永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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反響

「ただいまー!」

 

「優子、おかえりなさーい!」

 

 母さんとのいつものやり取り。

 ご飯まではまだ時間があるというので、あたしは家に帰ってから早速記事を見ようと思った。

 まずはPCを付けてっと。

 

 ……あれ?

 

 まず、検索エンジンを使い、ニュース名で検索すると、そのメディアのニュース記事に繋がらない。

 「Error 503」って書いてあるから……確か以前の浩介くんの話に拠れば向こうのサーバー側の問題のはず。

 ……もしかして、反響が大きくてアクセスが殺到しているために、サーバーが落ちているのかもしれない。

 仕方ない、つぶやきサイトを見てみよう。

 

 あ、トレンドに「日本性転換症候群協会」ってあるわね。

 早速クリックしてみると「日本性転換症候群協会の取材条件に応じるマスコミ現る!」と、「TS病患者2人が天使過ぎる件、なお1人は500歳、もう1人は彼氏持ちの模様」「日本性転換症候群協会会長、江戸城に214年間住んでいた。都市伝説の正体では!?」など、様々なニュースサイトが出てくる。

 

 そして、それらをクリックすると、インターネットの掲示板の書き込みをまとめたサイトにつながっていく。

 そこの書き込みをざっくり見てみると「よくこんな条件で取材を申し込んだな」という声の他、「取材のお陰で今まで知らなかった実態がよく分かった」という声もあった。

 また、あたしが男女平等を夢想だと断じたことについても「この人が言うと説得力が桁違い」「フェミ死亡www」「結局モテない行き遅れのBBAがフェミになるんだな」「だって美人はそんな主張しなくても幸せだもん。この子みたいにさ」というような、暴言が含まれているものもある。

 

 

 色々なサイトをよく読んでみると、書き込みの大部分は取材の中身ではなく、あたしと永原先生の容姿に関する話題だった。

 やはりネットの評価でも、概ね永原先生よりあたしの評価のほうが高いみたいね。

 

 女の子として、こういうのはやっぱり自信になる。永原先生だって「超が付く美少女」と言ってもいいくらいだし、実際ミスコンではあたしと互角に争ったくらいだし。

 

 もちろん、インターネット上では永原先生の方を推す声もかなりあるけど、その書き込みに対しては「ロリコン乙」と言われている。

 それに対して「俺達より遥かに年上で胸だって出てるのにロリコン? ロリコンとは一体、うごごごご」という書き込みがあり、また「当時ならあの体格は普通なんじゃないか?」という声もあり、喧々諤々の議論が展開されている。

 あたしだって童顔な方だけど、やっぱり永原先生と並ぶと大人っぽく見えるのかな?

 

 とにかく、あたしにとってかわいいって言ってもらえるのが、何より嬉しい。特に、あたしに対して「アイドルの誰よりもかわいいよな」という声もあって、本当に嬉しかった。

 しかも、同じような書き込みは永原先生に向けられたものもあって、永原先生の方は「俺は〇〇の方がかわいいと思う」と言った感じだけど、あたしについては誰も異議を唱えてなかった。

 

 やっぱり、女の子になって最初の朝感じたことは嘘じゃなかった。

 それを改めて裏付けてくれた。

 

 もしかしたら、今あたしは「ミス・インターナショナル」あたりに出れば世界一にもなれるんじゃないかとさえ思えてくる。

 

 実際、インターネットでも各年の国際的なミスコンの優勝者と、あたしや永原先生との顔を比較した画像までアップロードされていて、「これはひどい」「ミスコンブスすぎワロタ」「世界一とかおこがましすぎる」「審査員見る目なさすぎ」と言った声まで聞こえてくる。

 

 それに対して「だってマキノちゃんや優子ちゃんみたいに本当に可愛い子はこういう大会には出ないんだよ」「TS病患者だもんなあ。男の理想をわかりきってるわけだから、出たら反則だろ」「会長が出て優勝したら自分はもとより、祖母の祖母の更に祖母よりもはるかに年上に持ってかれるんだから屈辱感半端ないだろうな」「いや待て、会長って500歳だろ? 30歳弱で1世代だとして……18世代なら祖母が9回続くぞ」「何だよそれ、半端ねえな」という声まである。

 ……すみません、あたし去年学園のミスコンに出て永原先生と桂子ちゃん押しのけて優勝しました。

 

 他にも「優子ちゃんは自信に満ち溢れていてコンプレックスなんてなさそう」「いいよな、かわいいこがかわいいって自覚して自信たっぷりに振る舞うの」「俺も思った。今まではそういうので控え目になる娘がかわいいと思ってたけど考え改めないと」「さり気なく胸強調してるし」という声もある。

 確かに、あの動画だけでは想像できないから無理もないとは思うけど、もちろんあたしにも女の子としてコンプレックスはある。

 最近も、おもちゃ屋さんで女児向けのおもちゃを買っちゃったし、どれだけ求めても満たされないコンプレックスを抱えている。

 一部の書き込みは「巨乳や体重についてコンプレックスがあるんじゃないのか?」という声もあったが、もちろんこれは的外れで、あたしにとってはむしろ自信になっている。

 

 ところで、黒いワンピースの上からでもはっきり分かるあたしの巨乳に対して、性欲を持て余したネットユーザーによるセクハラのような書き込みも多い。一番多いのが単純に「揉みたい」というもので、次に多いのが「挟まれたい」だ。

 ま、浩介くんにならされてもいいことだけど、ね。

 

 ともあれ、記事を上げ、取材を受けたその日のうちに、ここまで大きな反響になるとは思っても居なかった。

 

 さて、あたしはまとめサイトの情報から、現在進行形で書き込まれ続けている掲示板を見つけた。

 あたしが名無しで、「どうしてここまで反響になったのか」について質問してみると「何分マスコミ界最大のタブーだったから」と言った内容の指摘を受けた。

 

 ともあれ、インターネット上ではこんな感じの反応が主だった。

 ちなみに、永原会長の年齢についても「大方、蓬莱教授が証明したんじゃないか?」という憶測が流れていて、ほぼ受け入れられていた。

 これについては、事実なのでそのまま放置しておいていいだろう。

 

 

「優子ーご飯手伝ってー!」

 

「はーい」

 

 母さんの声とともに、あたしはインターネットを見るのをやめて母さんの家事手伝いに行く。

 

 

「優子、インターネットの反応どう?」

 

 ご飯を作っていると、やはり母さんも気になるのかそんな質問をしてきた。

 

「うん、やっぱりとんでもない反響だよ」

 

「それで、優子の評価はどう?」

 

 母さんがグイグイと押してくるように言う。

 まあ、悪い評価じゃないし、話してもいいかな?

 

「もちろん、かわいいってさ。あと、この胸に対する話題も多かったわね」

 

「やっぱり? 優子は自慢の娘だもん、お母さんも嬉しいわ」

 

 おいおい、それでいいのかよ……

 まあ、母さんらしいと言えばそうだと思うけど。

 

「それで、協会全体についての評判はどう?」

 

「うん、それも悪くないわ。でも永原会長によれば『問題は既存メディアの反応』なんだって。そのせいでインターネットをしていない人の評判が悪くなるとか」

 

「……そう、お母さんも後で見ておくわ」

 

 母さんと一緒に、食事を作る。

 食事が出来たら、あたしが父さんを呼ぶ。

 

 父さんの方は相変わらず何を考えているのかよく分からない。

 そもそも、職場の同僚にも、TS病について話しているかどうかも聞いていない。

 聞く必要がなかったから、と言うのは、事実だとしても言い訳かもしれない。

 

 優一の頃は、父さんともよく話していたけど、優子になってからは母さんと話す機会が増えた。

 最も、父さんはストレスを感じている様子は全くない。

 それは、乱暴だった優一が生まれ変わったことによるものだと思う。

 

「そういえば優子、インターネットメディアの取材を受けたんだってな」

 

「う、うん……」

 

 とはいえ、父さんもそのことについては気になる様子。

 

「ネットの反応はみんなそれ一色だったぞ。やっぱり優子ってかわいいってさ」

 

「あーうん、まあね……」

 

 やはり、父さんもあたしたちのことをチェックはしていた。

 

「ふう、月曜日に会社の同僚に話さないとなあ……」

 

「あらあなた! 優子のことまだ話してなかったの!?」

 

 母さんが、意外そうな声で話す。

 確かに、今まで話していないというのは驚きだ。

 何分、もうすぐ女の子になって1年が経つわけだし、それだけ長期間あたしのことを話していないというのも驚きだ。

 

「ああいや、単に話す機会がなかっただけだよ。でも、ここまで話題になった以上は、話さないわけにも行かないだろうからね」

 

 父さんは、なるべく自分は騒動に関わりたくないという感じで言う。

 確かにそう、父さんにしても平穏な日常を過ごしたいというのは分かる。

 でも、そうも行かなくなった。

 あたしが、女の子になって、父さんにだけは、ちょっとだけ迷惑をかけちゃったのかもしれない。

 

 でももちろん、それで後悔するということはない。

 女の子になってよかったことの方が、遥かに多いんだから。

 

 ともあれ、今日はもう寝よう。月曜日になれば、また学校の反応も変わってくるだろう。

 

 

 ピピピピッ……ピピピピッ……

 

「うーん……!」

 

 翌日の月曜日、あたしはいつものように目覚まし時計で起きて、制服を着てリビングに行き、テレビを付けた。

 

 すると、ニュースでは、テレビも新聞も、あたしたち協会が取材に応じたことを伝えていた。

 一方で、高島さんの所のメディアは映像を提供してくれなかったのか、各社局ともにURLを紹介するにとどめている。

 

 それはどこのテレビ局も同じで、「無断放映」をしようとするメディアはなかった。

 

「優子、早速話題ね」

 

「でも、あたしのことや永原先生のことは一言も言ってないわ」

 

 まあ、そうせざるを得ないようにあたしたちが仕向けさせたんだけど。

 父さん曰く、今朝になってようやく記事が繋がるようになっていったらしい。

 まあ、原文の記事は、協会本部でも見たし、改めて見る必要はないかな?

 

 

「ともあれ、学校にいってらっしゃい」

 

「うん」

 

 あたしは、久しぶりに不安を抱えながら学校へ行った。

 幸いにも、男たちの視線はいつものことなので、あたしには気にかからなかった。

 誰かに声をかけられる、ということはなくていつも通りの小谷学園だった。

 おそらく、原因としてはインターネットをある程度深くまで辿らないと、取材に応じたのがあたしだということには気付かないことだろう。

 テレビ局の放送を見ただけでは、どうにもならない。

 更に父さんのさっきの話しでは、朝までサーバーがダウンしていたと推測されている。

 おそらく、昼頃からは勝負になるかもしれない。

 

  ガラガラ……

 

「おはよー」

 

「おはようございます優子さん」

 

 最初に目が合った龍香ちゃんと、まず挨拶する。

 

「あ、優子ちゃんおはよう。取材受けたんだって?」

 

 どうやら既に事情を知っていたらしい桂子ちゃんが話しかけてくる。

 

「う、うん……本当は『誰もこの条件なら申し込まないだろう』って考えていた条件だったんだけど、まさか応じてくる所があるとは思わなくて……」

 

「でも、どうして優子ちゃんが取材を受けたの?」

 

 桂子ちゃんが、不思議そうに言う。

 確かに、高校生のあたしが出張らなくてもいい場面ではある。

 

「ああうん、あたしが考えた条件で想定外が起きたから、一種の『けじめ』みたいなものよ」

 

「ほうほう、『けじめ』ですかあ……優子さんの口からそんな言葉が出てくる日が来るとは、思っても見なかったですよ」

 

 龍香ちゃんが、珍しいものを見る目で言う。

 確かに、あたしの口からはいかにも出なさそうな言葉で、どちらかと言えば優一の口から出そうな言葉ではあるわね。

 

 それはつまり、古い時代が多い協会だからこそ、責任を取るということなのかもしれない。

 

「それでそれで、取材はどうだったんですか?」

 

 龍香ちゃんが、昨日の母さんみたいにグイグイと押すように言う。

 

「ああうん、すごく平身低頭だったわね」

 

 あたしたちの機嫌を損ねないように、最大級の接待をしていたという印象だった。

 

「優子ちゃん、それどういうこと?」

 

「ああうん、どうも、マスコミ界で情報が高騰していたみたいで」

 

「ははあんなるほど、情報封鎖しすぎて『とにかく何でもいいから取材したい』という心理だったんじゃないですか? 飢餓状態では何が何でも食べ物が欲しくなるのと同じですよ」

 

 龍香ちゃんが、分かりやすい例え話をしてくれる。

 桂子ちゃんによれば、学校の様子はいつも通りだという。

 TS病について、協会が取材を受けたからと言って、学校までに影響が及ばないようだわ。

 

 教室には既に浩介くんが居て、浩介くんも特に昨日のことは話題に出さなかったし、何か配慮している。という感じでもなかった。

 

 

「はーい、皆さんホームルームを始めますよー」

 

 永原先生が入ってくる。

 結局、大きく話題になっているのはインターネット上だけで、現実ではあまりネット上の話題を出さないため、少なくとも表面的には、あたし達は平和に過ごすことが出来た。

 

 今日の授業も滞り無く終わり、あたし達は天文部へと行き、そこでもちょっと話題になっただけで、特に何もなく、自宅へと戻っていった。

 

 

 家に帰ってPCをつけてみると、インターネット上では「色々な女性と元男の女の子2人を比べてみた結果」というスレがとても伸びている。

 あの時の取材からトリミングしたと思われる、あたしと永原先生の顔写真を使い、女優やアイドル、これまでかわいいと言われていた甲子園での「チアガール」や、ミス・インターナショナルを始めとする「ミス〇〇」の女性たち、更にはどこから拾ってきたのか女子高生のプリクラや自撮り写真に貼り付けて比べ、あたしたちをダシに彼女たちをあざ笑うというかなり悪趣味な内容だ。

 

 そしてどれもこれも「うわこいつらブスすぎ」と、書かれている。

 さすがに永原先生とアイドルを比べた場合は「アイドルも結構かわいいじゃん」という擁護もあるけど……あたしと比べると、アイドルたちも色褪せてしまうらしく、そんな意見が見受けられなくなってしまった。

 

 この人達に、「協会の会合に参加すると、あたしが一番かわいいとは自信を持って言えない」と教えてあげたい。

 そしたら、どんな反応をするんだろう?

 ともあれ、当初の趣旨からはかなり脱線してしまったとは言え、少なくともあたしたち自身の感触は悪くないみたいでよかったわ。

 やっぱり、美人というのは得だというのを思い知らされた。

 

 あたしはこの日もいつも通り、ご飯を食べ、お風呂に入り、勉強をして、浩介くんとメールでやり取りして、お人形さんやぬいぐるみさん、おままごとセットで遊んで寝た。

 

 

 結局、あたしたちの日常は何もかも、変わらなかった。

 取材による悪影響は、杞憂だった。

 むしろ結果的には、協会から見ると何の労力も使わずに、直属の情報機関を得られたに等しかった。

 それを踏まえ、今後は、高島さんには「宣伝大臣」になってもらうことも考えないといけないわね。

 

 ……なんだろう、あたし、また腹黒く計算高くなってる気がする。

 以前までは永原先生の影響かなとも思ってたけど、何か違うような気もするわね。

 ……このこと、母さんや永原先生に相談してもいいかもしれない。

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