永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件 作:名無し野ハゲ豚
「ついたわね」
今日は文化祭の日であたしにとっては2回目の文化祭になる。
あたしは純白のワンピース姿で文化祭へと望むことにした。
とにかく、道行く人たちのあたしの、主に胸への視線はもちろん、浩介くんに対する殺意の視線もすさまじかった。
「浩介くん、今日はいつも通りの服だけど、やっぱりなんだかかっこいいわね」
天文サークルはあたしたちが一番乗りだったので、あたしたちは早速のろけることにした。
「いやー優子ちゃんもその服似合ってるよ」
「ふふ、ありがとう。この白いワンピース、お気に入りなのよ」
やっぱりかわいいって言ってもらえるのは嬉しいわ。
「ああ、今でも覚えてるぜ。高2の文化祭の後、俺が優子ちゃんの彼女になって始めてのデートの時に着ていた服だろ?」
「う、うん、よく覚えてるわね」
まあ、あたしだってちゃんと覚えているけど。
「忘れるものか、優子ちゃん、家に帰ってからあんなにエロくなって」
「ふふ、今のあなたならあの時どうしてた?」
あたしがちょっとだけ、小悪魔チックな口調で言う。
「そ、そんなの即ヤるに決まってるだろ!?」
浩介くんが顔を真っ赤にしながら大きな声になる。
そうよね、浩介くんらしいわ。
「そうよね。ふふ、えっちな浩介くんで安心したわ」
「ところでさ、優子ちゃんの清楚な格好って、やっぱり夜を知り尽くした俺にとっては格別なのよね」
「うっ」
鼻高々な口調になった浩介くんに、あたしも動揺してしまう。
「何せこんなかわいい顔して、穢れなんてものとは全く無縁にしか見えない純白の服を着た優子ちゃんが、夜のベッドの上ではかわいくえっちな言葉を大声で乱発しながら両親の部屋まで聞こえる大きな声で──」
「もうっ! 浩介くんやめて! 誰か来たらどうするの!?」
暴走してきた浩介くんに対して、あたしが咎めるように言う。
「おっと、ごめんごめん」
本当にもう、興奮しちゃうじゃないの。
ガチャッ
扉が開かれる音がする。もう、危なかったわ。
「あら優子ちゃんに浩介、早いじゃない」
「お、木ノ本に中庄、おはよう」
ドアに近かった浩介くんが挨拶をしてくれる。
「あ、優子さんおはようございます」
「歩美さんもおはよう」
あたしたちの次に入ってきたのは桂子ちゃん達也さん、それに歩美さんだった。
3人とも、文化祭ということでいつもより服装に気を使っている。
「えっと、他の部員たちは?」
「まだ来てないわね」
あたしがざっと一面を見渡しながら言う。
もちろん高校までの教室と同じように、この中はそうそう隠れることはできない。
「そう。まあ、この時間じゃ早すぎるくらいだものね。さ、パソコン開くわよ」
桂子ちゃんの指示のもと、パソコンを開く。
文化祭という空間のためか、あたしもまずはJAXAのホームページにアクセスすることにした。
宇宙開発もまた、蓬莱教授の研究と同様、大きな期待を持たれている。
「うーん……」
あたしは、彼らを味方に引き込めないかと考え始めた。
それは、宇宙と天文が好きだった桂子ちゃんが不老を望んだように、宇宙のスケールにとって人間の寿命は余りにも短すぎる。
だからJAXAの人ならば、もし不老の薬が完成すれば、歓迎してくれるかもしれない。
それはもちろん、他の国の宇宙開発期間、例えばNASAにも影響を与えると思う。その起爆剤として、JAXAと協力することが出来ないかな?
「どうしたの優子ちゃん、JAXAが何か難しいこと言っているのか?」
隣に座っていた浩介くんが不思議そうな顔であたしを見つめてくる。
「あーうん、その……この人たちを、蓬莱教授の味方にできないかなって考えていたのよ」
「え!?」
あたしの提案は突拍子もなかったのか、浩介くんが驚いた声をあげる。
コンコン
「はーい」
「失礼します」
しかしそれも、間が抜けた扉のノック音と、部員の入ってくる声にかき消されてしまった。
「……ええっと、それで、優子ちゃんは何でJAXAが蓬莱教授の味方にできるって考えたんだ?」
浩介くんが気を取り直してあたしに聞いてくる。
「えっとね、桂子ちゃんが蓬莱の薬を飲んだ理由、思い出してみてよ?」
「えっと……何だっけ?」
ありゃりゃ。
「浩介忘れたの? ほら、宇宙のスケールに人間の寿命は短すぎるっていう話よ」
見かねた桂子ちゃんが自分から話しかけてくれた。
「あ、なるほど、そういうことか!」
浩介くんが納得した評定をする。
「ええ、JAXAの人にだって、桂子ちゃんと同じ思いを抱えて、密かに蓬莱の薬の完成を待ちわびている人は多いはずだわ。そしてそれは、日本のJAXAに限らないはずよ」
「ああ間違いなくそうだろうな!」
浩介くんが、確信を持った声で言う。
この事は、蓬莱教授にも話しておかねばならないわね。
味方が増えることは、いいことだもの。
ともあれ、これであたしたちの方針は決まったわね。
「みんな揃っているわね、じゃあ、今日の天文サークルの見張り当番だけど各自確認してね」
その後、部員が全員到着したところで桂子ちゃんが挨拶する。
「「「はい」」」
とりあえず、去年と同様、この部屋には誰か1人いれば大丈夫ということになっている。
担当は部長の桂子ちゃんが一番長く、あたしと浩介くんは人数的な余裕もあって見張りの時間帯には充てられなかった。
つまりあたしたちは閉会まで自由時間ということになる。
ピンポンパンポーン
「文化祭実行委員です、ただいまより2020年度、さわわ祭を開催いたします!」
ほどなくして、実行委員さんのアナウンスが聞こえ、一気に外の騒ぎが大きくなった。
「ねえ浩介くん、どこから行く?」
「そうだな、まずはお隣さんからで」
「分かったわ」
あたしたちは桂子ちゃんに挨拶し、そしてまずは隣に構えているサークルに入った。
そしてここにいるのは――
「いらっしゃいませ! ダンスサークルへようこそ!」
去年と同じように、近くにはダンスサークルがいてサークルメンバーは相変わらず2人だった。
「こんにちは」
驚くべきはその服装で、ノースリーブでへそ出し、下はあたしが浩介くんを性的に誘惑する時に着るあの超ミニスカート並みに短いプリーツスカートで、その短さは直立不動でもスパッツが見えているくらいのものだった。
去年も比較的露出度の高い服を着ていたけど、今年は去年以上に扇情的になっている。
というか、スパッツがなかったらあたしが浩介くんに誘惑する服と同じくらいの露出度よね。あ、でもこの2人は胸が小さいから違うかな?
「えっと、1年ぶりだな」
「ええ、また来てくださってありがとうございます」
浩介くんの発言に、ダンスサークルの人もペコリと頭を下げる。
その礼儀正しさと服装のギャップが凄まじいわね。
「そんなことよりどうしたの? 去年と服が変わってるわね」
「はい、やっぱりこういうので釣らないとあっちの方ばかり注目されてしまいますから」
ダンスサークルの人が丁寧に応対してくれる。
「何か本末転倒な気もするわね」
そんな露出度高い服で踊ったら、どう取り繕っても性的アピールにしかならないわよね?
「ああいえ、見ての通りスパッツ穿いてますから大丈夫です」
「はい、安心安全です」
ダンスサークルの2人はニッコリしながら答えている。
うーん、やっぱり生粋の女の子はそう考えちゃうわよね。
それが間違いだということの感覚が分かるのは、TS病の女の子じゃないと難しいのかもしれない。
「うーん、まあ本人がそう言うならそれを尊重しよう。とりあえず、今年のダンス……といっても去年のもうろ覚えだけど、よろしく頼むよ」
浩介くんも困惑しつつ、そのように言ってくる。
あたしも、あまり追求しないようにするわ。建前上大丈夫ってことになっているんだし。
「「はいっ!」」
ダンスサークルの2人が元気よく言葉を発すると、早速ダンスが始まる。
「それっ!」
見て分かるのは、明らかに去年よりもくるりと回転する場面が多いこと。
スカートが場合によっては水平以上にめくれあがって、スパッツが完全に見えることさえもある。
「はいっ!」
また、足を高らかに上げてハイキックする場面も、去年はなかったのに今年は複数取り上げられている。
男の子の立場から言えば、中身そのものよりも、スカートがなびくことそのものに魅力を感じる人も多い。そういう人から見れば、かなりの目の毒なのが見てとれる。
確かに影が薄く2人しかいないために性的アピールをしないと注目されないとはいえ、それはヤリサーと化した昔のサークルとの棲み分けを、困難にする恐れのある諸刃の剣でもあると思うのよね。
「それっ、ワンツー、ワンツー!!!」
「えいっ!」
そして、しばらくするとダンスも終わる。
浩介くんが、ダンスに釘付けになっている気がする。
そりゃあこの部屋で動いている人はダンスしかしてない
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
パチパチパチ
2人が同時に頭を下げ、あたしたちは拍手をする。
「じゃあ、あなた、次に行きましょう」
「え!? せっかくだからもう少し話してもいいじゃないか」
あたしは、つい浩介くんに対する独占欲から、この場からすぐに立ち去ろうとしてしまう。
「え、あ、うん」
浩介くんが、今更この貧乳の2人になびくはずがないと分かっていても、ついついメスの本能と、男の浮気癖の知識のせいで、浩介くんを独占したくなってしまう。
また「挟み込み」しないとダメかな?
「どうして今年はこんなダンスにしたんだ? これだとリスクもあるんじゃないか?」
「はい、ですが去年のように地味なだけでは部員は集まらないんです。もちろん、ヤリサーには絶対にさせませんけど、でもこういう時くらいは、アピールしないといけないんです。そうしなければ、座して死を待つだけなのです」
サークルの人の決意は、あたしたちが思っている以上に苦渋の決断だった。
去年は全く、人気が出なかった。そのために、今年は賭けに出ざるを得なかった。
仮により悪い結果になったとしても、現状のままでは自然消滅してしまうと言う危機感が、彼女たちを突き動かしたんだと思う。
「そう……あたし、ダンスは専門外ですけど、とにかく頑張ってください」
「はい、ありがとうございます」
あたしが応援の言葉を発すると、ダンスサークルの人も笑顔で応対してくれる。
その心は本当に純粋で、あたしは何て心が醜い女なんだろうと自己嫌悪してしまうほどだった。
女の子になりきっても、まだまだ「優子」になるには道が遠いと、改めて思い知らされた。
「さ、浩介くん、今度こそ行くわよ」
「あ、ああ」
あたしは一通り話し終わったら立ち上がって腕を少し引っ張る。
「ありがとうございました」
「また来てください」
ダンスサークルの人に見送られて、浩介くんと一緒に次の場所を探す。
しかし、浩介くんの様子がおかしい。
「浩介くん、そっちは違うよ!」
浩介くんが、階段を上っていく。
この階より上層は空き教室が開かれているだけで、サークルなどによる展示もない。
つまり、上に上がっても何もないわけだけど。
「まあまあ、優子ちゃんついてきてよ」
階段から、浩介くんが振り向いてあたしを誘ってくる。
「むー、またなにか良からぬことを企んでるような」
「ちっ、バレたか」
浩介くんが悪びれもせずふざけた様子で答える。
どうやら、またえっちなことをしたいみたいね。
「もー、今回はあたしもちょっとだけ嫉妬しちゃったから、ついていってもいいわよ」
まあ、今回はあたしもされたい気持ちが大きいから、了承しちゃうけどね。
「よっしゃー!」
あたしの言葉を聞いて、浩介くんがたちまち上機嫌になる。
ああ、あたし、浩介くんに独占されちゃってるわ。うん、あたしも浩介くんを独占したいわ。当たり前よね。夫婦だもん。
「いよっしゃ! 誰もいない教室みっけ!」
ガララララ!
「優子ちゃんも入ってよ!」
「うん」
浩介くんが扉を明け、中に入るとそこは講義で使う教室で、今は何もなく、太陽の光だけが薄暗く入り込む空間だった。
浩介くんは扉をゆっくりと閉めて廊下側からは見えないような位置に移動する。
「ねえ優子ちゃん、さっきのダンスサークル、すごかったね」
「うん」
もしかして?
「でさ、優子ちゃんのその水色のワンピース、それでちょっとダンスして欲しいんだよ」
浩介くんの要求は予想降通りだった。
「もーあたしスパッツ穿いてないわよ」
それに、あたしの運動神経じゃ大したこと出来ないし。
「当たり前じゃん、ほら、思いっきりくるっと回ってみてよ」
つまり遠心力でスカートがめくれて、パンツ見える様子を観察したいというのが浩介くんの狙いね。
「もー、恥ずかしいよお!」
あたしはちょっとだけ拒絶する。
「大丈夫だって。パンツ見るのは俺だけだから。まあ、スパッツ穿いてたら俺が脱がしちゃうけどね」
浩介くんがスケベな顔を丸出しにして言う。
「もー、浩介くんだから、愛する旦那だから見られるの恥ずかしいのよ!」
あたしは、顔が赤くなるのを必死でこらえながら浩介くんに訴える。
「それでも、愛する旦那の頼みなら断れねえのが優子ちゃんだよね」
「もう、分かったわよ……浩介くん、恥ずかしいけど……見ててね」
浩介くんの変態的力説とそれに対するあたしの反論の末、いつものようにあたしは最後には折れてしまう。
こうなるのはいつものことなのに、これをした後だとより興奮することがわかっているからついこんなやりとりをしてしまう。
これもまた、様式美のようなものね。
「んっ……えいっ!」
あたしは無言で、足を捻らすと、勢いをつけて一気に一回転する。
スカートが遠心力で捲れ上がって、パンツが外気に触れるのを感じ、あたしは顔が一気に熱くなる。
「おー! 水玉模様がかわいいね!」
「あうぅ……恥ずかしいよぉ……」
浩介くんにパンツの色を実況され、あたしは目を細めて顔をうつむかせてしまう。
「くあー! 恥ずかしがってる優子ちゃんかわいい-!」
「うー!」
浩介くんは大喜びではしゃいでいて、それがますますあたしの恥じらいを煽ってくる。
「そーれ!」
ガバッ!
あたしは、浩介くんに頭をスカートの中に潜り込まれてしまう。
「きゃあ! ちょ、ちょっと浩介くん!!!」
「うーん、水玉パンツかわいい!」
浩介くんの頭がスカートの中に入り込み、至近距離から凝視されてしまう。
「あーん、もう許してー!」
恥ずかしさに耐えきれなくなったあたしが、浩介くんに白旗をあげる。
「もう、しょうがないなあ」
浩介くんが頭を元に戻してくれる。
あたしの全身は、もうぐっしょりと汗をかき始めていた。
「ふう、優子ちゃん、さっきの嫉妬治った?」
やっぱり、浩介くんに見抜かれていたわね。
「う、うん。治ったわ」
浩介くんにセクハラされる度に、あたしはますます浩介くんにのめり込んでしまう。
あたしは一瞬、ここでするのもドキドキ感がありそうと思ったけど、ばれるリスクを考えて即座に首を横に振った。
「どうしたの優子ちゃん」
首を勝手に振ったあたしを見て、浩介くんがちょっと怪訝そうに言う。
ちなみに、浩介くんは下の方を大きくしている。それを見てあたしは満足感が急速に満たされていくのを感じる。
「ううん、何でもないわ。あなたがあたしだけを見てくれてるって思うと、ちょっと嬉しかったわ」
「そうか」
「じゃあ、続きを見ようか」
あたしは、教室から出てもう一度文化祭を回ろうとする。
ぺろーん
「きゃあ! もー! 浩介くん本当に見境無いわね!」
浩介くんに後ろからスカートをゆっくりめくられてしまう。
やっぱりいつものように、あたしは2人きりではセクハラされる運命にあるらしいわね。