永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

16 / 555
女の子の修行3日目 後編

 リサイクルショップは学校から徒歩数分のところにある。

 通学路上を進み、最初に運ばれた病院を抜け、左に道を少しそれれば到着だ。

 

 土曜日ということもあって、主婦だけではなく、家族連れも居る。

 リサイクルショップに入るのは初めてで、入学時に学校が紹介していたのをちらっと聞いた程度だが、中は意外と広い。

 

「さ、お母さんがついていくのはここまでよ。後は自分でなんとかなさい」

 

 母さんは入り口からは動かない。

 

「う、うん」

 

 制服と体操着の袋を持ち、案内をさがす。

 しかし、学校の制服をどこでやっているのか分からない。

 こういう時は職員に聞くものだ

 

「あの……すみません」

 

「あ、はい」

 

 男性の職員に聞く。

 

「小谷学園の制服を売りたいんですけど」

 

 チラッ

 あ、胸見た。何だろ、昨今言われてる「チョロイン」よりはるかにちょろい気がする。

 

「えっとそれでしたら、3階へ上がってもらいますか? 階段を上がって正面です」

 

「ありがとうございます」

 

 早速階段で3階に上がる。今着てる巻きスカートは丈も制服よりは長いし、幸いにもこの緩やかな階段なら見える心配はまったくない。

 

 だいぶ女の力にも慣れてきた。

 今までは一瞬「重い」と感じると今度は力を出しすぎるきらいがあったが、今では一瞬戸惑うことはあっても、自分の身の丈にあった力加減をだいぶ出せるようになってきた。

 

 このあたりの身体の感覚は、カリキュラムではどうしようもないだろう。自分でよく体を動かして、慣れていくしか無い。

 

 階段をあがると3階の案内を見るまでもなく、服のコーナーが目に入った。

 窓口ではたった今1組の夫婦が受付を終わっていた。

 待合の椅子には誰も座ってないので、早速窓口の女性職員に声をかける。

 

「すみませーん」

 

「はい」

 

「これお願いします」

 

「はーい、分かりました」

 

 そう言うと店員さんは番号札を渡し、待つように指示してきた。

 

 これでもう自分は手持ち無沙汰だ。リサイクルショップを見渡す。

 この辺は服の他にもおもちゃやゲームのリサイクルもある。掘り出し物もあるんだろうなあと考えつつも、今は気持ちを男時代の服に戻す。

 

 

 女子制服を手に入れた、そして女子としての制服や体操着、水着の着方を叩き込まれた。

 男子制服はもう無い。自分で捨てた。

 戸籍も、性別も、教科書も、ノートも、全て優子になった。

 もう二度と、「優一」と呼ばれる日は来ないだろう。もしかしたら、遠い未来、自分が男だったことを忘れてしまうかもしれない。

 ……いや、それはないな。500年近くも生きて480年間も女をやっている永原先生でさえ男の頃は覚えてるし。幼少期の記憶は今後も残り続けるだろう。

 

 改めて、今着てる服を見る。

 上下赤い服だ、巻きスカートがかなり幼い印象を見せる。その割に、胸はかなり大きい。

 

 そして黒い髪の毛も長く、頭に白いリボンをつけていて、これが女の子女の子している。

 もう何度も覚悟を決めたはずなのに、こうやって自分で男の痕跡を消すのは、やっぱり身を斬られるような思いだ。

 でも、永原先生のカリキュラムの目的を考えれば、これが課題に上がるのは必然だ。

 よく分からないが、おそらく「成績不良者」だと捨てられないんだろうな。

 

 未練を感じた直後に、これから来る新しい生活への憧れもあった。

 この気持ちは、私が本格的に女の子としての生活を始めるまで、整理できるものじゃないのかもしれない。

 

「受付番号8番でお待ちのお客様ー! お待たせいたしました」

 

 呼ばれたので受付の元に歩く。

 

「はい、こちら制服と体操着ですね、リサイクルとして買い取り料がこちらになります」

 

 そう言うと店員はレジの画面を買取価格にしてきた。正直言うと、この価格が安いか高いかは分からない。

 まあ、とりあえずレシートと価格を受け取り、レジを後にする。

 

 1階の元の場所に戻ると、母さんが待っていた。

 

「おかえり、どうだった?」

 

「うん、場所を聞いてすぐにたどり着けたよ。あ、これレシートとお金」

 

「ありがとう、お金は優子が持っていいわよ」

 

「え? いいの?」

 

「……カリキュラムでセクハラされてたの可愛かったし、それの埋め合わせよ」

 

「……何か急に受け取りたくなくなってきた」

 

「優子気付いていなかったけど、めくられる度に女の子になってくの可愛かったわー」

 

 あの時舌打ちしたの母さんだったのか……

 

「それに、他の振る舞いとか言動とかも、今まで以上に女の子になってるわよ。やっぱり効果てきめんねー」

 

「そ、そうかな?」

 

「ええ! さ、帰りましょ」

 

「うん」

 

 相変わらず主に胸に視線を感じつつ電車で帰宅した時には昼ごはんの時間をとっくに過ぎていた。

 

 お昼ごはんは食べられなかったが、代わりに母さんは「おやつ」と称してお菓子をくれた。

 うーん、甘いもの美味しいな。

 

 今日は土曜日なので親父もゆっくり自室で休んでいる、私も休もう。

 ……おっと、昨日みたいにならないようにっと。

 

 仰向けになり、念のために薄い布団をかぶせて完全に見えないようにする。

 本棚にあった別の少女漫画を手に取り、読書開始。これも感想文書くのかな……

 

  コンコン

 

「優子ーちょっと来てー!」

 

 ドアをノックする音と共に母さんが部屋に入って開口一番そう言う。

 またカリキュラムか何かかな?

 

「優子、いい寝方ね」

 

「え? どうして?」

 

「だって今のようにすれば見えないんですもの、極端な話中が丸めくれでもね」

 

「たしかにそうだけど……」

 

「で、やってほしいのはアイロンがけと服の畳み方と、後もう一つ生徒手帳よ」

 

 あーアイロンがけもあったか。

 母さんは、寝室にあるアイロンがけ用のテーブルの前まで案内した。

 

「はい、アイロンのかけかたをやります! 熱いから気をつけてね」

 

 見ると、親父のYシャツが一つあり、これで練習するみたいだ。

 

「まずこれを見て見て」

 

 そこには取扱絵図がある、アイロンの絵の中に「中」の字がある。

 

「今回はアイロンの設定は中に最初からなっているわね」

 

 私もそれを確認する。

 

「じゃ、早速本作業に入るわよ。まずはこれ」

 

 母さんが霧吹きを持ってシュッシュッとYシャツに吹きかける。

 

「やってみて」

 

 言われるがままに吹きかける、服全体に染み渡った。

 

「うん、大丈夫よ」

 

「よし、アイロンをかけよう」

 

「あ! こら!」

 

 母さんに怒られた。「スカートめくられちゃう!」と思った次の瞬間に後ろから思い切り勢い良くスカートをめくられる。

 

「はぅあっ!」

 

 へ、変な声が出ちゃった。抑えて必死に抵抗する。

 

「あらあらまあまあ可愛いわねえ……」

 

 永原先生はめくったらすぐに手を離してたのに、母さんは相変わらずめくろうとしたままだ。

 

「や、やめて! スカート引っ張らないでー!」

 

「はいはい」

 

 ようやく手を離してくれた。

 

「いい? 水を吹き付けたら細かいシワを伸ばしてからアイロンを掛けないとダメよ。さ、指示を守らずに先走った罰として暗示よ」

 

「私は女の子……パンツ見られて恥ずかしいよ……私は女の子……パンツ見られて恥ずかしいよ……」

 

「あらあら、声に出ちゃって可愛いわねえ……」

 

 うううっ……もう暗示かけなくても恥ずかしいのに、こんな暗示かけさせられたらもっと恥ずかしくなっちゃうよ。

 

「さ、両手を使ってやってみて」

 

「う、うん」

 

 細かいシワを伸ばし、これでOKだ。

 

「じゃあ、まずは襟からよ。アイロンかけてみて? まっすぐに直線的にかけるのがコツよ? やけどしないようにね」

 

「うん」

 

 ゆっくり丁寧に、数往復アイロンをかける、「両端にしわができた時は、先の部分を押し当てるといいわよ」と言うアドバイスもあり、順調に進む。

 

「アイロンは表と裏、どっちからかけるべきだと思う? 間違えてもスカートめくらないから答えてみて」

 

「えっと、裏なの?」

 

「正解よ。なぜなら、表からやると表にシワが残りやすいからよ」

 

 

「さ、まずは肩の部分をかけてみて?」

 

「はーい」

 

 アイロンをかける。言いつけどおりに直線的にかける。アイロンがけ中にスカートめくられたらやけどしちゃうかもしれないから、特に慎重に慎重に……っと。

 

「よし、いいわよ。右肩をやったら今度は右袖を、その後に左裏よ。同じように慎重に一直線にね」

 

 言われた通り丁寧に仕事をする。

 

「うん、じゃあ次は前よ。Yシャツのポケットのある部分は気をつけて。膨らみを意識して、やってみて」

 

「はーい……あ、母さん、ボタンはどうするの?」

 

「ボタンはアイロンの先を入れてやってみて」

 

「はーい」

 

 丁寧にシワを伸ばす、僅かに残ったシワも見逃さず、直線的にアイロンをかけていく。

 

「うん、OKだね。反対側も同じようにやってみて」

 

 丁寧にアイロンがけをする。まためくられたくないし……

 

「あらあら、凄いわね。これで完成よ。後はアイロンの電源を落としてちゃんとハンガーにかけて完成ね。もう一個注意点としては暖かいうちに畳んだり着たりしちゃダメよ。もちろん、まだまだ教えることは多いけど、とりあえず、アイロンはここまでよ」

 

「は、はい」

 

「それじゃあもう一つ、これを受け取ってくれる?」

 

「ん?」

 

 母さんが小さい紙を渡す。よく見ると、そこには男だった頃の俺の写真と名前、生徒手帳にはめこむ学生証部分だ。

 

「これを、このシュレッダーにかけるのよ」

 

 母さんは、シュレッダーを指差す。

 

「個人情報なんかは読まれたりしないように、必ずこれにかけて細かく刻むのよ。まずはボタンを押してやってみて? 指は絶対に入れないでね」

 

 シュレッダーのボタンを押す。一瞬回ったような音がしたが何も起こらない。

 紙を隙間に入れると、一気に機械が動き出した。

 ういいいいいんという音とともに紙が飲み込まれ、切り刻まれていく音がする。

 ふと、男時代の写真が目に入る。シュレッダーはそんなこともお構いなしに、写真ごと切り刻んでしまった。

 どこかで、名残惜しい気分も出てきた。もう戻れるわけがないのに……

 

 「はい、よく出来ました。じゃあこれ、生徒手帳と、新しい学生証よ」

 

 母さんはそう言うと、生徒手帳と、学生証部分を渡してきた。そこには、今日取ったと思われる写真と、「石山優子」と書かれた氏名欄、新しい学籍番号が付与されていた。

 

 「母さん……これ?」

 

 「ええ、優子の手で、シュレッダーにかけさせないと、渡せないものだったわ」

 

 改めて、女の子の証をもらえた。人生の途中から女の子になった自分が、女の子として扱われることへの喜びを胸に秘め、新しい学生証を生徒手帳にはめこんだ。男の頃の記録を消す辛さは、女の子になれる、認めてもらえる喜びに、簡単に消されてしまった。

 

 夕食まで休む、先程と同じく少女漫画を読みながらスカートを布団で覆いつつ。

 

 早速夕食の手伝いに母さんに呼ばれる。

 ……よし、夕食も頑張るぞ!

 

 

「あ、そうそう優子、明日のカリキュラムなんだけど」

 

「うん」

 

 夕食を手伝っていると母さんが明日のことについて話しかけてきた。

 

「制服あるでしょ? あれと同じくらい短いスカート穿いてくれる?」

 

「あ、うん」

 

 そういえばミニスカートのカリキュラムまだやってなかったな。制服はまた別だけど。

 

「明日はそれ穿いてお出かけするのよ」

 

「うん、それで?」

 

「お出かけが終わったら最後に一個やって全部のカリキュラムが終わるわよ。ただし、言葉遣いや振る舞いが悪かったら今日みたいにおしおきだからね」

 

「え、まさか外でスカートめくり!?」

 

「ふふっ、大丈夫よ、お出かけの時はそんなことしないわ、それに、ミニスカートのお出かけは一人で行ってもらうわよ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 安心した。皆が見てる前でスカートめくられるって、下手したら通報案件だ。いや、このお仕置きも通報案件だよね?

 んー、なんだかよくわからなくなってきちゃった。

 

 

「……お、優子、カリキュラムは順調か?」

 

「うん……順調よ」

 

 夕食の準備をしていると、親父が書斎から出てきた。

 月曜日に向け、ゆっくり休憩するのが親父のスタイルだ。

 

「あらお父さん、ええ、順調よ。これならちゃんと、明後日にも復学できそうよ」

 

「そうか、良かった。優子は大変か?」

 

「ああ、うん。特に今日からは後半ってことで一段と厳しくなったよ、あはは……」

 

 不適切なことしたらおしおきにスカートめくりされて、しかも恥ずかしがらないといけないなんて言わないほうがいいだろう。

 

「でも、優子は優秀みたいよ。永原先生も褒めてたわ」

 

「そうか、それは良かった」

 

 今日の夕食は天ぷらとからあげと言う揚げ物攻勢で、母さんから油の使い方を習っている。

 ちなみに、初めてエプロンを着た。

 こういう時には「失敗してもスカートめくりはしない」と最初に宣言するんだから、分別は一応あるみたいだ。

 

「さ、油に気をつけて」

 

「はい」

 

 海苔やかき揚げ、野菜の天ぷらを盛っていく。

 我が家のメニューは特にローテーションが決まっていない。基本的にその場の気分で作る。幸いにも親子三人は食べ物の好き嫌いが似通っているから、その手のトラブルも起きない。

 

「はーいできたよー」

 

 親父はやや孤独感を感じる表情をしている。

 考えてみれば、男だった頃は自分と二人で世間話をしながらのんびりと母さんを待っていた。

 幸いにも親父は知的好奇心が旺盛だったから、どんな話にも食いついてきた。

 親父は、「興味ないからもういい」なんて口が裂けても言わない人だ。

 

 そうやって会話が盛り上がっていると母さんが食事を持ってくる。

 今までは男二人に女一人の家庭が、男一人に女二人となってしまった。

 

 そして、自分は女の子として生きていくために、こうして家事を覚えさせられている。

 親父は話し相手がいなくて、テレビばかり見る日々が続いている、カリキュラムが終わったら、家事手伝いばかりじゃなく、親父の話し相手にもなってあげないと。

 

「「「いただきます」」」

 

 3人で食事を食べる、自分が女になったため、それ以来作る量は今までより少し少ない。

 そして、食べ終わるのも、一口の小ささにまだ戸惑ってるのか、自分が一番遅くなったから、全体でも少し遅くなった。

 

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

 一人息子が一人娘になるだけで、家庭のいろいろな部分が変わってくる。今日も母さんに頼まれた皿洗いを、前回の復習通り行う。特に怒られず、また訂正もされず、スカートもめくられなかった。

 

 母さん曰く「お父さんには刺激が強すぎるからめくらない」ということだった。

 ただし、「今回は隙がなかったけど、もしお仕置きが必要になったら後でまとめておしおきされる」らしい。

 

 ご飯が終わったら風呂だが、その前にトイレに行こう。

 

 トイレに入り鍵を締める。そして私はスカートをぺろりんと上までめくる。

 そういえば、今日は何度もされたけど、トイレではいつも自分でしてるんだよな。

 それがもうあんまり恥ずかしくないというのは、やっぱ他の人に見られるという要素が大事ということだ。

 

 ともあれ、パンツを脱いで準備完了だ。

 脇に挟むのは結局気分次第になった。

 

 終わったらビデを押して、トイレットペーパーでよく拭いて流した後パンツとスカートを元に戻す。

 

 そして自室にある箪笥からパジャマを取り出して脱衣場へ。

 

 脱衣場へ行ってみて初めて気づいたが、今日は唯一のワンピースタイプのパジャマだ。

 スカートで寝るって絶対寝ている間にめくれちゃうと思うんだが、どうなんだろう?

 

 うーん、安全策を取るならもう一回箪笥に戻って撮り直すだけど、例のごとく身体が寒くなってきた。早くお風呂に入りたいと言っているし、このまま行こう。

 

 

「明日で終わりかあ……」

 

 髪と体を洗い、髪を縛り上げて湯船に浸かる。ようやく私の憩いの一時が訪れる。

 風呂なら裸だからパンツ見えてるとかそう言うのを気にする必要もない。

 

 明日はカリキュラムの最終日、冷静に考えて、一番厳しいことをする日だ。

 それにしても疲れた。いきなり怒られるしいきなり褒められるし、その基準が全くよく分からない。

 むしろいきなり怒られるよりも、いきなり褒められる方に疲れた気もするよ。いや怒られるよりましなんだろうけど、なんというか褒め方が……うん、悪気はないしあれが一番効果的なんだろうけど……

 

 ……考えても仕方ないか。なるようになるでしょ。女の子らしくなってるって、先生も、母さんも褒めてくれてるし。

 

 でも、明日は終わりじゃない、むしろようやくスタート地点に立つためのものだ。

 

 今日という日が終わりつつある中、風呂で色々と考えていた。

 少しのぼせたけど、いつもより充実した風呂だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。