永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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小谷学園のグランドスラム 中編

「では、第2セットを開始します」

 

 前回のセットは恵美ちゃんが浩介くんのサーブをブレイクしての終わりだったので、第2セットは恵美ちゃんのサーブから。

 

 

「ふぁっ!」

 

「ふん!」

 

「「「おおお!!!」」」

 

「0-15」

 

 フォルトからのセカンドサーブを浩介くんがフォアハンドで叩きこむ。

 浩介くんが、初めて恵美ちゃんのサーブにリターンエースを決め込んだ。

 観客も拍手している。

 恵美ちゃんの顔が、一瞬引きつった気がする。

 

 恵美ちゃんは次のサーブ、ファーストサーブをきっちり入れてくる。

 浩介くんは合わせるように返す。

 恵美ちゃんは隙を伺って右に左にと振るが、なかなか掴めない。

 第一セットの時と違って、浩介くんが明らかにギアを上げてきている。

 でもそれはフットワークだけ、このゲームで返すボールはセンターの深い所に山なりの緩いボール。

 まるでバカの一つ覚えのように、ラリーでそれを続ける。

 10ショット以上ラリーが続き、最後はなんとか恵美ちゃんが決めて15-15とする。

 

 次のボール、恵美ちゃんがフォルト、セカンドサーブを強烈に返す。

 今度は恵美ちゃんも返してくる。

 浩介くんは逆を突かれたがそれを素早く対応し、スライスでつなげる。

 恵美ちゃんも体制を立て直すためのショットを打つ。

 

 浩介くんはバックハンドでまた緩いボール。

 恵美ちゃんのボールにそっと合わせるだけの、省エネ仕様だと思う。

 恵美ちゃんは、右に左に浩介くんを攻める。

 今の所、浩介くんの守備を恵美ちゃんの攻撃が破る確率の方が高い。

 だけど、あたしにも分かる。

 このまま行けば恵美ちゃんの体力がどんどん削られて、やがて一方的な展開になるんじゃないかと。

 

 

「ゲーム田村!」

 

 そうは言っても、さすが恵美ちゃん。

 体力が多少削れたぐらいでは、浩介くん相手に優位に戦えている。

 

 第2ゲーム、ここは浩介くんのサービスゲーム。

 

「ほぁっ!」

 

「うえぁー!」

 

 それにしても、ふたりとも声が大きい。

 あたしもさっき声出してたけど、この2人ほど大きな声じゃない。意図的にここまで大きな声を出すには、何か意味があるんだろうか? まあいいわ。

 

 浩介くんはサービスゲームでは時折強打を混ぜて、展開の早いテニスと遅いテニスを交互に繰り返す。

 

「アウト! 30-15」

 

 それに因るペースの乱れで、恵美ちゃんのミスも増えてきた。

 おそらく、これが浩介くんの狙い。でも、まだ恵美ちゃんのほうが有利。

 さすがに2セット連続で落とすのは浩介くんにとってかなり苦しくなる。

 更に浩介くんがサービスエースを久しぶりに決める。

 

 

「うああっ!」

 

「!!!???」

 

「ゲーム篠原!」

 

 40-15で心理的に余裕があったのか、浩介くんはセカンドサーブをファーストサーブのように思いっきり打ち、これがサービスエースになる。

 恵美ちゃんもまさかと思ったのか、動揺の色を隠せない。ともあれ、第2セットはお互いサービスキープから入った。

 

「ふぅ……はぁ……」

 

 恵美ちゃんが深呼吸している。身体を見ると、結構汗が流れていてかなりタオルで拭き取っている。

 しかし浩介くんはというと、水を飲み、軽く汗を拭くにとどめている。

 お互いポーカーフェイスだから他の観客はまだ気付いていないけど、この時点で、もう浩介くんの方がかなり体力を温存していることが分かる。

 

「浩介くん……」

 

「ああ大丈夫だ、心配ない」

 

 あたしに対して、浩介くんはそれだけを言って、試合に戻る。

 基本的に同じ攻めばかりではまずいと思ったのか、さっきの「ダブルファースト」のように奇襲戦法も織り交ぜてくる。

 

 第3ゲーム、恵美ちゃんはここをラブゲームでキープ。ファーストサーブが入ると、浩介くんもリターンは苦しい。

 浩介くんとしても、とにかく右に左に前に後ろに、揺さぶりながら繋ごうとしているが、恵美ちゃんも浩介くんの戦法に慣れてきたと思える。

 このセットはサービスキープが続く。我慢の展開だろうか?

 観客たちも、歓声が減ってきた。

 

 第4ゲーム、浩介くんの最初のセカンドサーブがリターンで崩される展開が続く。

 0-30からダブルフォルトもあって、0-40、おそらくこのセットでも最大のピンチがやってくる。

 このゲーム、1回もファーストサーブが入っていない。

 

「うあぁ!」

 

「うおっ!」

 

 浩介くんの渾身のボディーサーブで15-40としたものの、次のファーストサーブの後のストロークが甘く入り、前に出られて浩介くんがサービスゲームを落としてしまう。

 

「ゲーム田村!」

 

 浩介くんは困ったなあという顔をする。

 おそらく、このセットはキープを続ける算段だったんだろう。浩介くんは未だに恵美ちゃんのサーブを破れていない。

 

「頑張れー篠原ー!」

 

「男の意地を見せてやれ!」

 

 観客たちも、浩介くんに声援を送っている。

 

 ゲームカウント3-1で第5ゲームは恵美ちゃんのサービスゲーム。

 

「うあっ!」

 

 恵美ちゃんもここは勝負所と分かっている。もしここでサーブを落とせば振り出しに戻るからだ。

 浩介くんが相変わらずミス待ちテニスをする中で、きっちりと攻めてくる。

 ドロップショットにも追いつきながら、30-30

 

「はぁ……はぁ……すぅ……うあぁ!」

 

 恵美ちゃんの声とともに、強烈なファーストサーブが来る。

 恵美ちゃん、まだこんなに体力が残っているなんて。

 でも、浩介くんもそれに対応する。

 徐々に、恵美ちゃんからフリーポイントが消えていく。多分、他の観客も気付いていない。

 このゲーム、デュースにもつれ込んだが、それでも恵美ちゃんがこのゲームをキープ。

 こうなると、浩介くんはもうサービスゲームを1つも落とせない。

 

 しかし、第6ゲームは浩介くんのサービスエースもあって会場も盛り上がる。

 このゲームをキープした浩介くんの顔は、諦めていない。それどころか、自らが有利であるとさえ感じている顔だ。

 

 第7ゲーム、恵美ちゃんのサービスゲーム。

 ここで浩介くんは積極的に攻めに出てきた。

 

「アウト! 30-15」

 

 これまでのミス待ちテニスから一転攻勢に出ようと試みたが、ラインを超えてしまう。

 しかもこのゲームの恵美ちゃんのポイントは、全て浩介くんのミス。

 

 40-30となって恵美ちゃんのセカンドサーブ。

 浩介くんはまた合わせるだけのテニスになる。

 恵美ちゃんも「そう来るならこっちから行く」という姿勢で前に出る。

 

「……」

 

 浩介くんが黙りながら軽くロブを打ち上げる。

 

「はぁっ!」

 

 恵美ちゃんの175センチの身長を考えれば、このロブは甘かった。

 恵美ちゃんが思いっきりジャンプして、スマッシュの形になり、恵美ちゃんにサーブをキープされる。

 

 浩介くんは苦しい顔をする。おそらく、このゲーム、行けるという感じだったのかもしれない。

 だけどどうしても、恵美ちゃんのサーブを破れない。ブレイクが出来ない。

 

「まだ、足りないのか……!」

 

 浩介くんはそう言う。恵美ちゃんは何も答えない。

 しかし、最初のパフォーマンスを見ると、次のセットは明らかに浩介くんが優位に見える。

 とは言え、いかに体力的に有利と言っても2つもセットを落としながら3連取するのはメンタル的にも問題だ。

 

 第8ゲーム、ゲームカウント5-2、もしここで浩介くんがサービスゲームを落とせばこのセットも恵美ちゃんのものになる。

 浩介くんも、重圧はあるだろう。

 

「はぁっ!」

 

 しかしそれでも、やや威力を落としつつもファーストサーブの確率を上げ、恵美ちゃんの体制を崩しつつオープンコートに放り込むパターンを確立しつつあった。

 セカンドサーブでは、ストローク戦になることもある。

 その時は恵美ちゃんのバックサイドに集めている。

 恵美ちゃんも浩介くんも右利きなのでバックハンドの応酬になる。

 30-15から恵美ちゃんはバックハンドの応酬の中で一つの勝負に出た。

 

「ふぅ! てやあ!」

 

「!!!」

 

 恵美ちゃんは全速力で走り強引にフォアハンドで打ってきた。

 いわゆる「回り込みフォア」だ。

 

「アウト!」

 

「あー!」

 

 しかし、ボールは無情にもアウトになる。

 恵美ちゃんが「あー!」という声と共に天を仰ぐ。

 しかし、もし入っていれば浩介くんは為す術もなかった。

 結局次のポイントは浩介くんの強烈なファーストサーブで恵美ちゃんの返球がアウト。

 これでゲームカウントは5-3、しかし、次の第9ゲームは恵美ちゃんのサービングフォーザセットになる。

 

 浩介くんは「まずいなあ……」という顔をする。

 浩介くんは、ここまでの恵美ちゃんが手加減しているんじゃないか?

 と考えているのかもしれない。どちらにしても、ここの恵美ちゃんは全力で来る。

 

  トン……トン……トン……

 

 もう何度目かわからないこの動作。

 

「うえあぁ!」

 

「フォルト!」

 

 恵美ちゃんも緊張をしているのか、ファーストサーブが大きく外れる。

 セカンドサーブ、浩介くんはリターンエース。

 恵美ちゃんは、サーブのフリーポイントを取れなくなってきた。ほぼ全てのポイントで、ストローク戦に持ち込まれている。

 

「うりゃあ!」

 

 浩介くんが、コートの右端からフォアハンドの強烈なショットを打つ。

 

「うあぁ!」

 

 恵美ちゃんが、大きな声でそれを返す。

 ボールが浮き、浩介くんがスマッシュをする。

 

「15-40」

 

 恵美ちゃんのミスもあって、浩介くんがブレイクポイントを握った。

 恵美ちゃんの顔にも、少しだけ焦りの色が見える。

 

「すぅーはぁ!」

 

「フォルト!」

 

 渾身を込めたサーブはフォルト。

 セカンドサーブを入れるが、浩介くんが強烈に返すと、前に出る。

 恵美ちゃんは何とか返すが前に出ていた浩介くんが落ち着いて決める。

 

「ゲーム、篠原!」

 

「うおおおお!!!」

 

「すげえええ!!!」

 

「何だよあいつ、たった一ヶ月半練習しただけで、田村のサーブを破っちまったぞ」

 

 浩介くんも、雄叫びを上げる。

 ゲームカウントはまだ5-4で恵美ちゃんのリード。

 でも、お互いに1ブレイクずつだから、ほぼ並んだということになる。

 

 恵美ちゃんはただ、呆然としている。

 ここでコートチェンジになる。

 

「浩介くんすごいわ!」

 

「ああ、やっとタイミングが合ってきた。ともあれ、次キープすればこのセット、イーブンになる」

 

 浩介くんは淡々と、でもどこか嬉しそうに言う。

 一方の恵美ちゃんも、気持ちを切り替えて休息に入っている。

 とは言え、コートチェンジの間の休息時間では回復しきれないのはお互い同じ。

 

 第10ゲーム、浩介くんのサービスゲーム。

 

「はぁっ!」

 

「15-0」

 

 サービスエース。

 

「30-0」

 

 セカンドサーブから恵美ちゃんが攻めに入ったショットをことごとく拾われ、最後は恵美ちゃんがネットに掛けた。

 

「40-0」

 

 強力なファーストサーブを入れて恵美ちゃんの体制を崩し、オープンコートに置きに行って決めた。

 

「ゲーム篠原!」

 

 最後はセカンドサーブになったが、恵美ちゃんとのストローク戦で強力なショットで後ろに下がらせ、ドロップショットを使い、ラブゲームでキープした。

 浩介くんのラブゲームは初めて。

 だけど明らかに、流れが変わっている。

 観客も、それに気付き始めている。

 

 ゲームカウント5-5で迎えた第11ゲーム。

 恵美ちゃんはこのままではジリ貧だと思ったのか、とにかく攻めるテニスをしてくる。

 浩介くんの守備力を活かした戦法をされる前に、速攻で決めたい流れ。

 デュースにもつれ込み、何度か応酬があったものの、最終的には浩介くんのミスで恵美ちゃんがキープした。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 でも、ブレイクポイントも何度も許す、明らかに苦しみながらのキープという感じだった。

 浩介くんにとっては決めきれなかったゲームと言える。

 

 最終ゲームは、浩介くんがキープし、このセットはタイブレークにもつれ込んだ。

 

「強いな、篠原はよ」

 

「そうか?」

 

「ああ、たった一ヶ月半でこのあたいのサーブを破るなんて……いくらあんたが男で身体能力も優れているからって、天才でもなきゃ無理だよ」

 

「それはありがとうよ」

 

 ともあれ、タイブレークの時間。

 まずは最初、恵美ちゃんのサーブから始まる。

 

「うえあぁ!」

 

 恵美ちゃんの声とともに、ファーストサーブが飛んでくる。

 浩介くんは、緩く返す。そして恵美ちゃんを左右に走らせ続ける。

 またこれだわ、体力をとにかく消耗させる作戦。

 

 恵美ちゃんもそれを嫌って、早めに仕掛けてくる。

 そして最終的に、恵美ちゃんがバックハンドでウィナーを取りまず1-0になる。

 ここから2球、今度は浩介くんのサーブ。

 1本目はセカンドサーブで恵美ちゃんが前に出て仕掛けるが、浩介くんは落ち着いて横を抜く。

 2本目はサービスエースを再び決める。

 何だろう、最初のセットなら、間違いなく取れていたボールだけど、恵美ちゃんは追いつかなかった。

 恵美ちゃんの脚力が、落ちている。

 

 次の2本は再び恵美ちゃんのサービス。

 

「ふあっ!」

 

「フォルト!」

 

 恵美ちゃんのファーストサーブが外れる。

 そして次のセカンドサーブだった。

 

「フォルト!」

 

 浩介くんがミニブレイク。

 これでタイブレークのカウントは恵美ちゃんから見て1-3ということになる。

 

「うおぁ!」

 

「ああっ!」

 

 恵美ちゃんのセカンドサーブを浩介くんがリターンエース。

 

「ふぅー」

 

 恵美ちゃんは2つともサーブを落とし、このセット、浩介くんが取るかもしれない。

 恵美ちゃんは、明らかに焦りを見せている。

 そう、体力面で浩介くんが明らかに上だということを知っているが故の、焦り。

 

 次の2本、浩介くんはまずファーストサーブを外した。

 隙を逃さない恵美ちゃんにドロップショットを決められた。

 ここでポイントの合計が6の倍数になったのでコートチェンジになる。

 そして次の1本、浩介くんはセカンドサーブになったものの、強烈なショットを恵美ちゃんが返しきれずアウトに。

 結果的にミニブレイクを1つ許したことになるけど、まだ2-5で浩介くんが優位。

 

 次の2本、1本目は恵美ちゃんのファーストサーブからのストローク戦で浩介くんの逆を突いた。

 浩介くんはオープンコートに来ると思っていたものだから、全く反応ができなかった。

 やっぱり、試合運びは恵美ちゃんのほうが一枚も二枚も上手。

 

 2本目は、ストローク戦の果てに浩介くんがミスをしこれで4-5、しかし次の2本を決めてしまえばこのセットは浩介くんの勝ち。

 

「はぁっ!」

 

 浩介くんがファーストサーブを入れてくる。

 ファーストセットを入れられると、恵美ちゃんもお手上げということが増えてきた。

 いずれにしても、これで浩介くんのセットポイントになる。

 

 次の1本はファーストサーブがフォルト。

 

「ふぁっ!」

 

 セカンドサーブも、ファーストサーブのように打つ戦法をここで見せてきた。

 もちろん、さっきのファーストサーブよりも威力は落ちているが、奇襲にはそれでいい。

 高威力のボディーサーブに恵美ちゃんは動揺し、ボールが浮いてスマッシュのチャンス。

 

「セットバイ、篠原!」

 

「「「わああああああああああ!!!」」」

 

 チェアアンパイアから浩介くんが第2セットを取ったことを告げると、観客のボルテージはMAXになる。

 さっきまで、浩介くんは恵美ちゃんのサーブを破ることさえ難しかったのに、今やタイブレークとは言え、セットまで取ってしまった。

 

 第3セット、試合開始から90分を超え、観客の多くが浩介くんの逆転を予感していた。

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