永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件 作:名無し野ハゲ豚
初めての経験
永原先生が、麻雀卓の所へと行く。
よく見ると先生たちだけではなく、生徒と先生が入り混じって麻雀をしている。
なんというか、小谷学園ってものすごいフリーダムな学校だと、改めて思う。
「先生と生徒で公然と麻雀する高校って、日本広しと言えども小谷学園だけだよね」
浩介くんが驚いた顔で言う。
「ふふっ、小谷学園は『他人に迷惑かけるな』っていう校則があるのよ」
「ああ、うん……」
「実はね、ここの創立者の先生はね、小谷学園は日本一、いや世界一校則が厳しい学校だと思っていたのよ」
「え!? 何かの冗談ですか!?」
あたしが驚く。だって、小谷学園はみんな日本有数の校則の緩い学校だと思っているのに、世界一厳しいって――
「あのね、『他人に迷惑をかけるな』というのは創立者自身も含め、とても難しいことよ。小谷学園はそんな難しい、大人でもできないような校則を高校生に掲げているのよ」
確かにそれはそうだけど……
「だからね、ここの創立者は、せめて他人に迷惑をかけない範囲なら最大限自由な学校にしなさいって言ったのよ」
なるほど。確かにこの後夜祭で麻雀したとして、賭博行為でもしない限りは他人の利益に対し、迷惑にはならない。
そもそもやっちゃいけないことのやっちゃいけない理由って、どれもこれも究極的には「他人に迷惑をかけるから」な気もしてきた。
「まあ、それもいまだとちょっと歪んじゃって、単純に他人に迷惑をかけてるようなものでも、校則がゆるくなっている一面も否定出来ないけどね」
まあそうはなるわよね。
「あ、でも、過度に気にするからいけないと思うのよ」
なるほどねえ。
「さ、麻雀を楽しみましょ」
「あ、あの……永原先生……」
「ん?」
「あたし、麻雀よく分からない」
「俺も分からん」
やったこと無いし。
「あーそうか、そうよね。じゃあ私がルールを説明するね……と言いたいんだけど……」
「え?」
「麻雀はルールが複雑だから……トランプしようか」
「うん、そうしよう」
あたしたちはトランプのエリアに進む。
「あ、優子ちゃん、篠原君、永原先生」
「こんばんは桂子ちゃん」
桂子ちゃんが恵美ちゃんや龍香ちゃんたちとトランプしていた。
何のゲームをしていたのかな?
「ここのトランプ空いてる?」
永原先生が桂子ちゃんに言う。
「うん空いてるよ」
「じゃあこれでババ抜きでもしようか」
永原先生の提案、ババ抜きはもちろん知っている。
「うん、そうしよう」
「賛成ー」
ジョーカーを1枚入れ、ババ抜きがスタート。53は素数なので何人でやっても何枚か余るようになっている。
浩介くんがトランプをよく切り、1枚1枚配っていく。
3人なので、まず同じ数字の組み合わせを探し、捨てていくことから始めていく。
どうやらあたしはジョーカーはない様子。
同じ数字の組み合わせはそれなりに多い。あっという間に減ってしまってババ抜きスタート。
「うーん、これっ」
まだ初手だし軽く考えて永原先生のカードを引く。これは……よし1組減らせた。
次に永原先生が浩介くんのカードを引く、どうやら一番カードが少ないからか、組み合わせはない模様。
そして浩介くんがあたしから見て一番右端のカードを1枚取っていく。
どうやら1組減らせたようだ。
「これかなあ……」
念のため、さっき永原先生が取ったカードは取らないようにする。
うーん、目的の数字じゃあないなあ。
再び永原先生が浩介くんからカードを引き、1組減らす。
そしてお互い数枚に減る。あたしはまだババを引いてない。
永原先生がカードを引き、浩介くんがちょっとだけ悔しそうな表情をする。
永原先生はまだカードが揃っていないにも関わらず、だ。
今まで殆ど気にしていなかったが、女の子になってから、相手の表情とか演技力というものを見破る能力が身についた気がする。
ともあれ、ババを持っているのは浩介くんであると推定し、それならば、永原先生のどのカードを引いても、ジョーカーにはならない。
「んー、これ! よしっ、やったわ!」
あたしが残り2枚になる。2枚は違う数字の組み合わせ。
浩介くんが1枚取る。それによって、浩介くんも残り3枚、永原先生も2枚であり、浩介くんがババを持っている可能性が勢い高まる。
「んーこれかなあ……」
うーんハズレみたいだ。一番乗りとはならない。
永原先生が浩介くんから1枚カードを引く。浩介くんがちょっとだけ残念そうな顔をする。
永原先生が1組あがる。
よし、あの2枚のどちらかがババのはず。
浩介くんがあたしから1枚を引く。すると1組2枚の数字が出てくる。
あたしは永原先生から1枚を取る。
もうポーカーフェイスにする必要はない、あたしはぱあっと明るくなった表情でそのトランプの数字を確認し、フィールドに出す。
「あたしの勝ちー!」
これであたしの1位抜け。結局ババは来なかった。
永原先生が残り1枚、浩介くんが2枚、浩介くんがババを持っているのが確定すると、浩介くんは背中の方でシャッフルし、2択に持っていく。
永原先生は左右に手を入れる。
「あらっ!」
永原先生が2枚の数字をあがる。
「うー、俺の負けかあ……」
浩介くんが残ったジョーカーを見せてくる。
「よし、もう一回やりましょう」
「おうっ! 次は負けねえぜ!」
こうして、あたしたちは3人で何回も何回もババ抜きをするのだが、浩介くんは1回も勝てない。特に最後の2桁に絞られると、浩介くんはほぼ負けてしまう。
何故かと言えば、浩介くんは表情がわかり易すぎるのだ。
「だー! また負けたー! くそーどうして!」
浩介くんが悔しがる。珍しい姿だ。
「だって、篠原君表情が分かりやすいんだもん」
「うんうん」
永原先生の言葉にあたしも同調する。
「うー、女の子って本当そういう所すごいよなあ」
「ふふっ、女はみんな女優なのよ」
永原先生が言う。
「え、でもさっきのは……まさかあれも演技とか?」
「永原先生! 極端なこと言わないでよ。好きでもない相手にキスなんかしないでしょ!」
しまった! 浩介くんに嫌われたくない一心で勢いで言ってしまったことに、口から言葉が出てから気付く。
「あら? 石山さんキスしたんだ」
「あぅあぅ……」
あたしはじゅうじゅうと顔が赤くなる。多分浩介くんも赤くなってると思う。
「うーん、女の子でも、やっぱり恋をしちゃうと演技なんてできないわね」
永原先生がしんみりという。
「そ、そうみたいだな」
「恋は女の子を変えるわよ。恋をするとね、女の子って本当にかわいくなるのよ」
「でも永原先生はもう300年以上恋をしてないのにきれいじゃないですか」
あたしがちょっと反論する。
「そうね、まあ……私も私で色々あるのよ。石山さんや木ノ本さんもそうだけど、私もそれなりに『元』がいいからね」
なんか先生が露骨に容姿の優劣語っていいのかなあと思ったりもしたけど、まあ、あたしを褒めてくれているんだし言わないでおこう。
「でも、篠原君は幸せものだね。こんなかわいい子の彼氏になれたんだよ」
「あ、うん……まあ、な……」
「でも、でもでも……あたしだって……こんなにかっこよくて責任感あって、強い男の子の彼女になれて嬉しかったよ!」
気持ちを込めて言う。
演技じゃない、本当の本心。
「はいはい、熱いのもいいけど、他のゲームしようか」
「あ、うん……」
いけないいけない、お祭りだからって油断しちゃいけない。
「えー、後夜祭は、後1時間で終了となります」
守山会長が拡声器でそう言う。1時間って結構長いけど、仕方ない。
ちなみに、後夜祭の下校時刻になっても、毎年何人かは更に2次会へと進んで、翌日まで遊び倒す人が出てくる。
「そう言えば、文化祭終わったらデートする約束だったよね浩介くん」
「あ、うん」
「明日明後日が土日の代わりだから、明後日にデートしよ」
「あ、そうだね、ちょうどハローウィンだっけ?」
「うんうん」
「ハローウィンかあ……優子ちゃんはどうするの? メイクとか?」
浩介くんが訪ねてくる。
「うーん、あたし、ああいうメイクはしたくないなあ……」
「えー? 意外と似合うと思うよー口裂けメイクとかさあ」
浩介くんが冗談交じりに言う。
「えー!? それは嫌よ、絶対イヤ! あたしは口裂け女なんかになりたくないわよ」
大慌てで否定する。ちょっと否定しすぎたかな?
でも、ああいうグロテスクなのが嫌なのは事実だ。
「あはは、うん。ゴメンゴメン。そうだよね、優子ちゃんはそういうことしなくてもかわいいもんね」
「もう……そういうことをナチュラルに言うんだから、怒れないよお……」
でも、そういう浩介くんの優しいところにも惚れたんだけど。
「まあともあれ、コスプレはやめようか」
「うん、そうしてくれる?」
「で、どういうデートにする?」
「うーん、ハローウィンは混んでるから……午後は浩介くんの家にお邪魔していい?」
「あ、いいよ。明後日は親父もお袋もいないから俺の家に来てくれるか?」
「うん」
初めて、浩介くんと家デートの約束。
しかも、二人っきりになる場所で、もしあんなことやこんなことをしても誰かに言われないということ。
恋人同士になったから、これまで以上に触れ合いが重要になる。
どうしよう?
あたしはいつぞやの時、龍香ちゃんのデートの服装のアドバイスのことを思い出す。
外では露出度の低く清楚な服を着て男の子の嫉妬心を抑えつつ、家の中では思いっきり露出度をあげてエロくする。
そうすると、龍香ちゃんの彼氏がそうだったように、独占欲を大いに満足させることが出来、露出度の高い服に対する性欲に忠実になる。
あたしも、夏の時にも浩介くんの性欲を垣間見たことがあったが、この文化祭でより強く、浩介くんの性欲を知ることが出来た。
昨日今日と、スカートをめくられ、パンツの中に手を入れられ、そしてさっきも押し倒された上にキスをして、胸を触られ、揉まれ、またスカートをめくられた。
でも、恋人同士になれば、きっと裸を見せることにもなる。
異性に裸を見られたことは、まだない。
「さあ、今度はUNOにしましょう」
永原先生の提案でUNOが始まる。
他にも桂子ちゃんや恵美ちゃん、高月くんや他の男子なんかも入り乱れてたくさんゲームをした。
あたしと浩介くんの関係が、正式に恋人同士になったことを指摘する人は居なかった。
やはり、周囲の認識ではとっくに恋人同士ということになっていた。
「では、これより、平成29年度小谷学園後夜祭を終了します! カードゲーム・ボードゲームは生徒会のものはこちらで回収しますので、そのまま置いておいてください。ただし、風で飛ばないように必ずケースに入れてください!」
守山会長の指示に従い、トランプとUNOを片付け、その場を後にする。
「じゃあ私、職員室に行くから、皆さんは気をつけて帰ってください」
「「「はーい」」」
浩介くんと教室で自分の荷物を整理していると、制服姿の永原先生がそう言う。本当にこれ、先生に見えないよなあ。
浩介くんと一緒に腕を絡めながら、夜の通学路を帰る。
天文部で下校時間まで居ることはあったので、これ事態は初めてじゃない。
「そういえば、浩介くんって」
「ん?」
「あたしが天文部の時、どうしていつも待ってくれてるの? さっきは筋トレしてるって言ってたけど……」
「ああ、鍛えているんだ」
「うん、それは分かってるけど、そんな感じで?」
「どんな感じって言われても……その名の通りだよ、一人で四股踏んだり腕立て伏せして鍛えたりしているんだ。やっぱ男として、鍛えて強くなるって楽しいんだ」
「そ、そうなの……」
半年近く前まで男だったのに、よく分からない。
「それにさ、林間学校の時や海の時にも分かったけど、優子ちゃんってナンパされやすいじゃん?」
「う、うん……」
「そいつらから優子ちゃんを守る……喧嘩に勝つためにも、やっぱり力をつけたいんだ俺」
「そ、そう……」
浩介くんの弛まない努力。
あたしを守るため。もう遠い昔に、浩介くんがあたしに……「優一」に復讐しようとして鍛えはじめたのに、今はこうして、か弱い女の子になったあたしを守るために力を振るってくれる。
浩介くんと楽しく話しながら、駅で別れる。
「また明後日、よろしくね」
「うん」
浩介くんと分かれ、家路につく。
「ただいまー」
「優子おかえりーどうだった?」
「うん、楽しかったよ」
「ご飯できてるから、着替えて休んだら食べに来てね」
「はーい」
あたしは制服を脱ぎ、下着姿になる。
全身で汗を書きまくっていたけど、もう乾いていた。
パジャマに着替えてご飯を食べる。
「今日は早めに風呂に入って早めに寝た方がいいわよ」
「はーい!」
母さんの宣告もあり、まず風呂に入り、髪の毛をいつもより入念に手入れする。
身体もいつもよりよく洗い、そしていつも以上に気をつけて湯船であったまる。
一個一個の所作が変わる。やはり、本当に恋人になると、色々なところで変化する。
自室に戻り、あたしは永原先生からもらった紙を開く。
よく分からないURL、怪しいと思いつつ、あたしはPCを立ち上げる。
念のために、部屋には鍵をかけておこう。
WEBブラウザを立ち上げ、URLを手入力する。
そして、考えもなしに、すぐにエンターキーを押す。
「!!!???」
あたしは硬直してしまう。
それは、「女性向け」と看板を掲げたアダルトサイトだった。
女性向けという名前の通り、男性向けとは違い、男性をメインに見せる場所だった。
あたしは一瞬の驚きの後、脳内麻薬が信じられない勢いで分泌していることに気付く。
「はぁ……はぁ……」
興奮してたまらない、あたしの股から、すごい勢いで、さっき濡らしたのと同じ液体が伝わる。
間違いなく、それはあたしの中の、女性としての「興奮」だった。
とりわけ、昨日今日は浩介くんと色々あったせいで、あたし自身性欲が高まっていた。
動画をクリックすると、男の人が、ふにゃふにゃな様子から一気に変わっていく様子を撮影した動画まであった。
見ちゃいけない、まだ18歳になっていない、浩介くん以外で興奮するのは良くないと思いつつも、どう頑張っても目が離せない。
悲しき女の性。でも、そうなったのも、あたしが本当の意味で女性になれたということでもある。
あたしは、PCから目をそらす。
もう一個、確認したいことがある。
模様替えの時にさえバレなかったエロ本の隠し場所。あたし自身、ほとんど存在そのものを忘れかけていた、ベッドの下に隠していた優一時代のエロ本。
もちろんこれは男性向けだから、男性中心に書かれている。
あたしはその中の一冊の、特に優一時代抜いていたシーンを思い出してページをめくってみる。
「うっ……」
それは女の子が無理矢理されているシーン。あたしは、それを見た瞬間、頭がクラクラした。
いや、もちろんあの時のように吐き気がするというわけではない。だけど、女の子を乱暴に犯す汚いおっさんというシチュエーションに、どうしようもない嫌悪感を覚えていた。
あたしはエロ本を、元の場所に戻し、冷静になる。
……そうか、もうあたしは、戻れない所まで来たんだ。ううん、やっと戻ることの出来ない場所まで、来ることができたんだ。
多分、もうあのエロ本を開くことはない。明日、燃えるゴミに出してしまおう。
PCに戻り、女性向けのエロサイトを見る。うん、こっちの方がはるかに落ち着く。
女性向けのエロ動画では、やはり男性をよく写す。あたしはもう、女の裸なんかよりもずっと、男の裸が好きになっていた。
ふと、あたしは浩介くんのことを思い出す。夏の海でのあのシーンだった。
ほんの一瞬の記憶だけど、それでもあたしの妄想を掻き立てるには十分だった。
「はぁ……はぁ……」
あたしは、PCを消し、ベッドに横たわる。
「浩介くん……浩介くん……」
浩介くんの名前を呼び、そして自分の体に触れる。触れば触るほど、あたしはますます気持ちよくなっていき、理性が崩れていく。
そしてあたしはついに、女の子として初めて「高み」に達したのだった。
余韻の中で感じた感情はなんだろう? 混沌としていてよく分からない。
だけど男の頃に感じていた快感とは、その高さも、長さも違っていて、ずっと高く長いものだった。
それは多分、直接的な肉体における喜びだけではない。
そう、あたしがもう、本能まで全て、女の子になったということに対する、言葉では言い表せない喜び。
TS病で倒れ、女の子になってから、ずっとずっと求めてきた心の女性化。それを達成できた瞬間だったから。
余韻に浸る中で、あたしの目から一筋の涙が溢れた。それは今までのどの涙よりも、喜びに満ちた涙だった。
ここから第五章ですが、主人公が女の子として成長してきたのでエロ回の割合も増えます。