永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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優子の新しいポスト

「ただいまー」

 

「優子おかえりなさい。歩美さん、大丈夫だった?」

 

 協会の会合から帰ると、母さんがあたしを労ってくれた。

 

「うん、強い意志が伝わってきたわ。後は学校次第よ」

 

 もちろん、高島さんの記事が過剰な圧力にもなり得る。

 学校側が、さらに態度を硬化させ、最終的には司法の解決になってしまう可能性もある。

 そうならないためにも、ストレートニュースにとどめた。考えてみれば、あたしたちが取材を受けた時も、あるいはたまに協会が情報を流した時も、高島さんが流したニュースはほとんど全てでストレートニュースで、高島さん個人の見解は入っていない。

 

 あたしは、ご飯を食べて、ブライト桜にアクセスする。

 まだ約束の時間にはなっておらず、記事はアップロードされていない。

 PCの右下の時計を見つつ、あたしは少しだけ時間をつぶす。

 やっぱり少し緊張する。

 

「おっ!」

 

 そして数分後、F5ボタンを押すとトップページが変わっていた。記事は確かに、あの時と変わらない内容でアップロードされていた。

 見出しは単に「日本性転換症候群協会が高校に抗議文」とあるだけで、一見すると、大したことのないニュースにしか見えない。

 

「さて、2つ目の切り札を切ったわね。学校側はどう出るかしら?」

 

 反応が出るまで時間がかかる。

 記事のアップロードは確認したので、あたしは一旦、時間つぶしも兼ねてお風呂に入ることにした。

 

 お風呂の中でも、高島さんのことを考える。

 高島さんは、あたしたちがどうしてもつなぎとめておきたい存在だけど、一つだけ不安がある。

 それは、高島さん自身の問題ではない。

 今回こうして組織的な圧力をかけた以上、他のマスコミがあたしたちの取材拒否姿勢に対する対抗措置としての、「しゃべる机」の攻勢を強める恐れだ。

 そうなった時に、協会としても何らかの自衛策を講じる必要性も考えられる。

 高島さんの「ブライト桜」だって他のメディアから妬まれていることは容易に想像がつく。

 

 

「ふう、どうなったかな?」

 

 あたしはお風呂から上がると、掲示板などの反応を見てみた。

 どうやら、まだこっちの方は大きな話題にはなっていないみたいね。

 つぶやくサイトのほうを見る。お、こっちは反応があるみたいね。

 

「しかしこれひでえな、転校すればよくね?」

 

「FF外から失礼します。転校した場合、将来的にこの学校や似たような無理解の学校で同じ患者が出てきた時に問題になりますので引くに引けないのです」

 

「女性になったばかりは、周囲に詳しい経緯を知っている人が患者の治療に役立つんじゃね?」

 

 早速、蓬莱教授の宣伝部が動いているわね。

 

「そもそもこの患者さん、心も体も女だろ? 何の問題があるんだ? 病名は『完全』性転換症候群だろ?」

 

「女の子を女の子扱いしろ言ってるだけじゃん、別にトランスジェンダーでもなくて生物学的にも女の子なんだろ?」

 

 やっぱり、協会側に好意的な意見が多いわね。

 他にも「学校側の会議中って、要は時間稼ぎだろ」という意見もあった。

 ふふっ、今頃、学校には抗議電話が殺到しているはずね。

 

 あたしは、もう一度さっきは反応がなかった掲示板を見ると、そこにはスレが立っていた。

 記事名は「我らが合法ロリ巨乳美少女、永原マキノちゃんが会長を務める日本性転換症候群協会が、高校に抗議文を出す」とある。

 なんだか、随分と永原先生が推されているわね。

 あたしは掲示板のレスを見てみる。

 

「あー、とうとうあの美少女協会が怒ったか」

 

「でもさ、こういうケースってよくあることだよね? こうまでして押し通してよかったんか?」

 

「でも、優子ちゃんとマキノちゃんを怒らせたこいつら死すべき慈悲はない」

 

「しかし優子ちゃんっていうのは何度見てもすげえ美少女だよな」

 

 このスレには、おおむねあたしたちに好意的な書き込みが多い。あたしや永原先生の画像のURLもまた貼られている。

 

 あたしは一つの法則に気付く。

 たまに批判的な書き込みがあると、即座にあたしたちの容姿について書き込まれていて、「優子ちゃんかわいい」「マキノちゃんかわいい」と連呼している。

 よく見ると、それらの書き込みをしている人は、みんなIDが異なるいわゆる「単発」が多い。

 つまり、これらの書き込みが蓬莱教授の宣伝部によるものね。

 

「ふう」

 

 取りあえず、あたしはインターネットでの巡回をやめた。

 おそらく、インターネットは大丈夫。後は既存のマスコミがどう出るかにかかっているだろう。

 あたしは、日常に戻ることにした。

 

 

 翌日、朝のニュースには、今回の騒動は報道されなかった。

 もちろん、これはかえって好都合で、既存のメディアに報道されなかったからといって、インターネットの住人が知らなくなるというわけではない。

 下手に既存のメディアに印象操作されるくらいなら、報道されないほうがマシだし、好意的な報道でも「無能な味方」になる危険性を考えれば無視されるのは理想的な展開と言ってもいい。

 そしてインターネットの反応は学校への批判一色になっていた。元々あたしたちに好意的な空気があった上に、蓬莱教授の宣伝部による工作もあったんだから、こうなるのは当然かもしれないけど。

 あたしや永原先生、他の協会幹部の写真が拡散され、歩美さんも美少女だというのは容易に想像がつく。

 やはり、インターネットは美少女にはとことん甘いわね。

 ともあれ、学校はいつも通りに行かないと。

 

 

「おはよー」

 

「優子ちゃんおはよう。うまくいきそうか?」

 

 浩介くんがあたしに聞いてくる。

 

「うん、大丈夫、作ったばかりの蓬莱教授の宣伝部も活躍してくれてるわ」

 

「よかった」

 

 

  ガラララ……

 

「はーい、ホームルーム始めますよー!」

 

 永原先生の号令とともに、今日も学校の一日が始まった。

 

 

  キーンコーンカーンコーン……

 

「はい、今日はここまで」

 

「うーん!」

 

 最後の授業が終わり、あたしは背伸びをする。

 どうやら、小谷学園にも特に大きな変化はないみたいで、噂話にもなっていないため、あたしはホット安堵した。

 もしかしたら、小谷学園では「ブライト桜」の知名度は低いのかもしれない。

 

 

「石山さん、ちょっといい?」

 

「はい、ごめん桂子ちゃん」

 

「うん」

 

 そして天文部の活動中、あたしは永原先生に呼び出された。

 

「たった今比良さんから連絡があって、学校側が山科さんを女子更衣室に入れることを決めたわ。やはりネットの記事を見た人たちの抗議電話が殺到したのが効いたみたいよ」

 

「そう、よかったわ!」

 

 あたしが心の底から安心して言う。

 本当に良かったわ。

 

「それで、石山さんにお願いなんだけど」

 

「はい」

 

「今回は既存のマスコミが追尾しなかったのがよかったわ。だけど次はうまくいくとは限らないし、協会でも、広報部が必要だと思ったの」

 

「ええ」

 

 永原先生は、つまり協会にも蓬莱教授の宣伝部が必要ということ。

 今までは注目度も低く、知名度だけ高かったTS病なので、広報宣伝活動はしていなかった。

 

「正会員のポスト……今、平なのは石山さんだけでしょ?」

 

「あ、うん」

 

 少し前までもう一人いたけど、今は別の役職に就いているので確かにあたしだけ平の正会員だ。

 

「それで、石山さんに協会の広報部長をしてほしいのよ」

 

「え!? あ、あたしには無理ですよ」

 

 永原先生の突然の要請に思わず「無理」と口にする。

 宣伝活動の重要性は分かっているし、まだ未成年のあたしがそんな重要なポストの長になるなんて気が重くなるのも事実だわ。

 

「大丈夫よ。実際には、私と比良さんが主に決めるわよ。石山さんはいわば高島さんの所から取材が来た時に『広報部長の石山優子さん』って書かれるのが役目よ」

 

「もしかして、あたしの知名度を使って?」

 

「ええ、石山さんは美少女揃いの私たちの中でも一番の美少女だもの。今後は写真撮影も入るわよ。ただし、広報部を作るのは一番早くても来年度、石山さんが卒業してからよ」

 

「はい」

 

 どうせもう、顔はネットに流出しちゃっているし、仕方ないわよね。

 そう言えばあたし、蓬莱教授にも同じような仕事頼まれたわよね?

 やっぱり、美少女って見栄えがいいもんね。

 

「じゃあ、私からは以上よ」

 

「はい」

 

 あたしは天文部に戻り、浩介くんたちにことの顛末を説明した。

 

「ふう、優子ちゃんが広報部長か、いいんじゃねえの?」

 

 広報部長のことは、浩介くんも納得しているみたい。

 まあ、浩介くんも、嫉妬ばかりしててもしょうがないもんね。

 

「優子ちゃん、頑張ってね」

 

「うん」

 

 桂子ちゃんがそう締めると、以降この話題は出てこなくなった。

 天文部の日々は、今日も平穏に続いていく。

 

 

 翌日、高島さんは、歩美さんの学校があたしたちの要求を受け入れることを報道し、最後の一文、「これで事態は鎮火に向かうだろう」という予測を書いたのを除けば、やはりほぼストレートニュースになっていた。

 インターネットでも、学校側の対応を素直に評価する書き込みが殺到し、事態は一斉に撤収モードに入った。

 昨日まであんなに批判してたのに、客観的にも適切な対応とは言え学校が対応するだけでこの絶賛ぶりはちょっとやりすぎな気もする。素直なのはいいけど。

 

 多分、蓬莱教授がそうしたんだろう。ここで学校に対し「遅い」などという追い打ちをかけるのは、まずいということ。

 良い対応をすれば素直に絶賛し、それ以上は追求しない。この精神で行えば、意固地になる人も少なくなるという作戦になっている。

 

 一方で、11月になって季節はますます寒くなっていく。必然的に、制服もストッキングにする生徒が増えてきた。

 あたしたちにはもう中間試験、期末試験、そして卒業式くらいしか学校のイベントはないけど、クリスマスにバレンタイン、また他の生徒はセンター試験もあるとあって、みんな勉強に余念がなくなってきた。

 

 桂子ちゃん、天文部に入り浸ってて大丈夫なのかな?

 まあ、佐和山大学なら、そんなに問題じゃないかな?

 桂子ちゃんも、あまり成績悪いというわけでもないし。去年の坂田部長もそんな感じだったものね。

 それよりも、そろそろ来月のクリスマスに向けて、何か考えたほうがいいかもしれない。

 

 

「浩介くんは、この季節どうしてる?」

 

「うーん、家で休んでることが多いかな? 卒業に向けての勉強はもちろんしているけど」

 

「うん」

 

 卒業に向けてということで、クリスマスはあたしと浩介くんで勉強会を開こうかなとも思っている。

 

「ともあれ、歩美さんと話をしないといけないわね」

 

「そうだな、応援することしかできねえがその……頑張れよ」

 

 浩介くんがあたしの心の支えになってくれている。

 

「ありがとう」

 

 

 あたしは家に帰り、歩美さんの家にテレビ電話をかける。

 

「はい、山科です。あ、石山さん!」

 

 歩美さんがあたしの顔を見て明るい表情になる。

 

「歩美さん、今日の学校はどうだった?」

 

「はい、皆さん、私におめでとうって言ってくれました。一緒に着替えた時は……嬉しくて、涙が出てしまったわ」

 

 歩美さんが、女の子の言葉遣いになってきている。

 受け入れられた時の歩美さんの喜びぶりは多分計り知れないものがあると思う。

 実際に経験したあたしでも、ね。

 

「そう、よかったわ」

 

 歩美さんは、「女性として生きていきたい」「赤ちゃんまで産めるのに、どうして男と言い張らなきゃいけないのか?」と言ったことをクラスメイトに訴え続けた。

 その結果として、やはりあたしと同じケースになった。

 過去はともかく、今は女の子として生きていきたいという気持ちが強いことを示せば、歩美さんの扱いも自然と変わってくる。

 こういうのは、大人よりも中学生や高校生の方が物分かりがいいみたい。

 

「あの、もしかして、石山さんも以前同じようなことがあったんですか?」

 

 あたしのホッとした表情に、歩美さんが聞いてくる。

 

「ええ、あったわよ。今の恋人だって、最初はあたしのこと男扱いしていじめてたのよ」

 

「え!? そうだったんですか!?」

 

 歩美さんが驚いて聞いてくる。

 

「ええそうね、歩美さんが今後数十年数百年と生きていく中で、後輩を指導することもあるかもしれないから、話しておくわね」

 

 あたしは、カリキュラムが終わって復学した時の周囲の反応や、エピソードを思い出しながら話す。

 ただ、今みたいにTS病の注目度が高いわけでもなく、ある種の都市伝説扱いだったことも考えれば、実際の所、まだ2年も経っていないけど、あたしのこのエピソードは既に時代遅れになりつつある。

 

 それでも、歩美さんはあたしの古い苦悩について、真剣に聞いていた。

 そして、あたしを一番にいじめていた男の子は、あたしを一番に守ってくれた男の子で、今はもう、大好きでたまらないということも。

 

「あたしにも、女の子として、好きな男の子が出来たわ。ほら、あたしが左手にはめてるこれも、彼からもらったものよ」

 

「わあ、指輪ですか! もしかして私も、いつかは――」

 

「ええ、あなたもいつかは女の子として男の子に恋をして、恋愛を楽しむのよ」

 

 でも、そこで立ちふさがる種々の問題もある。

 そのうちの寿命問題については、現在研究中なのは示した通り。

 

「反射的に男の感覚が残ってしまう……」

 

「ええ、今の歩美さんは多分、まだ男の子を好きになるという感覚は分からないと思うわ」

 

「はい、やっぱりまだ、女の子として、男を好きになるというのは、分からないです。どうしても、女性により大きな魅力を感じてしまいます」

 

 歩美さんが正直に告白する。

 

「いい? 焦りすぎちゃダメよ。あたしも、女の子になりたい一心だったから、男の子に恋した時は本当に嬉しかったわよ。でも、反射的な本能は、そう簡単についてきてはくれないわよ」

 

「うー、難しそうだなあ……」

 

「まあ頑張ってね、大丈夫よ。時間はかかるけど、ね」

 

「は、はい! それでは、失礼します」

 

「はーい」

 

 そう言うと、歩美さんがテレビ電話の電源を切った。

 

「ふう……あれ?」

 

 電話の機器を見ると、歩美さんと話している間に、着信があったらしい。

 よく見ると、それは幸子さんの番号だった。

 

「どうしたんだろう?」

 

 今まで、幸子さんはあんまり連絡はよこしていなくて、専ら、近くに住んでいる余呉さんと、東北支部で行動を共にしていることが多い。

 カウンセラーのあたしに電話を掛けたという事は、何か問題でも発生したのかなと思い、すぐに折り返しで連絡する。

 

「はい、塩津です。あら石山さん、お久しぶりです」

 

 テレビ電話に出たのは幸子さんのお母さんだった。

 

「すみません、幸子さんいますか?」

 

「ええ、幸子ー! 石山さんよー!」

 

「はーい!」

 

 久しぶりに聞いた幸子さんの声、テレビ画面の中には、パジャマをかわいらしく決めた美少女が立っていた。

 個人的には歩美さんよりも幸子さんの方がオシャレしている分かわいいと思う。

 

「幸子さんどうしたの?」

 

「うん、久しぶりに石山さんの声を聴いてみたくて……だめですか?」

 

「ううん、もちろんいいわよ……幸子さん、元気そうで何よりだわ。そっちは元気?」

 

「はい、大学も順調に単位が取れています」

 

 幸子さんが笑顔で言う。

 この美貌なら、就職先は困らないだろう。特にここ数年はずっとは売り手市場だし。

 

「それは良かったわ」

 

「私ももう、女の子になって1年が過ぎたし、家族で小さなパーティはしたんですけど、大学とか協会が忙しくて、ね」

 

「そっちの協会では何してるの?」

 

 少し気になって聞いてみる。

 

「はい、主にTS病について、大学の講演会に出たり、理解を深めてもらうための研究会などもしています。私が入ったばかりはそういうのはあまりなくて、患者さん同士の交流会が主だったんですが、最近はこの病気の注目度が上がってますから」

 

 どうやら東北も東北で大変みたいね。

 

「どんな講演なの?」

 

「私が所属している大学で、TS病について、私の体験談を語ったりしています」

 

 ん? もしかして私のことも出るのかな?

 

「へー、じゃあもしかして――」

 

「はい、石山さんにひっぱたかれたこととかも話してます。カリキュラムのこととかもね。厳しい教育だったけど、それがなければ自殺だったことを考えれば、何てことなかったって言っているわ」

 

 や、やっぱりそうよね。

 あたしも、カリキュラムは厳しかったけど、カリキュラムを重ねることで女の子らしくなれるのはとても嬉しかった。

 そう言えば、幸子さん、かなり女の子の言葉になってるわね。

 やっぱり自分が診た患者さんの成長は嬉しく思える。

 

「それで、他の人の反応はどう?」

 

 あたしは問題の確信に迫ってみる。

 

「うん、『他に生き方はないのか?』っていう質問は多いけど、それについてはちゃんと『ない』と言っているわ」

 

「そう……ねえ幸子さん」

 

「ん?」

 

「実はね、さっき話し中だったでしょ? 実はあの時、別の患者さんと話してたのよ」

 

「へえ! どんな人ですか?」

 

 幸子さんが興味津々に聞いてくる。

 

「うん、あたしの一個下の女の子よ。ただ、その子は学校とちょっと問題があってね……」

 

「あ、余呉さんから聞いたわよ。更衣室の問題ですよね。あれ、石山さんの担当だったんですね」

 

 やはり、協会経由で幸子さんにも話が入っていたみたいね。

 

「はい。結局、学校側が折れてくれました」

 

 最終的に、司法まで行きつかなくてよかったとも思う。

 

「ええ、ですけれども、やはりマスコミは心配です。今協会は1社だけ取材を許可してますけれども、このままでは他社からも癒着の指摘は必ず出てくると思います」

 

 幸子さんが心配そうに言う。

 

「いえいいんですよ。ストレートニュースばかり報じさせているのもそんなところを想定しているんです」

 

「それでも、ですよ。もちろん、私たちもできる限りのことはするけど、石山さんも、高校を卒業したら広報部長ですよね?」

 

 どうやら、そんなことまで回っているらしい。結構狭い世界よねやっぱり。

 

「ええ、十分気を付けるわ」

 

「うん、それじゃあ、失礼します」

 

「はーい……ふうー」

 

 幸子さんと通話を終え、あたしは一息つく。

 確かに今、あたしたちはマスコミの「しゃべる机」による風評被害を受けてはいる。

 もちろんあまりにひどいものは「ブライト桜」を経由し、反論声明を出しているが、いかんせん、一時期ほどの力はないにせよ、テレビや新聞の影響力は馬鹿にできない。

 

「ともあれ、何も起こらなければいいけど……」

 

 あたしは、自分がカウンセラーとして面倒を見た2人の女の子と電話してみて、そんな風に思った。


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