永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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体育祭 中編

 人気の少ない校舎の中を、浩介くんは登っていく。

 明らかに屋上を目指している。

 

「浩介くん、屋上?」

 

「うん」

 

 浩介くんに聞くと、やっぱり屋上だった。

 浩介くんは、責任は取りたいとしていたものの、やっぱり男の子だから、あたしに対してどうしても性欲が湧くことはある。

 

 多分今回もそんな類。昔のようにブルマというわけではないのだが、それでもやはり制服と違って、胸が強調され、時に揺れることもある体操着は浩介くんにとっても興奮の対象になる。

 あたしの魅力、そこに胸が含まれていることは否定できない。

 

 屋上のドアが閉まる音がする。人気のない屋上で浩介くんと2人っきりになる。

 

「んっ……」

 

 あたしは顔を少し上に上げて目を閉じる。キスしてのおねだり。

 浩介くんが興奮すると、あたしも興奮しちゃう。

 

 肩の後ろに浩介くんの腕が添えられる。

 

「ちゅっ……」

 

 唇が触れ合うと、あたしは口を開けて舌を浩介くんの唇に付ける。

 浩介くんは優しく唇を開けてくれる。

 

「んんっ……じゅるっ……」

 

 舌の絡む感覚がどうしようもないくらいに気持ちいい。

 浩介くんのもう一方の腕が徐々に下に行く。

 

「んんっ……んーーー!?」

 

 お尻を触られてビクッとなる。

 それでも舌を絡め続ける。

 

「ぷはっ……」

 

 どちらともなく口を離すと、唾液の糸が広がりぷつりと切れる。

 

「もっと……もっとお……」

 

「うん……分かった……」

 

「うん……ちゅぅ……じゅるるっ……」

 

 あたしがおねだりすると、浩介くんがまたキスをする。

 そしてゆっくりと、あたしは体操着の中に手を入れられて、パンツの上からお尻を不規則に円を描きながら撫でられ続ける。

 更にもう一方の肩を添えていた手が横に伸び、後ろから揉まれているような感覚に襲われる。

 

「んっ……んんっ……」

 

 それでも、そこまで深刻にしつこいことはしてこないのが浩介くん。

 浩介くんは「責任を取る」ということで、多分に自重をしてくれている。そのお陰で、あたしも興奮しすぎて汗だくになってしまっていることも、浩介くんに悟られたことはまだない。

 

 でも、浩介くんだってあたしだって、本当はもっと深い関係になりたいと思っている。

 腰を引っ込める浩介くんに、あたしがちょっとだけ仕返しをする。

 

 浩介くんの腰に手をやって、より深く、浩介くんの硬い胸板に接触する。

 

「ちゅっ……んぁ……じゅる……」

 

 ディープキスが続く中で、すっかりたくましくなった浩介くんの感触がたまらない。

 恋人として、最高に幸せな時間。

 

「ぷはぁ……」

 

「はぁ……はぁ……」

 

 やがて呼吸が続かなくなり、もう一度唇を離す。

 

「浩介くん、あたし……」

 

「ほら、お尻をこっちに向けてごらん?」

 

 浩介くんが優しく言う。あたしは屋上のフェンスに手をやって浩介くんにお尻を向ける。

 

「えいっ!」

 

  ぷにっ

 

「きゃあ!」

 

 てっきりお尻を触られるのかと思っていたのに、浩介くんに後ろから両胸を揉まれてびっくりしてしまう。

 

「優子ちゃん、今の声……すごくかわいいよ」

 

「か、かわいい? うん、ありがとう」

 

 体温が上昇し、全身からはどんどんと汗が流れていく。

 あたしは浩介くんに染め上げられて、浩介くんが居ないと何も出来ないんじゃないかと思ってしまう。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 浩介くんが必死に性欲と戦っている。

 あたしには、浩介くんの理性が負けることを祈らずにはいられない。

 あたしはもう、とっくに理性が負けるようになってしまった。えっちな子だって嫌われるかもしれないという恐怖はない。

 なぜなら浩介くんにだけ見せる、浩介くん専用の女の子だから。

 

 でも今日も、そういうことはなかった。だから終わる時だけ、ちょっとだけ不満が残る。

 

 

「浩介くん、そろそろ行こうか……」

 

「あ、うんそうだね。俺もお腹すいた」

 

 あまり長居しすぎるのも良くない。

 あたしは浩介くんと手をつなぎながら食堂に来る。

 

 あたしも浩介くんも頼んだのはカレー。浩介くんは大盛りだけど、午後も動くことを鑑みて、あたしは普通のサイズにする。

 

 食堂のおばちゃんからは「あらまあいちゃいちゃしちゃって」と言われてしまった。

 周囲からも、すっかりあたしと浩介くんのカップルは有名になっている。

 同じカレー同士なので、ここでも「あーん」はしていない。いつかしてみたいと思いつつも、中々機会は巡ってこない。

 

 あたしたちは、午後の体育祭に向け、再び元の持ち場に戻る。

 

  ブー! ブー! ブー!

 

 あれ? また携帯が鳴っている。

 

 あたしが見てみると、それは副会長の比良さんからだった。

 

 題名:塩津幸子さんの件

 本文:比良です。殆ど諦めかけていた中での挽回劇は素晴らしかったですが、予断を許さない状況です。

 余呉さんの方でお母様の方に忠告をしたのですが、反応が芳しくないということでした。どうしても、幸子さんをかわいそうに思ってしまうといいます。

 このままでは、お母様が「幸子さんのため」という名目で、男物の服を元に戻してしまうのは時間の問題と思われます。どのようにすればいいでしょうか?

 

 

 うーん困った。

 

「優子ちゃん、どうしたんだ?」

 

「ああ、うん。比良さんから」

 

 あたしが浩介くんにメールを見せる。

 

「ふう、やっぱり良心を捨てさせるって難しいなあ」

 

 浩介くんが何の気なしにつぶやく。

 

「うん、あれだけひどく乱暴だった優一の頃のあたしでさえ、高月くんや浩介くんの良心を消すことはできなかったもの」

 

 そしてそれは、教頭先生や小野先生と同じ、永原先生がかつて言っていた「偽善」との戦いでもあるのだ。

 

「そう……だな……」

 

 でも本当に困った、お母さんが服を隠すのをやめてしまうのは本当にまずい。

 かと言って、処分させるのも後のカリキュラムで支障が出てしまうから、最後の手段にしたい。

 

「なあ優子ちゃん」

 

「ん?」

 

「お父さんと弟の徹さんに、別の場所に隠させるっていうのはどうだ?」

 

 浩介くんが提案してくる。

 だけどそれにはあたしの懸念が一つある。

 

「あ、うん。でもどうしよう? 徹さんとお父さんも同じ気持ちだったら? あるいは隠し場所がお母さんに漏れたら――」

 

 もし同じ気持ちだったりあるいは別の隠し場所がバレてしまえば一巻の終わりだ。

 特に別の隠し場所がバレれば、偽善に囚われた幸子さんのお母さんはますます頑なになるだろう。

 

「まずはそこの確認だな。それで、もし協力してくれると言うなら……密告の奨励しかないな」

 

 浩介くんが何やら物騒なことを言う。

 

「え!? 密告奨励?」

 

 密告奨励って、あの赤い北の国とかでよく行われているあれだよね?

 

「ああ、要するに服の隠し場所を漏らしたことを俺たちに密告すれば報酬を与えるということにするんだ」

 

「うーん、でもどういう報酬?」

 

「そこなんだよなあ……」

 

 あたしの胸が一瞬思い浮かんだがすぐに却下する。

 具体的な報酬と言われても、協会から何かできることなんてそうそうない。

 結局考え抜いた末、これは却下することにした。

 

「……仕方ないわ。服に関しては協会本部に預けるよう進言してみる」

 

 とすれば、隠しておいた男物の服を元に戻させないために必要なことは、服そのものの物理的な排除しかないという結論になる。

 塩津さんの家から協会本部までは新幹線の速達便でも1時間以上かかる距離にある。おいそれと取りにいける距離ではない。

 

「ほう」

 

「カリキュラムの時に返却することにするわ。お母さんは通さないで、徹さんを通してやってみるわ」

 

「……なるほど、それしかないかな」

 

「うん、それでやってみる」

 

 題名:Re:塩津幸子さんの件

 本文:男物の服についてですが、お母様を通さずに協会の方で預けることは出来ないでしょうか?

 また、徹さんやお父様に協力して、お母様が不穏な行動を取らないか見張るようにする他ないと見受けられます。

 多少強引なやり方ではありますが、自殺への道に戻るよりは遥かにマシな状況であると思います。

 

 あたしはこの文章をを比良さんに送信する。

 

 送信完了を確認してから、程なくしてもう一度携帯が鳴り「分かりました、そのように調整します」という返信が戻ってくる。

 

 

「浩介くん、あたし、近いうちにもう一度幸子さんと会わないといけないかも」

 

「え? どういうこと?」

 

「もちろん、幸子さんのことよ。少し別の方法でショック療法をしてみるわ」

 

 比良さんの返信を待っている間、あたしは一つ、秘策を思いついた。

 それは幸子さんとあたしで、温泉に行く計画。

 押してダメなら引いてみる。

 女子風呂に入らせることで、まだ全然女の子になれていない幸子さんはかなり緊張するはず。

 しかし、幸子さんだって精神的なやつれがあるだけで、ちゃんとすれば美人になるはずだし、まずは裸の付き合いをしてみることにしよう。

 ともあれ、手段を選んでいる時間はもうない。何が何でも幸子さんに、女の子の生活も悪くない、男はもう無理なんだから女としての幸せを見つけたいと思わせないといけない。

 そういう意味で、女心が不十分な幸子さんには、女子風呂は魅力的な話だ。

 別にどうにも思わないなら精神が女の子になっていると指摘し、恥ずかしくて嫌というなら「せっかくだしあたしの裸も見たくないの?」と、あえて「男」に訴えかけてもいいだろう。

 

「どんなショック療法だ?」

 

「うん、お風呂にでも一緒に入ろうと思って」

 

「な!? お、おい!」

 

 浩介くんが動揺して大きな声を出す。

 

「おいって……別におかしくないじゃん、女の子同士だし」

 

 あたしが「当然でしょ?」という感じで言う。

 

「うっ……むむむむっ……」

 

「幸子さんは女の子だよ。それを認めてあげないのは可哀想だと思うけど」

 

 そう、TS病患者に必要なのは、どういう状況であれ、一人の女性として扱うこと。

 だから、幸子さんも女の子として扱ってあげなきゃいけない。

 それはあたしだって同じ。TS病で過去男だったかということは関係ない。大事なのは今女の子だということなんだから。

 それは永原先生も、あたしも、幸子さんも、比良さんや余呉さんだって同じ。

 

「でもよお、何か優子ちゃんと同じに思えねえんだよなあ……」

 

 浩介くんが言う。

 

「それでも、それでもこの病気になったら、そうしてあげるしかないのよ。それが出来なければ……死んでしまうわ」

 

「そうなんだよなあ……」

 

 浩介くんも理屈ではわかっているから納得するしか無い。

 

「そう、本当はこの問題は難しい問題じゃないのよ。ただ機械的に、今の自分の性別と同じ扱いをすればいいだけの話」

 

「だけど、そうやって割り切れないのも人間ってわけか」

 

「そうよねえ……」

 

 あたしと浩介くんがしみじみと言う。

 

 

 体育祭の昼休みは過ぎていく。

 守山会長が「午後の競技開始」を宣言する。

 保護者席には母さんの姿は相変わらず見えない。もしかしたら来ていないのかも?

 

 午後最初の競技は1年生から3年生までで行う学年別100メートル走。

 今年はくじ引きで2年生からということになり、浩介くんが最初のレースに出場する。

 

「第一レーン、篠原浩介――」

 

「浩介くーん!!! 頑張ってーーーーー!!!」

 

 あたしが先程の大玉転がしと同じように声援を送る。

 

「いちについて、よーい!」

 

  パンッ!

 

 永原先生の掛け声と、おもちゃの銃声によって、走者が一斉にスタートする。

 

「うおりゃああああ!!!!!」

 

「キャーーーーー!!! 浩介くーん!!!」

 

「はぁ……はぁ……」

 

 浩介くんは一気に加速して他の走者を引き離すが、50メートルを過ぎたあたりで徐々に失速していき、終盤に1人に追い抜かれて2位となってしまった。

 幸い、1位の人と同じ紅組だから得点には影響がないけど、ちょっと悔しい気がする。

 

「ぜぇぜぇ……はぁ……はぁ……」

 

 浩介くんが息も絶え絶えに戻ってくる。あたし、全力疾走だと50メートル持たないことを考えると、100メートルって結構大変だ。

 

「浩介くん惜しかったね」

 

「はぁ……はぁ……仕方……ないよ……はぁ……はぁ……あいつ陸上部だし……」

 

 うーんそれなら仕方ないよね。

 さすがに浩介くんと言っても、専門の運動部員にはかなわない。小谷学園は弱小だけど。

 

 次の2年生のレース、今度は白組の圧勝、とは言え100メートルは出場者数も多いから、レース一回あたりの点数配分はそこまで多くない。

 

 

 何回かレースをし、2年生のレースが終わると、続いて1年生が走る。学年ごとに複数のレースがあるし、更に男子女子とあるので、結構この100メートル走は長丁場になっている。

 昔はクラス全員参加だったが、さすがに時間がかかることや、極端に遅い子がさらし者になって可哀想ということで、今の出場枠に落ち着いている。

 体育嫌いにしないための配慮が、小谷学園には行き届いているのだ。

 

 あたしは浩介くんの水筒を開けて水を注ぐ。

 

「はい、浩介くん」

 

「あ、ありがとう……」

 

「ふふっ、口移ししたい?」

 

 あたしが何の気なしに言うと、浩介くんが一気に顔を真っ赤にする。

 

「おまっ! そ、そんなこと言うなよ!」

 

「あははごめん。うん、1人で飲めるよね?」

 

「当たり前だろ」

 

 照れ隠しに浩介くんが水を一気に飲む。

 

「もう一杯いる?」

 

「ああいや、大丈夫だ。それよりも優子ちゃんも玉入れの準備しとけよ」

 

「あ、うん」

 

 1年生のレースが続いている。

 3年生のレースも終われば次はあたしが出る予定の玉入れ競争だ。

 

 その後は浩介くんがラストの騎馬戦に入るまで時間に余裕ができる。

 ともあれあたしは、玉入れの準備のため、ウォーミングアップに勤しむことになる。

 

「浩介くん、ウォーミング・アップ手伝って?」

 

 さっき浩介くんがしていたウォーミング・アップを見て、あたしもしてみたくなる。

 

「ああ、優子ちゃんは軽い柔軟運動だけで十分だよ」

 

「ああ、やっぱり?」

 

「うん、ウォーミングアップで疲れたら本末転倒だもの」

 

 浩介くんが当たり前のことを言う。

 

「むしろ優子ちゃんの場合、普段の体育の準備運動は多すぎるくらいだよ」

 

 確かに浩介くんの言う通り。体育の授業では、準備運動でヘトヘトになってしまうことも多い。

 

「普段の体育の準備運動の半分を意識してみて。ちょっとだけ柔軟体操する感じで」

 

「うん」

 

 柔軟性だけは、唯一あたしが「優一」に勝っている分野。

 体をほぐす目的で、腹筋や背筋は一切しない。

 球を拾って籠に入れる競争なので、脚と肩を重点的に行う。

 特に肩こりは浩介くんにも手伝ってもらう。

 

「優子ちゃん、相変わらず肩こりひどいね」

 

「うん、やっぱりこれ、肩への負担が凄いのよ」

 

 あたしが胸を見ながら言う。

 

「小さくしたい?」

 

「それは絶対嫌よ」

 

 なんだかんだであたしの女の子らしさの象徴だし。

 それに浩介くんもよく胸を揉んでるし、他の女の子からも羨ましがられるから、このままにしておきたい。

 

「じゃあそろそろ行ってくるね」

 

 あたしが校庭へと出る。

 いよいよ、玉入れ競争の始まりだ。




うん、またエロ回なんだ。書いてて楽しいので今後もちょくちょく挟んでいきます(笑)

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