永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

318 / 555
少女たちは遊び尽くす

「はいはーい! 最後尾こちらですよ! 順番に並んでください! 盗撮は厳禁となっていまーす! 私は被写体ではありませんよー!」

 

 永原先生が、何やら忙しなく動いていた。

 どうやら、永原先生はこのぎょう列を整理する役目を負っているらしいわね。

 

「永原会長、どうしたんですか?」

 

「あーうん、列の先頭にいけばわかるわよ」

 

 永原先生は「今忙しい」と言う感じでそっけない態度で言う。

 

「はい」

 

 言われるがままに、あたしと浩介くんは、列を前に進んで先頭に行く。

 行列の先頭は、どうやら広がっていて何か「カシャカシャ」と言う音が聞こえてくる。

 

 

「はーい、こうですかー!?」

 

  パシャッ……パシャッ……

 

「いやー、眼福眼福!」

 

  パシャッ……パシャッ……

 

「もう一枚、道子ちゃん、もっと前屈みになってください!」

 

 どうやら、写真撮影が行われているらしい。

 

「こうですか?」

 

「そうそう! もう少しこっち側でお願いします」

 

 円形に囲まれたエリアで、円の中心には女の子が2人いた。

 その女の子というのは、比良さんと余呉さんだった。

 

「うわあ……」

 

 マイクロビキニとスクール水着、正反対の露出度を持つ水着のコンビは、思い思いに笑顔で、カメラマンさんたちのサービスに答えていた。

 あたしはあまりにも意外な光景に驚いてしまう。

 やっぱり、外見が10代なら、実年齢なんてどうでもいいという感じで、円の先頭には小さな紙で「TS病患者の水着撮影会、お一人様5分100円」と書いてあって、女の子の紹介として比良さんと余呉さんがご丁寧に実年齢まで書かれて紹介されている。

 

「はーい、1人5分で100円ですよーこちらに入れてください! ありがとうございます!」

 

「比良さん余呉さん! 何でこんなことしてるんですか?」

 

 あたしは、人混みをかき分けて輪の中に入る。

 

 

「うおー! 3人目の美女登場だー!」

 

「ねえねえ、君もTS病ってやつなの? もしかして江戸時代生まれとか!?」

 

「すっげえ! 胸でけえ! 水着エッロ!」

 

 

 ギャラリーたちが、あたしの登場に興奮してるけど、あたしは気にしない。それよりも、今は比良さんと余呉さんのことが気になる。

 

「何って撮影会よ」

 

「いやー、実は私達のこと、どうしても写真に撮りたいって人が現れてね。会長が『何なら協会の宣伝も兼ねて撮影会にしたら?』って言ったもので」

 

 ……永原先生が戦犯なのね。

 

「そしたらまあ大繁盛なのよ」

 

「まあ、無理も無いわよね」

 

 たった100円払うだけでわざわざリスク犯して盗撮しなくてよくなるものね。

 

「ねえねえそこの黒い水着の子」

 

「はい?」

 

 カメラマンさんの1人があたしに話しかけてくる。

 

「あの、あなたもTS病なら、1枚いいですか!?」

 

「えー、どうしようかなあ? うーん」

 

 あたしは、あえて悩んでいるふりをする。

 

「って、ダメに決まってるだろうが!」

 

「「「わあ!」」」

 

 予想通り、独占欲で嫉妬した浩介くんが輪の中に乱入し、あたしを引っ張っていく。

 周囲のカメラマンさんとギャラリーたちは唖然としつつも、比良さんと余呉さんの撮影に戻っていた。

 

 

「浩介くん、もしかして、嫉妬しちゃったかしら?」

 

 円から離れたらあたしは浩介くんに色っぽい口調で聞いてみる。

 

「うっ、あ、当たり前だろ!」

 

 浩介くんが珍しく素直に認めてくる。

 

「ふふ、嬉しいわ浩介くん。あたしのこと独り占めしたいんでしょー?」

 

 あたしは、蛇のようにくねくねしながら浩介くんに近付く。

 そして、体を浩介くんに密着させると、あっさりと興奮した浩介くんがまたむくむくとなる。

 

「ふふ、いくら写真に撮られても、こうされていいのは浩介くんだけだよ」

 

 耳元で、熱い吐息混じりに浩介くんにささやくと、浩介くんの表情が崩れ、目がハートマークになる。

 

「うふふ、あなた、今夜はたっぷり、寝かせないわよ」

 

 あたしは普段、「今夜期待しているわ」といった感じで浩介くんのサービスを待つような言葉を投げ掛けてきた。

 でも今は、あたしががっつくような感じの話し方にする。

 浩介くんとは数日禁欲生活してきたし、いずれにしても、今夜はものすごいことになりそうね。

 

「ねえあなた、ひとまずテントに戻ろうかしら?」

 

「あ、ああ……」

 

 あたしたちは、一旦テントに戻るにした。

 ちなみに、撮影会の行列は遠目で見て分かるくらい凄まじく伸びていて、永原先生も忙しく動いている。

 永原先生、大変そうね。

 

 

「お、優子さんに浩介さんじゃないか」

 

 戻るとそこにいたのは蓬莱教授と瀬田助教の2人で他には誰も居なかった。

 

「あ、蓬莱教授」

 

 よく見なくても蓬莱教授と瀬田助教は、水着ではなくいつものワイシャツだった。

 

「蓬莱さん、水着ではないんですね」

 

「ああ、俺たちはここでずっと見張り役さ。第一水着なんて持っとらんし、俺は別に海に用はないからな」

 

 蓬莱教授が、爆弾発言をする。

 

「え!? じゃあどうしてここに!?」

 

「俺がずっと見張り役をすることで、他の人で見張りを交代しなくていいということで雇われたんだ。その代わり、永原先生の遺伝子を得られると言う約束になっているんだ。まあ、他の人にも声をかけては見たんだが、『やっぱり遺伝子までは難しい』ってさ」

 

 なるほど、蓬莱教授らしく遺伝子目当てだったのね。

 

「蓬莱教授らしいわね」

 

 とにかく蓬莱教授ってぶれない人よね。

 

「そりゃあそうだ。永原先生がの遺伝子は、優子さんのよりも希少だからね。とにかくデータを集めないことには、不老の達成は難しい。何せ不老のメカニズムは、まだ完全に解明できていないからな」

 

 蓬莱教授は、やはり不老研究に時間を費やしていた。

 人間が持つ、最大の不治の病が「老い」、それを考えると、あたしたちって「病気」なのかな?

 まあいいわ。

 

「のどかだなあ」

 

 静かな雰囲気に浩介くんが小さくつぶやく。

 

「うん」

 

 海の方を見つめると、一際目立つ美少女たちが、思い思いにはしゃいでいた。

 TS病の女の子たちは美少女揃いなので、他の女性が不憫になるくらい目立っている。もちろん他にも海水浴に来てる若い女性は多いけど、今日は本当に運が悪いわね。

 この中に入れても大丈夫なのは、桂子ちゃんと龍香ちゃんくらいかな?

 ……そういえば、一昨年も龍香ちゃんは彼氏とここに来て、お尻を触られていたっけ?

 あたしも、去年のプールではいっぱい触られてたし、少しくらい……

 

  さわさわっ!

 

「きゃあ! もう、浩介くんったらー」

 

 そんなことを考えていると、早速浩介くんがあたしのお尻めがけて手を伸ばしてきた。

 

「ほう、大胆だねえ浩介さんは」

 

 瀬田助教が半笑いで言う。ちなみに、蓬莱教授は表情一つ変えようとしていない。

 

「いやー、その、やっぱり誘惑には勝てないんです……」

 

 浩介くんもバツが悪そうに言う。

 

「うふふ、今夜たっぷり触らせてあげるわよ」

 

 蓬莱教授たちに聞こえないように浩介くんの耳元に小さい声で囁くと、また浩介くんが興奮した様子になる。

 本当、単純な男の子って何でこんなにかわいくてかっこいいんだろう?

 あたしの方が、惚れちゃうわよ。

 

 

「さて、もう少し遊ぶか?」

 

 暫く休むと、落ち着いた浩介くんがそこから立ち上がる。

 

「うん、砂のお城とか作ろうかな?」

 

 砂のお城なら、運動神経悪くても作れると思うし。

 

「あはは、優子ちゃんお姫様だね」

 

「えへへ……」

 

 あたしは、砂浜のある部分で膝をつき、浩介くんと向かい合わせになる。

 まずは砂を集めないといけないわね。

 

「よいしょっと」

 

 あたしは、無自覚を装って四つん這いのような形になって、重力で垂れ下がって揺れる巨大な果実を浩介くんに見せつける。

 

「うっ……」

 

 ふふ、浩介くんったら、また興奮しているわね。

 何だか、たまには肉食系女子になるのも悪くないわ。

 

「よいしょ、うんしょっ!」

 

 あたしが掛け声を上げ、胸に夢中だった浩介くんも慌てた様子で手伝ってくれる。

 もちろん、手伝ってくれる時でも視線はあたしの胸に釘付けになりながらだけどね。

 

「ふふ、浩介くん、ありがとう」

 

 やがて、大きな砂山が出来上がる。これに海水を入れてうまく固めてっと。

 

「うーん、ここからお城って難しいわよね」

 

 あいにく、あたしは幼少の頃砂山しか作ったことがない。

 そこからお城と言うのは意外と難しいのよね。

 

「うーん、確かになあ……」

 

 よく「砂上の楼閣」という言葉があるように、言うまでもなく、砂で作るお城はとても脆いからバランスを気をつけなければいけないはず。

 

「うーん、この上に館をのせるってのはどうだ?」

 

「え?」

 

 浩介くんが面白い提案をする。館ってどういうことかな?

 

「ほら、一昨年の林間学校の帰りに、先生がと真田家の故郷巡りをしたじゃない? そこの『真田本城』をイメージしてさ」

 

「あー、いいわね」

 

 つまり、洋風の城である必要はないということ。

 とすると、この山には堀と道をイメージしてっと。

 

「じゃあ俺は、館部分を作るぜ」

 

 浩介くんはもう一方で、館の部分を作り始めた。

 

 

「あら、2人ともお砂遊び?」

 

「あ、永原会長」

 

 しばらく砂を作っていると、永原先生が一仕事やり終えた表情であたしに話しかけてきた。

 

「何作ってるの?」

 

「あーうん、砂のお城よ。それよりも撮影会は大丈夫なんですか?」

 

 そっちの方が気になったので聞いてみる。

 

「うん、今は他の人に任せているわ」

 

「そう、良かった」

 

 比良さんと余呉さんは災難だけどね。

 

「で、これお城なの?」

 

「うん、一昨年行った真田本城をイメージしてるのよ」

 

「へー、そうなのね。まあ実物とは大分違うけど、砂のお城ということを考えれば仕方ないわね」

 

 というか、実物を知ってるの永原先生だけのような気がする。

 記録も正確に残ってないらしいし。

 

「私も加わっていいかしら?」

 

「はい、もちろんです」

 

 というわけで、あたしたちは3人でお城を作ることになった。

 

「よし、館の部分ができたぞ。海水で固めてっと」

 

 浩介くんが慎重に砂を乗せて削っていく。

 これに加えてお城の石垣や、堀みたいなのも出来て完成ね。

 

「うん、いいわね」

 

 砂のお城は、できてもすぐに消えてしまう。

 だから、あまり凝った作りにはしないことにする。

 

「ふう、いいお城ができたわ。浩介くん、ありがとう」

 

 あたしが、またあざとく浩介くんに近付く。

 次の瞬間大きな波が来て、お城の一部が崩れてしまう。

 

「あちゃー」

 

 永原先生が苦笑いする。

 

「あはは、まさに砂上の楼閣ね」

 

「本当だな」

 

 三者三様に、事の顛末を総括する。

 そうじゃなくても砂の城は潮風で簡単に崩れちゃうと思うし。

 

「それじゃあ、私はこれで。2人とも海には気を付けてね」

 

「うん、分かってるわ」

 

 去っていく永原先生を見送り、あたしたちは再び海で遊んでいた幸子さんたちと合流することにした。

 

 

「おっとっと、きゃあ!」

 

  ザブーン!

 

 幸子さんがバランスを崩して海に倒れ込んでいた。

 

「あっはは、また私の勝ちだね」

 

「うー悔しいわ」

 

 見ると、幸子さんと直哉さんに加え、歩美さんも遊びに加わっていた。

 

「何してるの?」

 

「あ、優子さん、バランスゲームですよ」

 

 幸子さんが立ち上がるとあたしに説明してくれる。

 

「え?」

 

「ほら、こうやってお互い手のひらをパチーンと合わせあって、バランスを崩して足が動いたら負けです」

 

 幸子さんと歩美さんが軽く実践してくれる。

 

「ふむふむ」

 

「あー、また優子ちゃんが苦手そうな遊びだなあ」

 

 浩介くんが正直に言う。

 

「ええ、優子さんがする場合は場合はハンデが必要になるわね」

 

 やはり、さっきのことを念頭に置いているみたいね。

 

「でもどうやって?」

 

 直哉さんが疑問を挟む。

 

「うーん」

 

 さっきのゲームは、あたしへのハンデが定まらずに終わってしまった感もあった。

 でも今回は、比較的ハンデは考えやすいと思う。

 

「あ、じゃああたしは足が動いても、体や手がつかない限りは負けにならないのはどうかしら? 要するにあたしだけ土俵のない相撲みたいな判定で」

 

 つまり、これなら足を踏ん張る必要が無くなることになる。

 

「えー、いくらなんでもそれは大きすぎないかしら?」

 

「うん、私もそう思うな-」

 

 幸子さんが疑問を挟むと、歩美さんも同調する。

 

「ちっちっち、優子ちゃんの運動神経のダメさ加減を甘く見ちゃ行けねえぜ」

 

 浩介くんが指を振りながらそうアピールする。

 

「あはは、否定できないのよねこれが」

 

「じゃあ試しに、幸子ちゃんとやってみてよ?」

 

 そして、試しに幸子さんと対戦して見ることになったんだけど――

 

 

「きゃあ!」

 

  ザブーン!

 

「はい、しお……幸子ちゃんの勝ち」

 

 直哉さんが無慈悲に幸子さんの勝利を宣告する。

 

「か、勝っちゃったわ……」

 

 幸子さんが、半ば唖然とした表情で「勝っちゃったわ」と呟く。

 

「うー、やっぱり負けちゃったわー」

 

 あたしにとっては予想された結末だったので、そこまで大きなショックはなかった。

 

「意外とあっさり尻餅つきましたね」

 

 1回目は片足がよろけ、なんとか踏みとどまったものの、仕切り直した2回目で、あたしは幸子さんに吹っ飛ばされて、再び皆の前でM字開脚を晒してしまった。

 

「ええ」

 

 女の子になって運動神経が大幅に悪くなるのは、TS病全体に共通していることではあるけど、あたしの場合は、その度を明らかに越している。

 

「でもよ、これ以上のハンデと言ってもなあ……」

 

 直哉さんが腕を組んで考える。

 

「うーん、片手縛りとか?」

 

 浩介くんがあたしの思ったことを代弁してくれる。

 

「あー、その手があったか」

 

「片手だけにか」

 

「「わはははは」」

 

 男子2人が、よく分からない笑いのツボで盛り上がっている。

 ともあれ、その内容で幸子さんと再戦となった。

 

 

「えいっ!」

 

  パチン!

 

「えーい!」

 

 片手なら、さすがにあたしはそう簡単に尻餅はつかないけど、相手を崩すのが難しい。

 

「わわっ! きゃっ!」

 

  ザブーン!

 

 だけど、長期戦になればなるほど、あたしは息切れしてしまう。最後には根負けして海に倒れ込んでしまった。

 今度は比較的平らに倒れたので、M字開脚を晒さずには済んだ。でも、負けは負けよね。

 

「うーん、幸子ちゃんに防御力を脆くするハンデをつけないとダメだなあ……」

 

 直哉さんがため息気味にそう呟く。

 

「あーうん、そうなのよ。幸子さん、悪いけど膝が少しでも曲がったら負けでいいかしら?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

 幸子さんは、少しかわいそうなものを見る目であたしを見る。

 

 この表情は、あたしが小谷学園にいた時には、体育の授業で散々に目にしてきたものなので、今さら驚きはないし慣れもしている。

 けれども、大学に入ってからは体育もなくなったため(一応それに類する一般教養はあるけど、選択必修制なので、座学だけで単位は十分とれる)、自覚する機会はなかった。

 

「じゃあ、そのルールで行きますね」

 

 

「……はい、膝が曲がった! 優子ちゃんの勝ち!」

 

「イエーイ! やっと勝てたー!」

 

 幸子さんの膝が、あたしの両手でわずかに曲がる。

 そうすると、すぐさま浩介くんが、あたしの勝ちを宣告する。

 やっぱり、こういう分野であたしに勝ちがつくって嬉しいわね。

 

「何だか、深い闇を感じるなあ……」

 

 直哉さんが、よく分からない意味深な呟きをする。

 

「あれは、挫折に挫折を重ねて叩き潰された人の喜び方だよなあ……」

 

 歩美さんが、具体的に状況説明をする。

 うん、確かにそんな喜び方だとはあたし自身思う。

 考えてみれば、小谷学園では、あたしへの極端なハンデが常態化していて、球技大会と体育祭でも、多くそれが踏襲されたものね。

 

「みんなー! お昼ごはんにするわよー!」

 

「あ、みんな、戻るわよ」

 

「「「はい」」」

 

 その直後、永原先生が大声で叫ぶ声を聞き、あたしたちは急いで元のテントに戻る。

 正会員のあたしが代表して先頭に立ちテントの元へと行く。

 予定では、昼食はみんなでバーベキューとなっている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。