永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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五輪前の駆け込み

「ふー、夏休みだー!」

 

 浩介くんがほっとした表情で言う。

 

「あなた、お疲れ様」

 

「おう、優子ちゃんもな」

 

 前期、相変わらず大変なのは実験とレポートだったけど、あたしたちはそれらも無難にこなし、あたしたちは無事に試験も終えることができた。

 こうして、あたしたちは大学に入って2度目の夏休みを迎えることになる。

 蓬莱教授と週刊誌の騒動もいつの間にか風化し、世間の関心は、すっかり66年ぶりに東京で開かれるオリンピック一色になってしまった。

 特に注目されるのが、恵美ちゃんの出場する女子テニスだ。

 

 で、あたしたちもそのオリンピックの競技の1つを、蓬莱教授のつてで見ることができるという連絡が入った。

 あたしと浩介くんとそれぞれの両親、そして桂子ちゃんと達也さん、更に歩美さんと幸子さん一家と直哉さんも来るとか。

 

 蓬莱教授に瀬田助教、更に永原先生比良さん余呉さんも見に来るため、総勢20人以上の大所帯で、蓬莱教授が取ったVIP席が満席になるらしい。

 というか、何でVIP席なんか取れたんだろう? まあ、資産20億ドルの蓬莱教授だもの、不思議じゃないかな?

 

 だけど、オリンピックの前に、まだ蓬莱教授にはやるべきことが残されている。

 そう、それが「500歳の記者会見」で、オリンピック開会式の前日にそれをぶちこむという離れ業だ。

 

 もちろんこれは、世間の関心をそらさせ、反対の声をあげ辛くさせる戦法にもなっている。

 確かに、多くの人にとって、蓬莱教授の不老研究は待ち望まれるものではあるが、やはり一部の宗教団体は、かたくなに抵抗を続けていて、特に海外では未だに反対派が優勢になっている国もあるという。

 

 そうした状況を考え、まだまだ盤石とはいえないため、オリンピック前というこのタイミングで、雲隠れを計る計算になっているのだ。

 

「優子ちゃん、帰ろうか」

 

「うん」

 

 ともあれ、試験からやっとの思いで解放された今は大学の夏休みを満喫したい。

 桂子ちゃんの天文サークルは、今日は定休日になっている。

 夏休み中には天体観測も行う予定になっていて、その時に撮影した写真を文化祭に掲載することになっている。

 ちなみに、あらかじめこれらを毎年の恒例行事にすることも、すでに天文サークルでは検討し始めている。

 

「ねえ、優子ちゃん」

 

「うん?」

 

 帰り道、浩介くんが何の変哲もない廊下で立ち止まってあたしの方に振り向く。

 

「ちょっとさ、ここに入っていい?」

 

 そして、浩介くんは誰もいない薄暗い空き教室を指差して言う。

 

「もー、どうしたの?」

 

 最近の浩介くんがここを指差す時は決まっている。

 

「そ、その……優子ちゃんの服に、ムラムラしちゃって」

 

「もー、家に帰ってからよ。いい?」

 

「うっ、は、はい」

 

 夏場はどうしても服の露出が高くなり、あたしも浩介くんも性欲が高まってしまう。

 今あたしが着ているのはノースリーブの白いワンピースで、制服の時と同じくらいの短さになっている。とても涼しい上に頭の白いリボンと長い黒髪と併せて清楚なエロさを醸し出していてあたしのお気に入りのスタイルの1つ。

 浩介くんもそんな肌の露出の多いあたしを見て、いつもいつも最高潮に盛り上がっていたりもする。

 高校の頃からもそうだったけど、浩介くんは責任感が強いから外では性欲を抑えようと頑張っているけど、それでも家の中はもちろん、家の外でも性欲を押さえきれないことが度々ある。

 とはいえ、あたしたちもさすがに大学生にもなったから、学校でこういうことをするのはまずいと思い、「家に帰ってから」と言うようにしている。

 すると責任感強い浩介くんなので、こうやってすんなりと引き下がってくれるのだ。

 

 

 実は大学の中なら、スカートめくりか胸やお尻をちょっと触るだけで終わるんだけど──

 

「じゃあ優子ちゃん、『利子』をつけてもらうからね」

 

「は、はい……」

 

 浩介くんを家の中まで我慢させた場合、その「利子」として、あたしは浩介くんに服を全部脱がされてから観察されてしまう。

 

「うっ……浩介くん、恥ずかしい……」

 

「優子ちゃん、かわいいよ」

 

 浩介くんにゆっくりと1枚1枚、全裸に剥かれるまでゆっくりと焦らされながら服を脱がされるのは、この上なく恥ずかしい思いでいっぱいになる。

 

「ふふ、優子ちゃんのヘアヌード、俺だけのものだぜ」

 

 全部脱がされた所で、浩介くんがデジタルカメラを取り出して、鼻息を荒くする。

 

「はーい、優子ちゃん、そうそう足をあげて」

 

「っ……! 恥ずかしいよお……あなたぁ!」

 

  カシャッ

 

「そうそう、恥ずかしそうにしてね」

 

「あーん」

 

 そう、「利子」として浩介くんに、ヌード写真を撮られてしまったり、全身を弄られたりすることになっている。

 ちなみにこの写真、流出しないようにインターネット通信機能のない小型の中古PCに保管されている。

 もちろん、リベンジポルノに利用されたりする可能性は全く考えていないけれど、見られるだけでも恥ずかしいのに、それを写真にずっと記録されてしまうという恥ずかしさが、今までとは比較にならないくらい高い。

 

「そうそう、手で隠して……もう少し上目遣いで」

 

「はい……」

 

 2人きりの空間になると、あたしは途端に嫌と言えない従順な女の子になってしまう。

 いや、それは正確な表現ではないかもしれない。

 なぜなら、あたし自身も、心の奥底で恥ずかしい思いをして興奮したいという願望があるから。

 だからどんどん、浩介くんにのめり込んでしまう。あたし、もう浩介くんなしでは生きていけないわ。

 

 世の中には、旦那さんを尻に敷く奥さんもたくさんいるという。

 得てしてそういう家庭はうまくいくらしい。でも、あたしの家はどうだろう?

 浩介くんは亭主関白というわけでもない。

 ……そうだわ。これこそが「昼は淑女、夜は娼婦」何だわ。ここで言う夜と言うのは、単に時間帯だけではなく、2人きりの空間のことも、言うのね。

 

「ふう、優子ちゃんありがとう。服着ていいよ」

 

「う、うん」

 

 浩介くんによるヌードグラビア撮影会が終わり、あたしは改めて白いワンピースを着る。

 

  ぶわっ

 

「きゃあ!」

 

 全部着終わった所で、また浩介くんにスカートをめくられる。

 

「もー、裸見たのに、何でまためくるの?」

 

「いやさほら、スカートをめくってその先に見えたパンツの魅力も再確認したいからさ」

 

 浩介くんが悪びれもせずに言う。

 

「もー、エッチなんだから!」

 

 今はもう、このやり取りも撮影会の後の、お約束みたいなものだけど。

 

 とは言え、この「利子」も、当分は支払わなくていい。

 大学が終わり夏休みになって、「大学でムラムラ」ということも無くなるだろうから。

 

 

「さあ! ついに明日になりました東京オリンピック開会式! ここで町の声を聞いてみましょう!」

 

「いよいよ今日が来たなって言う」

 

「前回のオリンピック、カラーで見ました。今回は4Kですか8K? とにかくえれえ進歩したものだなあと」

 

 さて、今日は東京五輪の開会式の前日で、今日も含め1週間前から連日連夜東京五輪のニュースばかりをやっている。

 まさに、日本中が熱気に包まれているといってもいい。

 その報道加熱に紛れて、蓬莱教授が記者会見を仕組むことになっている。

 

「えっと、ここで臨時ニュースです。本日、佐和山大学の蓬莱伸吾教授が記者会見を開く模様です」

 

「え!? この時期にですか!?」

 

 突然の臨時ニュースに、アナウンサーさんも動揺している。

 今日はほとんど東京五輪の話題で埋め尽くしていれば視聴率が取れると思っていた所に、蓬莱教授の記者会見のニュースが飛び込んできたからだ。

 

「蓬莱氏は、万能細胞の発見により、ノーベル生理学・医学賞を受賞、最近ではTS病研究と共に、不老化への実現に向け、研究を積み重ねて参りました。今回の記者会見で何が発表されるのか、注目が急がれます」

 

 テレビ局も、突然のことに完全に不意を突かれたのか、テロップが「澤山大学」と誤字が表示され、30秒くらい後に「佐和山大学」と訂正される慌てぶりだった。

 

 マスコミは、もはや完全に蓬莱教授の手玉に取られていた。

 協会の方でも、「メディア戦略」という意味で高島さんとも協力しながら様々な策略を労してきたけど、やっぱりカードを持っている蓬莱教授の強さは段違いだった。

 

「まさか、この時期に発表してくるとは。目眩ましでしょうか?」

 

「うーんだとすれば五輪期間中ですよね」

 

 スタジオでも、様々な憶測が流れている。オリンピックの開会式の前日ということで、既にサッカーの予選は始まっている。

 そういえば、3年前に蓬莱教授が最初に120歳の薬を発表した時も、クリスマスだったかしら?

 

「えー、今会見が始まります」

 

 蓬莱教授の記者会見が始まったことを、アナウンサーさんが伝えていく。

 そして、またもや簡単なやり取りと共に生中継が始まることになった。

 

「ごほんっ、本日記者会見を開いたのは他でもない。TS病患者の遺伝子に関する話と、それに伴っての新しい蓬莱の薬についてだ」

 

 蓬莱教授が早速またスピーチを開始する。

 マスコミ関係者のフラッシュやシャッター音が明らかに少ない上、フラッシュもたかれていない。

 更にシャッターを切るタイミングも、一言言い終わってから次の言葉までの間に集中している。

 

 前回の記者会見ではマスコミ関係者も遠慮なく思い思いにシャッターを切り、フラッシュも激しく点滅していたが、今回はとにかく蓬莱教授の起源を損ねないように配慮しているのが分かる。

 

 そう、蓬莱教授はノーベル賞学者でしかも人間社会を根底から覆しかねない薬を開発しているが、立場上は私学の教員でしかない。

 だからマスコミも「権力に対抗する」何て言えない。

 実際には今の蓬莱教授は既に国家権力以上の力を持っているが、権力者ではない。

 しかも政府と裏の繋がりがあるわけでもない。ある意味で、最もたちの悪い存在に、今の蓬莱教授はなっていた。もしかしたら、佐和山大学にとどまっているのも、学会の嫌がらせ以外にもこうした理由があったのかもしれない。

 だからこそ、マスコミはどこも萎縮している。海外メディアでさえも、蓬莱教授から薬を融通してもらえないという恐怖心からか、研究開発の経過を報道することがあっても、そのスタンスについての批判は避けられているくらいだ。

 

「それで、今回俺が発見したのは、第2の不老遺伝子というものです。先日、例の週刊誌が勇み足をした会合でも、不老遺伝子のメカニズムについて解説しましたが、実は不老遺伝子には2つのタイプがありまして──」

 

 蓬莱教授が、以前あたしたちに話してくれたα型とβ型の話をしている。

 ちなみに、蓬莱教授はα型のことを「即時修復型」、β型のことを「無損傷型」という名前をつけていた。

 最も、長ったらしいので、これまで通りαβと言っているけど。

 

「──で、TS病患者と言うのはですね、この2つのタイプ、あるいはまだ未発見の上に本当にあるかも定かではありませんが、第3第4のタイプとを組み合わせて、老化に備えているわけです」

 

 記者たちも、難しい話を必死にメモしているのか、カメラの作動音はますます少なくなる。

 

「つまり、α型の患者にもβ型の機能は備わっていますし、β型の患者にもα型の機能が備わっています。ただ、どちらが強いかで出方が変わるわけです。あえて違いを言えば、普段の修復力はβ型に、大きな病気などになったときに治療が早いのがα型です」

 

 それは、永原先生と比良さんが、当時猛威を振るっていた結核に感染した時のエピソードが有名だと思う。

 でも、蓬莱教授もそのことは話していない。

 

「ですから、患者本人の日常生活と言う意味では、どちらも本質的に変わりませんし、本人に生きるモチベーションさえあれば不慮の事故に巻き込まれたり、隕石などで地球そのものが破壊されるといった極端なことがなければ永遠に行き続けることができることには変わりませんので、そのことは強調しておきたいと思います。最も、そうなれば死ぬということを鑑みれば、不老は決して不死ではないことに関しても、重ねて強調しておきたいところですが」

 

 蓬莱教授は、今回の記者会見で起こる誤解について、かなり恐れているのが見てとれる。

 最も、不老と不死の違いにつては、最近ではあたしたちや蓬莱教授の宣伝部が「不老警察」と揶揄されるほどのしつこい啓蒙活動によって、混同されることは少なくなっている。それでもやはり、警戒は解いていない。

 また、蓬莱教授はあたしたちの要望通り、α型とβ型は本質的な違いがないことも強調している。

 

「つまり、今までの我々の想像以上に、TS病患者の完全不老遺伝子は堅牢な作りになっていたということです。今までの実験では、300歳の薬の開発の後、しばし実験が停滞しておりましたが、今回の新しいメカニズムの発見により、500歳の薬を開発することに成功いたしました」

 

 記者会見での蓬莱教授の口ぶりは、自信にあふれていたが、ほんの少しだけ、不安も見受けられた。

 

「それでは、記者の皆さんから質問はありますか?」

 

 すると、記者の1人が手をあげた。

 周囲からは、やや驚きの声が飛んでくるが、蓬莱教授は顔色1つ変えない。

 

「ニュースブライト桜の高島です」

 

 マイクの主は、蓬莱教授とも旧知の仲だった高島さんだった。

 

「差し支えなければですが、今後蓬莱の薬はどのように販売していく予定ですか?」

 

「あー、それは完全に不老となる薬が出来たときに考えている。確かにこの薬は500歳の薬、これを飲めば今人類最高齢となっている永原先生と同じくらいの人生を歩むことができる。だが、そうはいってもこれはまだ不完全なものなんだ。だから売る訳にはいかない」

 

 蓬莱教授は、あくまでも完璧主義的に物事を考えている。

 そもそも、今の薬だってノーベル賞と言う枠さえ収まりきらないようなレベルの内容だが、それでも世に出したりはしないし、「完成」したわけでもない。

 あくまでも、建前上は「研究の途中経過の報告」でしかないのだ。

 まあ、「それでも欲しい」ってのが世間の圧倒的大多数だとは思うけどね。

 

「分かりました」

 

 蓬莱教授に対する記者会見は、その後は質問も出ずに、自然解散となった。

 

 

「という訳なんですが、番組では急遽専門家の方をお呼びいたしまして、今回のテーマについて討論していきたいと思います」

 

 そう言うと、テレビでは専門家の人がスタジオに立っていた。

 記者会見は遺伝子の説明がそれなりに長かったとは言え、そこまで時間が経っていない。

 本当に素早い対応だわ。神業と言っていいわね。

 

「まずその、この薬というのは未完成とおっしゃってましたが」

 

「まあその、蓬莱教授の考え方ですよね。我々からしてみれば、5日間飲んだだけで500年も生きられるような薬何てとんでもない発明だと思うんですが、蓬莱教授からすれば不十分でしかないんですよね」

 

「ええ」

 

 蓬莱教授からすれば、かなり年上の名誉教授が解説してくれている。

 

「でですね、こういった蓬莱教授の完璧主義というのでしょうか、TS病の方々と同じような不老をみんなで分かち合えるまで、あくまでも途上の報告という体裁を崩していません。ここに、蓬莱教授の実直さが現れていますよね」

 

 週刊誌の事件以来、マスコミの報道やテレビのコメンテーターの発言も蓬莱教授に配慮した内容が増えているが、今日は今までにないくらい露骨だった。

 まさに権力におもねるマスコミそのもので、これまでの所業を考えれば醜いことこの上ないものだが、ある意味で、政治力0の権力は何よりも怖いものなのかもしれない。

 あたしだって、自分がマスコミの立場だったら、同じことをしたと思う。

 

 それはともかく、これで蓬莱教授の宣伝部も、以前よりは少し枕を高くして眠れるかもしれないわね。

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