ハイスクールD×D スカウトするためにやってきました。 作:黒部 愁矢
何やら(゜Д゜)な顔が見えそうな気がしますが、のんびり、のんびり進みます。
展開が糞遅いと言われるくらい書けるように頑張ります。
宇宙空間のように真っ暗な空間に俺は一人漂っている。
そこへ一人の男が出現してきた。日本人だ。
無造作に伸ばされ、手入れの一つもされていない髪で、その色は髪染めに失敗したような汚い金色をしている。
よれよれのジャージに、新品同様にも見えるスニーカー。
……大体、大学生ぐらいだろうか。あまりコミュニケーションが不得手なタイプの。
不健康そうな白い肌に、触れば折れそうな程に細い体を見れば、嫌でもそう思ってしまう。
……これは、はずれか。
「……ん? どこだここは?」
「ああ、ようこそ」
「あんた、誰だ……? はっ! もしかして……」
急に生気の無い目を輝かせる青年。あいつの頭の中ではどんな妄想が繰り広げられているのか。
まあ、この空間では一方的に相手の心の声が聞こえるから、全てこちらには筒抜けだけど。
……中々に脳内お花畑な思考回路をしておられるようで、何度も転生やらハーレムやらチートという単語が流れ出てくる。
「お前は死んだ。それで……まあ、お前には第二の人生を歩んでもらう」
「よっしゃテンプレきたあああああああああああああああああああ!!!!! よっしゃ自殺する前に転生神に願かけといてよかった! 本当に良かったっ!! まじでっ!! やっぱ転生っていったらあれだよな、転生特典!! 何がいいかなー。ここは無限の剣製? それとも王の財宝か? ……いやっ、ここはニコポだ!! …………ところで特典は何個頼めるの? もしかして二個しかないとかはねえよな……?」
ああ、まじで面倒くさいやつだ。
「三個だ。それで、転生する世界はどこにするんだ」
「世界……、ここはやっぱりリリなの……いや、ISにハイスクールD×Dも捨てがたい。……リリなので! 勿論原作キャラと同年代!」
「……よし。それで次に願いはどうする。三個までなら叶えることは出来るからな」
「銀髪オッドアイのイケメン。王の財宝と、ニコポナデポ。これでおk」
「だめだ。ニコポとナデポは別々のものだから、それだと四個になってしまう」
「っはあ!? そんなのありえねえよ! そのくらいなんとかなるだろ!!」
「はあ、だからそんなことはできな…………ああ、いや出来る。ちょっと待ってろ」
ニコポとナデポの発動条件を、聖人のような心を持っていて、はじめて発動できるようにすれば丁度三個分のキャパシティに入るだろう。
なんたってニコポもナデポも最強レベルの洗脳に入るのだから、これくらい発動が困難なくらいが丁度良い。
「それじゃ、逝って来い」
「っあ! やっぱ魔力無限も追加d」
「知るか」
そして、青年は消えていく。
……あんなのが俺の後輩になるのか、なんか嫌だな。
青年が消えると同時に空間が割れるように崩れる。
ガラスのように割れると、そこには面談室のような空間が存在していた。
俺の今日の仕事も終了し、さあ帰ろうかと意気込むと、扉の近くには和服美人。
「お疲れ様、テオ君」
「ん? あ、待ってたんだ、理沙姉さん」
「~っ!! 理沙姉さん。この響きに憧れて一万年……いいね!」
「そんな大袈裟な。とりあえず帰ろう」
のんびりと義姉さん……義姉ではなく姉と呼べと言われているため、姉さんと呼ぶが……自慢の姉と談笑しながら都市の界隈を歩いていく。
「テオ君はもう仕事には慣れた? 私みたいな単純な仕事と違って結構大変そうだけど……」
「んー……、まあまあって感じかなあ。転生者によるんだけど、社会人とかなら転生前も後も楽だよ」
「よくあるオリ主っていうの? テオ君や私達とはまたちょっと違ったタイプなんだよね?」
「ああ。なんというか……無自覚に口説き文句が多かったり、無理矢理助けたりって奴かなあ。……まあそういったのは少しの修正だけで済むから、基本的に手出しする必要はないんだけど、さっき俺が最後に送った転生者みたいな……ねえ? 自分しか見えてないというか、自分さえ良ければどうでもいいって奴は本当に面倒だよ」
頭をガシガシとかきながら応えると、姉さんがきょとんとした顔になっていた。
「どうして? 確かテオ君の仕事って転生者を世界に送って、その後に世界を壊すような真似を仕出かした場合にだけアフターケアに行けばいいんだよね? そういったのが世界を破壊するようにも思えないんだけど……」
「いやね、転生特典があるんだけど、偶にそれが暴発しちゃったり、洗脳して間接的に世界を破滅に導いたり、世界の法則を歪めちゃったり……ほら、確か百年前に俺が修正に向かったでしょ?」
「うん、リリカルなのはの世界に行ったんだよね。……確か、転生者の魂が一つ崩壊したとかそんな感じの理由で」
「それなんだけど、実は世界がループしていたみたいでさ。その根本を修正するのに戸惑ったんだよ。しかも俺自身の肉体じゃなくて、その転生者の肉体に憑依させられるっていう面倒くさい条件付きで」
本当にあの条件は面倒くさかった。
俺は基本的にトリッキーな戦い方をするのに、その憑依する体は根っからのパワータイプときた。
二年間過度な修行をしないと修正にすら取り掛かれなかったのだから、その面倒くささを分かってくれると思う。
「んー? でも私は出来ないけど、テオ君なら結構楽だったんじゃないの? なんたってテオ君の戦い方って突き詰めれば一般人の状態でも十全に戦える程だもん」
可愛らしく頬を膨らませる姉さん。
「まあね」
姉さんの身長は170と少し高めで、容姿端麗、モデルのような体つきをしているが、そんな細身の肉体でも、ここ神界では五十番目の強さに入り、上級神であるアテナ様の側近を務めている。
そんな、自慢の格好いい姉さんだが、それが可愛らしく頬を膨らませると普段その姿を見ていない者ならば、ギャップ萌えというやつによって卒倒するやつも数多だ。
まあ、そんな姿は一万年前から見慣れていたのだが。
膨らんだ頬を指でつつくと、ぷひゅう、という音と共に空気が飛び出した。
上質な絹のようにさらさらな頬は、一万年前から何も変わっていない。
「あれ?」
ふと、姉さんが後ろを振り返るので、見てみると、俺の上司の姿が。
俺の方に向かって走っているようにも見える。
「っや、ごめんなさいね、家族水入らずの時に引き止めちゃって」
「いいですよ。それで、何かあったんですか?」
「ちょっとあなたにとって良い事なんだけど、言う機会が無かったもんだから急いで追いかけたのよ」
「いいこと……っあ!」
姉さんが右手を顔に当てて、首を傾げていたが、ふと何かに思い当たったのか、両手を口にあてて、目をキラキラさせながら見開いた。
そして、上司と姉さんが意味ありげな笑みを浮かべて、互いにサムズアップ。
……一体なんだろうか。
「えー……こほん。テオ・ウィステリア、あなたの神見習いとしての功績が上級神、世界神に認められたため、下級神への昇進試験を受ける権利を得られました」
……え。
一瞬全感覚が機能しなくなり、静寂が訪れるような気がした。
数瞬後には俺の手を取って無邪気に飛び跳ねながらはしゃぐ姉さん。
それを微笑ましそうに見つめる上司。
見習いから下級とはいえ、神になれる?
神界にこの身を置くようになってから五千年ずっと見習いのままだったのに?
沸々と喜びが込み上げてくる。
なにせ、後五千年はかかると思っていた下級神だ。
「よっしゃあっ!!」
周りの目を気にして、大声で叫んだりはしないが、それでも顔からはどうしても笑みが零れる。
「やったねテオ君! 念願の下級神まで後一歩だよ!!」
「おうっ! これで、散々にこき使われなくて済むよ!」
この上司は別にそんなことしないが、他の上司の中には七面倒くさいことをしてくる神もいるため、早くちょっかいを受けづらい神へと上がりたかったのだが、ようやくそれが叶いそうだ。
「ん゛ん゛っ!! まだ少し話があるのだけど、いいかしら?」
「あ、すみません」
「ごめんね」
上司に向き直ると、何やら話を続けたくなさそうな表情をしているが、やがてそっぽを向いたまま話を続けた。
「それで、少し言い難いことなんだけどその試験の申込期間がね……今日なのよ」
「……まじで?」
「テオ・ウィステリア様ですね、下級神昇進試験申込書はお持ちでしょうか?」
先程手渡された紙を差し出す。
「……試験内容は部下のスカウト、制限時間は無制限、世界はハイスクールD×D、申し込んだ内容はこれでよろしいですね?」
「はい」
「後、ウィステリア様の場合、存在が世界に影響を与えてしまうので、大精霊から精霊王へと位を下げ、現地で再度大精霊になるようにしてください。また、この試験では世界に馴染むために、出来るだけ幼い状態で送り出されますが、馴染むまでの間、幸運値が最低となっておりますので、その点はご注意ください。……それでは、ご武運を」
そうして、俺は神界からハイスクールD×Dの世界へと降りて行った。