永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件 作:名無し野ハゲ豚
ゴーカートでは前後二人乗りを選択、運転は浩介くん任せになった。
「よし、シートベルトを閉めたな。優子ちゃん、そっちは大丈夫か?
「うん、大丈夫!」
念のため、もう一度シートベルトを締めたかどうか確認してからあたしが言う。
もし締めないで発車して何か起きても自己責任だ。
「出発!」
道幅も狭く、スピードもあまり出ない、のんびりしたゴーカート。
この遊園地、さっきの池もだけど結構のんびりタイプらしいわね。
絶叫マシンは凄いらしいけど……って、あたしたちがそう言うアトラクションでばかり遊んでいるせいかな?
「おりゃあ!」
浩介くんの謎の掛け声と共に、スタートする。後ろから見ても分かるくらい、思いっきりアクセルを踏んでいる。
浩介くんの荒っぽい運転は、途中何回か道の端にぶつけているけど、お構いなしに進む。
「浩介くん、運転荒っぽいよ」
「はは、ゴーカートだからこそさ」
確かに、現実の車の運転でこんなことをしたらシャレにならないけど。
しばらくカーブや直線を楽しんでいると、看板が見えた。そこには、「この先上り坂、止まらないようにアクセルを踏もう」とある。
ちなみに、小さな子供向けが乗ることを想定し、漢字には全て振り仮名が振ってある。
まあ、浩介くんのこの様子だと、常時踏みっぱなし何だろうけど。
ゴーカートが登っていく。徐々に坂道が緩くなっていったと思うと、道幅も狭くなる。
そして真っすぐ進むと「この先下り坂、スピード注意」と書いてある。
「なんかアクセル効かねえなあ」
「浩介くんそれリミッター」
「ですよねー」
そんなことを言いながらゴーカートが下り坂へと差し掛かる。
多分、このアトラクションのハイライトシーン、ゴーカートは風を切るようにスピードが上がり、やがて右へと大きくカーブする。もちろん、スピードが上がると言っても所詮はゴーカートなので絶叫マシンのような怖さはない。
「お、ループするぞこれ!」
浩介くんがスピードを殺さないようにハンドルを右に取りながら言う。確かにさっきからずっと右に曲がっているけど……
「え? そうなの?」
「ああ、さっき下の道が見えた……ほれ、前見てみろ!」
突然、カーブが直線になった。
それを見た浩介くんが一気にハンドルを戻しながら、後ろもあたしに声をかける。
眼前にはトンネルが迫っていて、中に入ると視界が一瞬暗くなる。
トンネルの中は映像も流れていて「ようこそ」「これからもお気を付けて」「よい一日を」と言った声とともに、遊園地のマスコットキャラクターが出迎えてくれる。
そう言えば、さっきもちょっとマスコットがいたかも?
ループ線を抜け、再び緩い上り坂になって少し経つと、ゴーカートはスタート地点に戻ってきた。
「終わりだな」
「うん」
浩介くんが名残惜しそうな顔をする。やっぱり男の子だからこういうの好きなのよね?
って、あたしもちょっと前まで男の子だったでしょ……なんか最近こういうの多いわね。男の子の気持ちはちゃんと「知識」として知っておかないと、浩介くんを満足させることが難しくなるから、「知識」まで忘れちゃうのは女の子としてマイナスだから気をつけないと。
「もう一周する?」
「いや、いいよ」
正直次はあたしの運転になると思うんだけど、浩介くんほど楽しい運転できないだろうし。
「ありがとうございましたー!」
係員さんに見送られて、あたし達も出る。
「疲れたなあ」
「うん、あたしも。そろそろお開きにする?」
メリーゴーランドとゴーカートだけだけど、午前中の池のボートやお化け屋敷での疲れも残っていて、結構遊び疲れちゃった。
「そうだな。残ってるのは絶叫系や高所系みたいだし」
「うん、じゃあ観覧車乗ろうか」
あたしが、更に奥にある観覧車を指差して言う。
ここから見ると、さっきまでよりもかなり大きく見える。
「あ、そう言えば観覧車も高所系だっけ?」
「あはは」
浩介くんがそんなツッコミをしつつも、あたし達はこのデート最後のアトラクションになる、観覧車に向けて歩き出した。
ゴーカートよりさらに奥、遊園地の高台にして、すべての入り口から見て最深部にそれはある。
いわば、さっき行った池の端のちょうど逆側に位置していると言えば分かりやすい。観覧車からは、遊園地全体が見渡せるように工夫されている。
高台を少しずつ登る。道中は「超プチ登山」と言ってもいい道のりで、これも遊園地側の計算の一つなんだと思う。山の頂上に更に観覧車ということになるもの。
「お、いい眺めだな」
「うん」
そこの高台の頂上は開けていて、観覧車に乗る前からも、眼下に遊園地全体が見て取れるようになっていた。よく見ると、他のお客さんも同じ長めを見ていた。
絶叫マシンが何台か動いているが、ここからは遠すぎて叫び声も聞こえない。
更に、さっき遊んだゴーカートのコースやメリーゴーランド、そして浩介くんといっぱいゲームオーバーになっちゃったお化け屋敷に、最初に遊んだコーヒーカップ、更には浩介くんと楽しんだ池には、ボートが多数浮かんで、僅かに動いているのも見えた。
「……俺たち、随分と遠くに来ちゃったな」
「う、うん」
本当は同じ遊園地の敷地内だし、そこまでの距離もないんだろうけど、とても遠くの出来事のように見える。もっと言えば、先程の池と同じく、遊園地特有の喧騒からは離れていて、まるで別世界のようにも感じてしまう。
本当に、この遊園地はうまく出来ている。だからこそ、生き残っているのかもしれないわね。
さて、観覧車にもそれなりに人が並んでいて、籠一つ一つでお客さんが中に入っていくから、列の捌きも速いけど、時間もかかるという感じになっている。
一歩、もう一歩と近付いていく。
あたしはふと、観覧車が小さな密室なのを思い出す。
もしかしたら、浩介くんとキスできるかな? ううん、ここまでデートしたんだもの。締めくくりという意味でもキスしたいわ。
「お次でお待ちのお客様」
「あ、優子ちゃん行くよ」
「あ、うん」
あたしが考え事をしていると、係員さんの声がかかり、それがあたしたちであることを示していた。
浩介くんに声をかけられ、あたし達は、ゆっくりと動く観覧車の籠に乗り込む。
バタン!
観覧車の扉が閉められた。
あたしは、抱いていたお魚さんのぬいぐるみを隣の座席に座らせてあげる。
透明なのは腰から上なので、お魚さんの体型だと外は見えないけど。
「おお、すげえな」
浩介くんが感嘆とした声を上げる。
元々高台にある観覧車で、更に上まで登るんだから、絶景なのは当然かもしれないけど。
「ほんとだー」
見てみると、さっきまでは遊園地までしか見えなかった視界が一気に広がり、外側の街が見え始めた。
遊園地の周辺には一軒家が多い。さらに登ると奥の都市部が見える。幾つもの高層ビルが固まっている所、近くにとある学校法人が建てた独特のタワーも見えるので、多分あのビル群の中に、協会本部が入っているビルもあるはずだわ。
「なあ優子ちゃん」
「ん?」
「すげえ眺めだよな」
浩介くんの平凡な言葉。
でも、とてもいい言葉だと思う。
「そうだね。それにあたし達、二人っきりだね」
観覧車で見える風景の更に奥には、巨大な尖塔のような白いタワー、その手前には赤い三角形の塔も見える。
ここからだと赤い三角形のタワーの方が高く見えるけど、確か白いタワーは赤い三角形のタワーの倍近いんだっけ?
「あ、ああ……」
「えへ、浩介くん」
あたしは風景を見るのをやめ、浩介くんに向き直る。
風景よりも、浩介くんを見ていたい。
「ん?」
浩介くんはまだこっちを向いてくれない。
「風景はすごいけど、あたしの方がきれいじゃない?」
「え!?」
あたしがちょっとだけ、脚を広げる。
もちろん、パンツが見えない範囲でだけど。
「浩介くん、あたし……浩介くんが好き」
「な、何だよ今更! ずっとそうじゃねえか」
浩介くんがやや苦笑いする。
「うん、でも今はね、特別な空間でしょ……だから言ってみたくなったの。ほら、もうすぐ頂上だわ」
「あ、ああ……」
もう一度だけ風景を一瞬見る。観覧車が更に登っていくけど、角度が緩くなった。
円形だから、徐々に頂上に近付いている証拠。
「んっ……」
あたしが何も言わず、口を前に出してキスしてアピールをする。一番高い所で、浩介くんとキスしたい。
浩介くんの強くて優しい唇があたしと触れ合う。
「ちゅっ……優子ちゃん……」
「うん、浩介くん……お願い……」
あたしの視界が甘く蕩ける。もう、外は見えない。もう、浩介くんしか見えない。
「んっ……じゅるっ……れろっ……ちゅっ……」
あたし達は、すぐに舌を絡め合う。
頭の中も、どんどんと蕩けていき、あたしは浩介くんに夢中になる。
「うっ……んんっ……じゅう……ぺろ……」
「じゅるる……ちゅぱっ……んぅっ……」
お尻から、観覧車の傾斜が緩くなり、殆ど横に移動しているような感覚が伝わってくる。そろそろ最頂部だがあたしも浩介くくんも、目の前のことに夢中になっていた。
あたしのために尽くしてくれる浩介くんは、どんな絶景よりもあたしの心を奪っていく。
そして、浩介くんなしでは生きていけない体になってしまう。でも、それでいい。それがあたしの望んだ幸せだから。
「んっ……ぷはっ……」
「浩介くん……」
「はは、一番上だよ」
混ざりあった唾液の糸がぷつんと途切れ、お尻ではなく、背中が押されている感覚が伝わってくる。
これはつまり観覧車が完全に横に移動する感覚ということで、景色はさっきと同じ。
でも、白いタワーの更に奥に、何か遠い山まで見えている気がする。
もしかしたら、この風景の中にも、あたしや浩介くんの家、小谷学園もあるのかもしれないけど、そっちの方向を見てみても、それらしき建物は見つからない。
「優子ちゃん……」
「うん、浩介くん……」
風景のことなどすぐに忘れてしまう。浩介くんのことが、何より好きだから。
浩介くんの右手に、ゆっくりと胸を触られる。
「やぁん」
「優子ちゃん、俺、我慢できない……ちょっとだけ、いいよな……」
「うん……いいよ……あたしも我慢できないから……お願い……」
あたしは、いつものようにあっさりと浩介くんを受け入れる。
「ちゅっ……」
ディープじゃないけど、唇を触れ合うキス。
「愛してる……」
胸を触られ、キスをされていると、何の気なしに、無意識にそんな言葉が漏れる。
「うん、俺も……」
そう言うと、浩介くんの左手にまたスカートをめくられる。
「いやあん」
今日はもう、2回パンツを見られて、スパッツありだけど何回もスカートの中を見られたけど……それでも恥ずかしいので、あたしが右手でスカートを抑えて抵抗する。
でも、そんな抵抗はいつものように、浩介くんに優しく払いのけられてしまう。
「ほら、ちょっとだけ、ちょっとだけパンツ……この熊さんを見せてよ」
「あううっ……うん、いいよ……」
そして、浩介くんのお願いを、いつものようにあっさりと受け入れてしまう。
あたしは、自分でも信じられないくらい浩介くんに従順になっている。さっき、「嫌なことは本当に嫌と言ってね」と浩介くんに言われたことを一瞬だけ思い出し、すぐに記憶の彼方へと消えてしまう。
「かわいいよね、何てキャラ?」
浩介くんが聞いてくる。
「え!? うーん、分からないわ」
実際の所、キャラクターの名前はないと思う。
「そうか」
浩介くんは、凍りついたように動かなくなる。
でも、少し経つと、また何かを言いたそうにしていた。
「浩介くん、どうしたの?」
「優子ちゃんってさ、身体も心も、本当に綺麗だ」
「うん、ありがとう……」
浩介くんに褒められる度に、あたしは、自分がどんどんとかわいくなっていく気がする。
恋をすると、女の子はかわいくなるから。
「すごく柔らかくて、何もかも、女の子らしいよ……」
「うん、うん……ううっ……」
あたしは、嬉しさのあまり、視界が潤んでしまう。
「ど、どうしたの優子ちゃん!?」
浩介くんが、突然泣き出したあたしに戸惑いと驚きを持っていう。
「ぐず……ごめん、浩介くん……あたし……幸せすぎて……嬉しすぎて……何だか怖いの……」
どうしてか分からない。あたしは何もかもが幸せで、怖くて怖くてたまらない。
「優子ちゃん、俺……絶対優子ちゃんを幸せにするから」
浩介くんが、あたしの耳元で優しく囁いてくれる。
「うん、あたしも……あなたに付いていきたいわ」
それは、ほとんどプロポーズ同然の言葉だった。
あたしたちは、もう彼氏彼女では満足できない。これからは婚約者として、過ごしていきたい。
そして、観覧車も徐々に降り始めていく。
「んっ……」
また、唇が重なり合う。
浩介くんの両手に、胸とパンツを好きなように好きなだけ弄られる。
あたしも、ちょっとだけ……
「んっ……っ!」
あたしが、浩介くんの頭を触ると、浩介くんがびくってなる。
「浩介くんの頭って……大きいよね……」
「ゆ、優子ちゃん!」
ああ、やっぱりこの感触……大好きだわ。
「浩介くんって、頭良さそう」
「そ、そうかな?」
浩介くんを立ててあげるけど、実際にはあたしのほうが成績が良かったりもする。
「くそっ、俺もやられてばかりじゃないぞ!」
「やあん!」
浩介くんがやや乱暴に、でも痛くならないように胸を触ってくる。
観覧車の降りる向きがやや変わってきた。そろそろ下に降りてきた証拠。
このままだと下で待ってる人に見られちゃうかもしれない。
「ねえ浩介くん……」
「あ、ああそうだな……」
肩から上はガラス張りだから外からも見えてしまう。
浩介くんも、そろそろまずいと思っていたのか、浩介くんが離れくれた。
あたしは、スカートを直す。
「これはだめ」
ぺろりっ!
「いやーん!」
せっかくスカートを直したのに、浩介くんにスカートをめくられたままにされ、また熊さんのパンツを見られてしまう。
確かに、この場所は外からは見えないけど。
「じろじろーじろじろー」
「もう! わざわざ口に出さないでよ!」
浩介くんにスカートをめくられたまま、パンツをじろじろ見られてしまう。
ここまで長時間、凝視されたのも初めてで、すっごく恥ずかしい。
外をちらりと見る。遥か遠くの尖塔は見えなくなり、いつの間にか、高層ビル群も見えなくなっている。
そして、麓の町が一つ一つ視界から消えていく。
「浩介くん……お願い、もう許して……」
あたしが恥ずかしさのあまりに、やや涙目で許しを請うように言う。
本当は地上が近いからだけど、浩介くんが興奮しそうな許しの乞い方を、無意識にしてしまう。
「ああ、うん……そろそろだもんな」
その言葉とともに、浩介くんがスカートを元に戻してくれる。
そして、前のお客さんが籠から出ていく。
あたしもぬいぐるみさんを抱き、荷物を持ち、浩介くんと共に観覧車を降りた。
「ふー、楽しかったね」
「ああ……じゃあ帰るか」
「うん、ちょっとあたしも我慢できないよ」
「俺も」
あたしたちは高台を降りて、来た道を一気に戻り、最初に入った場所と同じ入口から出て、遊園地を後にする。
「浩介くん、バイバイ」
「ああ、4月、学校でな」
「うん」
家に帰って、あたしは母さんにバレないように、今日一日のことを思い出して快感を覚えた。なんだろう、ちょっとだけ気分が悪いわ。
そしてこのデートの翌日、あたしは女の子の日になった。1日ずれてくれて、本当に良かったと思う。