代の鮫の記憶の力を持つメガロドン・ドーパントの泳ぐスピードは人間のそれを遥かに超える。しかしバイクフォームのアクセルのスピードもそれ以上。撒くことは至難の業だ。
「貴様はここで倒させてもらう」
宣言するアクセル。しかしこの場は水辺が近い。つまりメガロドン・ドーパントが本来の能力を十二分に発揮できるということだ。
「出来るものならやってみろ!!」
その叫びと共に、メガロドン・ドーパントの体が肥大化していく。
―ギシャアアアッ―
それはまさに鮫の怪物とでも言うべき姿、ビッグ・メガロドンへと変貌したドーパントは、アクセルに向かって突進するが、それを紙一重で躱され、勢いはそのままに海の中へと飛び込む。
何とか回避できたものの、アクセルにとって現状は芳しくない。アクセル自体は水中戦を得意としておらず、しかも相手は強固な体を持つメガロドン・ドーパントが変貌したものだ。防御力が跳ね上がっていることは予想できるし、噛みつかれでもしたら一巻の終わりだ。
再び海中から飛び上がってアクセルに向かって来るビッグ・メガロドン。これも何とか躱すが、このままではジリ貧だ。だからこそ、一瞬のチャンスを狙い、あの巨体を打ち砕くだけの一撃を撃ち込む必要がある。そしてその手段はある。
遠くから駆動音が倉庫へと近づいてくる。そして姿を見せたのはアクセルのサポートメカで砲台が付いた青い戦車とも呼べるガンナーA。あらかじめアクセルがビートルフォンによる操作で呼んでいたものだ。
そしてアクセルはドライバーからアクセルメモリを取り外し、代わりにフィリップから渡されていたヒートメモリを挿入する。
〈HEAT MAXIMUM DRIVE〉
ドライバーを操作して流れる電子音と同時に、再びその姿をバイクフォームへ変化させると、脚部を折り曲げガンナーAと連結する。ドライバーから発せられる高熱のエネルギーがガンナーAの砲台へと流れ込む。チャンスは一度。もし外せば、反動の影響で躱すことは不可能だろう。
そしてその時は訪れる。海中からビッグ・メガロドンがその巨体を飛び上がらせ、三度突進を行う。その瞬間、砲台から強力な熱線が放たれる。
「絶望がお前のゴールだっ!!」
―ギシャアアアッ―
その熱線はビッグ・メガロドンの口の中へと吸い込まれるように放たれ、その体を一瞬にして焼き尽くす。そしてその燃え残りから気絶した御堂が姿を現し、その体内から排出され砕け散ったガイアメモリと共に海に投げ出される。
傲慢かつ独善的な怪人はこれによって倒されたのだ。
みかづきの職員室。そこで加奈子は昨日と同じように、子供達の資料を開いていた。その目に映るのはあるページ。保護してからこの施設を退所するまでの間、感情の抜け落ちた表情を変えることなく、去って行ったあの少女について書かれたもの。
「初ちゃん…」
ずっと連絡も取れず、何をしているのか時々心配に思っていた彼女が、まさか事件に関わっているとは…。それを聞いた時、加奈子は翔太郎に頼み込んだ。
(どうか、あの子を救ってあげて欲しいんです。あの子はきっと、誰よりも臆病な子だから…)
「君のメモリの能力については、姉さんによって妨害されていたから詳しくは分からない。だけど、執拗なまでに君の情報がことごとく隠されているということは、君の能力が発揮されるにはその情報が鍵なんじゃないかと推理した」
『そこでフィリップが検索して見つけたあんたの唯一の手掛かり、それがみかづきだ』
Wはアンノウン・ドーパントに能力が効かなかった理由を教える。
『加奈子さんに聞いたらよく覚えてるって言ってたよ。それで色々教えてくれた。あんたの過去についてな…』
加奈子から聞き出した初の過去は悲惨としか表せないものであった。
4歳のころに両親が離婚。母親は両親が既に亡くなっており、対する父親はとある大企業を運営する一族であったため、経済面を考えた結果父親へと引き取られることとなる。
しかし、引き取られた後生活していた父親の実家では、父親とその家族からひどい虐待を受けていた。それこそ奴隷のようにこき使われたり、ストレスのはけ口として殴る蹴られるの暴力を受けたり…。一番酷かったのは背中の火傷だ。医者の見立てだと、熱湯を掛けられたと見られるそうだが、その痕は見るに堪えない。
無論、周囲にも虐待を疑って話を聞こうとした者も居るらしい。しかし、相手は大企業を運営する一族。コネを使って職場から追い出す、息のかかった弁護士を秘かに雇いありもしない罪を被せるなどの非道を行っていた。
しかし彼女が14歳の時、転機が訪れる。父親が居酒屋で暴れ、近くにいた部下に暴力を振ったとのことだった。父親は現行犯で逮捕された上に、今までの事を不審に思っていた警察によって入念な捜査が行われ、虐待の事実が発覚し、保護された。父親の家族も今回の問題に加え、今までやって来た罪が明らかになったことにより、全員逮捕された。
だが、彼女が保護されたときは既に手遅れだったと言える。その時既に、初は誰かを信用するという心が消えていたのだから。表情は全く変えず、ただ周囲に言われるがまま、流されるがままに行動する。それこそが初があの家で生きていく中で身に付けた自己防衛の方法だったのだろう。
加奈子はこう表していた。
『あの子の心は、もう壊れてしまってる』
それでも、彼女のことが心配だったために翔太郎達に頼んだのだ。自分の言葉は恐らく届かない。けれども、初を助けて欲しいと…。
『正直、あんたの気持ちが分かるとは言わない。だけど、俺達はあんたを助けて欲しいと依頼された…。出来ることなら、大人しく自首してほしいんだが…』
「亜樹ちゃんも、君の事を心配してるしね…」
Wはそれぞれ初を心配する者達の思いを代弁する。しかし…、
「それは出来ないよ…」
アンノウン・ドーパントにはその言葉は届かない…。
「私は死にたくない…。そのために私は道具に徹すると決めたから…」
そして彼女の本心が少しずつ明らかになる。
「私が生きようとするのをどうして邪魔するの? 自分が生きるために誰かを犠牲にすることの何が悪いの? どうして私を放っておいてくれないの?」
自分はただ、静かに生きていたかっただけなのに…。
「どうせ私を助けるなんて言った人から消えていく…。巨大な力の前じゃ、自己犠牲なんてただの自己満足の自滅に過ぎない…」
次々と明かされる彼女の心。その思いに口を開くことが出来ないWと亜樹子…。それ故に気付くのが遅れた。
突如として現れたホッパー・ドーパントがアンノウン・ドーパントの体を蹴り飛ばした。無防備な状態で受けた衝撃に変身が解け、ガイアメモリが体外に排出される。
一瞬のことに思わず体が固まるW達。
「食べてあげるぅ」
ホッパー・ドーパントは倒れ伏す初の首を掴み、強引に立ち上がらせる。そしてその首元に異形の口を近づける。そして…
ぐちゅ…
「あ………」
生々しい音と共に首元が食いちぎられ血が噴き出す。
「初ちゃん!?」
あまりのことに思わず飛び出す亜樹子。それを見たホッパー・ドーパントは落ちたアンノウンメモリを拾い上げるとそのまま跳躍し逃走する。
「待てっ!」
追いかけようとするW。ファングジョーカーの運動能力なら追いつくことは可能だろう。しかし…、
「しっかりして、初ちゃん!!」
亜樹子は持っていたハンカチで出血箇所を抑え、血を止めようとするが、このままでは命が危ない。
『ちっ。今はこっちが優先だ!』
万が一のために近くに待機させていたリボルギャリーを呼び出し、初を中に運び込む。早く病院に運び込まなければ…。
そして病院につくまでの間、亜樹子はひたすら初に呼びかけ続けていた。
『事件は終わった。
誠もあの日以来、加奈子さんや職員の人に対して、少しずつだが本心を出すことが出来るようになったようだ。その態度も大幅に改善され、他の子と遊ぶ機会も増えたらしい。
そして二宮初についてだが…。
すぐに病院に運び込んだのが功を奏し、一命は取り留めた。しかし、意識は未だに戻らない。時々、加奈子さんや亜樹子が見舞いに行っているようだが、起きる気配は全く無いようだ…。
あの時の彼女の言葉は本心だと思う。そしてそこから考えられるのは、彼女も組織に言われるがまま行動し利用されていた被害者と言えるだろう…。
…結局、俺達は彼女の涙を拭うことが出来ないままだ。そう言った意味では、まだ依頼は終わっていない。いつか彼女の涙を拭うことが出来るのだろうか』
記録を書き終え、翔太郎は窓の外に目をやる。天気は曇り。どこか悲し気な雨が降りそうだった。
アンノウン・ドーパント
●記憶:未知
●メモリのデザイン:横にした?マーク(U)
●姿:全身が布で覆われ、顔はフードで隠れている(自分の本当の姿を覆い隠すイメージ)
●能力
①能力妨害
透明かつ極小の針を右手から相手に打ち込む。この針は受けた相手が自分の持つ様々な能力を『知らないもの』として誤認する効果と、未知に対して感じる『好奇心』や『戸惑い』等の感情を増幅させる効果を持つ。これにより対象が本来の力を発揮できないように妨害することが可能。
弱点として、メモリの正体、メモリ使用者に関する情報を持つ相手には、その情報量に応じて効きが悪くなる性質がある。
②透明な衝撃波
③トライアルに匹敵する高速移動能力
④精神干渉系効果の軽減
小説内ではテラーメモリの影響を変身することで軽減していたが、これはアンノウンメモリの能力を自分に向けることでテラーの恐怖をリセットしているため。ただしあくまで軽減のため、テラー・ドーパントに対抗できるわけでは無い。
という訳で、主人公のメモリはUNKNOWNです。大方の人が予想されていたでしょうが…。
ちなみに個人的に一番の伏線は2話のあとがきです。
※使用メモリ:不明→UNKNOWNには不明という意味もある。
メモリのデザイン:?→そのまま
主人公の能力が効かない相手として、琉兵衛、冴子、井坂を挙げましたが、これは
琉兵衛:メモリを与えた張本人であり、実験台である主人公に関する情報を収集していた。
冴子:直属の上司であり、同様に彼女の情報を得ていた。
井坂:一度は能力の影響を受けたが、対策として冴子から情報を得た。
といった理由があります。また他にも
若菜:終盤で地球の本棚へのアクセスが可能となっているため、簡単に情報を得ることが可能。まさに初の天敵。
ミック:そもそも動物の野生の感覚能力によって針を躱すことが可能と考えられる。
以上の2名も影響を受けない相手ですね。
次回は主人公の視点で過去を詳しく書きたいと思います。
完結に向け頑張っていきますので今後もよろしくお願いします。