永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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プロローグ
プロローグ


「だから、てめえが悪いんだろうがこの野郎!!!」

 

「お、おい、そんなに怒らなくてもいいだろ……」

 

 食事が終わった後の昼休み。今日も、些細なことから喧嘩だ。

 俺は毎日怒りながら高校生活を送っている。怒ればますますストレスが溜まるとわかっていつつも、これをやめることが出来ない。

 

「あー全く!!!」

 

 これ以上の不毛な喧嘩をしても仕方ない。周囲が野次を飛ばす中、黙らせるために扉を思いっきり締めつつ水でも飲もうかと水飲み場に向かう途中だった。

 

「ねえ優一……」

 

 一人の女子生徒が話しかける。

 俺の名前は「石山優一(いしやまゆういち)」だから、明らかに俺に向けてのものだ。

 

「あ?」

 

「また喧嘩したの? 飽きないよねえ……」

 

「仕方ねえだろ、頭に来ることがあったんだ」

 

「でもさ、そうやって怒っても、何にもなんないじゃない」

 

「うるせえな、分かってんだよ。俺にも……俺にだってこんなこと不毛だってことくらいはよ」

 

「じゃあどうしてやめられないのよ?」

 

「……きっと、多くの大人が酒や煙草、あるいは麻薬をやめられないのと同じだろうよ。イライラする事があれば怒らずには居られなくなる。この前も芸能人が麻薬取締法違反で捕まったけどあいつなんてもう何度目だ? 染み付いたことをやめると言ってやめるのは難しいということだ」

 

「……根深いわね」

 

「あんただって、田村と喧嘩ばっかしてるじゃないか」

 

「あ、あれは、あいつが悪いんであって……」

 

「……ほら、似た者同士だろ?」

 

「も、もう……」

 

「俺には、女子の2グループがどういう意地を張っているのかは知らんが」

 

「あー、深く追求しても仕方ねえな。とりあえず、俺は頭冷やすために水でも飲むことにするよ。休み時間ももう短いからな。遅れるなよ」

 

「そう、いってらっしゃい」

 

 今話したこいつは「木ノ本桂子(きのもとけいこ)」といって、俺の高校では唯一小中学校からの同級生だ。

 まあその縁もあってこうして話すこともある。木ノ本も木ノ本で曲がりなりにも以前より面識がある相手と言うのは話しやすいらしい。

 そうは言っても友人というほどでもない単なる話し相手だが、幸いなことにこいつは「田村恵美(たむらえみ)」と並んで、うちの学年の女子グループを2分する勢力のリーダー格ということや、俺が(意図的に触られないようにしているのは明らかとは言え)女子には喧嘩を売らないというのもあって田村のグループの女子はともかく、木ノ本のグループの女子からはそこまで悪感情を持たれていない。

 まあ、こいつはこいつで田村と喧嘩に明け暮れてるからな。そう言う意味では似た者同士かもしれんし、もしかしたら木ノ本のグループからは俺が男子ということで「威圧」の役割も期待されているんだろうな。

 

 後は木ノ本が俺によく話しかけてくる理由としては、俺が男だという所もあるだろうな。

 木ノ本はよく見なくてもクラスでも一番可愛くて美人なのだが、どうも女子グループの二大勢力のリーダーということで男子からも高嶺の花としてやや敬遠されてて俺くらいしか話す男子は居ない。

 

 あいつのことはまあいいや。それよりも水でも飲んで落ち着け無いと。成績にも影響するからな。普段の態度が悪いんだ、せめて学校の成績くらい真ん中には居たい。

 

 

    キーンコーンカーンコーン

 

 しまった、予鈴だ。にしても前のやつ遅いな。

 お、よしよし。飲み終わったかな?

 

 ……んだよ、こいつうがいまでし始めやがったぞ。

 まずい、飲むのも長いくせに時間ばかりが過ぎていく……

 ああ、水が飲みたい、早く飲みたい、どうすればいいんだ!

 くそ、埒が明かない! この野郎!!! こうなったらこうしてやる!!!

 

「おい!!!」

 

 前の男子生徒がビクッとする。

 

「な、何だよ……」

 

「いつまで飲んでんだこの野郎! 後ろの俺のことも考えろ!」

 

「いや、人間後ろに目ついてないし……」

 

「こおのお……いいからどけってんだバカ!」

 

 背中の襟を掴み、強引に引き剥がし、俺はようやく水にありつけた。

 

 水を飲み終わり、教室へ戻ると、再び木ノ本が声をかけてきた。

 

「優一、さっきまた怒鳴ってたよね? ここまで聞こえてきたけど、また何かあったの?」

 

「ああ、水飲み場を占拠してるやつが居て、予鈴も鳴ってたから、カッとなって無理やり引き剥がしちまった」

 

「相変わらずだね。喧嘩っ早いことはさ、私はいいんだけどさ、あんたの名前、両親が悲しむわよ」

 

「……やめてくれよ。俺だって、名前と行動の不一致で悩んだりするんだ」

 

「ごめん、気にしてるのわかってるんだけど、どうしても言わずには居られなくて」

 

「悪気はないのは分かっとるよ。だけど、その話は……」

 

「あ、ごめん。もう予鈴が鳴ってたね。早く席につかないと」

 

「あ、ああ。」

 

 小学生時代のことだ。

 俺の名前、「優一」と言うのは「一番優しい人に育って欲しい」という意味で名付けたんだと親に聞かされた。

 そんな俺が、ひどく乱暴に育ってしまったこと。親はまだ、少なくとも表面上は気付いていないようだが、俺が乱暴な性格になったと知ったら間違いなく悲しむはずだ。名は体を表さず。というわけだな。

 

 乱暴者なんて辞めたいが、どうしても辞めることが出来ない。怒りを抑えることが出来ない。

 ひどく怒り続ければ、いつか皆は近寄らなくなるはず。なんて思ったこともあったが、学校生活を送る以上、それは無理な注文だ。

 

 高校も2年の5月になったが相変わらず中学時代と変わらずに、俺はあちこちで周囲と衝突を繰り返している。

 もしかしたら、これが俺の天命かもしれん。

 

 

「うっ……」

 

「ん? どうしたの? 珍しいじゃない、苦しそうにして」

 

「ああ、いや、何でもない」

 

「そ、そう?」

 

「気のせいだったみたいだ。悪い悪い」

 

 うーむ、どうも下腹部が一瞬痛んだと思ったんだが、なんか悪いもんでも食ったか?

 反射的に腹を抑えてしまったが、どうも腹の何処かが悪いというわけでもないし……

 

 うーん、今は考えても仕方ない、とりあえず次の数学の授業に集中しよう。気分が悪くなったら保健室に行けば大丈夫だろう。

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