永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件 作:名無し野ハゲ豚
同窓会の翌日、あたしたちは久しぶりにデートの約束をした。
この日はあたしと浩介くんにとって結婚記念日でもある。
あたしは、朝起きたらまず、デートのために服を出すことにした。
昨日と同じ服は使えないので、実は今日の服は選ぶ必要はない。
あたしはクローゼットから小谷学園の制服を取り出す。
実は、あたしたちは久しぶりに高校生に戻ってデートしようということになった。
浩介くんも、1年ぶりに小谷学園の男子制服を着ることになっている。
小谷学園の制服を着ているけど、もちろん既に卒業しているから、生徒のつもりをするだけで生徒ではない。
そう言えば幸子さんの指導の時に、小谷学園に生徒としてではなくて、協会の正会員として学校に来たことがあったっけ? あの時以来かしら?
あたしは、一旦全裸になり、浩介くんが好みそうな下着に穿き替える。
そしてブラウス、ブレザー、スカートと久々の制服着替えにわくわくしつつ、スカートを在学中よりも、ほんの少しだけ短くすると、姿見の前にはあの頃と変わらない「石山優子」としてのあたしの姿が浮かび上がってきた。
ふふ、やっぱり制服ってかわいいわね。
学生鞄も持って、うん完成。ふふ、何だか新鮮な気分だわ。
ちなみに中身は当時の教科書類ではなく、えっちな道具がたくさん入っている。これは、あたしがこの家に「お邪魔」するときに使うもの。
もちろん、今日のデートは高校生に戻った設定なので、あたしのはめている指輪も一時的に「婚約指輪」に戻る。実家からスタートしないのはまあ、しょうがないけど。
「ふふ、浩介くん、喜んでくれるかしら?」
家を出たあたしは、ますます楽しみになる。
ちなみに、浩介くんには先に出てもらっている。
そう、高校生の時のデートらしく待ち合わせをしようということになって、待ち合わせ場所は区役所の最寄り駅に決まった。
ちなみに、遊ぶ場所は公園になった。
そう、あたしたちが初めてデートをしたあの公園だ。
あたしは、電車に乗る。
電車内には小谷学園の制服は見えない。学園の最寄り駅を過ぎて、実家の最寄り駅、そして区役所の最寄り駅に到着する。
同じ時間のはずなのに、何だか長く感じたわね。
あたしはICカードをかざして、改札口を出る。
浩介くんは……いたわ!
「ごめーん! 待ったー!?」
あたしは、制服姿の浩介くんに話しかける。
高校生の時はお互いこのセリフを何度も言ったけど、夫婦になってからはすっかり言わなくなってしまった。
「うん、ほんの少しだけね」
浩介くんが模範解答をする。
もっとも、この待ち合わせは高校生に戻るために意図的に作ったものだけどね。
「とにかく、行きましょう」
「ああ」
本当はゲームセンターに行くことなども考えたけど、今のあたしたちは「生徒ごっこ」なので、その手の場所は色々とまずいと思って公園になった。
「懐かしいなこの道」
「うん、久しぶりだもの」
ここの公園は、もちろん最初のデートの時以外にも、時折週末のデートとして、小谷学園の頃よく訪れていた。
それでも、夫婦になってからは今回が初めてのデートな通り、しばらく来てない道なのは確かだった。
ぴゅううう……
「きゃっ」
あたしは、めくれ上がりそうになったスカートをちょこんと押さえる。
制服を着るのは久しぶりだけど、こんなにも風に弱かったのね。
そう言えば、あの頃はよく押さえるしぐさしてたわね。1回誰もいない時に思いっきりめくれちゃったこともあったわね。
それでも、制服のスカートが人気なのは、かわいさがそのでメリットを補ってあまりあるからだとあたしは思う。
「優子ちゃんかわいいね」
「かわいい? うん、ありがとう」
浩介くんの口からポロっと出た「かわいい」の声。あたしも、もう何度も言われているのに、まるで彼女になったばかりの頃のようにぎこちなく返事をする。
ああ、お互い制服を着ているだけで、こんなにも気分が高ぶってしまう何て思わなかったわ。
そんなこんなで、閑静な住宅街をあたしたちは進み、目的の公園へと向かう。
あの時と違って、子供は誰も遊んでいなかった。時間帯の問題かもしれないわね。
「誰もいないわね」
「ああ、ここは俺たちの貸し切りだな」
浩介くんが周囲をキョロキョロしながら言う。
もちろん、何度見渡してもここは無人地帯だ。
「あれ?この公園、ここに植物生えてたっけ?」
公園に隣接している小さなマンションの方に、植物が植え付けられていて、そこがちょうど死角になっている。
「自生したとかじゃね?」
「あーうん」
それもそれで変な話だと思うけど。
「ともあれさ、シーソーで……あれ? シーソーがねえな」
「本当だわ」
浩介くんがシーソーがないという。確かに3年前にはそこにあったはずのシーソーがなくなっていた。
代わりに、真新しいブランコと、以前はなかった鉄棒があるわね。滑り台は以前のまま、かな?
ともあれ、こんな公園でも3年近くも経つと様変わりしてしまうものね。
「なくなったものは仕方ないや。優子ちゃん、鉄棒乗ってくれる?」
「え!? でもあたし──」
「いいじゃないほら」
スカートだからと言いたかったけど、浩介くんに物理的に押されて鉄棒の前に行かされる。
誰かが置いたのか逆上がりの補助板もある。
「あの、あたし絶対できないわよ」
あたしの運動音痴には定評があるし。
「大丈夫だって、ほら、棒つかんでみて? 一回転してみてよ」
「で、でもパンツ見えちゃうわよ」
ただでさえ、現役時代より短くしているし。
「大丈夫だって。見るのは俺だけだから」
「う、うん」
あたしは結局、自分の被虐本能に負けて鉄棒を両手で掴んでしまう。
そして両手で体重を支えようとするんだけど──
「はぁ……はぁ……はぁ……うー、無理……」
50キロを優に越すあたしの体重を、この貧弱な腕力では支えきれず、何もできないまま数秒で地面に逆戻りしてしまう。
ちなみに、めくれないようにゆっくり下りました。
「うーん、優子ちゃんやっぱりかわいいなあ」
「もう、浩介くん、鉄棒にかこつけてパンツ見たいだけでしょ!?」
「当たり前じゃないか!」
浩介くんが清々しい顔で開き直る。
「うー、予想できてたけど」
「というわけで、こっちの逆上がり補助で逆上がりしてみてよ。大丈夫、今度は俺が全面バックアップしてやるぜ!」
浩介くんが逆上がり補助器具をあたしの前に持ってきながら言う。
ここまで堂々と下心を丸出しにされると、怒るに怒れないわね。
「うー、どうせ『バックアップ』と称してあんなことやこんなことするんでしょ!?」
「もちろんだ! 安心してくれ、大事な優子ちゃんだ。痛いようには決してしねえぜ!」
「もー!」
浩介くんの堂々とした態度にあたしもちょっとだけ抗議する。
「まあ、したくないなら無理強いはしねえぜ。パンツならどうせあ後でたっぷり見ることになるからね。ただいつもとは違うシチュエーションでパンツ見たり触ったりしたいだけなんだ」
確かにその通りなのよね。
「わ、わかったわよ」
あたしは、もう一度鉄棒を掴んで目の前の逆上がり補助器具を睨み付ける。
あーあ、結局あたしも誘惑に負けちゃうのよね。本当、あたしもメスになっちゃったわ。
「えいっ!」
逆上がりに成功するイメージはつかないので、素直に駆け上がる感じで──
ズルズルズル……
あうー、まだ半分もいってないのにー!
やっぱり駄目だけど、これならパンツ見られなくても──
「それっ!」
むにっ!
「きゃあ!」
急にお尻を捕まれる感覚に襲われると、身体が浮き上がり逆上がりの格好になる。
制服のスカートが重力に従い落下して、あたしのパンツが丸見えになる。
すると、浩介くんの手がお尻から腰に変わり、中途半端な所でそのまま停止して、スカートが完全に垂れ下がってしまう。
「こ、浩介くん!」
「ほら! もう少しだ! 頑張れ! そのままパンツ丸見えでもいいけどね!」
うー、浩介くんの意地悪!
あたしは、既に浩介くんの補助で半分以上進んでいたため、何とか逆上がりを完了させる。
「うー、浩介くんのえっち!!!」
「いやー、実に新鮮な水色縞パンだったよ!」
浩介くんが満足げな顔つきで言う。
「もー言わないでって! 恥ずかしいから!」
「へいへい」
浩介くんも大満足なのか、それ以上はしてこなかった。
「こっちのブランコはどうする?」
「うーん、あたしは遠慮しておくわ。それに、誰かが来ちゃったら大変だし」
「あーそうだな」
さっきは幸い誰も来なかったけど、いつ誰か来るかも分からない。
なのであたしたちは、ベンチに座って休息を取ることにした。
ベンチに座って──
すりすり
「きゃあ! もー! 本当に手癖悪いわね」
浩介くんに、またお尻を撫でられてしまう。
「ごめん、なんか久しぶりに制服姿の優子ちゃん見てたら無性にムラムラしてきて」
「浩介くんはいつもムラムラしてるわよね」
「いや、今日はなんか特別な気分なんだ。学校にいた時も女子の制服ってエロいなあって思ってたけど、今こうやって自分の妻が制服姿になると印象が全然違うんだ」
今は高校生に戻ってるから、正確には不適切な言い分ではある。
「でも今はほら、あたしたち高校生でしょ?」
浩介くんに、今日のデートの設定を思い出させる。
「ああうん、そうだったな。雰囲気重要だったから、さっきのはちょっと反省だな」
「うん、ありがとう」
浩介くんはこうやって素直に反省できる所も魅力だとあたしは思う。
それに何だかんだで、あたしが心の底で願ってる願望を叶えてくれたりしちゃうし。さっきの逆上がりも、実際あたしのほうが興奮しちゃってると思う。
「じゃあ優子ちゃん、休憩はこのくらいにして、次は何して遊ぼうか?」
「うーん、最近は公園の遊具も少ないのよね」
色々と、クレーマーがうるさいのが、最近のご時世だから公園の遊具もちょっとしたことですぐに無くなっちゃう。
「んじゃあさ、また野球場に行ってみない? 今日は誰もいないから鍵かかってるとは思うけどさ」
「うん」
3年前の夏休み、公園に隣接している野球場で、あたしたちは試合を外野から見た。
今は閉じられているけど、あたしたちにとっては思い出の野球場の外側をぐるっと一周する。
そういえば、あたしの昔の名前。あれに対するトラウマを払拭してくれたのも、ここの浩介くんだったっけ?
「よし、ここがいいかな?」
突然前を歩いていた浩介くんが立ち止まり、あたしの方を見る。
「どうしたの浩介くん?」
「あ、あのさあ優子ちゃん。話があるんだ」
「うん」
浩介くんが、ちょっとだけずれた感じの真顔で言う。
「俺……俺、優子ちゃんが好きだ! 結婚するほど好きだ! ずっとずっと、俺の側に居てくれるか!?」
浩介くんの顔が真っ赤になったと思ったら、愛の告白を言ってきた。
「うっ……もう、何よ今更?」
あたしは、ちょっとだけ肩透かしを食らった感じで言う。
「だって俺たちまだ高校生だし、結婚とか親に反対されそうだし」
あーうん、そうだったわね。今のあたしは、「石山優子」だものね。
「あはは、きっと大丈夫よ。この指輪に誓ったでしょ?」
あたしが、「婚約指輪」を浩介くんに見せる。ちなみに、浩介くんも指輪をはめている。
「ああ」
茶番だと分かっていても、やっぱり面と向かっての愛の告白は、好きな人ほど恥ずかしいのよね。
「ふふ、ねえ浩介くん」
あたしは周りを見通す。ここは野球場の裏手で、場外ホームラン対策にフェンスもとても高く、薄暗くて周辺からは完全な死角な上、人通りはない。
そのことを確認し、あたしは、スカートの裾に手をかける。
「ど、どうしたんだ優子ちゃん?」
「ふふっ、恥ずかしいけど……見ててね」
息を呑む浩介くんの前で、少しずつ、あたしはスカートを上げていく。
今までは浩介くんのためにこういうことはしてたし、カリキュラムの時に失敗したあたしに対するおしおきとして母さんにさせられたくらいで、自分の意志でこんなことをするのは初めてだった。
「うっ……優子ちゃん、エロい」
さっきもあたしのパンツを見た浩介くんだけど、今はシチュエーションが全く違うため、やはり浩介くんの興奮も変わってくるらしいわね。
「ねえ浩介くん、鞄の中、見てくれる? そこに丸いマッサージ器があると思うの」
「え?」
あたしの声に浩介くんが、慌ててあたしの鞄の中に手を入れて、マッサージ器を取り出してくれる。
「えっと……これ?」
浩介くんが出したのは、お目当ての機械だった。
「うん、それ」
「で、これがどうしたんだ? まさか!?」
どうやら、マッサージ器の形を見て、浩介くんも察してしまったらしい。
あたしも全身の湿度が高まっていき、浩介くんもまた落ち着きがなくなっていく。
「あたし、さっきから疼いちゃってるのよ。それを使って沈めてくれる? ボタンはちょうどそこにあるはずよ」
「うっ……ゆ、優子ちゃん! ここじゃまずいって!」
浩介くんが、一歩引いた感じで言う。
「うん分かってる。でもここなら、まだバレないと思うから」
「うっ……」
浩介くんが、ゴクリとつばを飲み込む。
やっぱり、かわいい女の子の誘惑には勝てないのよね。
ういいいいんんん!!!
意を決した浩介くんは、マッサージ器のスイッチを押すと、あたしの身体の疼きを止めるために、適切なマッサージを始めてくれた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「あーあ、結局全部やっちゃったよ!」
息を切らして座り込んでいるあたしの隣で、同じく倒れ込んで疲労困憊した浩介くんがそうつぶやいてくる。
何だか、高校生気分も少し吹き飛んじゃったわ。
「えへへ、浩介くんも、大分理性が崩れてきたわね。以前だったら『結婚まで取っておく』って言って聞かなかったのに」
そう、高校生だった頃は、あたしがどんなに誘惑しても浩介くんは頑として理性を崩そうとはせず、結局初めての夜までおあずけになっていた。
「うっ、それはその……だって……」
浩介くんは、かなり混乱している。
「あたしたち……結婚前にしちゃったわね」
「え!? いやあのその」
浩介くんが動揺するのも無理もない。
今のあたしたちは時系列の法則が乱れている。いや、因果律が狂っていると言ってもいい。
本来のあたしたちは2019年3月16日に小谷学園を卒業し、同日に結婚している。
そして今日は2020年3月16日の結婚記念日で、今のあたしたちは何故か小谷学園の生徒に戻っていて「結婚指輪」も「婚約指輪」に戻っている。
実はさっきも、「初めて」なんて嘘をあたしが付いて、最初痛いフリまでしてしまった。もちろん、あの時を思い出しながらだけど。
とは言え、途中からはそう言う演技もバカバカしくなってやめちゃったけど。
「あはは、優子ちゃんごめん」
「あーうん、いいのよ」
「じゃあ、行こうか。幸い、全く人の気配はしないみたいだし」
「うん」
あたしたちはようやく落ち着いてきたので身なりを整えてデートを再開した。
まだ3月ということもあって、この野球場で野球をしていないので、もう少し別の所を見て回ろうということになった。
本当はこの後、小谷学園に忍び込んで、屋上でえっちなことをしようという計画も立てた。
それについては、あたしたちの顔はよく知られているだろうし、先生に見つかったら大変なことになるということもあって中止になった。それ以前に、さっき我慢できなくてしちゃったから無理なことには変わらないけどね。
公園には、結局この時間はあたしたちだけがいたということになった。子供たちが遊ぼうという気配は、なかった。