永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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新婚旅行最終日 長き帰路 前編

「うーん……」

 

 薄暗い部屋の中で目を覚ます。

 外は視界が悪く、よく見えない。曇った窓を拭いて見たら、雪が降っていたのが分かる。

 隣のベッドの浩介くんはまだ寝ているので、あたしは旦那を起こさないように、慎重に部屋を出る。

 起こすにしても、まずは着替えてからよね。

 

 そんな風に思い、あたしは今日の服を考える。

 と言っても、今日が最終日なので、着る服は実質1パターンだけ。

 この茶色いジャンパースカートと、白のブラウスの組み合わせ、赤い服と同じくらい幼めに見えるので、あたしはぬいぐるみさんを取り出す。うん、ぬいぐるみさんを抱えていると、余計にこの服は映えるわね。最初のデートの時もそんな感じだったっけ?

 

 よし、浩介くんを起こしに行こう。

 あたしは、もう一度寝室に戻る。

 

 浩介くんは、まだ寝ていた。

 

「浩介くーん、起きてー、朝よー」

 

 あたしは浩介くんの耳元でささやく。

 

「んぅー、優子ちゃん、それやばいって……あううー」

 

 浩介くんが寝言を言う。あたしの夢を見ているのかな?

 

「優子ちゃんのおっぱいふかふかまくらー、ふへへへへ」

 

 むー、浩介くんったらえっちな夢見てるわね!

 

「あへへへへ、優子ちゃん気持ちいいよおーもっとー!」

 

「浩介くんのえっち! そんな夢見てないで起きて!」

 

 ちょっとかわいそうにも思ったけど、あたしはちょっと大きな声で言う。

 

「んー、ふえっ……優子ちゃん……」

 

 浩介くんがいかにも寝ぼけた感じで言う。

 

「ふみゃあー、優子ちゃんのおっぱい……」

 

  むにっ!

 

「きゃあ!」

 

 寝ぼけた浩介くんが、いきなりあたしの胸に手を伸ばして揉んでくる。

 あたしは、びっくりして声を出しちゃうけど、手を払いのける感じではなく、腕をつかんでゆっくりと剥がしていく。

 浩介くんも悪気は無い、寝起きで夢の中のあたしとえっちなことをしてて、まだ夢と現実の区別があいまいなのよね。

 

「あれ? 優子ちゃん、何で服を……あ、夢だったのか」

 

 浩介くんがようやく、現実に戻る。

 

「もう、夢の中でまであたしとしてたの?」

 

「あはは、うん、そうみたい」

 

 浩介くんも、バツが悪そうに話す。

 昨日あれだけ散々にしておいて、夢でもしなきゃいけないなんて。

 

「本当にもう、夢で見なくても現実であたしがしてあげるって」

 

「う、うん、ありがとう」

 

 さらりとこんなセリフを言えるようになっちゃったのも、あたしの浩介くんへの依存度が高まっているせいなのかもしれないわね。

 依存し過ぎにも、注意しなきゃいけないわよね。

 

「とりあえず着替えて、朝ご飯を食べたら、荷物まとめて帰るわよ」

 

「あーうん、そうだな」

 

 帰り道は、日本海側に迂回するので、行きよりも時間がかかる。

 なので、実はそこまで悠長に構えてもいられない。

 夜ご飯は、遅くはなるが浩介くんの家に戻って取る予定だし。

 

 浩介くんはキャリーバッグの中から今日の服を取り出す。

 ちなみに、あたしもあたしで、浩介くんの着替えをあまり見ないようにしている。

 浩介くんだけではなく、あたし自身の性欲も、うまく旺盛に保たないといけないし。

 

 あたしは、浩介くんが着替え終わったタイミングを見計らって、電話を手に取って朝食のルームサービスを取った。

 

 昨日とは少し違う朝食が運ばれてくる。

 

「「いただきます」」

 

 浩介くんと食べる朝食、今は2人っきりだけど、これからは義両親と一緒の一家4人になると思う。

 

「優子ちゃん、今日のルートは分かってる?」

 

「うん、横手に出て新庄から日本海側に出て、そこから特急と新幹線を乗り継ぐのよね?」

 

 食事中、浩介くんが帰路についてあたしに問いかけてくる。

 

「ああ、新幹線は大宮駅で降りるぞ、そしたら乗車券が新しくなるから注意してな」

 

「うん、分かってるって」

 

 今回の乗車券は、世にも珍しい「連続乗車券」というものを使ったらしい。

 本来、普通乗車券の一種として、片道、往復と並んで3つの大きなカテゴリー何だけど、知名度は圧倒的に低い。

 鉄道の切符は、遠距離になればなるほど、1キロ当たりの運賃が安くなる傾向にあるので、なるべくぶつからないように経路を制定すれば、安く旅行ができる。

 永原先生によれば、大宮と秋田で、行き帰りのどちらかを新潟周りにするだけで、運賃が秋田から大宮までのグリーン料金程度安くできるのだという。

 今回のきっぷも、単純往復と比べると結構安くなっているという。

 でも、蓬莱教授の意向もあって、新幹線や特急列車などが、全てグリーン車やグランクラスを使うようになってもいるのよね。

 

「にしても、不思議だよなあ」

 

 永原先生の工夫によって、何とか普通の切符には収められたけど、もし切符に書かれている経路の数が17を超えると、機械では発券できなくなってしまうという。

 いわゆる「経路オーバー」という形で、こうなってしまえば黄緑色の紙で手書きの乗車券を発券する羽目になるという。

 

「それで先生……あー、会長も何枚か持っているらしいけど、いずれも今回みたいに運賃節約で大回りした際に起こったものらしいな」

 

 大回りの運賃節約に加え、新幹線を細かく使ったりすると、この手の経路オーバーが起こりやすいらしい。

 というのも、乗車券の仕様上、経路に新幹線を挟むと「乗車駅、新幹線、下車駅」で、3つも経路を使っちゃう。

 あたしたちの乗車券は「連続1:東京都区内→大宮 経由 東北、大宮、新幹線、北上、北上線、奥羽、陸羽西、羽越、白新、新潟、新幹線、大宮」となっている。

 連続2は、単純なので問題ないが、連続1の経路数は12で、例えば帰りの上越新幹線を越後湯沢と高崎の間だけ使ったとすれば、「新潟、新幹線、大宮」が、「信越、上越、越後湯沢、新幹線、高崎、高崎線」で15までになる。更に東北新幹線を2回に分けて使ったとすれば、もう経路オーバーを引き起こす。

 永原先生のように「上級者」なら、それも楽しめるんだろうけど、あたしたちはそうもいかない。

 実際ペラッペラの紙で心許ないらしいし。

 

 

「ごちそうさまでしたー」

 

 あたしたちは食事を終え、歯を磨いて身なりを整えて荷物をまとめ始める。

 ぬいぐるみさんも、いったんはテーブルの上に置いておく。

 チェックアウト時間が9時55分で、約束の時間が10時になっている。

 一昨日降りた駅から、旅は再開される。

 

「少し時間余っちゃったね」

 

「あー、まあ仕方ないだろ」

 

 浩介くんは少し緩やかな口調で言う。

 確かに、あたしにとっては余裕なさそうに見えても、それは二重三重に慎重な想定をしているから。

 一昨日にも話題にあったように、鉄道の旅は時間管理が重要だし、それは社会人は無論のこと、中学生高校生大学生でも同じこと。

 ある程度すんなり物事がいかないことを常に考えつつ予定を組むくらいでちょうどいいと思ったので、今日は余裕を持った予定にしている。

 テレビをつけて時間をつぶすけど、当然左上に時刻が表示される仕様にしてある。

 

「続きましては、来年に控えた東京オリンピックです!」

 

 テレビでは、相変わらず東京五輪の話が多い、そしてもう一つは――

 

「東日本大震災から来年で9年、9年の時を経て再開する常磐線に迫ります」

 

 そう、来年2020年に、福島第一原子力発電所事故で不通になっていた常磐線が運行を再開する。

 原発事故によって、当初は今後数百年は住めないなんて話さえあったらしいけど、除染技術の大幅向上によって、実際には9年で鉄道が運転再開にこじつけることができた。

 最も、あの時小学生だったあたしたちも、大学生になっちゃってたけど。

 

「そう言えば、こういう場所にあたしたちが行ったらどうなるんだろう?」

 

「あー、TS病患者ってガンにならないんだっけ?」

 

「ええ。蓬莱教授がそんなこと言っていたわ」

 

 甲状腺がんがどうのこうのって話、あたしたちが小学生の時よくやっていたけど、最近じゃそう言うのはあまり聞かなくなった。

 TS病患者の場合放射性物質に対する耐性も高いらしい。もちろん、瞬間的に高濃度に汚染されたのを浴びればひとたまりもないけど。

 

「行ってみたいよな。福島」

 

「ええ」

 

 浩介くんの呟きに、あたしも同意する。

 JRの運転再開は、東京五輪に負けない大きなイベントになると思う。

 

「さて、じゃあ行こうか」

 

「うん」

 

 常磐線に関するニュースを見終えて、あたしたちはちょうどいい時間になったのでぬいぐるみさんを左手で抱き、右手でキャリーバッグを引く。

 浩介くんの後に続き、2泊のお世話になった借り別荘を出てフロントを目指す。

 気温は寒いけど昨日ほどではなく、コートを着ていれば問題無い程度だった。

 これなら、地上に出る帰り道はあまり問題なさそうね。

 

「すみません」

 

「はい、チェックアウトですね」

 

 フロントのスタッフさんが部屋の鍵を受け取ると、レジに何やら打ち込んでいる。

 

「こちら追加料金になります」

 

「お、結構するな」

 

「うんでも計算通りよ」

 

 あたしの想定通りの金額を財布から出し、清算をする。

 

「ありがとうございました。それではこの先もお気をつけていってらっしゃいませ」

 

「はい」

 

 あたしはスタッフさんの声を聞き、扉の前の椅子に座る。

 

 

「お、来たぞ」

 

「あ、本当だわ」

 

 行きと同じ会社の名前のタクシーを発見したので、あたしたちは立ち上がってホテルン外へと向かう。

 あたしたちを見て、タクシーの自動ドアが開く。まずはトランクに荷物を入れ、中へと入る。

 

「シートベルトを締めてください」

 

 行きの人とは、多分違う運転手さん。

 その指示に従い、あたしたちはシートベルトを締めると、タクシーが発車した。

 行きの道をそのまま降りるんだけど、山下りになるので結構怖い。

 タクシーはチェーンも装着して相当に慎重な運転をしているけど、冬の曲がりくねった道のりは必然的にあたしたちを不安にさせる。

 タクシーの運転手さんには失礼かもしれないけど、あたしは本能的に頭を腕で守りつつ、体を曲げて頭を下げる。

 これは、あの飛行機事故の検証番組でやっていた「衝撃防御姿勢」だけど、もちろん自動車にも応用できるはず。このスピードなら、この姿勢さえ守っていれば大丈夫だと思う。

 隣を見ると、浩介くんもささやかながら少し警戒体制を取っていた。

 

 

「お客さん、山道抜けましたよ」

 

 しばらくすると、タクシーの運転手さんがあたしに話しかけてきた。

 

「あ、すみません」

 

 あたしは慌てて起き上がる。

 

「すみません、うちの家内は臆病なものですから」

 

「うっ……」

 

 浩介くんがあたしのことを「家内」と呼ぶ。

 うーん、確かにそれで間違ってないのがまた複雑よね。何だか、結婚してから色々な呼ばれ方している気がするわ。

 

「はっはっはっ、むしろいい心がけですよ。何せ冬の道路は事故が多いですし、自分が安全運転してても、危険運転のドライバーにもらい事故されることもあるのが自動車ですから、若いのにしっかりしてるなあと感心してるとこです」

 

 どうやら、お世辞で言っているという感じではなく、本心からの言葉と見受けられるわね。

 おそらく、それだけ冬の道路は危険だということを意味していると思う。

 タクシーの運転手さんと会話をする頃には完全に山のふもとという感じになっていた。

 

「この辺はまだいいんですけど、直線の続く冬の北海道の道路は危ないですよ。お客さんもよく、気を付けてくださいね」

 

「は、はい……」

 

 

 タクシーの運転手さんに、再び駅前で下してもらう。

 

「列車に乗っちゃえば道路よりずっと安全だ。だけど気を付けてな」

 

「はい」

 

 荷物を降ろしてもらい、あたしたちは一昨日以来の乗車券を駅員さんに見せて、駅の中へと歩みを進める。

 しばらくすると、昨日と同じタイプの列車が入線してくる。ちなみに、踏切の音も聞こえてくる。

 

「よし、中に入ろう」

 

「うん」

 

 ちなみに、列車は「快速」だった。とはいえ、ほとんど各駅停車に近いらしいけど。

 

「ドアボタンを押してお乗りになり、整理券をお取りください。横手行きの、ワンマンカーです――」

 

 この放送も行きと同じ。

 あたしたちを乗せると、しばらくして反対列車が来る。

 これを待ち合わせると、列車は発車した。

 

 案内放送も、何もかもがそのままだった。

 2日しか経ってないから当たり前だけど。

 

 雪模様は相変わらずで、列車はそのまま幾つかの駅を通過しつつ終点の横手駅へと到着した。

 ここでの時間はあまりない。

 

「浩介くん、どうする?」

 

「うーん、飲み物だけ買うか」

 

「ええ」

 

 まだまだ冬なので、空気も乾燥気味。

 車内も暖かいので、あたしたちは冷たいドリンクを購入することにした。

 

 電車は、10分ちょっとで到着した。行き先は新庄駅で、あたしたちは終点まで乗り通す予定になっている。

 車内はというと、首都圏などでよく見る横側の見合わせタイプの座席で、車内は空いていると言い切れるほどではないが、それでも余裕で2席を確保した。

 

「ふう、この時間にしては結構人いるわね」

 

 途中駅次第では、立ち客も出そうよね。

 

「ああ、珍しいな」

 

 浩介くんも、地方の昼間にこれだけの人がいるのは違和感があるらしい。

 でもよく見ると、あたしたちと同じく、大きな荷物を持っている人が多い。

 

「どうもこのあたりは結構人がいるみたいだぜ」

 

「うん」

 

 ともあれ、あたしたちは、さっきまでとは打って変わり、大きなモーター音を鳴らして走る電車で、新庄駅を目指した。

 

 

「うー、なんか熱いわね」

 

「ああ、何だよこの暖房……」

 

 電車は順調に走っていたけど、一つ問題があった。

 その問題というのは、座席の暖房が異様なまでに熱いこと。

 にも拘らず、上半身の方は扉の隙間から吹き付ける風が冷たく、異様なまでにアンバランスだ。

 

「うー、あちち」

 

 浩介くんも少し辛そうな顔をする。

 座席というか、足元からの暖房が強いみたいなのでそれで何とか工夫ができそうね。

 後、これだけの距離をこのシートで移動するのも、何気にきついわね。

 

 

 さて、思わぬ暖房のアンバランスに苦戦しつつ、あたしたちは新庄駅に到着する。

 ちなみに、横手駅で買った飲み物は全て飲んでしまった。

 ちなみに、ここから山形新幹線「つばさ」の東京行が出ていて、これに乗ると安さの幅は小さくなるけど、到着は格段に早くなる。今回はお預けだけどね。

 

「えっと、陸羽西線は……うーん、外で食べるにはちょっと足りねえなあ」

 

 浩介くんが時刻表と時計を見ながらうなる。

 確かに、旅番組なら「大丈夫さ」の楽観精神で寄り道し、大慌てになる時間だけど、この先特急と新幹線のグリーン車を予約してあるあたしたちはそうもいかない。

 

「駅の中にコンビニがありそうだから、それを買おうぜ」

 

「うん」

 

 あたしたちは、駅に併設してあるコンビニへと向かい、お弁当を購入することにした。

 

「優子ちゃんはから揚げ弁当と飲み物?」

 

「うん、浩介くんは?」

 

「ああ、ニンニクと鶏豚牛弁当だ。ついでに栄養ドリンクも完備したぜ!」

 

 うわー、露骨ねえ……新幹線の中で襲われたりしなきゃいいけど。

 

「あはは、浩介くん、家まで待つのよ」

 

「分かってるって」

 

 まあ、家に帰ったら一家であたしの歓迎パーティーになると思うから、浩介くんが発散できるのは寝る前になると思うけどね。

 

 ともあれ、コンビニで買い物しているとちょうどいい時間になったので、陸羽西線のホームに出ると、次の列車が止まっていた。

 車内はまばらで、あたしたちもボックスをゲットできた。

 

「んじゃ、食べるか」

 

「うん」

 

 ちなみに、今の時間は昼食にはちょっと遅い。

 このボックスには、テーブルもあって、浩介くんはそこに栄養ドリンクを置いていた。

 

「この列車余目行きです。まもなく発車いたします」

 

 運転士さんの放送とともに、ドアが閉まる音がする。

 そして、北上線の時と同じように、ディーゼルエンジンの轟々たる音が車内を包み込む。

 

「のどかだな」

 

「うん」

 

 ローカル線のボックスシートでお弁当を食べながら車窓を眺め、時折テーブルに置いた飲み物を飲む。

 周囲も、老人たちが明るい会話に花を咲かせていて、本当にとてものどかな空間だと思う。

 

 まさしくローカル線という風情にふさわしい状況がそこには流れていた。

 

「お、これが噂に聞く最上川か」

 

「うん、多分そうよね」

 

 「奥の細道最上川ライン」……「奥の細道」と言えば松尾芭蕉の作品で、もしかしたら永原先生も読んだことがあるのかもしれない。

 

「ごちそうさま」

 

 浩介くんが一足先に食べ終わると、栄養ドリンクを飲み干し、割り箸を折って弁当箱の中に入れ、空になったゴミをレジ袋の中に入れる。

 これはまた、備え付けのゴミ箱に入れることになっている。

 

「悪い、ちょっとトイレ」

 

「うん、いってらっしゃい」

 

 地方に行くと、普通列車でもトイレが付いている。

 もちろんあたしたちの首都圏にも、トイレの設備のある列車は存在する。

 でもそれは、比較的長い距離を走るから付いているものだった。

 地方は地方で、列車の本数が少ないのに加え、駅と駅の間の所要時間も長いから、設備として必要不可欠になっているんだと思う。

 

 浩介くんがトイレに入っていく。

 ……ってダメダメ、「優一の記憶」を頼りに、浩介くんのトイレを想像するのはダメ!

 

 あたしは、おかしな考えを振り払い、正気に戻って車窓へと戻る。

 列車は、冬の最上川に沿って、のんびりと進む。

 途中の駅でのお客さんの乗降はわずかだった。おそらく、全て無人駅なんだと思う。

 

「ふう、ただいま」

 

「あ、浩介くんおかえりなさい」

 

「優子ちゃんはトイレ大丈夫?」

 

 浩介くんが心配そうに聞いてくる。

 

「うん、大丈夫よ」

 

 余目駅で、トイレを借りればいいと思う。

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