仮面ライダーW メイドはU   作:雪見柚餅子

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 今更ですが、明けましておめでとうございます。
 今後とも、この小説をよろしくお願いします。


6話

「………」

 

 どこかピリピリとした雰囲気を見せる若菜様と、無表情でそれを見る冴子様。そしてこの状況を理解しているのか分からない霧彦様に、何を考えているのか分からない琉兵衛様。

 そんな4人が食卓を囲む景色。私は内心ではビクビクしながらも悟られないように無表情を保つ。

 そして最初に口を開いたのは、やはり琉兵衛様だった。

 

「若菜。何か厄介なことに巻き込まれたそうじゃないか」

「そうなんです、お義父さん」

 

 それは今日の昼頃。若菜様がパーソナリティを務めるラジオ番組で起きた。

 ミスター・クエスチョンを名乗る者から好きな数字をプレゼントするという謎の電話が届いた。そしてその宣言通り、ラジオ局に程近い風車が7の形に折り曲げられたのだ。

 この事件によって若菜様の下には数多くのマスコミが押し寄せることとなり、屋敷に帰って来てからも機嫌がかなり悪い。

 

 そのことについて持ち出した琉兵衛様に、霧彦様は聞かれても居ないというのに自分のことのように話し始める。

 

「今日の事件を、マスコミはまるで若菜ちゃんが悪いかのように騒ぎ立ててます。ラジオ局にも抗議が殺到しているようだし、このままだと…」

「辞めてしまいなさいよ。タレントなんて。いつまでもフラフラしてるから、変な連中に付きまとわれるのよ」

 

 霧彦様の言葉を強引に切り、メモリに関わる仕事に就けさせたらどうかという自分の意見を言う冴子様。ここ最近の冴子様は、より一層ピリピリしているように感じる。また、霧彦様が失敗でもしたのだろうか。

 しかも、タレントを辞めろという一言で若菜様の目がさらに険しくなる。

 ああ。これはいやな雰囲気がする。

 

「余計な口出しはしないで!!」

 

 そんな私の勘の通りに、堪忍袋の緒が切れた若菜様が勢いよく立ち上がり、ドライバーを装着する。

 

〈CRAY DOLL〉

 

 そしてその姿をドーパントへ変貌させると、冴子様に向かって砲撃を放つ。

 対する冴子様は動揺することなく、静かに立ち上がると、同じようにメモリを起動させる。

 

〈TABOO〉

 

 こちらもドライバーを使用して異形の姿へと変わると、光弾をそのまま若菜様へと跳ね返す。それをまともに受けた若菜様は、壁へと吹き飛ばされた。

 

「おい、冴子。なにも本気で!」

「大丈夫よ。この子は死なないから」

 

 批判する霧彦様に対して冷たい声で返す。

 ただ、死なないからってこんなことをして良いのか? それともこれが家族の信頼とでも言うのだろうか?

 

「何故、私を怒らせるの!?」

 

 吹き飛ばされた若菜様は無傷だが、その怒りは収まっていない。

 このままだと、流れ弾がこちらに飛んでくる可能性もあるので、いつでも変身できるようにメモリに手を伸ばそうとした、が

 

「もうよしなさい!!」

 

 琉兵衛様の一喝に、思わず手を引っ込める。

 喧嘩をしていた二人も変身を解いた。

 

「私もそろそろいい機会じゃないかと思うがねえ。トラブルが解決しなかったら、今の仕事は辞めなさい」

 

 その言葉を聞き、若菜様は感情的になりながら自分で解決すると言って部屋から出ていく。

 …本当に大丈夫だろうか。

 

「ふむ…」

 

 そして何かを考えていたらしい琉兵衛様がこちらに視線を向ける。

 …ああ。また面倒な仕事が増えそうだ。

 

 

 

 

 

 そして翌日。ラジオ局にはいつもとは異なり、警察が物々しい様子で動き回っていた。

 昨日の事件。風車を破壊し、市民にけがを負わせるという大きな出来事。これに対して警察は、また同じようにラジオで犯罪予告を行う可能性が高いとして、若菜様をはじめとする番組関係者に協力を仰ぎ、逆探知を仕掛けて犯人を突き止めようとしていた。

 そしてなぜかこの場には私もいる。勿論、いつものメイド服ではなく私服だが。

 昨日の夜、琉兵衛様から与えられた、若菜様に万が一の事が無いように護衛をしろ、という指示…。一応、警察にも事情を伝えて部屋の中に入れてもらったけど、正直場違いな気がする。やっぱりこういうのは私じゃなくて他の人に任せたらいいと思う。具体的には暇そうな霧彦様とか、普段何をやってるのか分からないバッタ女とか。

 

「刑事さん、頼りにしてます」

 

 …素を知ってる身としては、よくあんなふうに裏表を使いこなせると思ってしまう。そしてあれに騙されてファンになったり、挙句の果てに告白やプロポーズをしたりする連中が続々と増えていくのを考えると、何か微妙な気持ちになる。

 

 っと、気が付くと既にラジオが始まっていた。

 私のやるべきことは、万が一ミスター・クエスチョンが現れても若菜様を無事に逃がすこと。そしてそれ以上に若菜様がドーパントの姿で暴れださないようにすること…。あれ…、無理な気がする。

 一度、キレると完全に手が付けられなくなる若菜様をどう止めろと…。ああ、霧彦様が居れば身代わりにでもするのに…。

 

Prrrrr…

 

 絶望感に打ちひしがれていると、不意に電話が鳴り響き、警官たちが慌てて逆探知の準備を始める。

 そして若菜様は一見緊張した面持ちでマイクに向かって話し出す。

 

「もしもし」

『若菜姫。昨日のプレゼントは気に入って貰えたかな?』

 

 ボイスチェンジャーを使っているようで、その声は男性のようであるということ以外ははっきりとは分からない。

 全く、もしこいつに遭ったら一発殴ってやりたい。こんな奴のせいで、屋敷の雰囲気は悪くなり、相対的に私の寿命がガンガン削られている気がする。ああ、考えただけで腹が立ってきた。

 

 ん? 気が付くとスタジオの中に誰かが入っていく。帽子を被ったあの男…、誰だろう?

 その男はマイクの前に立つと、勢いよく言葉を放つ。

 

「おい、聞こえるか!? クエスチョン野郎!!」

 

 …いや、何を一体!?

 突然のことに一瞬周囲が静まり返り、そしてすぐに慌ただしくなる。

 

『誰だ、貴様は!?』

「俺の相棒からの伝言だ。お前はファン失格だ。本当の若菜姫のファンなら、3番目と4番目の質問の答えも合わせてプレゼントをするはずだ」

 

 3番目と4番目の答え? 何の事を言っているのか、分からない。

 ミスター・クエスチョンは激昂したように電話を切る。

 

「今の、どういう意味?」

 

 若菜様が訝し気に男に向かって声を掛けるが、男は肩を竦める。

 

「さあ? 俺はただ言う通りにしただけだ」

 

 男の言葉を聞くに、今の質問は相棒と呼ばれる何者かの指示によってしたものらしい。

 その言葉を肯定するように男の電話から着信音が流れる。

 

「おう、フィリップ」

 

 そして男は少しの間、電話の先の声に耳を傾け、静かに口を開く。

 

「分かった。サザンウィンドアイランドパークだ」

 

 …ちょっと待て。あの変な質問だけで、次の事件現場を当てたとでも? 一体、あの質問はどのような意味だったのか?

 そんな質問をする暇もなく、男は外へと出ていく。

 残された警察は、首を捻ったり、慌てて連絡を行ったり、男への恨み言を言ったりするだけ。

 

 そして男の言う通り、サザンウィンドアイランドパークが襲撃されたという情報が届くと、若菜様の表情が変わった。

 そして待機していた私に声を掛ける。

 

「初。少し用事ができたから、あなたは先に帰りなさい」

 

 いや、それは…、

 

「い・い・わ・ね?」

「了解しました」

 

 はい。止めるなんて無理です。

 まあ、私はバイクで若菜様は送迎用のドライバーが居るし、ここで別れても問題は無いはず…。あのドライバーも裏側を知ってる人だし。

 ただ、一応尾けて行くべきだろうか、とも思ったが恐らくすぐばれるだろうし、ここは大人しく帰ろう。

 …琉兵衛様へどう報告しようか?

 

 そして館に帰った後、しばらく悩んだ結果、琉兵衛様にありのままを報告した。ついでに明日は外でロケだと伝え、霧彦様に護衛をさせてはどうだろうかと進言する。表向きは私よりも戦闘向きであるということ、汚名返上のチャンスを与えてはどうかということ。本音としては、もしドーパントが姿を現したら確実に若菜様が暴走するので…。

 琉兵衛様はしばらく考えた後、私の提案を受け入れた。

 どうやら私が離れていた間、ミックの機嫌が少しばかり悪かったらしい。世話をしようとしたメイドが何人か引っかかれそうになったとのことで、それもあっての事だろう。そのミックは私の足元で、何事もなかったかのように餌を食べているわけだが。

 

 さて、とりあえず霧彦様のことは応援しておこう。せいぜい、若菜様の機嫌を損ねることの無いように…。




 サブタイトルをつけようと考えているけど、なかなか良いのが思いつかない…。
 1~5話、原作45~49話に関しては思いついているんですが…。
 とりあえず、やや強引でも思いつき次第、つけていこうと思います(サブタイトルが付かずに終わる可能性もありますが…)。

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