永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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結婚式 前編

 更衣室の中には鏡や化粧用品などが所狭しと並んでいた。

 そして、あたしが着ることになるウェディングドレスもそこにあった。

 そして、中にはスタッフさんも2人いる。

 

「それじゃあ、失礼いたしますね」

 

「え?」

 

 スタッフさんの1人があたしに近付いてくる。

 

  がばっ……

 

 あたしは、制服を掴まれてそのままボタンを一個一個丁寧に外される。

 正直言って、ものすごい恥ずかしい。

 

「あ、あのっ! 1人で出来ますから!」

 

 まさか、最後に学生として制服を脱ぐのは、他人の手によるものとは思わなかったわ。

 

「遠慮しないで下さい。今のあなたはお姫様です、今日はお姫様の晴れ舞台です。どうか私たちにお任せください」

 

 そんな風に言いながら、あたしは優しい手つきで制服のブレザーとブラウスを脱がされていく。

 

「はい、バンザイして下さい」

 

「……」

 

 スタッフさんの優しい声に、あたしはすっかり子羊になってしまう。

 

「こちらも失礼しますね」

 

「やっ……」

 

 あたしはスカートに手をかけられて、ゆっくりと丁寧に下されていく。

 あたしは真っ白なブラジャーとパンツの姿にさせられる。

 

「座ってもらえますか?」

 

「はい」

 

 言われるがままに椅子に座り、あたしはゆっくりと靴下を脱がされる。

 あたしはふと母さんを見る。

 母さんは物凄い感激した目つきをしている。

 ……見なかったことにしよう。

 

「もう一度、立ってもらえますか?」

 

「は、はい」

 

 そして次にやって来るのは、ウェディングドレス用の下着に付け替える作業。

 今のあたしはお姫様なので、もちろん下着も「召使い」が取り替えてくれる。

 昔の人って恥ずかしくなかったのかしら?

 

「はい、足を上げてください」

 

「は、はい……」

 

 あたしは、大事な部分を隠しつつも、足を上げてパンツを脱がされるのを手伝う。

 これであたしは、すっぽんぽんになった。他人の手で全裸に剥かれたのはスキー合宿の時に浩介くんにされて以来だった。

 

「はい、ではこちらに着替えてください」

 

「はい」

 

 ウェディングドレス用の下着と言っても、色はあたしがさっきまで穿いていた白で同じ色、だけど、見るからに素材が違う上に、白さもこっちの方が純白だった。

 

「足を通しますね」

 

「はい」

 

 あたしは、スタッフさんに、まずパンツを穿かせてもらう。

 穿き心地は、今までに無いほど、素晴らしくフィットしていた。

 初めて女物のパンツを穿いた時以上に衝撃的だったかもしれない。

 そして次にブラジャー、こちらは肩を露出するドレスの都合上、変わったデザインをしている。

 

「はい、じゃあ次はドレスに行きますね」

 

 そしていよいよメインのドレス、こちらは化粧担当の人と2人がかりで着せていく。

 このドレスは、何から何まで純白で、あたしの黒い髪と白い肌に何よりも似合っていた。

 ただ着せておしまいではなく、スタッフさんは何度も構図をチェックして、状態を確認している。

 

「うーん、これでいいかしら?」

 

 スタッフさんが母さんに確認を取る。

 

「あら、かわいいわね」

 

 母さんも異議を唱えない。

 

「じゃあ、お化粧しますね。こちらにお座りください」

 

「はい」

 

 あたしは言われるがままに椅子に座ると、化粧担当の人が用具を出してくる。

 カリキュラムの時に、母さんに半ば強引にさせられて以来のお化粧。

 スタッフさんには、「じっとしていてください」と言われたので、あたしはその通り、目をつぶりながら結婚式のことを考えた。

 

「はい、終わりです。どうですか?」

 

 目の前の鏡で、あたしを見る。

 

「うーん、あんまり変わらないような気がします」

 

 失礼かもしれないと思いつつ、言わずにはいられない。

 

「あはは、そうでしょう? 正解です。実際このメイクは、深層心理に働きかけるくらい小さな変化なんです。ですけれども、式の進行とともにボディーブローのように効いてくるんですよ」

 

 どうやら、模範解答だったらしい。

 こういうタイプの化粧を選ぶのは、よっぽど素材がいい人だけだとか何とか。

 

「さ、続いてはこちらです」

 

 次にやってきたのは頭の飾り、頭に白のティアラと、後頭部にはレースがあるけど、あたしのトレードマークになっている頭の白いリボンもそのままで、頭の白いリボンもこのウェディングドレスの一部になった。

 

 着替えには、かなりの時間を要した。時計を見ると、開場時間を既に過ぎていた。

 

「はい、これで全ての着替えが終わりました。では、新婦様こちらの部屋にどうぞ。お母様は別室でお待ちください」

 

「「はい」」

 

 母さんが部屋から出る。あたしは、ゆっくりと立ち上がって、恐る恐るウェディングドレスで歩いてみる。

 ウェディングドレスの中には、地面についちゃうくらい長いのもあるけど、これはそこまでではないので、一人で歩くことも出来る。

 あんまり長いと、初夜の時大変だものね。

 

「では開けますね」

 

 スタッフさんが大きな扉を開ける。入った時とは違う別の扉。

 部屋の中には新郎姿の浩介くんが1人で座っていた。

 スタッフさんはもう、付いて来ない。新郎新婦ご入場まで、ここで2人っきりになる。あたしは部屋の中へゆっくりと歩いていく。

 

「あっ……」

 

 あたしに気付いた浩介くんが立ち上がると、言葉を失っていた。

 

「どう……かな?」

 

 あたしは顔を赤くしつつ、少しだけドレスをつまんで、感想を聞いてみる。

 

「あ、あっ……優子ちゃん……その……」

 

「うん」

 

 褒められると分かっていても、やっぱり緊張してしまう。

 

「今までも、『優子ちゃんってかわいいなあ』とか、『優子ちゃんは美人だな』とか、『優子ちゃんはきれいだな』って思ってたけど、もう、どんな言葉も陳腐に聞こえちゃうくらいだよ。もう、俺の頭では何と表現していいのかわからないよ」

 

 浩介くんがあたしに、最高級の賛辞を言ってくれる。

 

「うん、ありがとう」

 

 普段なら「もー言い過ぎだよ」と言っちゃいがちかもしれないけど、今日は一生に一度の花嫁姿だもん、素直に受け止めないといけないよね。

 扉の向こうでは、内容までは分からないけど既に話し声が聞こえていた。

 みんなこの結婚式を待ち望んでいる。

 どんどんと、話し声が大きくなっていく。

 

  ガチャッ

 

「間もなく、開始です。ご準備ください」

 

「「はい」」

 

 後ろの扉から男性のスタッフさんが2人入ってくる。

 扉の前に立ち、ここを開ける役目を担う。あたしたちは立ち上がって、開始を待った。

 

 

「ではまず、新郎新婦のご入場です!」

 

 奥から司会者の男性の声が聞こえると共に、荘厳な音楽が流れ、扉が開かれる。

 扉の向こう側には、広い会場に、数え切れないほどの人数の人々が、あたしたちに向けて万雷の拍手を鳴り響かせていた。

 

 浩介くんと手をつなぎながら歩く。

 リハーサル通り、新郎新婦の席は一番奥、どこからか大量の紙吹雪が舞う、あたしのドレスにも、浩介くんのスーツにも付く。

 眩しすぎて、結婚式の参加者の顔が見えない。

 まるで、ここには隣の浩介くんとあたししかいなくて、周囲は音しかしていないんじゃないかって思えてくる。

 周囲から聞こえてくる話し声も、きっとただの録音テープの一環に聞こえて来てしまう。それくらい、今のあたしは周りが見えない。

 

「おめでとう!」

 

「優子ちゃん! 本当におめでとう!」

 

 でも、時間とともに次第に意識が現実に引き戻されていくと、あたしは結婚式で大勢の人に祝福されていたのが改めて分かる。

 殆ど会っていなかったあたしの親戚の人達もいる。あたしが女の子になってから、会うのは初めてだ。

 みんな一様に、驚いた顔をしている。

 そうだ、親戚のみんなあたしが女の子になったことは知っていたけど、みんな協会のことを知っているとは限らない。

 女の子になった写真も見たとは思うけど、やはり実物を見ると違うのかもしれない。

 浩介くんの親戚の方も、あたしを見るとみんなとても驚いている。

 

 

「おいおい、まさかと思ったけど、あいつが付き合ってた優子ちゃんって、あの優子ちゃんじゃねえかよ」

 

「実物はもっとかわいいしおっぱいもでけーじゃねえか。くそー、うらやましいったらありゃしねえぜ」

 

 

 浩介くんの従兄弟と思われる人たちの羨ましがる言葉が聞こえてくる。

 

 あたしたちが、所定の一番前の席に座ると、拍手喝采が、ようやく収まり始める。

 よく見ると、そこは教会のようになっていた。

 ここはメインの会場ではないことは、分かっている。

 

 神父風の服を着た人が現れる。

 あたしたちは、立つように促される。

 

 あたしたちは、群衆に背を向ける。これから、「誓い」をすることになっている。

 

「新郎さん、あなたはこの女性を愛し、病める時も、健やかなる時も、貧しい時も、尽くしますことを誓いますか?」

 

 神父さんが浩介くんに問いかける。

 

「はい、誓います!」

 

 浩介くんが力強い言葉で言う。

 こんなこと、問いかけられなくたって分かっている。

 

「新婦さん、あなたはこの男性を愛し、病める時も、健やかなる時も、貧しい時も、尽くしますことを誓いますか?」

 

「はい、誓います!」

 

 あたしにも同じような問いかけをする。

 

「病める時も、健やかなる時も、貧しい時も、死が2人を分かつまで、永遠の愛を誓いましょう」

 

「「はい」」

 

 あたしは、滅多に病まない、そして事故と事件にさえ気を付ければ、死もない。

 この結婚式場に蓬莱教授がいるかは分からないけど、あたしは改めて実験の成功を願った。

 さすれば、当分は「死が2人を分かつまで」とはならないはずだ。もちろん、不慮の事故に巻き込まれる可能性は、常に考慮しないといけないけど、無謀な行動をしなければ数百年は大丈夫のはず。

 

「では、こちらの指輪を、お2人に授けます」

 

「「はい」」

 

 預けていた婚約指輪が元に戻り、結婚指輪になった。

 中を見ると、今日の日付、「2017/3/16」と、「Kousuke to Yuko」という文字が書いてあった。多分、浩介くんの指輪の方には「Yuko to Kousuke」と書いてあるのかな?

 

「それでは、新郎新婦は近いのキスを」

 

「「はい」」

 

 神父さんに促され、あたしたちは肩を寄せ合って近寄っていく。

 浩介くんの手があたしの腰にと当たる。

 

「んっ……じゅるっ……」

 

「ちゅっ……じゅううっ……ちゅぱっ……」

 

 リハーサルでは、「キスをする」で終わっていたけど、自然とディープキスになる。

 多分、本来の想定なら軽いキスだと思うんだけど、あたしたちにはそんなことはどうでもいい。

 

「ちゅっ……じゅうっ……ちゅぱっ……れろっ……ぷはっ……」

 

 唇が離れ、唾液の糸が垂れ下がる。何度も何度も見た光景でも、緊張はいつも同じ。

 外のことなんてもう見えない。この人と、ずっとキスをしていたい。

 

「え、えっと……ありがとうございました」

 

 神父さんの声であたしたちは我に返る。

 

「うわー、アツアツだよあの2人」

 

「うー、とんでもないものを見ちまったぜ」

 

「でも、その日の夜はさ……」

 

「もういい、皆まで言うな。俺が惨めになる」

 

 よく見ると会場もひそひそ話をしていて、浩介くんの親戚と思われる男の人達があたしたちのキスについて話していた。

 

「それでは、誓いの儀式を終了いたします」

 

 神父さんの締めの言葉と共に荘厳な音楽が再び流れる。

 と言っても、テープで録音したものみたいだけど。

 

「では、こちらへどうぞ」

 

 あたしたちは、メインの会場へと移動する。

 まずあたしたちを先頭に、集団で移動するわけだけど、参加者が多いので数回に分ける。

 あたしは改めて、歩きながら参加者の集団を見る。

 あたしや浩介くんの親戚たち、幼馴染の桂子ちゃんとその家族、そしてさらに奥には制服姿のクラスメイトたちや後輩たちの姿も見える。

 天文部の仲間も、全員参加していた。

 更に学生組の中に混じって、去年卒業した私服姿の坂田元部長や守山前会長の姿まであった。

 

「おめでとう」

 

「優子ちゃんおめでとう」

 

「篠原先輩おめでとう!」

 

 学生たちの祝福の声が聞こえる。

 学生集団の後ろの方には先生たちがいて、校長先生はもちろん、教頭先生や小野先生といった多くの先生方に、更に用務員さんや食堂のおばちゃんまで駆け付けてくれていた。

 そしてその後ろにいたのは、蓬莱教授と助手の瀬田さん、更に知らない顔も何人か見える。

 もしかしたら、研究所の関係者かもしれない。

 更に蓬莱教授の集団から通路を挟んで右側には高島さんとあの時のカメラマンさん、他にも彼の近くにいる知らないおじさんたち、きっとブライト桜の関係者だと思う。

 そして扉から一番近い最奥部には、永原先生を筆頭に、比良さん、余呉さんをはじめとした正会員の全員と、会合でもよく見る首都圏の普通会員たち、そしてその中に混じって幸子さんをはじめとした塩津家の人と、歩美さんをはじめとした山科家の人たちまで結婚式に来ていた。

 

 そんな風に多くの人に見送られながら、あたしたちは、行列の先頭を歩く。

 メイン会場の扉の前に付くと、先行していたスタッフさんが扉を開けてくれて、あたしと浩介くんは会場の奥の方の一番目立つ席に座った。

 他の参加者たちも、随時所定の位置へと座っていく。

 

「さあ、新婦の方はこちらを投げていただきます」

 

「はい」

 

 渡されたのはブーケ、「これを投げると次に結ばれる」何て言う習慣があるらしいわね。

 独身の女性陣が、集まってくる。特に学園の女の子が多い一方で、龍香ちゃんが興味なさげで集団から離れていて、自信がうかがえるわね。

 

「そーれ!」

 

 動きにくいウェディングドレスを使って思いっきり後ろに高く投げる。

 

  おー! おー!

 

 男女の掛け声が聞こえてそして――

 

  わー!!!

 

 どうやら誰かがつかんだらしい。

 あたしは、後ろを振り向く。

 

「優子ちゃんありがとう」

 

「うん」

 

 持っていったのは、桂子ちゃんだった。

 

「さあ、料理の方も冷めてしまわないうちに食べましょう。それではですね、えー皆さん、グラスを持ってください」

 

 司会の人たちの指示に、あたしたちは大慌てで席に戻って、グラスにジュースを注ぐ。

 

「それではですね、篠原浩介さんと篠原優子さんのご成婚をお祝いいたしまして、乾杯!」

 

「「「乾杯!!!」」」

 

 割れんばかりの乾杯の声と共に、あちこちでグラスが叩かれる音がする。

 あたしたちも席に座り、料理を食べることにした。

 

「はむはむ……うん、おいしいわ」

 

 高級ホテルで作る料理ということもあって、かなりおいしい。

 お昼に食べた高級イタリアンや、修学旅行の時の神戸のお肉屋さんに匹敵すると思う。

 

「これ、いけるな」

 

 浩介くんもおいしそうに頬張っていた。

 でも、浩介くんは「食い気より色気」と言わんばかりに、強調されたあたしの胸をちらちらと見ている。多分、間違いなく下半身も興奮していると思う。

 学校のみんなをはじめ、男性参加陣も、ほとんど全員があたしの胸に釘付けになっていた。

 でも、浩介くんは全く嫉妬している様子はない。それもそうだ、これは「見せつける」ための儀式だもの。

 浩介くんにとって、この場は「優子ちゃんは俺だけのものだ」ということをアピールする場所であると同時に、あたしにとっても「浩介くんはあたしだけの旦那さん」ということを、アピールし、そして夫婦生活を始めることで愛を見せつける場所でもある。

 だから今は、あたしが注目されればされるほど、浩介くんはご機嫌になる。

 他の男達はあたしを取ることは絶対にできないということを自覚する。それは、浩介くんにとって男としての自尊心を最大限に引き出すことだと思う。

 

「ねえ浩介くん?」

 

「ん?」

 

「もしかして、浩介くんが一番食べたいのって、あたしじゃないの?」

 

「ギクッ……あ、当たり前だろ……」

 

 浩介くんが図星を突かれ、抵抗もなくすんなり肯定してくる。

 

「あはは……」

 

 参加者の何人かは食べながら、あるいは食べ終わりつつ周囲の人と雑談を始めている。

 ここからの結婚式は、メインのイベントへと写っていくことになる。




この章は第七章同様そこまで長くならない予定です。
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