永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件 作:名無し野ハゲ豚
「うーんっ!」
あたしはゆっくりと起きる。今日は日曜日だけど制服を着て学校に行く。
今日は大事な文化祭2日目だ。
いつものように制服を着る。更に水着審査と私服審査もあるからあたしも水着を持っていく。
そして問題は私服。水色のミニのワンピースや、茶色いスカートや、最初のデートで着てきたジャンパースカートなど、可愛い服はたくさんある。
「うーんやっぱりこれかなあ……」
幼すぎるという印象も一部である赤い服と赤の巻きスカート。
そうだ、これに猫さんのぬいぐるみを組み合わせるのはどうだろう?
……お、やっぱりぬいぐるみがあると印象が違う!
うん。頭の白リボンと黒髪との相性もバッチリ。更に幼い印象になったけど、少しでもロリコン票を永原先生から奪わないと。
ともかく、あれだけ混戦になったのは、あたしよりも永原先生や桂子ちゃんを魅力的だと思う人がそれなりにいたということ。
あたしのハンデ、もとい課題は、この童顔でロリコン票がイマイチ得られていないこと。
このあたりは体型の問題があるが、艶っぽいエロさが好きっていうのは水着審査で得られるはず。
もう一つはあたしがTS病、それも永原先生と違い、発病してまだそこまで時間が経ってないこと。
あたしとしてはもうそう言うことが影響しちゃうのは心底嫌なんだけど、人間なかなか割り切れるものじゃないみたい。
ともあれ、私服や水着のパフォーマンスと審査は、とても重要になる。
これらの審査が終わって、初めて投票ができるほか、ミスコンの映像は視聴覚室で投票締め切りまで常時公開される。
私服や水着でのアピールポーズを考える。
赤い服と赤い巻きスカートの方はどうしよう?
やっぱり妥当にスカートをちょこんと広げて摘み上げる感じかな? ちらりと太ももを見せて、男子を誘惑しよう。
後はやっぱり幼い印象だからぬいぐるみを使ってパフォーマンスをしたい。
私服審査はあどけない感じで行きたい。
私服の次に立て続けで行われる水着審査。
これはどうパフォーマンスすべきかは決まっている。
まず前かがみになって胸を強調する。次に足をちょっと広げて一回転にターン。遠心力でパレオの中の水着をちらりと見せる。
そして体育座りにしてちょっとM字気味に中身を見せる。
そのまま女の子座りになってもう一回胸の下に腕を組んで強調する。
とにかく水着で徹底的に性的に訴えるパフォーマンスを繰り返せば、あたしの魅力を存分に伝えられるはずだと思いたい。
やっぱり女の子としての深層心理が出始めたのかな?
ともあれ、母さんと食事をとる。
「じゃあ母さんとお父さんも後で来るから、楽しみにしててね」
「あ、うん……」
「ミスコンの予選で1位だったんだろ? お父さんも優子に投票するから」
「あ、ありがとう……」
とりあえず、2票ゲットだ。
朝食を食べ終わったら、荷物を持って文化祭へ。
道中、やはり一般に開放されるということで、制服以外の人もちょくちょく見え、いつもはほとんど制服一色の通学路も、今日は多様性に富んでいる。
ヒュー
「きゃっ……」
今日はちょっとだけ風が強い、正面からの風がやや強く吹きスカートの後ろをぴらりとめくってくる。
もちろんまだ見えないけど、手を後ろにやってスカートを抑える。
昨日の浩介くんとの屋上のことを思い出す。
浩介くん、あたしがメイド喫茶で他の男性客と接客しているところに嫉妬して……それを鎮めるために屋上でしたこと。
そう、パンツ見ていいのは浩介くんだけ。キスだって、胸やお尻を触るのだって、されると一番恥ずかしい浩介くんだけにしてほしい。
でもこのスカートだと、ある程度見えちゃうのは仕方ないのよねえ。
ともあれ、いつもよりゆっくりしたペースで、通学路を進み、あたしは正面の下駄箱に入って靴を履き替え、いつもの教室に入る。
ちなみに、正門には一般客の人もいて、文化祭実行委員会の人たちが、列形成をしていた。何気にこの自由な小谷学園、文化祭も人気なのだ。
ガララララ
「おはよー」
「お、優子じゃん、おはよー!」
恵美ちゃんが挨拶してくれる。
「あれ? 桂子ちゃんは?」
「あーまだ来てねえみたいだな」
朝の1時間目の時間になれば、文化祭は開催される。このときは一般に開放される文化祭のほか、学内のみに開放される後夜祭があることになっている。
後夜祭はミスコンの優勝者はちょっとした特典があるみたい。
しばらくすると桂子ちゃんも入ってくる。今年の文化祭、2年2組は昨日今日と全員出席となった。メイド喫茶の最初のシフト担当の人は、既にメイド服に着替え終わっている。
ガラガラガラ……
「さあ、みんな集まっているわね。じゃあ放送が入ったら文化祭を楽しむわよ」
「おー!」
入ってきたのは制服姿の永原先生だ。髪型もツインテールのような感じにしていて、おしゃれ全開という感じ。
そして、しばらくして昨日と同じように生徒会の守山会長から放送が入る。ついに、文化祭の二日目が始まり、思い思いに飛び出していく。
「浩介くーん!」
あたしはちょっと大きめの声で浩介くんを呼ぶ。
すると浩介くんが近付いてくるので、腕をぎゅっと絡める。
「ねえねえ、一緒に回ろう?」
「お、おう……そうしようか」
「わーい! 嬉しいー!」
クラスも、あたしと浩介くんの甘々な雰囲気に突っ込むことも少なくなる。
でも、やっぱりちょっとだけ視線が痛いような気もする。
「ところで、今日はミスコンが大忙しだろ?」
「うん、でも後夜祭と合わせれば、部活もある程度回れるかな?」
「じゃあどこに行くの?」
歩きながら浩介くんと話す。とりあえず部活棟に向かっている。
「まずは美術部でしょ……文芸部、地理・歴史研究会、茶道部と新聞部に漫画研究会と……天文部!」
「ミスコンだけじゃなくてメイド喫茶のシフトは大丈夫か?」
「ああうん、大丈夫」
そんなこんなで、歩くうちに一般の人の顔も徐々に見え始めてくる。そんな中でまずは美術部を訪れた。
美術部は美術部らしく、様々な絵画を展示している。風景画や人物が、あるいは油絵など、基本的にジャンルは問われないみたいだ。
「きれいだねえ、この絵」
女性の横顔が中々きれいだ。
「でも優子ちゃんの方がきれいだぞ」
「も、もうっ……!」
さらりとこういうことを言ってのけるんだから浩介くんは本当にずるい。
「おや、石山優子さんじゃないですか!」
美術部員の一人が声をかけてくる。
「あら? あたしを知っているの?」
「そりゃあもう、美術部ではミスコンは優子さんに入れるというのが総意ですから!」
「あら、すっごくうれしいわ!」
美術部丸ごと味方というのは大きい。
「なあ、それなら表にでもそう表明する紙でも出したら?」
浩介くんの突っ込みが入る。
「ああいや、うん……言われてみればその通りだ! よし、そうしよう! みんな、手が空いてたら美術部は優子さんを応援するという張り紙を張ってくれ!」
「よっしゃ! 俺の出番だ!」
美術部はノリがいい。ともあれ、応援してくれるのはとっても嬉しい。
あたしたちはそんな美術部を尻目に展示を進む、中には裸の女性の美術画まである。女神の絵らしい。
「あ、そうそう優子さん。できればなんですけど……」
「ん?」
「来年の文化祭のこの美術画、優子さんにモデルやってもらえませんか?」
「え?」
あたしが凍り付く。浩介くんもいつもなら激怒してそうなのに、あまりの提案に身動きができていない。よしここは……
「あのーちょっといいですか?」
「はい優子さん。受け入れてくれますか?」
あたしは右手を振り上げ遠心力を付ける。
ペチッ!
「えっち!!! この変態!!!」
浩介くんほど強くないのか、びくともしていないわけではなく、一瞬頬を抑える仕草をする。
「あ、ありがとうございます!!!」
「こら、嫌に決まってるでしょ!!!」
浩介くん以外の男の前で裸なんかなりたくない。って浩介くん相手でもしたことないのに。
「ああいや、うん。無理強いはしないよ。ありがとうございますってのはその……別の意味で」
「うわー羨ましい……」
「ビンタしてもらえる上に罵ってもらえるなんて……くー」
ダメだこの美術部、早く何とかしないと……
「行こうか浩介くん」
「あ、うん……」
あたしたちは美術部を出る。
「いやー驚いた、俺相手でもあんな思い切ってやってなかったのに」
「いやいや、あたしのビンタはいつも本気だよ。あたし弱いから」
照れ隠しでビンタしたときも割と思いっきりだったし。
「にしても何なんだよあいつ……確かにああいう裸のモデルっていうのもいるけどさあ」
「美術の世界に入り込みすぎてるわよね」
「うんうん」
浩介くんと話しながら次の部活へと入る。
まだ、「裸見せるのは浩介くんだけ」とは言えなかった。
次に来たのが文芸部。詩や小説などのオリジナル同人誌で、1部200円だという。
「どうする? 買う?」
「うーん、俺はいいや。優子ちゃんは?」
「あの、石山さん! 是非買ってください!」
文芸部員が買ってほしいとあたしに言う。
「あはは、ミスコンであたしに投票してくれるなら買ってもいいわよ」
「……あーそれさっき木ノ本さんにも言われたよ……」
むむ、やっぱり考えることは同じか!
「じゃあ約束は?」
「あーうん、部の規則でミスコンの投票権と交換はできないんだ」
「やっぱりそうかあ……まあでも、面白そうだし1冊買うわ。はい200円」
「あ、ありがとうございます!!!」
文芸部のメガネの男子がにっこり笑う。
「この作品、『小説家になろう』でも連載しているのでよろしくお願いいたします」
最後には宣伝をされてしまった。
「良かったのか? 買っちゃって?」
「部の規則で無理と言っても、買っておけば少しは印象がいいでしょ?」
とにかく少しでも優勝に近付かないと。
「まあ確かに……」
「さっ次に行きましょ」
「うん」
次にやってきたのは、地理・歴史研究会。こういう名前だが最近では地理の研究がほとんどで、展示もすべて地理の展示になっている。
「へえ、この辺の地名って、こういう由来だったんだねえ」
今年のテーマは、「地元の郷土の地名と由来」だそうだ。
文科系の部活だからか、この手の展示が多く、参加型というわけではない。
だからこそ、浩介くんとのんびりしてみるにはいいけど。
「でもなんだかマンネリかなあ……」
浩介くんがそう漏らす。
「うーんそうだねえ……あ、そうだ」
「ん?」
「そろそろミスコンのアピールの時間だから」
あたしは時間を思い出す。
「あ、そうだね。体育館に行こうか」
というわけで、ちょっと早いけど、あたしたちはミスコンのため、体育館へと向かっていった。
「あ、石山優子さん。お待ちしてました」
守山会長が出迎えてくれた。浩介くんは最前列に座ってもらう。
「えーではですね。私服に着替えてください。それから水着の用意もお願いします」
「はーい」
よく見ると既に私服姿の人も、着替え中の人もいる。
でもなんか皆やる気を感じない。
あれだけ引き離されてしまったら確かに消化試合感は半端ないだろう。
でもあたしは1位とは言えほぼ僅差、桂子ちゃんや永原先生に負けたくない思いがとても強い。
制服のスカートを脱がず、まず赤い巻きスカートを制服のスカートの中で巻いて、制服の方は上手く脱ぐ。
上の方も制服を脱いでそして着る。
「うわあ何あの大きさ……」
「肩こりそう……」
「ねー」
うん、肩は相当こるわよ。
にしてもやはりミスコンに出るくらいだからある程度皆大きさもあって、巨乳の悩みというのが分かってくれて居るようで安心。
とは言っても、あたしより大きい子がこの学園にはいないんだけど。
ふう。ともあれこんな所かな。少し待とう。
やがて桂子ちゃんや永原先生を始め、ミスコンの参加者が揃ってくるが、1人足りない。
来ていないのは予選ではビリから二番目だった子で、生徒会長曰く「勝てる望みがないのでもうやめます」とのことだった。
そのことは全校放送で予め述べられることになった。
「うーんやっぱ今年の二極分化は異例だからねえ」
「ま、私達13人で行きましょう」
着物姿の永原先生がそう言う。夏祭りのときとはまた違う着物。
「永原先生その着物……」
「あ? これ? これは吉良殿のじゃないわよ。明治の6つ手前の嘉永時代に買った着物だよ。確か160年位前のだったかなあ……」
「ええ!? これこんなに古いんですか?」
「うん。でも一番古いのは300年以上前のがあるし、だからこれくらいは着ていってもいいかなって」
永原先生がサラリととんでもないことを言う。絶対永原先生の持ち物だけで鑑定番組1年は困ら無さそう。
あ、でも全部本物になっちゃうから緊張感がないか。
それにしても、永原先生という乱入者がいなければ、あたしも桂子ちゃんに対し、ある程度の余裕を持って優勝できたようにも思う。
永原先生に教師票をごっそり持っていかれた上、「興味本位」で入れる人も随分と多いからだ。
特に「TS病」と言う個性を消されたのは痛い。一般には知られていないが、教頭先生を倒すための謀略の一環として、既に学校中が永原先生の本当の年齢を知っている。誰かが言いふらすのも時間の問題という可能性もある。
あの時は救われたが、まさかこんなところでカウンターパンチを食らうとは思わなかった。
「それじゃあ、準備してください。私服審査が始まります」
守山会長の声とともに、昨日に引き続き舞台に上がる。
「さあ、みなさんお待ちかね、小谷学園ミスコンテストですよ! 果たしてミス小谷学園に輝くのは誰なのか? というわけで、本日は候補者の皆様に私服を着てもらいました!」
永原先生は着物で勝負をしてきた。でも容姿は大人っぽい。これはあたしの勝ちだと思う。
昨日と同様銀幕が上がる。
おお、昨日よりもずっと人は多くて、一般客の姿も多い。
「それではまず予選14位の
能登川明美と言われた少女がロングスカートをつまみながら一礼する。
拍手もまばらだ。観客の視線を見るとあたしにもそれなりにあるが、何より一人だけ和服の永原先生への視線が凄まじい。
前言撤回、着物にすることで目立つという永原先生の作戦勝ちだ。
そしてよく見ると、桂子ちゃんの私服もいつもよりかわいらしい。
落ち着いた青いワンピースのロングスカートでありながらお腹と胸にある赤いリボンと白いフリルで埋め尽くされたケープはとても少女チックでスカートも端だけは白いフリルになっている。
また髪にかけた赤色のカチューシャもささやかながらも強力に自己主張している。
肌の露出はミスコン参加者の中では一番少ないが、少女性という意味ではあたしのこの服とほぼ互角以上に戦えている。
「さあ、お待ちかね。次は予選第3位……まさかこの人が参戦してくるとは思わなかった……499歳の合法ロリこと、永原マキノちゃんです!!!」
守山会長の声が一際大きくなり、観客の歓声も凄まじくなる。
事実上三つ巴とはいえ、ちょっと露骨すぎる気もする。というか、昨日と同じ肩書きじゃないのよもー。
永原先生が数歩前に出ると、右手の番傘を広げ頭の上に広げると、一層の歓声が上がる。
「ありがとうございます!!! 永原せんせ……永原マキノちゃんに、大きな拍手をお願いします!!!」
歓声が一段落すると、守山会長が再びマイクを取る。今一瞬先生と言いかけた。
「さあ、次は予選第2位――」
桂子ちゃんが呼ばれ、前に出る。
スカートをつまみ、少し横に広げる。前後左右にちょっと揺らすが上下には揺らしていない。
よし、これはチャンスだ。
第1位のあたしが呼ばれると、やっぱり歓声はすごい。
他の子よりも更に半歩前に足を進める。
赤いスカートの裾を右手で摘むとあたしは上にちょっとだけたくし上げ、身体をやや右に傾けて、パンツギリギリまで脚を見せてからウインクをする。
あたしがウインクした瞬間、会場のボルテージが最高潮に達し、スカートから手を離すと思いっきり手を振り「みんなーありがとうー」と、大きな声を上げる。
歓声にかき消されてしまったためか、守山会長がマイクを貸してくれる。
「みんなーありがとうー!」
「うおおおおおおおおおおお!!!!!」
こうして、あたしたちは一旦退場し、休憩を挟む間に着替えをして、次の水着審査に入ることになった。