永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件 作:名無し野ハゲ豚
「このラーメン屋さんにする?」
六日町駅を出たこのあたりは、ちょうど商店街になっていてあたしたちも食事屋さんを見つけるのには苦労しなかった。
問題はむしろ、選択肢が多いことだった。
お義母さんがまず見つけたのがラーメン屋さんだった。
「あーそうだな。優子ちゃんは?」
義両親はこれに賛成している。
「うん、ここでいいわ」
特に断る理由もないので、あたしたちも賛成する。
家族4人でラーメン屋さんに入ることになった。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「4人です」
お義父さんが代表して店員さんと応対する。
「かしこまりました、こちらのテーブル席へどうぞ」
あたしたちは4人ということでテーブル席に案内される。
あたしたちは、メニュー表を見てラーメンを決めて、いつものように店員さんに注文する。
「それにしても、『美佐島』って駅はすごかったなあ」
「うんうん、階段の長さでは土合だけど、美佐島はこう色々な顔があるわよね」
ラーメンを決めて注文をし終わったあたしたちは、今日の旅行で訪れた2つのトンネル駅について総括を始める。
美佐島駅は、そもそも160キロ運転をしていた特急はくたかがあったためにあのような重厚な装備になった。噂通りすごい駅だったし、永原先生が訪れた記録も見ることが出来た。
一方で、土合駅も止まらない貨物列車と1日数本の旅客列車しかないため、最低限度の設備でも問題なく、またこの駅が登山客が主な需要ともあって、長大階段への抵抗感も少なくなったためにこういう構造になったという。
「俺は土合が良かったかな美佐島よりももっと山奥って感じがしたし」
「そう?」
浩介くんは、どうも異論があるらしい。
「何より、優子ちゃんのマシュマロみたいにふわふわなおっぱいが背中に程よく当たったし」
「もうっ!!!」
本当に、性欲に忠実よね、浩介くんって。
まあ、あたしみたいに胸が大きかったら、浩介くんに限らず当たり前かもしれないけどね。
「浩介、最近ちょっと暴走しすぎよ」
見かねたお義母さんが浩介くんに注意する。
今までは積極的に加担する側だったけど、昨今の暴走はさすがに注意した方がいいものね。
「うっ……反省します」
「浩介くん、確かにあたしは魅力的な女性だと思うし、あたしだって元は男だったから、あたしみたいな女の子と毎日いたら浩介くんだって変態になっちゃうのも分かるけど、時折気をつけてね」
「お、おう。わかったぜ」
ともあれ、浩介くんにはもう少し自重をしてもらわないと、さっきの美佐島駅でのこともだけど、浩介くんが暴走しすぎたらあたしまで白い目で見られちゃうと思うし。
ラーメン屋さんだからあまり大きな声では言えないけど。どうやら問題ないみたいね。
「その代わり、2人きりの時は、ね」
「うっ……うん」
あたしの告白みたいな小声での発言には、浩介くんもちゃんと動揺してくれる。
やっぱり、ちょろい男の子よね。
そうは言っても、今夜も今夜で、どうなるか分からないけど。
「お待たせいたしましたこちら――」
話し込んでいると、店員さんがお盆に4つラーメンを持ってきてくれた。
「あ、来たわね」
店員さんからラーメンを受け取り、あたしたちは各自で「いただきます」をしてラーメンを食べ始めた。
「ふー、美味しかったわね」
「ああ。お腹いっぱいだ」
ラーメンを食べ終わり、会計を終えたあたしたちは、駅に向かう。
お義母さんが駅の時刻表と時計を見比べる。
「次の電車まで後30分あるわ」
どうやら、美佐島から乗った電車はすぐに長岡行きと接続していたため、1時間後に次の電車になっていた。
つまり、あたしたちはラーメン屋さんに30分弱いた計算になるわね。
それはともかく、あたしたちは六日町で途中下車にしていた切符を再び使用し、一路新潟駅を目指すことになった。
「それでね、優子ちゃん」
「うん」
「お袋が新潟駅からは、また面白いものを見せてくれるんだってさ」
長岡行きまで時間があるので、あたしたちは待合室で待つと、またあたしにちょっと情報を提供してくれる。
「そうそう、面白いわよ。名前負けって意味でね」
お義母さんが意味深な言葉を言う。
何だかあたしだけ知らないって楽しみにできていい気分のような、除け者になってていい気分じゃないような? 分からないわ。
「名前負けって?」
「ふふ、そうね、宿までバスに乗るのよ」
つまり、バスに関することってことよね?
バスが名前負けってどういうことかしら?
だって、バスっていうのは単に道路を走ってる大型車じゃないの?
……まあいいわ。
「それで、今日の夕食は、この店を予約しているわ」
お義母さんが旅行雑誌の記事の記事を見せてくれる。海の幸のお店ということになっていた。
まあ、確かにこういう時に打ち合わせしておくといいわよね。
「後、今日のホテルは2人部屋が2つになったわよ」
「よし、俺は優子ちゃんと同じ部屋」
まあ、当たり前よね。
「分かってるわよ。浩介、頑張るのよ」
「お、おう」
むむむ、この話題はむしろ義両親のほうが自重しないわよね。
そうだわ、あのことも言わないと。
「お義母さん、昨日、あれ隠したでしょ?」
「あらあら、ごめんなさいね。やっぱりそういうものを使ってたなんて思って、ちゃんとそのままでするようにして欲しかったからよ」
お義母さんが開き直るように言う。
「なあ、あれは優子ちゃんのだから返してくれよ」
「分かったわよ、大丈夫、優子ちゃんの鞄の中に入ってるから」
浩介くんの追求に対して、お義母さんが弁明する。
「本当かしら? イマイチ信用できないのよね」
あたしは鞄の中をガサゴソと探る。
もちろん、外に見えないように気をつけながらだけど。
「あ、本当だわ。浩介くん、確かにあるみたい」
「ふう、これで今夜はたっぷり楽しめそうだな」
「もうっ! 浩介くんったら」
本当、浩介くんって。まあ、あたしもあたしで楽しみにしているのは事実だったりするんだけどね。
「さ、そろそろホームへ行きましょう」
「ああそうだな」
早め早めを心がけるあたしたちは、待合室からホームに出る。
すると、数分後にアナウンスとともに電車が入線してくる。
「何だここ、このピンクと黄色の電車しかないのか」
確かに、さっきから来る電車も、すれ違う電車も全てこの色になっている。
「そうね、実はね。永原先生によると――」
永原先生の話をお義母さんがあたしたちに伝えてくれる。
それによれば、この電車になる前の電車は、車齢が50年に迫ろうかという極めて古い電車だったため、こうして急いで置き換えたというのが真相らしい。
ちなみに、あたしたちが林間学校の帰りに使った「しなの鉄道」に走ってたあのタイプと同型で「115系」という国鉄時代からの古い車両らしい。
あたしたちは、六日町駅から更に新潟県を北に進む。
「次は、五日町、五日町です。The next station is Itsukamachi.」
六日町駅からは、終点までそこまで時間はかからなかった。
長岡駅ですぐに次の電車に乗り換える。新幹線で行ってもいいんだけど、まあ、長岡新潟くらいなら、在来線でもいいわよね?
ちなみに、長岡駅の手前の宮内駅で上越線は終わっていて、そこからは「信越本線」の領域になるらしい。
「この列車は、普通新潟行きです。北長岡、押切、見附の順に、終点新潟まで各駅に停まってまいります。次は北長岡、北長岡です。お客様にお願い致します。車内は禁煙です――」
長岡からの電車も、結局同じ電車になった。
あたしたちは何とか開いているボックスを1つ見つけて座り込む。
「これから先、主な駅の到着時刻をお知らせいたします。見附――」
車掌さんが主な駅の到着時刻を伝えているのも今までと同じ。
その放送によれば、ここから新潟までの所要時間は、約1時間20分、おそらく新潟駅に近付くに連れて、どんどん混んでいくんだと思う。
「次は、終点新潟、新潟です――」
しかし、まだ「昼間」と言える時間帯なのか、そうはならず、あたしたちは無事に新潟駅につくことが出来た。
あたしたちは停車する寸前に席から立ち上がり、ドアにすでに並んでいたお客さんの後ろに並ぶ。
新潟駅のホームを上がり、お義母さんの誘導であたしたちは進む。
「さ、お楽しみはこれからよ」
「う、うん」
お義母さんがまた何やら笑みを浮かべている。
「といっても、実は大したことないんだけどね」
「え!?」
ここまで言っておいてそれ?
まあ確かに、六日町駅でも「名前負け」って言ってたから、確かに大したものではないのは想像がつくけど。
改札口から出たお義母さんは、「万代口」と書かれた案内口に向かって進む。あたしも、何とかついていく。
「今夜は新潟駅からバスで向かうわ」
どうやら、ここからバスに乗るらしい。
「さ、ここよ。優子ちゃん、これに注目してみて?」
お義母さんが案内表示の一部を指差しながら声をかけてくる。
「え!? 『BRT』って書いてあるわね」
聞きなれない単語だわ。BRTって何のことかしら?
「BRTというのは『バス・ラピッド・トランジット』っていうのよ」
「普通のバスとは何が違うのよ?」
「ああ、俺も知りたい」
どうやら、浩介くんもここまでは知らされてなかったみたいね。
「ふふ、来れば分かるわよ」
あたしたちは、他の乗客たちとともに、バスが来るのを待つ。
すると、心なしか、大きなバスが入ってきた。
「あれ? このバス、随分と長くない?」
ちょっとだけ違和感があった。
「ふふ、これは『連節バス』よ。真ん中へんを見てみて」
お義母さんに言われるがままに、あたしは連接バスの真ん中を見る。
すると、真ん中につなぎ目みたいなものを発見した。
それにともなって、車輪も6本あることがわかった。
「あ、本当だわ」
あたしたちは他の乗客とともにバスの中に入る。車内は連接バスらしく、通常のバスよりも遥かに長い車体をしていた。
そしてそれに伴って乗客の数もそれなりに多かった。
「ねえお義母さん、もしかして、BRTって連接バスのこと?」
「違うわよ。BRTっていうのはLRTから発展した概念で、LRTっていうのは要するに次世代型の路面電車のことよ」
お義母さんがあたしの誤りを正すように言う。
「えっと、じゃあ路面電車のバス版ってこと?」
「ええ、なのでBRTというのはバス専用の道路や車線を持っているのよ。ええ、『優先』ではなく『専用』よ。いわばBRTのRの部分よ。例えば東日本大震災で被災した路線の復旧の一部にもBRTとして一部に専用道路が作られているわ」
「え、ええ」
ふむ、とすると何となく見えてきたわ。
「間もなく発車します。お掴まり下さい」
運転士さんの言葉と共にバスがゆっくりと発車した。
そして市街地を進む。どうやらこれは、「萬代橋ライン」と言うらしい。
そう言えば、さっきの新潟駅での出口も「万代口」だったわね。
「あれ? 専用レーンは?」
しばらく進み、バス停を幾つか進むが、一向に一般道を進んでいる様子に、あたしが疑問を投げかける。
「ふふ、優子ちゃん気付いたわね。このバス路線、実はBRTとは名ばかりで専用レーンが全くないのよ」
「じゃあ何でBRT何て名乗ってるんだ?」
浩介くんが当然の疑問点を答える。
「ええ、それは当初はそういう計画で進んでいたからよ。まあ、今じゃ名前負けしているってことで、地元民も含め、日本全国から笑われちゃってるけどね」
「あー、うん、察するわ」
BRTの特徴が無いのにBRTを名乗るんじゃあねえ。
「さ、次で降りるわよ。ホテルにチェックインしたら、食事にしましょう」
「「「はーい」」」
お義母さんの導きの元、あたしたちは今宵のホテルにチェックインする。
街中にあるホテルということで、それなりに立派な作りになっている。
部屋は隣同士で、それぞれが2人部屋ということになっている。
荷物をホテルの台車に入れてもらい、ホテルの人が広いエレベーターに乗せてくれた。
「それじゃあ浩介に優子ちゃん、19時にここに集合よ」
「「はーい」」
あたしと浩介くんは、義両親と別れようやく部屋に入った。
「ふー疲れたわー」
「ああ」
予定の時刻までは、まだいくらかの時間があった。
お昼が遅めのラーメンということで、夕食も少し遅めになった。
ちなみに、さっき言ってくれたように、新潟は港町なので、港町らしく海の幸にしようという事になった。予約の時間帯も、守らないこともいけないわね。
もちろんそれは何とも言えないこじつけではあったが、事前に下調べはしてはあるつもりでもある。
「ふう、良かったわあって」
あたしは、カバンから避妊具を取り出す。
「なあ、俺が持っていようか? また隠されるとあれだしさ」
「うん、お願いしていいかしら?」
浩介くんの申し出を、あたしは快諾する。
ともあれこれで、今夜はバッチリね。
「テレビでも見るか」
「うん」
地方に泊まるとよくあるのが、テレビのチャンネルの法則が関東と違って戸惑うこと。
バラエティ番組は相変わらずつまらないので、あたしたちはニュースを見て過ごすことにした。
「続いてはスポーツコーナーです。田村恵美選手が女子ツアーで優勝を飾りました!」
「お、田村のやつ順調だな」
「うん」
恵美ちゃんのことは最近ではスポーツコーナーによく出てくる。
日本女子テニス界としても恵美ちゃんの存在はとても大きいものになってきている。
世界ランキングも既に100位を切っていてうまく行けば今年中には日本人の中では1番になる可能性がある所まで来た。
蓬莱の薬の効果か、最近では恵美ちゃんは以前にも増して強くなっている。
恵美ちゃんはまだ10代ということを考えれば、誰もドーピングを疑うものもいない。まあそもそも、蓬莱の薬はドーピングじゃないんだけどね。
「優子ちゃん、浩介、そろそろ行くわよ」
「あ、はーい」
ニュースが終わる頃、あたしたちはお義母さんに呼び出され、予約していたホテルの近くにある海鮮料理店に足を運ぶことになった。
新潟港で取れた魚介類を使っての調理ということで、鮮度抜群を売りにしていた。
「うむ、この海鮮丼もうめえな」
浩介くんがマグロたっぷりの丼を元気よく頬張っている。
もちろん、これだけ食欲旺盛なのは、その後のことを考えているのよね。
「浩介くん、よく食べるわね」
「だってよ、キチンと食べねえと、優子ちゃんに全部絞り尽くされちまうんだもの。そしたら干からびちゃうぜ」
「あらあら、浩介ったら」
浩介くん、本当に豪胆になったわよね。
でも確かに、あたし最近肌が潤っている気がするのよね。気絶させられちゃうことも以前より増えたし、これっていい傾向かしら?
「だってよお、本当にすげえんだぜ優子ちゃんって」
「もう、浩介くん。あまり大きな声でそんなこと言わないでよ」
「おっとごめんごめん」
周囲も「やっぱりあれだけかわいいと旦那さんも幸せだろうなあ」とか「あれって恋人じゃなくて夫婦?」とか「そう言えば、あの女の子の顔何処かで見かけたようなきがする」なんていう会話をしている。
浩介くんは、追加で一品物を頼み、それが響いて珍しく最後に食べ終わったのは浩介くんだった。
「ふう、さて、休んだら早速するぞ優子ちゃん」
「う、うん……」
店を出ると、浩介くんは既にやる気満々になっていた。
その日の夜は、ものすごいものだった。意識が飛び、気絶してしまい、浩介くんも「いつも以上に多かった」と言って、息を切らせた。
そして、最後は浩介くんまで最後は気絶してそのまま眠ってしまった。
なんだろう、まさか男の子が気絶するなんて思いもしなかったわ。
やっぱりあたしたち、最高の夫婦だわ。こんな生活が、ずっと続けば、いいのに。