永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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変化する優子

 文化祭の翌日、今日明日は文化祭で土日が潰れたための振替の休日になっている。

 

 「ピピピピッ」という目覚まし時計の音とともに朝起きて、昨日のことがまた蘇る。

 永原先生に「本当に心から女の子になれたと確信するまで決して見てはいけない」と言われた、URLの紙。

 そこにあったのは、「女性の性欲」を煽るためのエロサイトにつながっていた。そして、あたしはそこで、自分が女の子として、性的興奮を得られることを知った。

 幸いなことにあたしがまだ男だった頃に持っていた「男性向け」のエロ本が奇跡的に残っていたので、それと比較することが出来た。

 

 あの結果を見れば、明らかだった。

 もはや深い本能にも、あたしの中に「男」は残っていない。あたしは、ついに女の子として男のエロが好きになることができた。

 あたしは昨日、浩介くんと正式に恋人になり、そして女の子としての快楽を初めて味わった。

 この文化祭の2日間で何かが起きると思ったけど、それは本当だった。

 

 もちろん、そうは言っても浩介くんと正式に「交わる」のはもっと後の話だし、もしかしたらその時にまた拒絶信号が出てしまうかもしれないという不安もある。

 

 だけど、昨夜の快感は、永原先生があのサイトを教えてくれなければ、決して得られるものではなかった。そしてそれを見なければ、あたしは自分が本当の意味で女の子になりきったという確信も持てなかった。

 知識では女性のやり方も優一時代から知っていたけど、優子となってからも実際に体験したことはなかった。

 

 考えてみれば、あの時は殆ど本能的に気持ちいい場所を弄っていた。興奮しすぎて、完全に夢中になっていた。優一時代の知識を全く意識していなかった。

 多分、永原先生はそこまで見越して、あたしにあの紙を渡したんだと思う。

 

 でも、今思えばあの時母さんが入ってこなくて本当によかった。もし見られていたらあたしは恥ずかしいってもんじゃない。

 ともあれ、明日浩介くんとのデートもあるし今日は1日休み、朝風呂に入ろう。

 下着を含めた今日の服を持っていく。

 

 

 お風呂に入りながらも考える。

 自分の自覚できる範囲では、もう完全に男がなくなったあたしだけど、それでも時折出ることはあると、永原先生は言っていた。

 永原先生のように、例え480年間女の子を続けても、20年分の「男」はこれからも残り続けるという。

 それについては、もう割り切るしか無い。

 でも、今この段階になって、やっと浩介くんと恋人同士になれた、あのURLで、あたしはそれに不安は一切持たなくなった。

 

 浩介くんと恋人同士、このお風呂……浩介くんと入るのかなあ……

 浩介くんと2人で入ったらちょっと狭いかも……って何考えてるのよあたし。

 あたしはふと、視線を下に下ろす。

 巨大な2つの果実が目に入る。あたしのとっても大きなおっぱい。今まで、これで多くの男を惑わしてきた。

 街中を歩けば、多くの男性があたしの胸に視線を当てていた。

 

 浩介くんも、あたしの胸をよく見ていたし、またあの時には触られもした。

 身体、浩介くんのためにもう少しだけ洗おうかな? それとも洗い過ぎかな? そんなことを考えながら時間が過ぎる。

 今はもう、浩介くんのことばかり考える時間になっている。

 

 

 あたしはお風呂から上がり、身体を拭く。

 鏡の中に映る裸の女の子。今日は10月30日、来月始めには女の子になって半年になる。そう言えば女の子になったのは倒れた日なのか気付いた翌日なのかどっちなんだろう?

 好きな男の子が出来たのが7月の林間学校の時と考えると、本能まで女の子にすることがどれほどに大変だったかがわかる。本当にここまでこれて嬉しいわ。

 

 今日の服、本当は一日外出の予定がないからパジャマのままでもいいんだけど、いつも普段着に着替えているから今日もそうする。

 

 今日もかわいくミニのスカートを穿く。

 ともかく、日頃からかわいくしておかないと、いざデートの時に迷いすぎて、あるいは服装の引き出しの数が少なくなりすぎてダメになるということを、身をもって知っていた。

 やっぱり毎日オシャレを欠かさないことが、女子力アップに繋がると考えているからだ。

 

 

「母さんおはよう」

 

「あらおはよう。文化祭のミスコン、優勝おめでとう」

 

 やっぱりミスコンのことは話題になる。

 

「ありがとう、見てた?」

 

「うん、優子かわいいから絶対優勝すると思ってたけど、接戦になっててドキドキしたわね」

 

「あはは、永原先生の乱入が大きかったよ」

 

「あれは驚いたわ。私達も優子に投票したけど、本当ドキドキだったわね」

 

「うーん、桂子ちゃんとの直接対決だけなら負ける気はしなかったんだけどねえ――」

 

 あたしはちょっと自身を持っていう。

 

「お母さんはそうは思わないなあ」

 

 しかし、母さんから意外な言葉が出る。桂子ちゃんとあたしの1対1でも接戦になっていただろうというのだ。

 

「え!? どうして?」

 

「優子、いくらなんでもパフォーマンスで狙いすぎよ。彼氏、浩介くんだっけ? 嫉妬したんじゃないの?」

 

「あ、うん。でも嫉妬心はちゃんと鎮めたから」

 

「そう? どうやって?」

 

「あうっ、言いたくない」

 

 あたしは母さんと、ミスコンで優勝した後での反省会のようなことをしている。

 まさに、「勝って兜の緒を締めよ」ということわざの通りね。

 

「……そう、どうやって鎮めたかまでは聞かないわ」

 

「あ、うん。性行為とかじゃないから」

 

 一応あたしはまだ処女だ。

 

「……あらそう。でも男の子の性欲はいつまでも抑えられるものじゃないわよ」

 

「母さん、それはあたしも知ってるわよ」

 

 多分浩介くんだってずっとあたしとしたくてしたくてたまらないはずだわ。それこそ、単にしたいと言うだけじゃなくてあたしに子種を植えて子供産ませたいとさえ思っていても全く不思議じゃない。

 何せあたしはこんなにかわいくて胸の大きい女の子だし。

 

  ピピピピッ……ピピピピッ……

 

 おや、携帯電話がなってるわ。

 見るとメールだった。差出人は浩介くんだった。

 

「どうしたの優子? メール?」

 

「うん……」

 

 あたしが携帯電話のメールの画面を開く。

 

 

 題名:明日のデート

 本文:明日午後俺の家に来るって言ってたけど、午前中はどうするの?

 

 

「誰から?」

 

「浩介くんから……うーんと、明日のデートの午前の集合場所だって」

 

「あらあら、頑張ってね」

 

 母さんが応援してくれる。

 

「ありがとう……」

 

 あたしは考える、ゲームセンターでデートしていないことを思い出した。

 しかし、ゲームセンターについては以前桂子ちゃん、龍香ちゃんと女子3人で行った時のことを思い出してしまい、言い出すのも躊躇していたのだ。

 

「うーん……」

 

 浩介くんと今後デートする際に、ゲームセンターをいつまでも避けるというのもよくないと思うので、区役所近くのゲームセンターに行くということをメールに書く。

 あ、でも集合場所だから駅でいいかな。

 

 

 題名:Re:明日のデート

 本文:それじゃあ最初のデートで集合した駅でいいかな? ゲームセンターに行こうと思って。時間は午前10時でいい?

 

 

 この内容でひとまず送信してみる。

 

「優子の成長が嬉しいわ母さん。実はね、ちらっと二人を見たのよ」

 

「え!? どこで?」

 

「野球部に行くところが見えたのよ。男の子のこと、本当に好きになっていてお母さん嬉しいわ。それにあの子、結構かっこいいじゃない。」

 

「うん、浩介くんすごくかっこいいわよ」

 

「あら、どんな感じ?」

 

「えっと、それはその……とっても力持ちなのよ」

 

「うんうん、それで?」

 

「あ、あたしのこと、いつも守ってくれるし。海でナンパ男3人に襲われそうになったときにも守ってくれたし」

 

「へえ、そうなんだ。どんな感じだったの?」

 

「えっとね、3人相手に喧嘩して勝っちゃうくらい強いのよ」

 

「へえ、それは優子も惚れるわよねえ」

 

「うん、浩介くんかっこいいんだー」

 

 あたしは以前持っていた男らしさ、力の強さを、女の子になることで失った。

 もちろん、それは自分から積極的に捨てたもの。

 女の子になると、男にあったものの多くを無くすことになる。下半身のアレに興奮したのだって、究極的にはあたしにはもう無いものだから興奮してしまったんだ。

 だって、それ以前は自分のを見ても何とも思わなかったし、まだ優一だった去年の林間学校だって他の男子のを見ても、何とも思わなかった。

 

 失った途端求めるようになるというのも、おかしな話だけど、でも女の子に生まれ変わったんだもん。

 だったら、女の子としてそれが好きなのって普通のことじゃない。

 あたしはそう自分に言い聞かせていた。

 

  ピピピピッ……ピピピピッ……

 

 お、浩介くんから返信かな?

 

 

 題名:Re:Re:明日のデート

 本文:うん、それでいいよ。明日楽しみにしている。それじゃあまた明日

 

 

 うん、浩介くんと約束できた。

 

「浩介くんから?」

 

「あ、うん」

 

「何だって?」

 

「午前10時、区役所の駅前だって」

 

「よかったわね。頑張りなさい」

 

「うん」

 

「さて、それじゃあ朝ごはん作るわよ。優子も手伝ってね」

 

「はーい!」

 

 休みの日に行う母さんの家事手伝いは、今も続いている。

 

「さ、今度からはもう少し高度な家事も手伝ってもらうわよ」

 

「え?」

 

「優子にも彼氏ができたでしょ? 家庭的になって、浩介くんを支えなさい」

 

「うん、そうだよね……」

 

 あたしは浩介くんに守られっぱなしだし、せめて家事をちゃんと出来るようになって、少しでも浩介くんに恩返ししなきゃ。

 今までも家庭的だって言われてたけど、母さんに比べればあたしはまだまだひよっこのレベル。

 

 浩介くんに好かれるためにも、浩介くんが出来ない家事をちゃんと出来るようになりたい。

 家庭的な女の子が嫌いな男なんていないし、将来の結婚とか考えれば出来ないのは評価を大きく下げてしまう。将来嫌でも身につけるなんてそういう体たらくは絶対ダメだ。ましてやあたしは、浩介くんに守られっぱなし。いくら浩介くんでも、いくらあたしでも、片務的な関係が続くのは絶対に避けたい。

 

 朝食はいつものように、昨日の夜の残りとご飯に味噌汁となっている。

 あたしはラップに包んだ昨日の残りを冷蔵庫から取り出し、3つの皿に分けて電子レンジでチンをする。

 

 その間に、母さんがお米を炊いてくれるから、あたしが味噌汁作りに入る。

 うん、大分連携が取れている。

 

「将来的には、優子に朝昼晩と全部作ってもらうこともあるわ」

 

「え!?」

 

「お母さんは何もしないで、優子に掃除洗濯も含めて家事を全部やってもらうのよ」

 

「ちょ、ちょっとそれって――」

 

「優子が将来お嫁さんになった時、お母さんはついてこないわよ。旦那さん……浩介くんに手伝ってもらうなとは言わないけど、浩介くんの仕事の忙しさも考えたら、一人でこなせるようにならないとダメよ」

 

 うー、やっぱり母さんの言うことは正論だ。というよりも、あたしも母さんも、もう結婚相手が浩介くんという前提になっている。早まり過ぎかな? という脳内の疑問をすぐに捨て去る。

 

 ともあれ、朝食を作り終わり、父さんと3人で食べて自室に戻る。

 今日は燃えるゴミの回収日、昨日のエロ本をこっそり捨てに行く。うん、見られなくてよかった。

 

 もう一度自室に戻り、PCを開く。そして昨日のエロサイトのことを思い出す。

 でも、浩介くん以外ので興奮することに罪悪感があり、開くことができなかった。

 

 また昨日のことを思い出してしまう。

 やっぱり、大きな体験だった。またしたい、快感に溺れたいと思ってしまう。

 でも、母さんに呼ばれたらどうしよう?

 

 感情と理性のせめぎあい。そこはもう、男と何も変わらない。

 

 

 適当にゲームをしながら考える。ゲームのスキルはもう、男性の頃と変わらない。

 でも以前より、ゲームをする時間も減った。

 代わりに増えたのがお人形さん遊び。

 休みの日にちょくちょく買っている女の子のおもちゃ。小さなおままごとセットと合わせたため、いつの間にかテレビの下ではスペースが足りなくなり、家で眠っていた折りたたみの机を引っ張り出してそこにお人形さんとおままごとセットを置いている。

 おままごとセットは自分で遊ぶというより、お人形さんたちが使っているというイメージ。おままごとしなくても本当の料理をしているから。

 

 このおままごとセットを買う時に、母さんは「いくらなんでも子供っぽすぎる」と言ってきたけど、あたしは「それでもやりたい」と言った。

 あたしは人生の最初の16年を男として過ごした。でも、これから女の子として生きる上で、やっぱり女児の遊びも体験したいと思ったからだ。

 それはかつてあたしが男だったがために、幼女だった頃のないあたしが、それを取り戻したいという感情。

 

 あたしは、おままごと遊びもそこそこに、気分転換に明日のデートについて考える。

 

「どうしようかな、明日の服装……」

 

 浩介くんとのデート、それまでは「友達」という関係での前倒しのようなデートだった。

 これからするデートはあたしと浩介くんが「彼氏彼女」としてのデートということになる。

 しかも、浩介くんの家に入り二人っきりになるということ。更に一歩進むことは容易に想像できる。

 

 箪笥を開ける。

 ちょっと服を考える。

 すると奥に、白い膝丈下のロングスカートのワンピースが目に入る。

 ちょっと出して、鏡の前で合わせてみる。

 ……うん、これでいいわね。

 

 そしてもう一つ、箪笥の一番奥に眠っていた服、最初の服選びの時に母さんに強引に着せられて以来、着ていなかった服だ。

 

 昼食まで時間があるし、ちょっともう一回試着してみよう。

 

 あたしは服を脱ぎ、下着姿になると、まず上の方から。ノースリーブの短いTシャツで、胸元も空いている。更にへそ出しは今の季節だとかなり寒く、お腹が冷えてしまいそう。

 次に、夏の水着と同じくらいの青い超ミニのフレアスカートを穿く。

 女の子初日以来に着た、露出が極めて高い服。

 

「……」

 

 あうあう、心もとなさ過ぎる。

 試しにちょっとだけターンする。

 

 ちらりとパンツが見えてしまう。スカート丈がちょうどパンツと同じくらいの短さで、特に何もしなくても、自然に歩くだけでちらちら見えてしまう。

 それどころかへそ出しに加え胸元もとてもギリギリのデザインになっている。

 

 この服は、浩介くんと二人っきりの時専用。

 あたしは、あの時は絶対に着ることはないと言ったけど、母さんは「『いざ』というときに使いなさい」と言っていた。

 まさか本当に、その時が来てしまうとは思っても居なかった。

 

 浩介くんがあたしのこの服で興奮するんだと思うと、あたしまで興奮してしまう。

 もう一度、鏡の中のあたしを見る。ものすごく露出度が高くてエロい。

 

 誰も居ないのに、着ている自分を見るだけで恥ずかしくなってしまう。

 あたしは、試着もそこそこに、もう一度普段着に戻り、白いワンピースとともに箪笥に戻すと、ベッドに横になる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 浩介くん、あの服で誘惑できるかな?

 うん、きっと大丈夫。人前であの服はダメだけど、家の中で二人っきりなら、きっと喜んでくれるはずだから。

 

「優子ーお昼手伝ってー!」

 

「はーい!」

 

 あたしはまず、母さんにこの事を秘密にしつつ、お休みの日の家事手伝いを再開した。


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