仮面ライダーW メイドはU   作:雪見柚餅子

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今回は原作47話の部分です。


31話

 目が覚めた私は、医者からは「助かったのは運が良かった」と言われた。

 あの時、私は首から出血していたが、すぐに近くにいた女性が圧迫止血したこと、すぐさま病院に運ばれたことが何よりも助かった要因らしい。

 首元には痛々しい傷痕が残ったが、今更気にはしない。

 それからしばらくして、私は風都警察病院へと転院させられた。そして聞き込みされた私は初めて組織が消え去ったという事実を知った。この事実を聞いた時、驚いたと同時にほっとした。これでもう私は自由なんだと…。

 そして私はまだ十分に力が戻らない中、ベッドの上で刑事と話をしていた。

 

「つまりあんたはただの実験台で、自分の意思でメモリを使用したわけでは無いって言いたいんだな?」

「はい」

 

 淡々と組織に居た時の事実を述べていると、ツボ押し器を持ちながら話を聞いていた刑事とは別の、後ろに居た若い刑事が食って掛かる。

 

「そう言って本当は何か隠しているんじゃないか!? ほら、早く言え!」

 

 …はあ。

 あからさまな溜息を吐くとその若い刑事はさらに興奮し、ツボ押し器を持った刑事に宥められる。

 そんなことをしていると、病室の出口に立っていた照井さんがおもむろに近づき、こちらに視線を合わせ口を開いた。

 

「お前に一つ聞きたい」

「…何ですか?」

「ミュージアムの幹部…、園咲若菜と園咲冴子の居場所に心当たりは無いか?」

 

 冴子様と若菜様、いやもう様付けしなくても良いのか…。その二人の居場所について、か…。

 

「全く分かりません」

 

 正直、心当たりなんて無い。ただ、少なくとも…

 

「冴子さ…んは園咲家から出て行った後、裏切り者として組織から狙われていました。それでも生き残っていたということは、刺客を全員倒したかあるいは…」

「協力者がいると?」

 

 確証は無いが、可能性は十分ある。

 そうか、とだけ呟いて照井さんは病室から出ていこうとする。

 

「ちょっと、良いんですか?」

「ああ。少なくとも彼女は嘘をついていない」

「え?」

「あー、お前ももう少し人を見る目を鍛えたほうが良いぞ?」

 

 そして残る2人も共に出ていく。

 病室には静かな空気だけが残り、その心地よさを感じながら私はベッドの上で目を瞑る。

 私にどのような罰があるのかは分からないが、しばらくは穏やかに過ごせるだろう。

 

 そんな風に思っていたが、それから数時間後、

 

「貴女を迎えに来ました」

 

 目の前に現れた白い服の男は、私と同じ感情を見せない顔でそう言った。

 

 

 

 

 

【冴子視点】

 

「若菜…」

 

 財団Xの幹部、加頭順に連れ去られた私が見せられたのは、ベッドの上で眠り続ける若菜の姿だった。まさか生き延びているとは思ってもいなかった。

 その傍らに立つ加頭は、上司と思われる女と話している。

 

「園咲冴子さん…。新生ミュージアムのトップです」

「彼女が後継者となり、ガイアインパクトを実行すると?」

「ええ」

 

 そう言ってさらに加頭は私が予想していない計画を口にする。

 

「メモリ適性の無い市民を瞬時に消滅させる人類選別の儀式…。しかも我々はそれを地球全域に行います…」

「どうやって?」

「若菜さんをデータ化し、財団の人工衛星にインストールするのです」

 

 それは簡単に言えば、若菜を犠牲にして大量殺戮を行うということだ。

 加頭の言葉を聞いた上司の女は、その計画を成功させるように言った後、部屋から出ていく。そして加頭は私に近づくと、あるものを差し出してくる。

 

「ついにあなたがミュージアムのトップですよ」

 

 それはミックに襲われたときに私が失った金のメモリ。

 

「タブー…」

 

 まさかこの男が回収していたとは…。

 ふと視線を逸らすと近くのベッドには別の人間が寝ていた。それは…

 

「二宮…初?」

 

 かつて私の部下でもあり、園咲家のメイドでもあった彼女が何故ここに…。疑問に思っていると、加頭はさらにもう一本のメモリを取り出した。それは彼女が適合したアンノウンメモリ…。

 

「彼女も先程連れてきました。逃げようとしたので、仕方なく眠らせていますが…」

 

 …この男の行動には嫌な予感がする。

 

「彼女には高い利用価値があります。このメモリの適合者としてね…」

 

 加頭はアンノウンメモリを掲げる。

 

「このメモリに秘められた記憶は『未知』…。その限界もまた未知数と言えます。あなたも気付いてはいませんか? 彼女の進化を…」

 

 …確かに彼女のドーパントとしての力は少しずつではあるが常に進化を続けてきた。しかも強力な毒素のあるメモリを直挿ししているにも関わらず、全くと言っていいほど影響を受けていない。

 

「この力を研究し解明すれば、財団Xとしても大きな進歩となります」

 

 そう言い切った後、別の財団Xの職員が部屋の中に入ってきた。そして奴は一言二言言葉を交わすと、静かにテーブルの上にメモリを置き、私を見据えて口を開く。

 

「すみません。少し用事が入りました」

 

 もし何かあったら連絡するので、それまでご自由にしていてください、とだけ言うと奴は部屋を出ていく。

 …気に食わない。確かにガイアインパクトはミュージアムの達成すべき目的だ。しかし、私はそれ以上に若菜を超えることで父を見返すという意志があった。そのために今まで生きてきたのだ。こんな形でミュージアムのトップになっても、嬉しくもなんともない。

 そして若菜と同じくベッドで眠る二宮初にも視線を向ける。彼女とはそれなりに長い付き合いだが、一応借りがある。組織を抜けた後、ディガルコーポレーションの社長室で見つかった時に見逃されたあの時…。正直、あの時に見逃されていなければ、すぐに追手を差し向けられ抵抗することも出来ずに命を奪われていた可能性が高い。そう言う点では命の恩人ともいえる…。このまま借りを作ったままというのは、私の性に会わない。それに何より…

 

「…あの男が気に食わない」

 

 だから私はテーブルの上に置かれたメモリを手に取り、その部屋から出た。一番手っ取り早いのは破壊することだが、希少なメモリだからかなんとなくそんな気にはなれない。ならば、どうするか…。

 

「…あそこで良いかしらね」

 

 ふと思いついた場所に向かうことにする。少なくとも財団に奪われる可能性は下がるはずだ。

 私は自分自身の力で若菜に勝って見せる…。

 強い意志を秘めつつ、周囲に気を付けながら、冴子は通路を歩いて行った。

 

 

 

 

 

【加頭視点】

 

 用事を済ませ部屋に戻ると、冴子さんの姿と机の上に置いていたはずのメモリが消えていた。先程部下からの話で、冴子さんがこの施設の外へ出て行ったという話を聞いたので、恐らく彼女が持って行ったのだろう…。

 跡を尾けさせてはいないので、どこに居るのかは分からないが、そう遠くまでは行っていないはずだ。それにメモリも、ガイアインパクトを行った後に、新たに製造すればよい。データ自体はほとんど無いが、時間を掛ければ可能だろう。

 私は静かに若菜さんに視線を向ける。彼女がガイアインパクトの鍵だ。それさえ達成すれば、冴子さんをトップとして新たなミュージアムが誕生する。

 少しばかり勝手に行動しているようだが、それが冴子さんなら構わない。私は財団Xの使命と彼女の望みを叶えるために行動しているのだから。

 そして若菜さんと同じように眠るもう一人の女性を見る。冴子さんがヒントを教えたことで、あの仮面ライダー達が来るだろう。それならば敢えて若菜さんはここに残すことで彼らを誘き寄せよう。邪魔な芽は早く潰すに限る。だがこちらの彼女は先にもう一つの拠点に運ばせてもらうことにする。

 

「…さあ、もう少しです」

 

 私はただ一人、そう呟くのであった。




この後、冴子様は普通に戻ってきます。
そして翌日、原作通りに拠点にやって来た翔太郎達が若菜を発見、そして現れた加頭にアクセルがやられてしまいます。
ドーパントに変身した冴子の手助けもあり何とかその場から逃走することに成功。しかし若菜と冴子は再び加頭の手によって攫われてしまう…。

次は30分後に更新します。
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