永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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夏の夫婦旅行2日目 朝の出来事

「うー」

 

 暗い部屋の中で、ゆっくりと意識が戻っていく。

 昨日寝るのが早かったため、起きるのが早まるのはいつものことだった。

 

「浩介くんは……あれ?」

 

 あたしが見通すと、浩介くんのベッドには誰もいなかった。

 ということは、どこかに出かけているのかしら?

 

「ん?」

 

 よく見ると、トイレのある部屋の明かりが点いていた。

 どうやら、単にトイレに行っているだけだったみたいね。

 

「良かったわ」

 

 トイレが流れる音がすると、浩介くんが出てきた。

 

「浩介くん」

 

「あ、優子ちゃんも起きたんだ」

 

 浩介くんも、トイレに行ってる間にあたしが起きていたことに気付いてちょっとだけ驚きの表情をしてくれた。

 

「うん」

 

 外を見ると、まだ日の出前だった。

 浩介くんが、二度寝防止も兼ねて部屋の電気を一斉に点ける。

 

「うっ、眩しいわ」

 

「おっとごめん」

 

 あたしは少しずつ視界を増やして目を慣らしていく。

 部屋の明かりの外には、富山の夜景が見えていた。

 もちろん、結婚初夜の時や、協会の会合が夜まで続いた時に見た東京の夜景のような大胆さはない。

 でも地方の都市は、また違った趣があるらしく、慎ましい印象を受ける。

 

「落ち着いた?」

 

「うん、もう大丈夫よ」

 

 浩介くんが、安心した表情になる。

 

「よし、それじゃあ今日の予定をもう一度復習するか」

 

「うん」

 

 浩介くんが、地図を取り出してくる。

 載っているのは主に富山県で、どうやら鉄道を重視している感じの図だった。

 

「今日は富山地方鉄道本線と、黒部峡谷鉄道線に乗るぞ」

 

「うん、トロッコ列車なんでしょ?」

 

 黒部峡谷鉄道線については、あたしも少しだけ調べたことがある。

 

「ああ、それでだな。途中で宇奈月温泉にも行くわけだけど──」

 

 浩介くんと旅行の予定を再確認する。

 また、今日の服は、明日も含めて山の中だからスカートは禁止だけど、標高は高くないので、いわゆるデニムの短パンという動きやすい格好を心がけるようにと浩介くんから指示があった。

 また、あたしがいつもつけている頭の白いリボンも、飛ばされないようにしっかり締めるようにという指示があった。

 浩介くんは、2人きりの時に性癖が暴走した時を除いて、あたしの服装には殆ど口を出してこないから、これは異例のことだ。

 

 もちろん、山で風の強い場所という意味で、スカート禁止なのは言われるまでもなくわかっていることだけど、ね。

 とはいえ、普段のあたしがスカートが多すぎるので、浩介くんは気が気でなかったらしい。

 

「ちゃんと、指定の服は持ってきたか?」

 

 浩介くんは、どうも心配症らしいわね。

 しょうがないわ。

 

「うん」

 

 あたしは、それを証明するために、服を2着、浩介くんに見せる。

 

「よし、俺が着替えさせてあげよう」

 

「ふえ!?」

 

 浩介くんがいきなり突拍子もないことを言ってきたので、あたしも思わず驚きの声を漏らしてしまう。

 反射的に、身を引いて防御態勢を取ってしまう。

 

「優子ちゃん、いつも俺に着替えを見せてくれねえからな。だったら俺がお姫様を着替えさせてあげるんだ!」

 

 浩介くんが、またノリノリな目付きになって話す。

 そう、まさにあの「変態の目」そのものだわ。

 

「い、いいって! 大丈夫よ!」

 

 嫌な予感を直感したあたしが浩介くんの申し出を断るように言う。

 

「遠慮するなって。良いではないか!」

 

 浩介くんが鼻の下を伸ばしながら、あたしに近付いてくる。

 

「もう! 子供じゃないわよ! ってか、子供だって、ひとりでできるもん!」

 

 あたしがもう一歩お尻を後ずさりさせる。

 しかし、簡単に浩介くんに捕まってしまう。

 

「それをあえて手伝うところに良さがあるんじゃないか。昔の亭主関白なんて、着替えを妻にやらせてた奴もいたんだぜ。それに比べれば、妻を着替えさせてあげる俺はサービス精神旺盛だろ?」

 

 浩介くんが、あたしの服に手をかけ始める。

 いやらしい手つきで、浩介くんに物色されている感覚で、あたしの興奮がすぐに高まってしまう。

 

「もう! 変態精神の間違いでしょ!?」

 

 もちろん、本能では浩介くんに興奮しているため、払い除けたりはしない。

 

「とか何とか言ってー、払い除けないところを見ると、優子ちゃんもひっそり期待してたんだろ!?」

 

「バカ!!!」

 

 完全に図星を疲れたあたしが、照れ隠しに浩介くんを罵倒する。

 浩介くんはそれを無視してあたしを無理矢理立ち上がらせる。

 昨日はあたしが主導権を握っていたはずなのに、今日は朝から握られっぱなしだわ。

 

「やっ、やだ恥ずかしい!」

 

 浩介くんの手で、ワンピースタイプのパジャマをめくり上げられ、あっという間にパンツ丸出しにされてしまう。

 

「やだ、やーだー!」

 

「もう、嘘つきだなあ優子ちゃんは!」

 

 浩介くんが、わざとゆっくりとパジャマをめくりあげると、パンツに続いてブラジャーも丸見えになり、あたしは前が見えなくなってしまい、いわゆる「茶巾」という状態にさせられてしまう。

 あたしの中にある恐怖が混ざったえっちな興奮が更にあたしの心臓を高鳴らしていく。

 

「お、これかわいいな。あーでも、優子ちゃんのかわいい顔が見えないのは嫌だな」

 

  スポリッ

 

 浩介くんによって、下着姿にさせられてしまう。

 

「あーん」

 

「もう優子ちゃん、俺に脱がされたこと、もう数えきれねえだろ?」

 

 浩介くんが「恥ずかしがることないのに」という風に言う。

 

「それとこれとは訳が違うのよ!」

 

 何回されても、慣れることはないと思う。

 浩介くんには、惚れ続けているから。

 

「ふーん、まあいいや。そーれっと!」

 

  バッ!

 

「いやーん!」

 

 変な掛け声と共にパンツを脱がされ、あたしがしゃがみこむ暇もなく浩介くんにブラジャーを脱がされて、あたしはついに全裸に剥かれてしまう。

 

「ふふふ、さ、足を出して」

 

 浩介くんが、あたしの靴下を持ってにやけついている。

 昨日あんなに締め上げたはずなのに、浩介くんのパジャマからは、浩介くんがとっても元気な様子が見てとれた。

 本当にもう、あたしも男だったから分かるけど、それにしたって回復が早すぎよ。

 

「うー」

 

「ほら、着替えないと全裸のままだよ」

 

「っ……はい……」

 

 浩介くんに促され、とうとう屈服させられたあたしは、ベッドに座って浩介くんの前に足を出す。

 もう一方の足も同様にして靴下をつけてもらうと、今度は水玉模様のパンツを出してくる。

 

「はい、両足揃えてねー」

 

「あうう……」

 

 浩介くんに「諦めなさい」という感じの口調で促されると、あたしはそのまま服従して足を揃えてしまう。

 浩介くんによってパンツを穿かされる。他の人に下着を穿かせられたのは、結婚式の時以来だけど、あの時とは全く状況が違う。

 脱がされる時もとっても恥ずかしいのに、今はもう、その数倍恥ずかしいわ。

 

「よし、これでいいな」

 

  すりすり

 

 しかも案の定、どさくさ紛れにお尻を触られちゃったし。

 

「はい、次にブラジャーね」

 

「……はい」

 

 あたしは、両手で隠していた胸から手をどけて、浩介くんにブラジャーをつけてもらう。

 全て自分でできることを夫にしてもらうというのも、またかなりの屈辱感が伴うことだった。

 

「よし、じゃあ、今日はこれとこれでいい?」

 

「……はい」

 

 浩介くんが提示してきたのはシンプルな夏用の服、もう一組は明日に使う予定だったので、浩介くんのチョイスはあたしと同じだった。

 

「はーい、万歳してねー」

 

「はい」

 

 まるで、未修学の子供にするような着替えさせ方が、更にあたしを恥ずかしさの渦に巻き込んでいく。

 最後にデニムの短パンを穿かされて、お着替えは終了になった。

 

「はいおしまい。優子ちゃん、お疲れ様」

 

 浩介くんが満足そうな表情でニッコリと笑う。

 

「あうう、脱がされるより恥ずかしかったー!」

 

 あたしは、全身が火照っているのを感じる。

 

「本当に?」

 

「うー、だってー!」

 

 浩介くんの分からないふりに、あたしはますます身体が熱くなってしまう。

 

「一人で出来ることを旦那にしてもらったから?」

 

 あたしは浩介くんの回答にコクりと頷く。

 

「そうよ。もー」

 

 あたしにとって、着替えは見られたくないものなのに、ましてやそれを浩介くんにしてもらう何て。

 

「でも、俺としても勉強になったよ。それにほら、いつも優子ちゃんは大変だもの。たまには楽するのもいいぜ」

 

 浩介くんがニヤニヤしながら話す。

 本当に分かりやすい人なんだから。

 

「もー、そんなににやけついて! 下心丸見えよ!」

 

「うーごめんなさい」

 

 ……言葉では反省しているけど、体は全く反省していないわね。

 

「もう、そんな浩介くんにはおしおきよ!」

 

  ガバッ

 

 今度はあたしが、浩介くんのパジャマのズボンを、下着ごと下ろす。

 

「わっわっ!」

 

 突然のことに浩介くんが動揺している。

 よし、主導権を握ったわ!

 

「全部これが悪いのよ! 沈めてあげないといけないわね!」

 

 あたしは、浩介くんに「おしおき」するための究極技を行うため、着ていた服の一部をもう一度脱いだ。

 

 

 

「はぁはぁはぁはぁ……」

 

 浩介くんが、ベッドに倒れ込みながら激しく息遣いをする。

 やっぱり、下半身が苦しそうになった浩介くんには、「挟み込み法」でマッサージしてあげるのが一番効果的な方法みたいね。

 

「浩介くん、どう? 懲りた?」

 

 今度はあたしがニッコリと笑顔で浩介くんに迫る。

 

「はぁはぁ……うん……はぁはぁ……優子ちゃん、ごめんなさい……」

 

 浩介くんにとっては、「挟み込み法」はあまりにも刺激が強いため、おいたが過ぎる時によく使う方法になった。

 いつでも暴走気味の浩介くんには、この方法はとっても効果的だったりする。

 最後には、あまりの刺激ぶりに「もう許して下さい」と言うんだけど、もちろんオイタが過ぎた浩介くんを、あたしは許すつもりはない。

 

「じゃあ浩介くん、あたしちょっとシャワー浴びてくるから、絶対に覗かないでよ!」

 

 いつもよりも、ちょっとだけ強い口調で話す。

 

「えー!」

 

 浩介くんが不満そうな声をあげる。

 

「えー! じゃないわよ! もし覗いたら、次はもっと刺激的に行くわよ!」

 

「は、はいっ!」

 

 浩介くんが素直に大人しくなってくれたので、あたしは安心してシャワーを浴びることが出来た。

 「挟み込み法」の最大のメリットは、あたしの体力消費が少ないこと。それでいて、浩介くんにはほぼ一方的に体力消費を強いることが出来る。

 普段は並みの男女以上に体力差のあるあたしたちカップルにとっては、この方法で浩介くんの体力を一方的に奪えるのは大きい。

 

 

「お待たせー浩介くん」

 

「優子ちゃん、お疲れ様」

 

 浩介くんが、あたしを労うように話しかけてくる。

 浩介くんの方もシャワー時間を利用して、既に新しい服に着替えていた。

 

「で、まだ時間あるんだけど、どうしようか?」

 

 さっきのゴタゴタで大分時間を潰せたけど、朝食まではまだ少し時間がある。

 

「うーん、浩介くん、テレビ見てみようか」

 

「ああ、そういえば、スポーツの方はどうなってるかな?」

 

 昨日新幹線の中で、「国際反蓬莱連合が、国際スポーツ仲裁裁判所に、蓬莱の薬を禁止薬物に指定しようと提訴した」という情報を入手している。

 恐らく、既存メディアも一斉に報じているはずだわ。

 

「おう」

 

 浩介くんがホテルのテレビをつけて、チャンネルを合わせる。

 

「──では続いて気象情報です」

 

「……タイミング悪いな」

 

 テレビでは、ちょうど気象情報のコーナーをやっていた。

 そりゃあまあ、都合よく行くわけないものね。

 そのため、あたしたちは件のニュースが出てくるまで待つことにした。

 

 

「では、次のニュースです。『国際反蓬莱連合』と名乗る集団が昨日、国際スポーツ仲裁裁判所に対して、蓬莱の薬をあらゆるスポーツの禁止薬物に指定するように求めた事件につきまして、スポーツ仲裁裁判所は、『検討に入る』としています」

 

 ニュースキャスターの声を聞いて、あたしたちは焦りを隠せない。

 とはいえ、「検討に入る」だけならまだ十分に何とかなるわね。

 

「これに対して、佐和山大学の蓬莱伸吾教授は、『蓬莱の薬は選手の健康を損なうものではない。むしろ選手が抱えている病気を直してくれるものだ。これをドーピングと呼ぶのは甚だ心外だ』として、反蓬莱連合を牽制しました」

 

 テレビでは、蓬莱教授がインタビューに応じる映像が声無しで流れていて、代わりにアナウンサーさんが蓬莱教授のインタビュー内容を要約した原稿を読んでいる。

 蓬莱教授の主張は、以前の繰り返しだけど、公に発表するのはこれが初めてだろう。

 

「また、体の性別が男性から女性に代わり、また老化が止まる完全性転換症候群、いわゆるTS病と呼ばれる病気の患者で作る『日本性転換症候群協会』の永原マキノ会長は、『到底容認できない。もし蓬莱の薬がドーピングならば、私たちは存在そのものがドーピングになってしまう。もしそうなれば、私たちはあらゆるスポーツ大会に出る権利を永久に剥奪されることになってしまう』と述べて、危機感を強めております」

 

 ニュース映像は、本部の入っている建物を映すだけで、永原先生の写真や映像、そして年齢は出てこない。

 ただ、こうしたコメントを発し、ブライト桜以外のメディアも報道するということは協会の方から何らかの力を働かせたことも意味するわね。

 そして、場面はスタジオに戻った。

 

「はいそれで、スタジオの皆さんはどう思われますか?」

 

 司会の人がゲストに意見を促している。

 

「はい、協会側の主張、これが全てですよね。老化を止めることをルール違反としてしまいますと、TS病になってしまった患者さんたちの立場が無くなってしまいます」

 

 大学教授が、蓬莱教授と協会の主張を補完する解説をする。

 

「仮に特例で対処するとしても、将来TS病のトップ選手が出た時に、他の選手からの不公平感はぬぐえませんし、そもそも『スポーツの道に進むと不老になれない』とすれば、スポーツ界そのものが、大変な人材損失を招くことになるでしょう」

 

 世間一般には、恵美ちゃんが蓬莱の薬を飲んでいることは知られていない。

 恵美ちゃんもテニス選手になって4年目で、世界ランキングはずっと1位を独走していて、「田村時代」何て呼ばれている。

 海外の人の間では、「日本人は老けない」と言われているため、幸いにして、今の所怪しむ人はいない。

 

「そうですねえ、今後の動向に、目が離せません。では次のニュースです――」

 

 結局、この番組も蓬莱教授と永原先生の主張のみを流して、更に両者に同調する意見を流して終わりだった。

 反蓬莱連合側の主張は一切流していない。

 一言で言えば偏向報道そのもので、国家権力の批判は出来ても、民間権力たる蓬莱教授と協会の批判は、もはや完全にできなくなっていた。

 

 蓬莱教授の宣伝部からはまだ情報はないが、あたしの推測では海外メディアも大差ないと思われる。

 あの後わかったことだけど、実は蓬莱教授が自らに逆らい、反蓬莱活動をするものは、子孫や関係者にまで蓬莱の薬を融通しないことに言及していたのも、永原先生の差し金だった。

 こうなれば、自らが迷惑を被るだけではないということになる。

 

 永原先生によれば、「戦乱の時代や、あるいは私が生まれる前の時代は今よりも遥かに権力基盤が弱かった。些細な事で人が死に、復讐の連鎖の果てに激しい闘争が起きることもあった。戦闘的な人間に対して戦意を喪失させるにはこれが一番いい」と言っていた。

 江戸時代になるとそうした極めて戦闘的な考えは捨てられていったが、永原先生は江戸以前の時代を知っているため、血で血を洗うことが日常化していた時代に、何が人間にとって最も恐怖を感じるかを心得ている。

 それがまさに「族滅」なのだという。

 蓬莱の薬を自分だけでなく自分の家族や親戚、果ては子子孫孫まで融通してもらえないとなれば、当然不老が一般的になった世界での彼らの社会的立場は決定的に悪化する。

 自分だけならばともかく、家族や子孫に影響を及ぼすとなれば、よほど周囲が見えない人間でもなければ蓬莱教授に逆らおうという声を出さないもの。

 そしてそれは、蓬莱教授と懇意にしている永原先生を始めとする協会の人間も、広告塔となったあたしたちにも言えること。

 

「……とりあえず、そろそろ朝ごはんにするか」

 

「ええ」

 

 あたしと浩介くんは荷物を整えて、朝ごはんを提供しているホテルに向かう。

 今日はこのまま、一旦鍵をフロントに預け、一路宇奈月方面に向かうことになっている。

 

「宇奈月温泉、楽しみだな」

 

「ええ」

 

 男女別に分かれている共同浴場なら、浩介くんに覗かれる心配もないものね。

 あ、でもちょっとだけ寂しいかも。

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