仮面ライダーW メイドはU   作:雪見柚餅子

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37話 Lにさよなら/前に進むために 中編

「てめえ、何者だ?」

『ミュージアムの再興をする者と言えば分かるかな?』

「っ!!」

 

 まさか初ではなくこちらにコンタクトを取って来るとは…。

 

「お前は組織を復活させて何がしたいんだ?」

『…我々の目的はただ一つ。若菜様の願いを叶えること。それだけです』

「何…?」

 

 園崎若菜は既にこの世には居ない。1年前に消滅したフィリップを復活させるために自分の命を犠牲にしたのだ。世間的にも園崎若菜は死亡した扱いになっている。

 

『いずれ若菜様は戻って来る! その時のために我々は準備をしているのだよ!!』

 

 しかし電話の先の男は未だに園崎若菜が生きていると信じているらしい。どこか狂気を感じさせる話しぶりに、思わずたじろぐ。

 

『そうそう。君に連絡したのは他でもない。今から言う地点に『運命の子』を連れてくるんだ』

「何だと?」

『もし来なければ、人質の安全は保障しない』

 

 そう言って男は一方的に場所を告げる。

 

『時間は今からちょうど2時間後。それまでに来ることを楽しみにしているよ』

 

 その言葉と共に通話は途切れた。

 翔太郎は舌打ちをすると、初に視線を向ける。

 

「おい、お前は風都署に行け。照井がジンさんに話を通してるはずだ」

 

 そう言いながら翔太郎はバイクに跨り発進させる。

 残された初は翔太郎の後ろ姿を見つめ続けながら呟く。

 

「…後悔しないように、か」

 

 初は静かに一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 ミュージアムの工場内に監禁されている早苗と雪。周囲には何人かのスーツを着た人間が監視のためにかこちらを睨んでいる。

 

「早苗さん、大丈夫?」

「ええ、雪ちゃんは?」

「私も大丈夫…」

 

 この緊張感に耐えられず、雪は早苗に質問をする。

 

「ねえ、早苗さん。初さんって本当に早苗さんの子供なの?」

「ええ…」

 

 どこか言い辛そうな早苗。それは雪に対して秘密にしていたためか、それとも初に対する罪悪感からか…。

 

「別に私は無理して聞かないから…」

 

 それを何となく察した雪はそう口にする。

 

「ただ、早苗さんの子供なら、きっと私のお姉ちゃんだよね?」

「…ええ、そうかもしれないわね」

 

 雪の言葉に一瞬驚くものの、口に出した言葉はどこか煮え切らないものだった。

 そんな二人の前に再びリーダー格の男が姿を現す。

 

「さて、そろそろ時間だが、今のうちに始末の準備をしておけ」

 

 男の命令に部下たちは淡々と従う。ここに居るのは金に釣られた者か、男の力に恐怖して服従を選んだ者である。故に男の命令に疑問を抱くことも無く、ただ従うだけだ。

 そんな彼らの耳にバイクのエンジン音が響く。

 

「やっと来たか」

 

 男は嬉しそうに笑みを浮かべる。

 そして姿を現したのは、2代のバイク。男たちの真ん中で止まったバイクから降り、ヘルメットを脱いだのは翔太郎とフィリップ、照井だ。

 

「やあ、待っていたよ。約束通り『運命の子』も連れて来てくれたようだね」

「ああ。だから後ろの二人を離してもらおうか」

「それより先に、運命の子をこちらに渡してもらおうか?」

「…渡した後にお前達が約束を守る保証はあるのか?」

 

 翔太郎の言葉に男は苛立ちを見せる。

 

「良いからさっさとそいつを寄越せ。さもなくば…」

「分かった。良いだろう」

 

 声を荒げた男の言葉を断ち切ったのはフィリップだ。静かに翔太郎に向かってアイコンタクトを取ると、フィリップは一歩ずつ近づく。

 

「ふふふ…」

 

 男の機嫌は戻り再び笑みを浮かべる。そして男がその手をフィリップへと向けたその瞬間、

 

「今だ亜樹子!!」

 

 その言葉と共に、工場内にリボルギャリーが突入する。

 

「何!?」

「きゃああああああああああっ!!」

 

 その衝撃で天井の一部が落ちてくるものの、翔太郎はスタッグフォンを起動させ、フィリップはファングメモリとエクストリームメモリを呼び出し、自分達と早苗、雪を守る。

 そして崩落が収まると、リボルギャリーの中から亜樹子が姿を現し、早苗と雪の元へ向かう。

 

「大丈夫ですか?」

「…ええ、はい」

 

 状況がうまく呑み込めず、早苗は呆然としたまま返事をする。

 

「とりあえず二人はあの中に逃げてください!」

 

 亜樹子はそう言ってリボルギャリーに指を向ける。だが

 

「そうはさせるかああああっ!!」

 

 リボルギャリーが突入した衝撃で倒れていたリーダー格の男がメモリを起動させる。

 

〈LIQUID〉

 

 そしてメモリを額に挿入すると、その体はドロドロに溶け出し全く別の姿へと変貌していく。それはまるでスライムが集合したかのような姿。それがリキッド・ドーパントだ。

 

「お前ら。そいつらを一人残らず捕まえろ!!」

 

 その言葉と共に、同じように倒れていた男達がそれぞれメモリを起動させる。大半はマスカレイド・ドーパントに姿を変えるが、中には一人トライセラトップス・ドーパントが居た。

 彼らはリボルギャリーまでの道を塞ぐように立ちはだかる。

 

「よし、行くぞ」

「ああ」

「問題ない」

 

〈HEAT〉

〈JOKER〉

〈ACCEL〉

 

「「変身!」」

「変…身っ!」

 

 ドライバーを装着し、ガイアメモリを装填した2人(3人)の姿が仮面ライダーへと変化していく。

 

『僕達がリキッドをやる。照井竜、君は他のドーパントを頼んだよ』

「ああ、分かった」

 

 元からリキッド・ドーパントを倒すことを決めていたWは最初からヒートメモリを使用し、液状化能力を発動しているリキッド・ドーパントに炎を纏った右腕で殴り掛かる。

 アクセルはエンジンブレードを携えて、多数のマスカレイド・ドーパントを切り裂いていく。

 

「はあああああああっ!!」

 

 そんなアクセルへと向かって来たのは、巨大な棍棒を携えたトライセラトップス・ドーパント。その一撃をエンジンブレードで受け止める。

 

「お前の相手はこの俺だ!」

「邪魔を…するな!」

 

 戦闘力で言えばアクセルの方が数段上だ。しかし大量のマスカレイドに邪魔され、中々有効打を放つことが出来ない。

 すぐに亜樹子達と合流し守らなければならないのに…。アクセルの心中には焦りが生まれていた。

 

 

 

「きゃあああああ!!」

 

 そしてフィリップの体を回収した亜樹子と早苗と雪もまたマスカレイド達に追われていた。

 本来ならばリボルギャリーの内部へ逃げ込むつもりだったのだが、思いのほかドーパント達が多く、逆にリボルギャリーから離れてしまっている。

 そうしている間に、雪が躓き倒れる。

 

「雪ちゃん!?」

 

 早苗と亜樹子が駆け寄るが、すぐにマスカレイド達に囲まれる

 絶対絶命の状況。そんな中、亜樹子達の耳にバイクのエンジン音が聞こえる…。だが翔太郎達は遠くで戦っているはず。ではこのエンジン音は…。

 そして亜樹子達に襲い掛かろうとしていたマスカレイド達が、突如として駆け抜けてきた1台のバイクに突き飛ばされていく。

 

「え…?」

 

 そしてバイクは亜樹子達の前で止まると、運転していた何者かが降りる。そして被っていたヘルメットを脱いでその正体を3人の前に見せた。

 

「初ちゃん?」

 

 その姿を見て、思わず早苗と雪は目を見開く。

 

「何でこんなところに!?」

 

 その場にいた全員が思ったことを亜樹子が代弁する。

 

「別に助けようと思ったわけじゃありません。ただ死なれたりでもしたら夢見が悪くなりそうだったので…」

 

 そう言って初は雪に手を差し伸べる。

 

「さっさと逃げますよ」

「…うん」

 

 雪はその手を取って立ち上がる。

 そして再び立ち上がったマスカレイド達に追われながらも、リボルギャリーまで走り出す。

 アクセルとWの二人がマスカレイド達を倒してくれているため、いつの間にか最初の数よりは減っていた。

 亜樹子はフィリップを担ぎながら、早苗と雪はお互いに手を繋ぎながら、初はそんな二人を横目に見ながら走る。

 

「きゃあっ!!」

「あうっ!!」

 

 そしてやっとリボルギャリーまであと少し、というところで4人を衝撃が襲った。

 何が起きたのか、亜樹子が周囲を見回すと、そこに居たのはアームズ・ドーパントとパペディアー・ドーパント。まさかまだいたとは…

 

「あ…くっ…」

 

 気が付くと早苗の様子がおかしい、よく見ると、倒れた瓦礫に左足が挟まれたようだ。

 

「早苗さん!!」

 

 雪が駆け寄って瓦礫をどかそうとする。しかしかなりの重量があるようで持ち上がる気配はない。

 亜樹子もこの状況を見ているだけという真似は出来ず、フィリップをその場に置いて雪と共に持ち上げようとするが、それでも持ち上がらない。

 その間にもドーパント達は近づいてくる。それを見て早苗はもういいと叫ぶ。

 

「もう逃げて! 私の事は良いから!」

「そんなこと出来ないよ!」

「このままじゃ貴女達まで…」

 

 自分を見捨てるように言う早苗。しかしその言葉を許すことが出来なかった者が居た。

 

「どうして、また勝手に自分一人で決めるの!?」

 

 その声の主は初だった。思わぬ声に3人の視線が集まる。

 

「私はまだお母さんと何も話してない! 何も聞いてない! それなのに勝手に自分一人が犠牲になるようなこと言わないで!!」

 

 そう言って初も同じように瓦礫を持ち上げようとする。3人の力が合わさることによって瓦礫が僅かながら持ち上がる。だが

 

「残念だったなあ!」

 

 アームズ・ドーパントが腕を振り上げ雪を殴ろうとする。思わず目を背ける雪。

 

「あうっ!!」

 

 しかしその一撃を受けたのは雪では無く、咄嗟に彼女を庇った初だった。

 

「初ちゃん!?」

 

 亜樹子は思わず声を上げる。ドーパントの膂力で吹き飛ばされた初は、壁際にある棚へとぶつかった。一瞬意識が途切れる。骨は折れていないようだが、それでもかなりのダメージだ。

 このままでは4人とも無事では済まない…。だが自分に何が出来るのか…。

 そんな初の視界にあるものが映る。

 

(どうして…こんなところに…)

 

 ドーパントが暴れた衝撃のせいかひしゃげた棚の中にあった()()。本当なら使いたくは無いが、今はこれに賭けるしかない。

 目の前ではドーパント達が再び雪に殴りかかろうとしていた。それを止めるため、近くにあった小さなコンクリート片をドーパントに投げる。

 

「ん、何だ?」

 

 ボロボロの自分の様子を見た雪と早苗は泣きそうな顔になっている。

 

「お前から先に殺されたいようだな!」

「いや、殺すのはまずいだろ。あの人が言ってたターゲットの一人らしいからよ」

 

 好き勝手に言うドーパントを尻目に、初は3人に視線を向ける。今、3人を守れるのは自分しかいない。

 

「今だけは、()()に出会えたことに感謝するよ…」

 

 そう言って初は手に持ったガイアメモリのスイッチを押した。

 

〈UNKNOWN〉

 

「何?」

 

 そして初は左手を軽く上げると、手首にガイアメモリを挿し込む。それと同時に初の姿は、全身が布に包まれた異形へと変貌した。

 突如の事に、その場にいた誰もが声を失った。

 

「お前、何なんだ?」

 

 掠れた声で呟くアームズ・ドーパント。それに対し初はただ一言だけ。

 

「答える気はないし、知る必要も無い!」

 

 そして初はその腕の布をドーパント達目掛け放った。




書きたかったこと→初のライダーブレイク(轢き逃げアタック)

アンノウンメモリがここにある理由
→冴子がこの工場の鍵付きの棚に隠していた。
→鍵を知っている奴がおらず、放置
→戦闘の影響で棚が壊れ、奇跡的にメモリは無事だった。という流れです。
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