ハイスクールD×D スカウトするためにやってきました。 作:黒部 愁矢
・精霊としての特性も感じられない。
・025号ではなく、025番と呼ぶことにする。
大体このように変更しました。
さてさて、主人公の逃げ道は消えました。
神父に担がれて少し古びた、それでも明らかに過剰な程分厚い鉄扉を開けて入る。
入った先は小さな病院の待ち受け室のような場所であり、掃除は小まめにされてあるのか内装は古びていても小ぎれいだ。
そして、先ほどからしている心眼で周りを見回している内に、俺を長椅子に寝かせ、神父達は端に行き、何かをガチャガチャと取り出す。
「ああ、これを嵌める時の035番の反応が見られないのは残念だな」
鉄の輪と鎖、鉄球が合体した道具、拘束具をそれぞれ一人ずつが手に持ち、それを俺の両手足に取り付けていく。
付けられた途端に体は重くなる。
少なくとも今の俺がこの状態で走れるような重さでないことだけは確かだろう。
つまり逃げることは既に不可能。
俺がセイクリッド・ギアで鎖を断ち切るか、素手で切断すれば出られないこともないかもしれないが、どうにもまだ情報が足りないのと俺のスペックが低すぎるのもあって迂闊な行動が出来ない。
なにせ、精霊は魔力が使えなければ基本的に劣等人間と言っても差し支えない。
人の何倍も鍛えれば人のスペックを超えることは出来るが、今の俺の体はそれすらも置いてきてしまっているらしい。
せめて、魔力が戻る時に肉体のスペックも戻ってくれることを願う。
唐突にバケツの水を丸ごと顔に浴びせかけられた。
ここは起きる場面か。
「げほっ、げほっ……」
「起きたか。今すぐ下に降りるぞ」
「……誰?」
「我々は神に身を捧げ、忠誠を誓った者」
「…………どういうこっぎぃぅ!」
純粋な子供らしく再度質問をしようとすると、鈍器で殴られたような痛みが後頭部から脳へと稲妻の如く駆け巡る。
やはり、防御力は下がっているらしく、この時点で視界はぐらつく。
頭が凹んでいるのではないかと思う程の容赦なさだ、まるで子供にする仕打ちには思えない。
幸いなことに視界は揺れるが、気絶するレベルではないため、表情が崩れることは無いが、今の俺は子供。不用意に異常な行動を見せれば、先ほどから狂ったような言動を見せる神父のことだ。異端者だとか何か理由をこじつけて殺すに違いない。
つまりここでは、殴られた時の子供の対応が求められる。
さあ、泣くんだ、俺。
「……ぐすっ」
涙で目を潤ませ、時折嗚咽を入れる。
その際にまた後頭部を殴られるが、先程とは微妙にずれた位置だった。
そして、涙を堪えるフリをしながら、重い鉄球を引きずって地下へと続く階段を下りていく。
意外に長く、ぐるぐると回る階段を下りると、そこには三つ、四つの牢屋があり、中には疲弊しきって俺と同じように両手両足に枷を付けられている、少年と少女達がいる。
「今日からここが035番の家となる」
「あの……何で俺はここに」
「何だ、聞いていなかったのか。なら教えてやろう。貴様はこれから聖剣を授かるために様々な祝福を受ける。それには様々な困難が待ち受けているだろうが、それを乗り越えた暁には我らが神はきっと聖剣を授けてくださるだろう。それとこれを付けるといい」
手渡された無骨なリングを見る。神父を見ると暗に付けなければ殺すという意志も見えなくはない。
「……」
黙って付けると、嫌な感覚が体中を駆け巡る。
「聖剣に選ばれた暁にはそれも外し、名も与えよう」
名を与える。
今現在名前を訊かれて俺が名乗ることが出来る名前は三つある。
まずはこの世界での親に貰った名前。
そして、俺が転生して得た名前。
最後に俺が転生する前の、根本となった名前だ。
それ故に俺は名前が無かろうとも、勝手に名前を名乗る。
だからそのように名を与えるという褒美はそこまで魅力がない。
いまいち反応が薄い俺を見て、ふっと神父は薄く笑い告げた
「勿論この中で誰かが聖剣を授かったら、全員ここから出してやろう」
悪魔の言葉を。
ここから出さないための悪魔の甘言を。
例え、それが嘘だと分かってもそれに縋り付きたくなる誘惑の言葉を。
ふと、牢屋に入っている者達から強い視線を三つ程感じた。
運命に抗おうともがく、強者の視線を。
運命を恨む、狂気を孕んだ視線を。
愚者、俺のような者が放つ視線を。
それぞれから違う力を感じたが、そのどれもが力強い。
神格を得る前、世界中を放浪し、様々な者を見続けた俺だからこそ分かる。
その意思のまま育てば、至る所は違えど、強者になる者であることには違いないことを。
そこまで思考が至る間に、俺は無理に押され、前向きにつんのめりながら牢屋へと入れられる。
「明日は早い。精々死なないためにも、そこの九人と一緒に仲良く寝ておくことだな」
そして、神父は地下から地上へと去る。
……しばらく、地上の光を見ることは……無いかもしれない。
少なくとも、この研究が終わりを告げるまでは出るつもりはない。
俺が終わらせるにしろ、実験が成功するにしろ、俺がここを出る頃には、生きている者はいなくなっているだろう。
三つの視線がこちらを向く。
「……よろしく、君も災難だったね」
その内の一つ、この中では最年長であろう高校を卒業した辺りの男が話しかけてきた。
ペコリと頭を下げると、疲れを押し隠すような表情で微笑み、空いているベッドを使うように促した。
しかし、疲れているのか自分のベッドの上から座ったまま声を掛けるだけで、動こうとはしない。
年長というからにはここに長くいそうだが、そのせいか髪は白い。
床で寝ないだけましだというようなレベルのベッドに座ってから、再度質問する。
「……災難? ここは一体どこですか」
「そんな事も知らずに連れてこられたのか。憐れだな」
白髪の青年が俺の質問に答えようとした言葉を奪うかのように、白髪の青年の隣のベッドの上から声が聞こえる、少し鼻にかかったような声音だ。
その少年が上体を持ち上げると全体の姿が見える。
癖のある茶髪で、疲弊しきった目をしており、全体的に体の線が細い。
健康体でないと言われても信じてしまいそうなくらい、纏う覇気は弱い。
「俺が信実を教えてやる」
「おい、この子にはまだ早いだろう」
「……先に知っておいた方がいいだろ。見た感じ016番と同じくらいの歳だし、なあ?」
問いかけるように残りのベッドで寝転がっている金髪の少年に言うと、無愛想な声が短く返って来る。
「っち、自分勝手な奴だな」
「まあ、そう言うな。……気にしないでくれ、あいつは少し不器用なだけなんだ」
苦笑しながら白髪の青年がフォローするが、特に不快にも思っていないため、フォローの必要は無い。
金髪少年の発言に茶髪少年が少し不機嫌になりながらも、俺に説明をしてくれる。
「最初に言っておく。見て分かる通り俺達は、教会の実験のために集められた……モルモットのようなものだ。教会は聖剣使いを後天的に作るために、剣の才能を持ち、神器(セイクリッド・ギア)所持者を集めた。……お前も剣の腕は良いはずだ。……ここまでは理解したか?」
無言で頷くと、少し意外そうな表情をした。
「へえ、絶望しないんだな。……まあいいや、続ける。それで、この実験はかなり最初の方に連れてこられた白髪のこいつ、005番が言うには九年前から続いているが、全くむかつくことに、まだ聖剣使いは俺らの中から出ていない。……いや、むしろ」
「014番、それ以上はまだいい」
続きを話そうとした茶髪少年を咎めるような目で、白髪青年がたしなめてくる。
「……仕方ないな。まあ、だけは覚えておいてくれ」
一泊置いて茶髪少年はこちらを真っ直ぐ見て、告げる。
「ここは、地獄だ」