永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

151 / 555
クリスマスの日

「んー」

 

 今日はクリスマス、今は目覚まし時計を鳴らしていない。緊急会合は夕方から、十分間に合う。

 自然と目を覚ます。隣では浩介くんが寝ている。

 

 もう少し、このままで居たい。

 意識がはっきりしてきた、自然と動いたら左手が浩介くんの手と触れたのに気付く。

 こんなに近くで寝ているもんね。

 

 何分経っただろう?

 隣の浩介くんがゆっくりと動き始めた。

 

「んっ……あれ?」

 

こうふふぇふぅん(浩介くん)、起きた?」

 

「あ、うん……」

 

 あたしも浩介くんもちょっと寝ぼけている。

 だけど会話するだけで意識は急にはっきりしてくる。

 

「なあ、優子ちゃん……」

 

「どうしたの? 浩介くん」

 

「その……メ、メリークリスマス」

 

「うん、メリークリスマスだね」

 

 あたしは自然と笑みがこぼれる。

 あたしと浩介くんで迎える、初めてのクリスマス、それを初めての添い寝で迎えられたのは本当に幸せなこと。

 

 

「さ、起きるかな」

 

 浩介くんがそう言うと、あたしは自分のパジャマのことに気付いた。

 

「あ、ちょっと待って!」

 

 ワンピースタイプのパジャマが寝てる間にべロットめくれてて浩介くんが思いっきり起きたら間違いなくパンツを晒してしまう。

 何回ももう晒しているけど晒す度に恥ずかしい思いが増幅する。多分、浩介くんをより深く好きになっているせい。

 

「そう? じゃあもう少しこうしていようか」

 

「え、うん……」

 

 浩介くんがちょっとだけ誤解してるけど、まあどっちでも同じ。

 ともあれ、この好機を逃してはいけない。スカートを見えないように直して……

 

「きゃあ!」

 

 浩介くんが手を動かした拍子であたしの脚を触ってくる。

 全く想定していなくてあたしも悲鳴を上げてしまう。

 

「お、おわっ……ご、ごめん……」

 

 あたしの悲鳴に驚いた浩介くんだが、手は離してくれない。

 あたしの手が金縛りのように動かなくなってしまう。それは理性が負けてるせい。

 

「う、うん……その……」

 

「ごくっ……」

 

 浩介くんが唾を飲み込むと、手がゆっくり上の方に上がっていく。

 

「ちょ、ちょっと浩介くん、そ、そっちはだ――」

 

「なあ、男の子は朝とっても興奮しているって、優子ちゃん知ってる?」

 

 浩介くんがまるで何も知らない女の子に語りかけるように言う。

 

「あ、当たり前でしょ……あたしだって男だったんだから!」

 

「少しだけ、少しだけだから……」

 

「う、うん……」

 

 あたしも昨日、ミニスカートで誘うような感じだったし、今だってこのパジャマにしたのも、浩介くんにいつ襲われてもいいようにしていたから。

 だから本望だったとは言え、布団で隠れてても、やっぱり恥ずかしい。

 

「ひゃぁうっ……!」

 

 浩介くんの手で身体を優しく触られた瞬間、あたしは体をビクッとさせてえっちな声を出す。

 

「んあっ……あっ……やっ……もぉ、すけべぇ……」

 

 浩介くんに、好き勝手に全身を弄られてあたしの興奮度も高まる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「優子ちゃん、もう興奮してる?」

 

 浩介くんがとぼけたように聞いてくる。

 

「もう、当たり前でしょ……あっ……好きな人に……こんなにされて……あぁっ!!」

 

 興奮のあまり、いくら抑えなきゃと思っても、どうしても声が出てしまう。

 布団に覆いかぶさって、直接見えないのがまた、中の想像力を掻き立ててしまう。

 

「浩介くん……好きぃ……」

 

「俺も……優子ちゃんが好き……」

 

「んっ……」

 

  ちゅっ

 

 お互いの名前を呼びあい、自然と唇が重なり合う。

 

「ねえ浩介くん……」

 

「ん?」

 

「愛してる……」

 

「う、うん……俺も……」

 

 話している間にも、浩介くんはあたしの全身をいじる手を止めてくれない。あたしは時折、耐え切れずに喘ぎ声を出してしまう。

 

「優子ちゃん、すげえかわいいよ……!」

 

「うん、ありがとう……んっ……!」

 

「はぁ……はぁ……な、なあ優子ちゃん」

 

「ん?」

 

「悪いけど、先に起きてくれないか? その……!」

 

「ああうん、でもあたしも着替えなきゃ」

 

「いやその……生着替え、見せてくれる?」

 

「ふふ、嫌よ」

 

 あたしは浩介くんの要望を拒否する。

 

「な、何で?」

 

「何でってあたし、朝は下着も全部取り換えるのよ。浩介くんに見せるのは恥ずかしくて嫌だし、そういう気持ちを忘れたら長続きしないわよ」

 

 あたしがちょっとだけたしなめるように言う。あんまり堂々としすぎたら女として失格だ。

 

「ああうん、そ、そうだよな……悪い」

 

「じゃああたし、先に部屋を出てるから」

 

「うん、俺、ちょっと遅くなる」

 

 つまり、抜きたいということ。

 

「分かったわ、あたしも、ちょっと遅くなるね」

 

 あたしはパジャマのスカートを戻し、布団を剥いでゆっくりと立ち上がり、部屋を出る。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 向かった先は普段両親が寝ている部屋。

 あたし、もう、我慢できない!

 

「浩介くん……浩介くん……」

 

 寒さも忘れるほどに体が熱くなる。

 あたしは昨日のこと、今日のことを思い出す。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁはぁはぁ……」

 

 絶頂の余韻で息も荒くなる。すればするほど、快感が高まっていく。

 

 浩介くんは責任を取りたいから、高校卒業まで待って欲しいと言った。

 あたしも、そのくらいの理性はあるけど……どうしても、体が言うことを聞いてくれない。

 

 もうとっくにえっちな子だと思われてはいるだろうけど、理性で制御できないでいると、愛想を尽かされないか心配になってしまう。

 

「そうだ、着替えなきゃ……」

 

 服を整えて、リビングも暖房をつけてから部屋の前に戻る。

 そういえば、浩介くんはどうしているかな?

 

  コンコン!

 

「入っていいぞー!」

 

 浩介くんの声がする。

 

  ガチャ

 

 そこには私服姿の浩介くんがいた。

 

「じゃああたし、着替えるわね。リビング暖房しているわ。ふふっ、覗かないでね」

 

「お、おう……!」

 

 浩介くんが部屋を出る。

 あたしは部屋の鍵をかけて箪笥へと向かう。

 そしてまず下着ごと脱ぐ。すっぽんぽんには毎朝なっているけど、今日はもう、すっぽんぽんになるだけで、浩介くんに覗かれている気がする。

 

 あたしは緑色のプリーツミニを手に取る。

 制服と同じくらいの長さ。上の方も、明るめの色で決める。

 

 今日はクリスマス。浩介くんは何をプレゼントしてくれるんだろう?

 あたしは浩介くんへの赤い箱とリボンで包んだクリスマスプレゼントを手に取りリビングへと向かう。

 

「お待たせー!」

 

「おはよう優子ちゃん」

 

 浩介くんはテレビを見ている。相変わらず不老研究のニュースばかり流している。さすがに飽きられていると思うのに。

 

 

「お、それが優子ちゃんのクリスマスプレゼントか?」

 

「うん、そうだよ。浩介くんのは?」

 

「ああうん、これ……」

 

 浩介くんがあたしと同じように近くに置いてあったプレゼント箱を持つ。

 

「交換しよう?」

 

「うん!」

 

 あたしは浩介くんに、浩介くんがあたしにプレゼント箱を渡す。

 受け取った限りではあたしのより軽い。

 

「開けるわね」

 

「おう」

 

 あたしは浩介くんの箱をゆっくりと開けてみる。

 中身はお魚さんのぬいぐるみだった。

 

「うわーお魚さんだーかわいー!」

 

 浩介くんからのプレゼントってだけで嬉しいのに愛らしいお魚さんのぬいぐるみとあって嬉しさは増す。

 陸の生き物だけだったあたしのぬいぐるみさんに可愛らしい仲間が加わった。

 

「お、これ、小型マッサージ機?」

 

 浩介くんがあたしのプレゼントをいろいろな角度から見ている。

 

「うん、浩介くんがトレーニング終わった後にリフレッシュできたらいいなって思って買ったの」

 

「へー、いいじゃん! ありがとう!」

 

 浩介くんが嬉しそうな顔で微笑みながらお礼を言う。

 クリスマスプレゼントの失敗はかなりショックになるだけに、お互いに成功してよかったわね。

 

 あたしはさっそく自室に戻ってお魚さんのぬいぐるみさんを、既にあるぬいぐるみさんと一緒に置く。

 

「優子ちゃん、喜んでくれてよかった」

 

「うん、でもどうしてこれを? あたしはほら、浩介くんが鍛えているのを見てきたからだけど……」

 

「他の女子との会話でさ、ぬいぐるみの話題をしてたから、優子ちゃんは子供っぽい遊びが好きって感じだったし」

 

 浩介くんが言う。確かに子供っぽいけどやめられない。お人形さんとぬいぐるみさんがかわいくて仕方ない。

 

「う、うん……」

 

「優子ちゃんが女の子っぽいの好きなのはわかってたけど、どうして? 部屋を見たらおままごとセットとか小学生の女の子向けアニメのグッズまであったしさ」

 

 浩介くんになら、気持ちを話してもいい。いや、話さないといけない。

 

「うん……あたしさ、5月初めのゴールデンウィークまで男だったでしょ?」

 

「あ、ああ。そうだな」

 

「あたしは、男から一気にこの姿になったのよ。だから、『女児』の時代がないの」

 

 幼い女の子として過ごすことができなかったことは、あたしの中で他の女の子に対して持っている、唯一かつ最大のコンプレックスと言ってもいい。

 

「じゃあ、もしかして……」

 

「うん、無意識的に、幼女の時代を取り戻したくなるんだと思う」

 

 分かっててもやめられないというものだ。

 

「でもさ、よく考えたら優子ちゃん、女の子としてはまだ1歳になる前だもんな」

 

「確かにね。でもこんな1歳児がいたら大変よ」

 

「うはは、違いない」

 

 あたしと浩介くんが笑いあう。

 他愛もない話をして柔らかい雰囲気が流れる。

 

 

「プレゼントの受け渡しも終わったし、朝ごはん、作るわね」

 

「うん、お願いする」

 

 お腹も空いてきたので、自然と話題は朝食へ映る。

 

「納豆ご飯と味噌汁と鮭の焼き魚でいい?」

 

「うん、問題ない」

 

 あたしはご飯とみそ汁、そして鮭を取り出す。

 いかにもな朝食だけど、それでいい。

 まだ浩介くんの好き嫌いを詳しく知らないから、無難に行きたい。

 

 昨日の浩介くんはテレビを見ていたけど、今日はあたしの料理を見学している。

 あたしはちょっと緊張するけど、いつも通りに炊飯器とキッチンを動かす。

 

「すげえ、一切無駄がない」

 

「ふふっ、家事のコツよ」

 

 あたしは少し笑いながら言う。

 

「うちの母ちゃんはこんな風にテキパキできんよ」

 

「昨日が昼食でよかったわね」

 

「全くだよ」

 

 比較対象になっちゃうのは悪いけど、普段見ている浩介くんのお母さんよりも家庭的な所を見せて好感度を上げなきゃ!

 そう思うと、俄然やる気が出てきた。恋をするだけで、こんなに単純に、幸せになれるんだわ。

 

「浩介くん、これでテーブル拭いてくれる?」

 

「分かった」

 

 カウンターから覗き込んでいた浩介くんにお手伝いをさせる。

 何もさせないのはよくないけど、かと言って本格的に料理をさせるのはあれなので、コップや箸を出したり、テーブルを拭いてもらうといったことを頼む。

 

 

 あたしはまず焼けた鮭をお皿に盛り付け、次に炊き上がったご飯を盛り付ける。浩介くんのは山盛りだ。

 

「浩介くん、これお願い」

 

「おう」

 

 出来上がった料理をカウンターに出して浩介くんに運んでもらう。

 大した重さじゃないけど、あたしも料理でエネルギーを使うので、これくらいは頼みたい。

 

 最後に味噌汁を出してテーブルに置いて完成。

 

「「いただきます」」

 

 あたしと浩介くんが、相変わらず蓬莱教授の話題をトップニュースにしているテレビを見ながら朝食を食べる。

 

 時に他愛もない話もあって、こうして見ると、カップルというより新婚夫婦みたい。

 新婚夫婦なら、この後浩介くんが仕事に行く。あたしも自分の職場に行くか、あるいは主婦としての家事が待っている。

 いや、高校卒業して結婚なら、あたしと浩介くんで大学行きかな?

 

 って、何を考えているのよ。クリスマスだからって浮かれすぎでしょ優子!

 あたしは自分にそう言い聞かせて食事に戻る。

 

「はむっ……もぐっ……んーうめえ!」

 

 山盛りの納豆ご飯を、浩介くんが美味しそうに食べている。

 今まではあまり思わなかったけど、美味しそうに食べている浩介くんに惚れちゃいそうになる。

 やっぱり、あたしが自分で作った料理だからだと思う。

 

「ごちそうさまー!」

 

 ご飯も味噌汁も、あたしよりかなり量が多いのに、浩介くんはあっという間に平らげてしまうと食べ終わったお皿をカウンターに置いてくれる。

 

「あ、ありがとう」

 

 さりげない気遣いも見逃さず、お礼を言う。そうすれば、あたしも浩介くんも、いい思いをする。

 

 あたしが食べ終わり、しばらくするとテレビ電話が鳴った。

 付けてみると、永原先生だった。

 

「あ、石山さん、それに篠原君もおはよう」

 

「おはようございます永原会長」

 

 テレビ電話は基本的に協会の用事でかかってくる。

 

「おはようございます先生」

 

「篠原君、あなたも維持会員でしょ?」

 

 永原先生が軽くたしなめるように言う。

 

「まあ会長、かたいこと言わないで本題に入りましょう?」

 

「ああうん……わかりました」

 

 あたしの仲裁もあって、永原先生がうなずいてくれる。

 

「今日の会合ですが、仕様が変更になりました」

 

 永原先生によると、今回の会合は緊急性が高いため、メール会員を含めた全会員に生放送として開放し、合わせて一定以上の会員に発言権、議決権を持たせるという。

 維持会員や一般会員も一部本部に来る予定で、そこには蓬莱教授も含まれている。

 

「石山さん、悪いんだけど、篠原君も連れてってくれる? なるべく多くの人に、今回は参加して欲しいから、お父さんお母さんは……今は無理ね」

 

「本部会場、手狭になりませんか?」

 

「大丈夫よ、急遽決まったことの上にクリスマスの日曜日だし、生放送でもOKって言ってるから、正会員だって多分そこまで来てくれないわ」

 

「そうですか……」

 

「じゃあ切るわね。私は他の会員さんとも連携取るわ。石山さんも正会員だから、悪いんだけど今からFAXで送る人にこのテレビ電話で連絡してくれる?」

 

「……分かりました」

 

 永原先生がそう言うと、テレビ電話が切れた。

 30秒も経たないうちに連絡網のFAXが届き、「連絡網を回しきった後はこの紙をシュレッダーで処分するように」とあった。

 

「えっとまずは――」

 

 連絡網一人の一般会員の家にテレビ電話をかけ先程の緊急会合での仕様変更について話す。

 

 最初に「あれ? あなたは?」と言われたので「正会員の石山優子です」と答えたら、「あら、あなたがあの有名な」と言われてしまった。

 どうやら思った以上に、会の中ではあたしの存在はとても有名になっているようだわ。

 

 内容は永原先生が言ったことの復唱に等しいが、普通会員全員に12人でこれを回していると考えるとかなりの重労働。

 

 浩介くんは空気を読んでテレビ電話に写り込まないように部屋の奥で本を読んでいる。

 

 あたしは普通会員19人を担当。維持会員や一般会員、家族会員、メール会員についてはメールで済ますという。

 一応2回かけて反応がないなら飛ばすように言われているが、全員1回のコールで出てくれる。

 やはり、緊急会合についてはみんな関心が高いのかもしれない。

 

 

 全員の連絡が済んだ時には、あたしもそれなりに疲労が溜まってしまった。

 

「ふー疲れたー」

 

 あたしは最後に永原先生のメールに「全員完了した」と連絡をつけ、シュレッダーでFAXを処分した。

 

「優子ちゃん、会合まで休む?」

 

「ありがとう、もっといちゃつこうと思ってたんだけど」

 

「しょうがないよ。こんなことになるとは思ってなかったし」

 

 前回の水族館でも、あたしと浩介くんのデート中に出会ったし、最初に教頭先生と対決した時に出会った時も浩介くんがいたし、何かと蓬莱教授はあたしと浩介くんが2人ともいる時に現れる気がする。

 

 ともあれ、出発時間までは浩介くんと2人でゆっくり休む、外は寒いので、ストッキングを履いて出発準備を整え、浩介くんと本部へと向かった。




結構表現がアレですけどまあ大丈夫でしょう

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。